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紙の本
翻訳の底力
2003/06/30 18:25
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:バナール - この投稿者のレビュー一覧を見る
近くの大学の学園祭を訪ねることに決まったはいいが、利便性豊な交通手段などなかったために歩きで行くこととなった。山の上に在ったことと向かい風が半端ではなかった理由から、地面を睨みつけながらひたすらに上り坂を歩き続けねばならなかった。
苦労して到着すると、アイドルのミニコンサートがあと小一時間ばかりで始るらしく、時間をどこかでつぶそうかということになり教室を覗いてみることになったが、そのひとつに現代文学に関する討論会が開かれんとする教室があって嫌な予感がしたが、まあとりあえず座ろうと各々が空いている席についた。案の定とはこの事で、薄ら寒い言葉が飛び交い始め、進展する気配もない。馬鹿らしくなって出入り口の方を見やるとさっさと教室をあとにした者もいる。自分もそろそろと思ったその矢先、隣にいたその学校の教師がなにやらしゃべりはじめてしまった。出るタイミングを失い仕方なく聞いているふりをした。ひと通りしゃべり終えてしまうと今度はわたしの方に顔を向けて話しかけてくる。
無視するわけにもいかず、付き合う羽目となった。英語圏の文学が専攻のようでチャンドラーの話になった。その頃、わたしは偶然にも清水の名訳に没入していたが、英文にまでは手が廻っていなかった。相手は「チャンドラーの文章は本当に勉強になります」と、ひとりで言語学的な解説を始めたはいいが、できれば必要最低限の原書に当たり、あとは避けて通りたいタイプだったので、曖昧な頷きだけを繰返すしかなかった。
そのうちしゃべり疲れたのか主催者側が教員にだけ配っていた弁当に箸をつけ出したが、黙々と口に運ぶその集中ぶりに呆気にとられ、ここが潮時と席を蹴った。外に出ると先に退出した仲間が所在なげに煙を吹かしていて、聞けば、あまりに風が強いために予定時間よりも早くミニコンサートは切り上げられたというのだ。
その夜、帰りに買ったペーパーバックを読み進んでいる最中に突然腹立たしくなり、それを壁にむかって力いっぱい投げつけたのをいまでも覚えている。
チャンドラーを原書で読んだのは、「Farewell My Lovely」だけである。
それはやはり「勉強」にはならなかったと思う。なぜなら、清水俊二訳を先行して読んでいたからだ。つまり、アルファベットに眼を走らせながらも、頭の中では清水訳が分泌する匂いのようなものをわたしは追っていたのである。
あの“弁当”教師の言わんとした、英語圏の他の文学を横に並べたときに始めて浮かび上がってくるような言語的“差異”など嗅ぎ取れはしなかったのだ。
「勉強」にはならなかったが、けれどもそのおかげで、“日本語のチャンドラー”の素晴らしさは知ることができた。あの教師は今も「勉強」を続けているのだろうか、続けているんだろうなぁ。Farewell, Our Hard heads.
紙の本
これぞハードボイルド!
2002/02/07 14:25
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投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
これぞハードボイルド、これぞクールな男の生きざま。ハードボイルドファンにとったら、バイブルのような作品ではないかと思う。
日本ではこれよりも『長いお別れ』の方が評価が高いようだが、僕にはレベルが高すぎるのか、いまいちピンと来なかった。でも、この『さらば愛しき女よ』には最初のシーンからノックアウトされてしまった。
“大鹿マロイ”と呼ばれる凶暴な大男の前科者が、マーローをまるで子供のようにあしらうのだが、それに対してメンタルパワーという面では彼は決して負けていないのだ。そのへんの描写のイキさ加減が絶妙で、一読、とりこになってしまった。
とにかく、1940年の作品なのに、いま読んで何ひとつ古さを感じさせないのがすごい。人間や街や風景が生き生きとしていて、本の中でひとつの宇宙を形作っている。いま、この瞬間にも別の次元の宇宙でフィリップ・マーローが“卑しい街”を歩いているのではないかと思わせる。
紙の本
どちらが傑作か?
2001/03/28 00:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
何度か映画化された作品の原作としても有名だが、そのうちどの版が名作か、はたまた映画は原作を越えるのか、この物語に付いて回る噂は尽きない。
私立探偵フィリップ・マロウが、ふとしたことから行方を探る女。彼女の消息を巡って重ねられる殺人。いかにもハードボイルドらしい謎ばかり、と嘯くよりも、全てのハードボイルドの基本を作ったシェイクスピア的存在感を堪能。「長いお別れ」が代表作のように言われているが、私の周りにはこちらを勧める人の方が多い。
紙の本
期待はずれのかんあり
2001/12/28 09:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つる - この投稿者のレビュー一覧を見る
レイモンド・チャンドラーのミステリーの中ではかなり有名な人気のある部類にはいるだろう。でも私は期待ほどではなかったと思う。この中に愛した女をさがすマロイという男がでてくるが、彼はそれほど目立った出番はないにも関わらず、私の心に残った。愛を捧げた男、踏みにじった女。悲しみが何となく残る一冊だ。