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心の奥底に眠っている自分でも気づかない感情に気づかされる5つの短編。
2023/03/22 10:01
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「午後から雨になるみたいですね」
こんな世間話の文底には、「雨なのか、嫌だなぁ」「降らなきゃ良いのに」「傘用意するのがめんどくさい」といったネガティブな感情がある。
雨は降るとめんどくさい。
だが、雨が降らない日が続くとそれはそれで困る。
その雨をモチーフにした短編集。
「雨のなまえ」
妊娠中の妻がいるのに浮気をしている主人公悠太郎。
同級生で資産家の娘・ちさとにとっては待望の妊娠。
母子家庭の悠太郎は、母親の男が変わるたびに引越しをする不安定な少年時代を過ごした。
悠太郎が一生分の給料を出しても買えない様な高級マンションを、娘の妊娠と同時に買い与える義父母。
「記録的短時間大雨情報」
痴呆が始まったと思われる義母との同居がはじまる。夫はまったくの無関心。一人息子の教育費のためにパートに出た先で出会ってしまった大学生。
自分の名前ではなく「作哉くんのお母さん」となってしまう日常。
その中で澱のようにたまっていく抑え切れない感情。
「雷放電」
「一人の人間に割り当てられた幸せの量があるとして、自分はもうそれを使い果たしてしてしまったのではないかと思う」
「こんなに美しい女が自分の妻になるなんて夢みたいだ。おれは毎日、何度でもそう思う」
「ゆきひら」
中学校教師の臼井には、中学時代の同級生ユキとの悔やんでも悔やみきれない過去があった。妻の戸紀子にはそれは話していない。それは戸紀子のなかの秘密を確かめるのが怖かったから。そして教師の仕事にのめりこむことで、そこから逃げていたのだ。
「あたたかい雨の降水過程」
「おまえの言葉は刃物みたいに人を傷つける」別居している夫から言われた繭子。シングルマザーとして必死に働き子育てに奮闘するが、思うように行かない毎日が続く。
「仕事と子育てだけしていたかった。そうしたくて、夫と離れた」のに。
心の奥底に眠っている自分でも気づかない感情に気づかされる5つの短編。
紙の本
心の奥底に眠っている自分でも気づかない感情に気づかされる5つの短編。
2022/01/18 10:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「午後から雨になるみたいですね」
こんな世間話の文底には、「雨なのか、嫌だなぁ」「降らなきゃ良いのに」「傘用意するのがめんどくさい」といったネガティブな感情がある。
雨は降るとめんどくさい。
だが、雨が降らない日が続くとそれはそれで困る。
その雨をモチーフにした短編集。
「雨のなまえ」
妊娠中の妻がいるのに浮気をしている主人公悠太郎。
同級生で資産家の娘・ちさとにとっては待望の妊娠。
母子家庭の悠太郎は、母親の男が変わるたびに引越しをする不安定な少年時代を過ごした。
悠太郎が一生分の給料を出しても買えない様な高級マンションを、娘の妊娠と同時に買い与える義父母。
「記録的短時間大雨情報」
痴呆が始まったと思われる義母との同居がはじまる。夫はまったくの無関心。一人息子の教育費のためにパートに出た先で出会ってしまった大学生。
自分の名前ではなく「作哉くんのお母さん」となってしまう日常。
その中で澱のようにたまっていく抑え切れない感情。
「雷放電」
「一人の人間に割り当てられた幸せの量があるとして、自分はもうそれを使い果たしてしてしまったのではないかと思う」
「こんなに美しい女が自分の妻になるなんて夢みたいだ。おれは毎日、何度でもそう思う」
「ゆきひら」
中学校教師の臼井には、中学時代の同級生ユキとの悔やんでも悔やみきれない過去があった。妻の戸紀子にはそれは話していない。それは戸紀子のなかの秘密を確かめるのが怖かったから。そして教師の仕事にのめりこむことで、そこから逃げていたのだ。
「あたたかい雨の降水過程」
「おまえの言葉は刃物みたいに人を傷つける」別居している夫から言われた繭子。シングルマザーとして必死に働き子育てに奮闘するが、思うように行かない毎日が続く。
「仕事と子育てだけしていたかった。そうしたくて、夫と離れた」のに。
心の奥底に眠っている自分でも気づかない感情に気づかされる5つの短編。
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いつもながら、人の心のひだ、葛藤に深く切り込んだ内容で、重い・・重い・・ただ、いつもの作品は、最後にたとえ一筋でも希望が見いだせるのだが、今回は、暗くて理不尽で答えがない短編が多く、とてもしんどかった。
雨のなまえ、暗いけれど、惹かれる作品だった。
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共感できる部分も多かった気がする。人生とはままならぬもの。もがく姿を嘲笑う者もいるだろう。でも僕は彼らを愛おしく思う。例えそれが誤った選択だとしても。
あらすじ(背表紙より)
女は小さな声で、マリモ、と言った―。家具ショップで働き、妊娠中の妻と何不自由のない生活を送る悠太郎。ある日店に訪れた女性客と二度目に会った時、彼は関係を持ち、その名を知る。妻の出産が迫るほど、現実から逃げるように、マリモとの情事に溺れていくが…。(「雨のなまえ」)答えのない「現代」を生きることの困難と希望。降りそそぐ雨のように心を穿つ五編の短編集。
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冷たい雨と男と女の短編集。
辛かったり苦しかったりの日々の中で
雨は何かをもたらしてくれるのだろうか。
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手放せないモノを持ってしまった人間は矛盾するようだけどどうしようもなく孤独なものなのだと思った。引きずり込まれるような巧みな文章なのに地震の描写がいつも唐突。必要?
