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漂流
著者 吉村昭
江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて...
漂流
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漂流 改版 (新潮文庫)
商品説明
江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。
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紙の本
漂流という極限状態の人間を描く
2006/12/10 21:09
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉村昭の長編小説である。この作家の場合、小説であってもその骨組みになる土台がある。つまり、本当にあった話なのである。それを調査して小説という形で世に問うというスタイルである。
本小説は江戸時代が舞台である。飢饉が続く土佐での出来事であるが、回船の乗組員であった主人公長平が、ほんの沿岸の短い航海の途中で、悪天候によって沖に流され、とうとう何日も漂流してしまった。一体どこにいるのやら皆目検討がつかない乗組員たち。ようやく一行は島にたどり着く。この小説はこの島での主人公と漂流者の物語である。
船といっても、現在のようにエンジンなどの動力を持たない船では、風雨にさらされると弱いものである。転覆しないだけましというものだ。運良く陸地に辿り着ければ幸いである。いつまでも海の上では飲み水と食糧が底をついてしまう。
とにかく陸地を探すことに懸命になるわけだ。しかし、運良く陸地を発見しても舵を破損していては船をそこまで持っていけない。流れに任せる他はないのである。さらに首尾よく上陸を果たしても、無人島なのか、先住民がいるのかによっても大分違ってくる。
先住民に警戒された上に殺された例も多々あるという。無人島も食糧が果たしてあるのかどうか、水が確保できるかどうか、など生活していく上で問題点はある。しかし、船の上にいたらまず助からない。それに現在と異なって、あまり本土から距離のある離島に漂着しても、交通路があるとは限らない。その場合はそこで一生を終えなければならないかもしれないのだ。
漂流はそういう意味では、生還の確率はかなり低く、当人たちは人生の岐路に立たされるわけである。漂流を題材にした小説は数多いが、江戸時代ではたとえ国内であっても、一旦流されてしまうと最早元の生活に戻ることは難しい。本書は極限状態で人間は何をするのかを描いている。興味深いテーマを取り上げている。
紙の本
吉村昭の本領
2022/02/15 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
近代日本文学において「記録文学.史伝」というジャンルを切り開いたのは森鴎外だそうだが、それの正当な後継者である吉村昭の本領が存分に発揮された名作である。余計な感想感情を一切加えないドライだけれど平易な文体で語られる極限の生活は読むものを圧倒する。作者の感情の押しつけがないだけに、読者の想像力感情が嫌でも盛り上がってきてしまう。
紙の本
気になってました
2021/10/31 14:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すいか - この投稿者のレビュー一覧を見る
たまたま見つけた本でしたが、いろんなところで話題になっていたので気になっていました。ついに購入して読み始めました。期待通りでした。
紙の本
いいです
2021/09/24 08:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はまち - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分で調べたら大変に手間のかかる内容が記載されていて、ありがたい。また書店に在庫していたのもうれしかった。
紙の本
漂流者たちの複雑な心の動きまでを描く
2019/06/29 13:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代の実話に基づいた記録小説。無人島での生活を詳細に描くだけでなく、窮地に陥った者たちの共同生活における複雑な心理描写は見事。著者の作品群を読み、その旺盛な想像力にはしばしば「まるで見てきたかのような」という感想を抱くものだが、今作では「まるでそこで暮らしてきたかのよう」に、漂流者たちの心の動きまでを巧みに描いている。
紙の本
泣いた
2017/11/07 02:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉村昭は大好きな作家の一人だ。
ちょっと売れると、助平心を出して、関係もないのに妄想の濡れ場の場面を入れる作家が少なからずいて、本当にがっかりして軽蔑する。
しかし、吉村昭には一切の妥協がない。
80歳を過ぎた母が2週間ほど入院した際、この本を差し入れした。
退院してから、この本を返したとき、たった一言「泣いた」。
人間というものを深く見つめた、それでも希望をくれる傑作だ。
紙の本
記録し保存する習慣のあるこの国の民のおかげでなった本
2021/12/10 17:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
過剰な「足し引き」なしの平易な文体で、
人間の生き様の極北の一つを象徴する
ような出来事を綴った作品です。
無人島に流れ着いた漂流者のやりとりを
自分の目で見てきたかのように描写して、
それでいて作り話っぽく感じさせないのは、
記録文学の旗手として知られる著者の
面目躍如といったところ。
作品の原史料となったはずの詳細な記録を残した
江戸時代の日本人の習性にも思いを馳せました。