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ジョージ・オーウェル
著者 川端康雄
「反ソ・反共」作家のイメージから「監視社会化」に警鐘を鳴らした人物へと,時代とともに受容のされ方も変化してきたオーウェル.ポスト真実の時代に再評価が進む『一九八四年』など...
ジョージ・オーウェル
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ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書 新赤版)
商品説明
「反ソ・反共」作家のイメージから「監視社会化」に警鐘を鳴らした人物へと,時代とともに受容のされ方も変化してきたオーウェル.ポスト真実の時代に再評価が進む『一九八四年』などの代表作をはじめ,少年時代から晩年までの生涯と作品をたどり,その思想の根源をさぐる.危機の時代に,彼が信じ続けた希望とは何か.
目次
- はじめに
- 第1章 植民地生まれの奨学金少年 1903-1921
- 第2章 イギリス帝国の警察官 1922-1927
- 第3章 パリとロンドンで落ちぶれる 1927-1934
- 第4章 葉蘭とディーセントな暮らし 1934-1936
- 第5章 北イングランドへの旅 1936
- 第6章 スペインの経験 1936-1937
- 第7章 ファシズムに抗って 1937-1939
- 第8章 空襲(ブリッツ)下のロンドンで生きのびる 1939-1945
- 第9章 北の孤島にて 1945-1947
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紙の本
読み返す
2021/02/26 10:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
50年以上も昔の1968年に発売された早川書房の世界SF全集の一巻にハックスリイの「すばらしき新世界」とオーウエルの「1984年」が収められていた。当時16歳の頃にこの本を購入して読んだ。SFとはいえ内容が難しいものに思え、次第に忘れていった。その後、学生時代、英語の講義で使用されたエッセイ集でもオーウエルに出会い、再度、例えば1984年が来たら読み返してみようと思っていた。
そうこうしているうちに、21世紀になってしまった。この本はその後転居する度に持ち続けて今も書棚にある。そのオーウエルが没後70年だという。本書を読みオーウエルの人や人生について初めてわかったような気がする。
階級格差、植民地政策と人種差別などイギリスの社会も複雑性に富んでいるが、サッチャー以後の新自由主義的政策により格差も激しくなっているという。そのような背景をもつ社会に生まれ育ったオーウエルも強い影響を受けていたのであろう。波瀾万丈、破天荒とも思える行動は人間としての理想に対してそれを損なうものへの怒り、憤りをもって表現してきた人生だった。今年はオーウエルの作品をじっくり味わいたいと思う。
紙の本
ソ連に騙されなかった人間
2020/08/22 12:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近「赤い闇」という映画を観た。1930年代前半のソ連の農業集団化と大飢餓を描いた映画である。そのなかで、ジョージ/オーウェルが登場する。革命後のソ連は、社会主義こそが優れていると、世界を騙そうとして。ソ連は、労働者の楽園であると。実際は、大飢餓や強制収容所があふれるこの世の自国であった。ソ連は、バーナード・ショーなど西欧の知識人をソ連に招いてポチョムキン村(エカチェリーナ二世を騙すためにポチョムキンが見せかけの豊かな村を作った)を見せたのだ。ショーは一生騙され続けたが、ジッドやオーウェルは、おかしいと感じるようになったのだ。現在のロシアや中国にも通じることである。オーウェルの生き方や視点は学ぶべきことが多いだろう。
紙の本
人間にはサンチョパンサ的側面も必要!なるほど
2021/02/02 21:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの「一九八四年」のジョージ・オーウェルの46年というあまりにも短すぎる一生を丹念に掘り起こしたノンフィクション。この本を読んでみてわかったことなのだが、ジョージ・オーウェルという人の「一九八四年」や「動物農場」という作品は単に反共産や反ソ連の立場から書かれたものではないということ(もちろん西側陣営は彼の作品をそう扱ったが)、反民主主義的な政治手法をとる政権、そうトランプ政権がそうだった、もジョージ・オーウェル氏の憎悪の対象、トランプはまさに「動物農場」の豚そのものに彼が生きていれば思ったに違いない。人間のドン・キホーテ的側面は英雄崇拝、指導者崇拝に悪用されうからサンチョパンサ的な「地を這う虫から見た人生の眺め」を持つ側面も同時に必要なのだとオーウェルは説く、なるほどと思った
紙の本
「内部」発行の「1984年」
2023/06/22 23:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
オーウェルの研究者による彼の伝記。彼の小説の粗筋がコラムとして紹介されている。
ソ連で「1984年」のロシア語訳が「情報収集の一環として関係者だけが見る資料」として、中国で言うところの「内部」出版という形で出ていたとある。勿論、著作権侵害で、いくらソ連でも何かで外部に漏れてしまったら面倒な事になっただろう。レーニンやトロツキーのように英語が読める世代はともかく、ロシア語訳でないと読めなくなってしまったのもあるだろうか?その非合法なロシア語訳は党中央の偉いさんやKGBや党中央委員会などの担当者のみが読めるのだろう。フルシチョフは「ドクトル・ジヴァゴ」を読まなかったそうなので、読んだ偉いさんがどのくらいいるかはともかく。中国や北朝鮮でも「内部」出版で「1984年」が出ているだろうか?
この本の著者には「1984年」に関する著書もあるので、岩波文庫で「1984年」が出ないだろうか?
この本で書かれているのと違って、POUMは元々、ニンがトロツキーに近かったにしろ、スペイン戦争の頃にはトロツキーからも離れてしまった。「カタロニア讃歌」にあるようにオーウェルが入隊したPOUMの義勇軍がろくな食料がないのにあるかのような「誇大宣伝」で国民戦線軍から脱走兵が出たとあるが、その後はどうなったのだろう?そこはオーウェルも書いていない。「ファシストのスパイ」として銃殺されなかっただろうか?何しろ共和国側は国内戦当時のボリシェヴィキばりに「反革命階級」から人質を取ったり、公には「売春の廃止」を謳ったはずなのに身内が国民戦線側に投じたブルジョワの女性は慰安婦として共和国軍の慰安所に送り込んだりしたようなところだ。
オーウェルは独立労働党に近い立場なのに、葬儀は国教会で行うように遺言し、国教会の教会墓地に埋葬されたように生まれた階級からは離れなかった。
自称「保守」が「世界に暗躍するコミンテルン」史観?の元ネタとして名前が出て来るミトロヒン文庫は怪しげな怪文書だと刷り込まれてしまったが、まともなKGBの資料だった。
紙の本
コンパクトで良質なオーウェル入門
2021/12/28 14:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年『1984年』をはじめオーウェルへの関心が再び高まったが、その著作を読まずに聞きかじった知識で適当なことを言っている人も少なくない。言うまでもなくオーウェル自身の著作にあたるのも重要であるが、その文脈をふまえるうえでも本書のようなきちんとした入門書にまずあたられたい。