- 販売開始日: 2012/05/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-115613-2
雲霧仁左衛門(後)
著者 池波正太郎 (著)
尾張・名古屋城下で、五千両余を盗み出し、一人も負傷することなく逃亡した雲霧一味は、再び江戸で、数年後の盗みばたらきに備えて暗躍をはじめる。一方、何度も雲霧一味に煮え湯をの...
雲霧仁左衛門(後)
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商品説明
尾張・名古屋城下で、五千両余を盗み出し、一人も負傷することなく逃亡した雲霧一味は、再び江戸で、数年後の盗みばたらきに備えて暗躍をはじめる。一方、何度も雲霧一味に煮え湯をのまされた火付盗賊改方と町奉行所は、一味の探索に執念を燃やし、肉薄する……。雲霧仁左衛門は、胸に秘めた最後の盗(つと)めばたらきを成し遂げられるか? 稀代の大盗賊・雲霧一代の神出鬼没の大活躍。
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良いですね
2024/04/28 16:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰も殺さず傷つけることなく、有り金を盗む雲霧仁左衛門と火付盗賊改との虚々実々の争いです。 与力達が徐々に雲霧一味を追い込んで行く筆の流れはお見事です。
盗賊改方が憎い
2018/11/25 20:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻は盗賊改方の執念の巻。盗賊をじわじわと追い詰めていく様子が克明に描かれています。でも盗賊の雲霧一派を応援していただけに、すごくもどかしく、盗賊改方が憎く感じました。まぁそれほど感情移入できるほど面白かったということでしょうか。個人的には、やっぱりもっと雲霧仁左衛門の活躍が見たかったなぁ。
池波ファンタジー
2006/12/03 00:22
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こちゃまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸の越後屋善右衛門方における盗みを収めた二分冊の後編。追うもの追われるもの、それぞれの執念と美学に愈々決着がつく時を迎え、息つく暇も与えない展開からは目が離せない。巻末の解説を著者の書生をつとめたこともある佐藤隆介氏が書いておられ、こちらも色々と面白い読み物である。
その氏がこう記している。『男と女のかかわりあいは相変わらずむずかしい。それを少しでもうまく運びたいと思うなら、池波正太郎の小説を片っ端から読むしかないだろう』。池波作品には男女の機微が描かれることも多く、それは確かに粋と呼べるものではあろう。この雲霧仁左衛門においても首領の仁左衛門はあらゆる局面において焦ることも動じることなく、『そろそろ、な……』などと韜晦とも映る余裕を見せる。しかしこれは一刀流の達人であり稀代の大盗賊である雲霧仁左衛門の言葉なればこそ栄えるのであり、書類の提出期限に追われる会社員がこのようなことを言えば「書類じゃなくて辞表を書きたいのか?」と襟首つかまれんほどの暴言でしかない。池波正太郎の書く男女の機微に含まれる粋とは、自らの男っぷりを高めることによってできることではなく、お互いが正面から向き合ったつれ合いあってこその粋であるのではなかろうか。つれ合いは見つけたがさてどうやって正面から向き合うのか。そこにこそ池波正太郎の言う『女には惚れぬいてこそ』が生きてくるのだろう。
女に惚れぬくというのはかなりの難物だ。照れや見栄、恥ずかしさや移り気が邪魔をしてなかなかにできるものではない。しかし池波正太郎の小説ではこの様々な障害をいとも容易く乗り越えて女に惚れぬくことができている。剣と魔法の支配する架空の世界と同様の女に惚れぬくことができる架空の世界、このファンタジーこそが池波正太郎の凄味であり魅力であろう。ファンタジーは現実ではなく非現実であるが、現実を別の時別の場所で表すには失われた臨場を取り戻すために近しい感情の揺れ動きを与えてくれる非現実の力を借りねばならぬ。現実に近いところにあるしかし決して交わることのない非現実、これを現実の中にぽんと投げ込むことにより単なる事実の羅列ではない現実味を生んでいる。そして投げ込む非現実が人に対する人の思いであることが、律であって律でない柔軟性のある規則となって、読む者に人情というものをことのほか感じさせてくれるのた。
余談となるがこの雲霧仁左衛門は幾度となく映像化されていて、巻末解説にて佐藤隆介氏は本作の映画化されたものに対し『まったくの駄作』と斬って捨てておられる。この氏の解説は昭和57年5月に書かれたものであるから、平成7年の山崎努主演による雲霧仁左衛門テレビシリーズが含まれるものではないだろう。氏が憤慨しておられる気品のなさと格調の低さはこのテレビシリーズにおいて仁左衛門役の山崎努氏と吉五郎役の石橋蓮司氏の好演によって感じられぬものとなっている。本書を読んで興味をもたれた方へは一見の価値ありとお薦めしたい。