書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店三宮店」のレビュー
- ジュンク堂書店
- ジュンク堂書店|三宮店
こころ朗らなれ、誰もみな アーネスト・ヘミングウェイ (著)
ヘミングウェイの名は恐らく殆ど…
ヘミングウェイの名は恐らく殆どの人が知っているだろうが、実際読んだ事のある人は、意外に少ないのではないだろうか。特に若い世代にとっては、彼の名が文豪として余りに有名だからこそ、何だか難しい本の様に思えて手に取りにくいのでは。
柴田元幸氏が訳した本著を読む限り、ヘミングウェイは全然ちっとも難しくなんかない。会話文と簡潔な描写で実にさらっと読めてしまう。彼の難しさは文章ではない。もっとずっと奥の方にある。だからとりあえず読んで欲しいと思う。難解で挫折すると云う事はまずない。読み通して、判らないなと思っても、それがけして不快ではない。そしていつか不意にあれはこの事だったのかと判る時が来るだろう。
個人的に「雨のなかの猫」がとても好きです。じわじわと湿気の様にたちこめる不満と不安、どう爆発するのだろうと思ったらこのオチ、何が可笑しいのか判らないが笑えてならない。流石ヘミングウェイ、猫とイタリア人をよく判っている。
果たして彼女は満足したのかそれとも…。その後を考えると、妙に恐ろしい、それもヘミングウェイの技か。
文芸担当:平井