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希望も夢もなく、ただ一日を費やし成果を求めない日々を送る人たちを描く五編の短編集。
降り続く雨の季節のような鬱屈した気分になる。もどかしさややりきれなさが重くのしかかってくる。こんな感情を呼び起こすのも、窪美澄さんのテクニックのひとつだと思う。特に『ゆきひら』で一気に落ち込ませた後、最終話『あたたかい雨の降水過程』の意外なエンディングに至る過程は見事。
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窪さんが主人公に書く男は、どうしてこんなに、優しく、弱く、傷を負っている人が多いんだろう。
どうして私はそれに惹かれちゃうんだろう。
窪さんの話に出てくる登場人物は、どの人もとても自分に近く感じるのは何故だろう。
西加奈子さんの本を読むと、生きることに意欲がわくというか…前向きになれる。
対して
窪美澄さんの本を読むと、自分の足もとを見つめて、自分自身と対峙することができる気がする。
どちらも自分には必要なこと。
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5編からなる短編集ですが、どの短編も息苦しいような、じっとりと湿っているような閉塞感があり、暗い。主人公たちは出口が見えないような状態で停滞し、倦んでいる。そんな状況での性欲には、厄介なものという印象しか持てない。最終話『あたたかい雨の降水過程』だけは、明るい兆しが見えるような気がするけど、それ以外の話は「ここで終わり?」というところで終わっていて、その後の彼らの人生は暗いものしか想像できない。窪さんは、本当に人間の嫌な部分の感情とそれに伴う性の問題を描くのが上手くて、上手いだけに物語に入り込むと気分が滅入る。
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雨は止まってっていってもは降り続けていくもの.
人の気持ちと似てて、残酷.雨がもたらすものは潤いだけじゃなくて、その人の暗部をゆっくりと滲みさせてしまうものなのかもしれない.
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何となくの不穏さを感じながら読み進めていたら、突き落とされるようなラストに出くわす。
5つの短編のうちの3つがそういう形で、1つが不穏なまま終わり、残る1つだけが少しの救いを感じた。
読み終えたあと心がざわつく。良いとは言えない後味に戸惑う。でも現実にも、こういう理不尽な出来事は時に起こってしまう。そういう、自分の身にも降りかかるかもしれないという恐れを感じるような物語が並ぶ。
様々な形で“雨”が登場する。
出産を控えた妻に恐れを感じ始める男が主人公の表題作では、産まれてくる子どもに雨にまつわる名前を付けようと妻が言い出す場面があり、年下の男に一方的な恋をしてしまう主婦が出てくる「記録的短時間大雨情報」では、ゲリラ豪雨のように、ほんの短時間に激しく恋心を燃やしてしまう様が描かれる。
その他の3つも合わせて、うまくいかない現実や理不尽な出来事、もがいたり、時に逃げ出したり、罪の意識に苛まれたりという人々の日々の物語が綴られている。
1つだけ異質なのは「雷放電」というお話で、幻想的で、ミステリ的な要素もあって、怖面白かった。
つまらない日常を捨てて逃げ出したい。決まりつつある未来に恐れを感じる。過去の過ちから逃れられずこの先罰が当たるような気がしてしまう。
誰もが不意に抱えてしまうかもしれない感情たちは、とても現実的で、身近に感じた。
ラストの「あたたかい雨の降水過程」は希望を感じる物語だったから、理不尽だらけの短編集でも、読後感は悪くなかった。
そういう意味で、物語を並べる順番ってけっこう大事なのだと分かった。
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表題作の「雨のなまえ」の感覚がすごくよくわかるのだけど、相手に対してこれといった不満もないし、傍から見れば幸せなのはわかるけど、それが逆に不満というか、そういう完璧に近いようなものへの息苦しさの結果、相手を裏切る行為をしてしまう感覚って、ちょっとわかるな~という風に読んでいた。いろいろなしがらみから、解放されたいのだろうか、結果携帯をポイ捨て同然のごとく扱ったり。
ほかの短編だと、「ゆきひら」の結末が少し衝撃を受けた。そんな終わり方って・・・という印象。窪さんの作品の印象にこのタイプの終わり方がなかったので面食らった。
やっぱり窪さんの本は長編のほうが面白い。その都度打ちのめされたり、心が痛いけど長編のほうが好きだ。
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世の中の切なさと虚しさを描いた短編集。
ちょっとやるせなさが残るものが多かった。
短編は最後がモヤモヤするものが多くて、これもそんなものがいくつかあったなぁ。
2019.2.10
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表題作をはじめ、天候に関係するタイトルがつけられた短編集。雨、雷、雪といったタイトル通りに明るくないイメージの内容。最後の一編だけが希望のある終わり方だ。
胸が苦しくなるような切なさや、どこにも行けない閉塞感みたいなものがやや不足していた気がする。それはそれでもいいのかもしれないが、自分がこの作者に期待しているものとは若干ズレていた。
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現実にあってもおかしくない話ばかりですが、それを敢えて作品として読みたいとは思わないというのが正直な感想かな。