紙の本
あなたの決断や行為の影響
2009/11/30 13:16
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作『背の眼』に続く道尾・真備シリーズ。
舞台は三重県に近い滋賀県の南、瑞祥房という仏所。
ホラー作家の道尾秀介が小説の取材で
造仏師とその工房を訪れます。
山の奥深くにある瑞祥房は
世間から隔離されているかのよう。
そこで女性的な美貌を備えた房主の松月、
職人の魏沢、岡嶋、鳥居、弟子見習いの麻耶、
そして庭師の唐間木老人に出会います。
厳しい修行のような職人の生活は、
小さな仏が飛ぶように売れるお正月を前に
忙しさを極めています。
ふとした手違いから瑞祥房に宿泊することになった道尾は
その夜、工房の千手観音像が「大口をあけて大笑い」しているのを見たのち、
男の痛切なとぎれとぎれの声を聞きます。
そして祠の鴉枢沙摩明王は割れた頭から血を流しています。
部屋に戻り、布団を被れば、その周りを誰かが動いている音が――。
そして翌朝、岡嶋が失踪していることが判明します。
暗闇で次々に起こった怪異現象を探るうち、
道尾は工房の秘密に触れてしまい、追い出されるように下山。
そこで零現象を探求している真備を訪れることになります。
工房の謎は20年前に、天才仏師といわれた韮澤隆三と
松月の妹茉莉の失踪に由来します。
真備の謎ときは、連続失踪事件が起きている最中に行われ、
緊迫感を漂わせながら、人々の疑念、勘違い、不作為の行為によって
人を追い詰めていく過程が明らかになっていきます。
それは誰が悪いわけでもなく、
誰もがそのような糸のなかで生きています。
それが「偶然の幸福」になることもあれば
「偶然の不幸」になることもあります。
しかし仏像というモチーフを用いている以上、
やはり「因果」ということを思わずにはいられません。
因果応報というように、一般的には
原因だけが結果を引き寄せるように思われますが、
釈迦は直接的な要因と間接的な要因によって
結果がもたらされると説きました。
このような結末をもたらしたすべての要因を解き明かす。
それは探偵という神(仏)の視点を持った人物を必要とし、
ミステリーと因果の深い関係を改めて感じた一冊でした。
紙の本
仏師も業を背負い生きている
2016/09/11 20:00
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
真備シリーズ、これで完読。今回は天台宗の寺と仏師、仏像にまつわる話だった。真言宗だけど密教を学んだ私にとってはちょっと身近だったな。寺関係の友に勧めてあげたい。わたしよりもずっと仏像や真言に親しみ、詳しい子が多いからな。お話はやっぱり悲哀に満ちていたし、ほら今回も勘違いでね、悲劇になってしまった。道尾さんいつも勘違いがベースなんだよな。それにしても、仏像やご真言についてよく調べている。こういう隙のない物語の仕上げ方がとてもすごいと素直に思う。生半可な知識じゃここまで深く切り込んだ小説は書けないはず。天晴。
紙の本
謎の設定が好き
2016/10/09 19:25
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回は頭から血を流す仏像、という謎。このシリーズ、毎回、テーマがユニークで、いいです。また、見事に、伏線も回収され、前作よりも面白かったと思います。真備、道尾、北見の三人のトリオが好きですが、今回は北見さんの出番、存在感が薄かった点が残念でしょうか。
電子書籍
伏線が
2015/12/25 23:47
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投稿者:MO - この投稿者のレビュー一覧を見る
どなたかも書かれていましたが、伏線が多すぎて後半少しついていけませんでした。説明が多くて、ちょっと冗長なところがあるように思います。
でも、何回どんでん返しがあるんだ!?という感じで楽しめました。
「友達だったのに」という下りが、私にはとても寂しく残りました。
