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紙の本
少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)
著者 岡崎 隼人 (著)
連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、無為な日々を消化する北原結平・19歳。自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。...
少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)
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商品説明
連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、無為な日々を消化する北原結平・19歳。自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女・蒼以によって、孤独な日常が一変する。正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”の出現。過去の出来事のフラッシュバック。暴走する感情。溢れ出す抑圧。一連の事件の奥に潜む更なる闇。結平も蒼以もあなたも、もう後戻りはできない!!第34回メフィスト賞受賞!子供たちのダークサイドを抉る青春ノワールの進化型デビュー。【「BOOK」データベースの商品解説】
【メフィスト賞(第34回)】連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、無為な日々を消化する北原結平19歳。自らが犯した過去の「罪」に囚われ続け、後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会った少女・蒼以によって孤独な日常が一変し…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
岡崎 隼人
- 略歴
- 〈岡崎隼人〉1985年生まれ。「少女は踊る暗い腹の中踊る」でメフィスト賞を受賞しデビュー。
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紙の本
期待の新人
2007/04/17 01:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yu-I - この投稿者のレビュー一覧を見る
1985年生まれ。若い作者のデビュー作である。
執筆当時19〜20歳程度であろう若者が、ここまでえぐい話を書くのが不思議だった。
正直、誰彼構わずおすすめできるような本ではない。
乳児殺害やら一家皆殺し(それも物凄く残酷なやり方で)やら、思わず目をそむけたくなるようなエピソードが、たたみかけるような勢いで次々にえがかれている。
10代の青年の冒険譚にあわい恋心も絡む話だが、一般に言う青春文学とは著しく異なる。主人公の心情などはほとんど描写されておらず、物語の凄惨さとはうらはらに、狂気的なまでに淡々としているのだ。
文章も若書きらしく完成度は高くないが、ぐいぐい読ませる。そして、ジャンルにとらわれていない。かぎりなく自由に作品世界を展開している。
ジャンルの枠をはみ出した作品が多く出版されるようになって久しいが、ジャンルレスな作品というのはある意味秀逸で、読者が好きな読み方をすることができる。本書も、本格ミステリとして読むこともできるし、ホラーとも、サスペンスとも、恋愛小説とも、ああ、やはり青春文学として読む人もいるのかもしれない。
この作品は、読者の感情を積極的に揺さぶろうとはしない。
激しい心理描写が皆無に近いこと。
そして、この物語は惨たらしくはあるが、悲劇ではないのだ。
掴みかけた幸せを逃す、あるいはやっと掴んだ幸せを失うというのは悲劇だが、この物語には初めから希望がない。虚無から始まる物語だ。
未来をまったく感じさせないし、主人公がこの凄惨な現実から逃れたいとか、幸福になりたいとか願うこともない。終盤に希望らしきものが少し見えはするが、明らかに絶望と紙一重の希望である。そんなものはやはり虚無でしかない。
だからといって、この作品は刹那的である様を強調しようともしない。
だから、これはあくまでも物語なのだ。ひたすらに凄惨なストーリーをただ語った、という作品。
それでいてページを繰る手を止めさせないというのは、やはり稀有なことなのだ。
これから作者が年齢を重ねていったとき、作品がどのような方向に厚みを増し、深まっていくのか。まったく、楽しみな新人である。
紙の本
狂気のノワール小説
2007/02/13 17:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
コインランドリー管理の仕事を淡々とする、今時の19歳にしてはまともそうな青年・北原結平。
しかし彼は深夜、コンビニに止めていたバイクのメットインに、赤ん坊を捨てられたことにより、その人生が狂っていく。
ここの導入部でグッと引き付けられました。
狂気のノワール小説です。
幼児誘拐事件、無差別残虐殺人事件、さらに蒼以の通っていた第三穴見小学校の女生徒への皮膚切り取り事件と、悲惨な事件ばかりが起こるようになる。
このような狭い地域だからこその小説設定ですね。
特に岡山弁が随所に現れて迫力があります。
これらの事件が結平のトラウマとなっている過去の事件へと収斂していく。
プロットもよく練られているし、読ませる力があります。
残虐事件は好き嫌いがありますし、私も苦手です。
でもこの小説は読めました。
登場人物の若い男性3人の強烈な庇護欲が、小説の根底に流れています。
紙の本
