紙の本
極限状況下の青春
2018/05/04 07:40
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
東海大地震で崩れ落ちた駐車場を舞台に、生き残りをかけた高校生たちの戦いがスリリングでした。お互いへの憎悪と、他者への思いやりのぶつかり合いが感動的でした。
紙の本
この物語を閉じたとき、口の中に癒しがたい苦さが広がった
2005/06/15 07:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
石廊崎で高校生・宮下の遺体で発見される。同級生の相良優は、城戸率いる不良グループが宮下を自殺に追い込んだに違いないと見ている。優は担任教師の車で城戸を含めた同級生5人と葬儀に向かうが、その途上で大地震が発生。一行は地下駐車場に閉じ込められてしまう。密室と化した暗闇の中で、やがて最初の死体が見つかり…。
密室ミステリーとしての出来がどうなのか、熱心なミステリー・ファンではない私には判断がつきません。
しかし私は、高校生たちを主人公にしたこの物語の意外と確かな人物描写を強い興味を持って読み進めました。同級生の死に不審を抱き、なんとか城戸たちの尻尾をつかまえようと激昂する優。彼の焦りは少年らしい青さを持っていて、そこがまたこの物語を現実味のあるものにしています。
引率教諭・塩澤の描き方も無理がありません。不良グループの城戸と小谷、そして二人に不信の目を向ける優たち、この対立軸を極限状況の中で担任として何とか解きほぐそうと努める塩澤の姿が丹念に描かれます。証拠もないまま人に疑念をぶつけてはならないと諭す彼の言葉に、優ならずとも、「あの駐車場でのことを通して、先生が——失礼だけど——それほどバカじゃないんだなって分かりました(306頁)」という思いを抱くようになります。
しかしこの物語は、密室ミステリーの謎解きが終わった後も読者をおいそれとは解放してくれません。駐車場での殺人事件の真相だけでもやりきれなさが残るというのに、さらにその先に読者をもうひとつ別の真相が待ち構えているのです。
この物語を読み終えた時、日本の中学・高校という学び舎(まなびや)には、再生不能な状態が広がっていて、さらにこの先もその状態に劇的な変化が訪れることは残念ながらないのだろうという、実に暗澹たる思いにとらわれることになります。
真相を知った後に感じる救いのなさが、とても心に痛い物語です。
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あれは事故死なんかじゃない。親友の死に同級生・相良優は不審を抱く。城戸ら不良グループが関与しているはずだ、と。葬儀当日――担任教師の車で、相良・城戸を含む同級生6名が式場へ向う途中、大地震が発生!一行は崩落した地下駐車場に閉じこめられてしまう。密室化した暗闇、やがて見つかる城戸の死体……。極限状況下の高校生たちに何が起きたのか?
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大地震で崩落した地下駐車場に閉じ込められた高校生たち。そこで不良グループのリーダーが殺害される。殺される側に同情の余地のない物語設定での、そっとしておいてやりたいような犯人探し。最後に、も一つどんでん返しもあって、なんともため息しか出てこないような結末でした。
2005/12/9
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極限状態におかれた人間の心理はどうなるのか、ということに興味を惹かれたので読みました。登場人物みんながみんな弱くて脆い。けれど自分の信条だけを頼りに前進していく主人公のたくましさに胸を打たれた。ちなみにJR脱線事故直後に読んだせいかリアルに想像してしまってすごい怖くなった。
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「少年たちの密室」改題+版元変更。ノベルス所有してますが、了解した上で購入。この表紙、どうにかなりませんかね?あまり好みじゃないです。
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終盤は一気でした。でもそこまでがなかなかもどかしくて。地震によって閉じ込められた空間内の描写が私には非常にまどろっこしく感じられた。そこさえ通りこせば、後は驚きの結末に辿り着く。
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最後まで目を離せない展開だが、全体的に後味の悪さが残る。
中盤は読んでいてきつく、読後2日でも頭の中から消えない。
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なんだかひたすらやるせない。最後が最後だから一概に「よかった」「おもしろかった」とは言えないけど、「心に残った本」という言い方が一番自分にはしっくりきます。
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地震で崩れた出口の無いマンションの
地下駐車場で、人間がこんな行動を行うことが
果たしてできるのか想像さえできませんが、
その結末は確かに震災級かも。
力作だと思います。
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極限状態で高校生と教師はどうするのか。
地震が場所作りにしか活かされていない気がする。
実際閉じ込められたらもっとパニックになってもおかしくない。
あと状況描写がいまいちわかりにくかった。
塩沢のキャラ付けと真相は巧み。
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よくできたミステリだが、非常に重い作品でもある。どんでんを返すたびにひとつまたひとつと人間の醜さが明らかになっていく。途中で「もう、やめてくれ!」と叫びたくなるくらい。
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色々と居た堪れなくなるような内容だった。
普通にミステリーとしても面白いが社会の中にある理不尽さに真っ向から挑んでいる作品でもある気がする。
とても「Rock」な印象を受けました。
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特殊なシチュエーションのクローズドサークルもの。
途中で情景や会話にぴんとこないところもあったが、閉じ込められた担任と生徒達の関係が絶妙で、話が進むにつれ過去の事件の真相も紐解かれていく様がおもしろい。
そして事件後に見えてくる問題になんともすっきりしない読後感だった。
ちなみにタイトルは改題前のほうがよかったかも。
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古処作品は登場人物を頭に入れるまでにしばらくかかるが、走り出したら一気に読んでしまう。これもそんな一冊。
個人的に戦モノでない古処さんは初めて読んだが、問題提起とそこへの切り込み方はさすが。2005年の作品だが、震災、日本の“教育”と、2012年を予知していたのでは?と思えて仕方ない。
面白かったが、つい先日読んだ「ニンジアンエ」を☆3つにしたのでこれは2つ。