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09年9月30日読了
仏像についての知識が深まった。
予想しない人が犯人で驚いた。
道尾さん話がうまいです。
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2009/10/3 ジュンク堂三宮本店にて購入。
2015/10/21〜10/24
3年ぶりの道尾作品。真備シリーズ第2弾。
面白い。とても面白い作品で、多くの伏線が最後に回収されていくのも見事であった。さらに最後の最後でミスリードしようとするサービスぶり。
しかし、いくらなんでもわからんよなぁ。犯人を推理しながら読むというよりは、上手にダマされる方が楽しめる作品であった。
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一気に読んでしまいました。前作「背の眼」の仲間たちが活躍するお話ですが、その以外な展開に驚嘆。
今、仏像ブームですが、これを読んでから、お寺を回って仏像のことをもっと知ってみたくなりました。
エンディングのせつなさが、主人公たちの会話の明るさで救われています。
次回作もぜひ読んでみたいです。
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道尾くんシリーズの仏像ホラーミステリ…?前ほどの無理矢理なホラーはないですさすがに。一つずつ細かく謎解きしようとしすぎるきらいは無くもない…けども最後までどんでん返しを用意してて、話としては面白いです。松月さんのキャラは別にあそこまで立てる必要ない気がしますが…いや好きだけどああいうの。
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真備・道尾コンビの2作目。前作『背の眼』に比べ、この『骸の爪』は、霊的要素が足りなかったですねー(苦笑) 導入は、やはり道尾が霊現象的なものを体験し、それに興味をもった真備が動き出す、ってな“お約束”なんですが、最後は見事に真相がオカルト的なものから外れていきました。普通に面白い本格ミステリでございました。…霊が云々、てのは最初だけだったんかなー?(´ω`) とりあえず次の作品に期待!
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三津田さんが京極を真似ようとした、というような印象。でも三津田さんほどホラー部分で読ませる力量もなく、京極ほど自然に知識を披瀝するでもなく。
怪異現象に立ち向かうは博識な推理役と間抜けな主人公、それから人の気持ちを見透かしてしまう能力ときて京極夏彦を思い出さない人がいるのか。
ここまでが読んでる途中の感想。読後はここまで強くどうこうは言わない。
確かに筋運びや薀蓄、民俗学的なところに京極的な系譜を感じるものの、それは影響といって良い程度に収まっているように思われるからだ。
探偵の真備は、エラリイ・クイーン型の探偵であるように思われる。
最後の最後まで真相を知らせず、突拍子のない行動をして読者を焦らし続けるところなんかはそっくりである。
ただしこの題材選びや人間関係のドロドロさはいかにも古きよき和物ミステリであり、やるせなさはなかなかのものである。
瑞祥房という仏像の工房で、主人公(?)道尾が、仏像が笑い血を流すのを見るという怪体験をする。
二十年前に行方不明になったという仏師の話。誰もが固く口を閉ざして、道尾を追い出そうとする。
そこで道尾は友人でもあり探偵役の真備とその助手を伴ってもう一度瑞祥房を訪れる。
さまざまな謎が渦巻くなか、一人また一人と仏師が行方をくらましていく・・。
二十年前の事件との因縁とはいったい?
というようなお話です。
この薄気味の悪さがとてもよいですね。仏像が笑っていたというあたりなんかは、どうせ錯覚だろうと思っていたら本当に錯覚だったという。
薀蓄の部分に関しては、さらりさらりと出していて、京極好きなわたしとしてはもっと深めてもいいのよ、という気持ち。なんだかもの足りない。
閉鎖された空間や村の中では信仰が生き、判断力が鈍る。
というのは、殺人の理由になるのでしょうかね?