舞城王太郎との類似が囁かれますが、私にはどちらかと云うと西尾維新のほうが近い感じ。つまり、これが最大の弱点。文章も上手なんですが、なんていうか余裕がない・・・
2006/12/10 21:31
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いかにもメフィスト賞受賞作らしい暴力的な印象を与えるデザインで、データを見ると突然、アルファベット表記。おいおい、新潮社だけでも辟易しているのに、講談社、お前もか、ですね。こんな中途半端な表記するくらいなら、英語版で出版すりゃいいじゃん、こういうやり方って、バカじゃん・・・。ちなみに、こう書かれています。
Cover Design/Takeshi Hamada
Book Design/Hiroto Kumagai・Noriyuki Kumagai
Cover Illustration/Yumie Sirai
ついでに、カバー折り返しには
「彼女からのプレゼント
それは両足のちぎれた赤ん坊・・・・・・。」
カバー後ろには、内容案内として
「連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、無為な日々を消化する北原結平・19歳。自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女・蒼以によって、孤独な日常が一変する。正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”が出現。過去の出来事のフラッシュバック。暴走する感情。溢れ出す抑圧。一連の事件の裏に潜む更なる闇。結平も蒼以もあなたも、もう後戻りはできない!!」
と書いてあります。
ま、内容としてはこれで十分でしょう。頁から溢れ出る悪意、殺意、血飛沫、脳漿、精液、悪罵、暴力、腐臭などなどに圧倒されるわけですが、人を殺した人間が、こうも簡単に他人の殺人に巻き込まれる?っていう疑問は拭えません。見知らぬ男に操られるくらいなら、そいつを殺すだろ、そうじゃなきゃ逃げりゃいいじゃん、って思いながら読むんですね。
文章はしっかりしていますが、描く対象が美しくないので、読んで楽しいものではありません。文章の圧力はあるので、舞城王太郎と比較する人が多いようですが、私としては余りに簡単に人を殺すという点で西尾維新を思い浮かべます。舞城とのことは人の文章を見るまでは思いもしませんでした。
ただ、この人の文章には西尾・舞城と違ってユーモアが感じられません。少女が可愛いとか、主人公が可哀想だとか、そういうこともなくて、ただただ登場人物たちの薄気味悪さだけが伝わって来ます。簡単にいえば、華がありません。ま、若いので、次にどう出るのか、再び維新・王太郎との比較で語られて終るのか、そこが勝負のしどころでしょう。
紙の本
初投稿
2008/02/01 03:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:redhelink - この投稿者のレビュー一覧を見る
「すききらい」と書けば、その内容は「きゅうりは好き、ピーマンはきらい」のような、子どもが抱くイメージに近いのではないだろうか。
「好き嫌い」と書けば、その内容は「清楚な感じが好き、ギャル系は嫌い」のような、趣向に抱くイメージに近いのではないだろうか。
一般にYes/Noで判断することは、このレベルで納まる。
では次のフレーズはどうだろうか?
「愛憎」・・・愛することと憎むこと。好ききらい。(三省堂国語辞典)
私は「愛憎」にあてがわれた漢字とこの本のイメージを統合して以下のように定義したい。
・愛のために躊躇なく殺人が実行できる。
・憎という一瞬ちらついた感情で殺人が実行できる。
えっ?なぜ定義をしたかって?そんなことに理由などありゃしませんよ。だがしかし、だがしかし!定義せずにはいられなかったというのが正直な想い。
それは、両足のちぎれた赤ん坊だった。(p36-8)
この一文は45章あるこの小説の1の最後の文です。私は今まで小説における殺人の被害者は高校生以上と勝手にイメージができあがっていたのでショックを受けました。そして同時にこの本の世界に取り込まれていったのです。
序盤にも書きましたが、この小説で強く描かれているのは、行き過ぎた愛情から来る愛情表現の果てと瞬間に抱く憎悪の行き先が殺人を通して描かれていると感じました。それもかなり熱くです。主人公を通して心理の移り変わりを自分が体験しているかのような文体で描かれている点は、気持ち悪いくらいでした。(←賛辞です。)
人間は欲深い故に、昔からほどほどが良いという文句はたくさん(?)あります。愛情もほどほどにしないと突き進みすぎて周りを壊してしまう。憎悪も悪口を言う程度で抑えないと取り返しのつかないバッドエンドはいくらでも想像できてしまう。
この小説では悪い方向へ悪い方向へ話を進めることで、愛情も表現していたところが感動しました。殺意の抱くときの動機が薄いときがちらほらしていたので、その点は個人的に残念でした。(これを引用するとネタバレなので、約数の総和が96である数の前のところを読んでください。)登場人物の不器用だけど想いはまっすぐ、故に道を踏み外した原因の一つになったのだろうと思いながら読んでみると結構切なかったりもします。怖さの半分くらいですけど・・・。
誰かと出会ったとき、その人の現在や近未来は付き合いを進めることで思い出を共有しながら創ることができる。過去は本人からの告白やその過去を共有した人物の曖昧な記憶から想像するしかない。
何が言いたいかと言うと、それぞれが背負ってきた過去は本人にしかわからない苦悩の塊が、忘却というシステムで都合よく抜け落ちているけど、現在の自分に何らかの形で刻印として刻まれているのではないだろうか。それを解釈してそしてともに歩むという締めくくりはやるせなさを感じずにはいられなかったものです。
毎度毎度意味不明な締めくくりで申し訳ないですが、それを持ち味にどんどん突き進みますよ。
駄文マスターより愛を込めて・・・。