勿体無いと思ったのは、それぞれの心理描写や動機付けが甘い。
例えば犯人を助けた人はなぜそうしたのか、仏像に細工をした人はそこまでするくらいならなぜ今まで黙っていたのか。とか。
そこらが掘り下げられれば、すごくいい話になる気がします。
まだ完成しきっていない作家さんだとは思いますが、予想外に古典的王道をゆくミステリだったので個人的には結構好きです。
何がすごいって、どことなく風格が漂っているあたりが。
もう何作か書き進めれば、いずれ日本ミステリ界の一人者として名を連ねることがあるかもしれないな、と思いました。
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道尾先生の「背の眼」の続編にあたるシリーズ物。前作は読んでませんが特に問題なく読めます。ただ「背の眼」の話がところどころに出てくるので知ってるとより面白いはず。
「向日葵の咲かない夏」「シャドウ」と違って病的な心理を描くのではなく、純粋にミステリーとして作られたという感じです。
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目次
第一章 笑う仏
第二章 血を流す仏
第三章 殺す仏
第四章 消える仏
第五章 生きている仏
第六章 宿る仏
第七章 最後の仏
終 章 仏は人を殺すか
解 説 杉江松恋
ジャケ買いというかタイトル買いした本でしたが、読み終えた感想としては正直、随分と難しいテーマで書いたなと思います。表紙にも描かれている通り、仏像を中心に話が進んで行くのですが、『千手観音』『鴉枢沙摩明王』など単なる想像では補えないものも登場します。尚且つそれが欠かせない要素なので、姿を知っているのと知らないのとでは小説の面白さも変わってきます。(私の場合は後者でした)
ジャケットも粗筋もろくに読まずに買ったのは、道尾秀介という名前をよく耳にするようになったからです。しかし最初の2ページ目を読んだ瞬間、少し落胆しました。それは主人公の名前が作者と同じだったからです。そういう書き方があるのは知っていますが、『小説家の道尾秀介』という設定にややナルシスト的なものも感じざるを得ない気がします。
解説を読んで初めて、これが『背の眼』に続く真備庄介シリーズだと知りました。しかし真備のキャラクター性は若干弱く、格好良く謎を解き明かす解決役の魅力だけで成り立っているような気もします。
解説は「私たちは、いつの間にか道尾秀介という小説家が大好きになっていたのである」と始まっていますが、前作の好感を引きずって良いことを言っているだけかもしれません。最初にこの本を読んだ私からすれば、仏像本片手に知識を丸写ししたものでは?と思う表現もあり、人物を動かすのに必死で背景のことをあまり考えていないようにも思えます。
ともあれ、作中に出たタイトルの由来やミステリーそのものに関しては良かったと思います(解答順の無慮は否めませんが)。目次を入れて474ページと長めですが、仏像好きもしくは根気のある方は読んでみることをお勧めします。
これからの道尾秀介の成長に期待します。
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閉鎖的な、むくろの村で起きた悲劇。
関係者たちのちょっとした行動・言動が事件に繋がっていて、
あの時ああしていれば…あんなことしなければ…という後悔に溢れている。
早とちり、勘違い、思い込みも多く、
はっきり言って後味は悪い。
何か一つでも希望が残れば良かったんだけど…
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『背の眼』に比べると、若干インパクトは薄いかな?ただ、勘違いがいくつもいくつも重なっていったこのストーリーはとても物悲しかった。相手に間違いなく意図を伝えるということ、相手の意図を間違いなく読み取るということの難しさを感じた。特に最後の展開は、もう何も起こらないだろうと思っていただけに衝撃が強い。
道尾秀介の、この堅実な方の作品は、かなり読むのが好きだなぁ。次に読むと決めている道尾作品は苦手だと感じた『向日葵の咲かない夏』に合い通じるものがありそうなので、若干今から構えてはいるが。。
(2009.11.03)
久しぶりの再読。
ストーリーを完全に忘れていたので楽しかった(笑)
方言も交えての勘違い、勘違い、勘違い…。
以前も書いているけれど、自分の意図を相手に伝えることの難しさ。
茉莉さんの松月さんへの最後の電話が、自分にも重ねられて悲しかった。
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シリーズ前作より、より作りこまれていたと思う。
ミステリーらしいミステリーだった。
個人的に小学生が主人公の『向日葵の・・・』や『シャドウ』のほうが好み。