西洋の 歴史から学ぶ 差別かな
2023/05/15 21:39
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
「大航海時代から今日まで」の、主に西洋社会における人種主義(それは人種差別につながる)について概観したものである。いろいろな思想家が人種主義について述べており、その中には差別に反対の見解もあるが、その時代における主流の考えの影響を免れず、人種主義を肯定する記述も散見される。また、差別される側は、されている差別には抵抗しても、差別自体を悪としているわけでなない場合もある。このように、人種主義や差別にまつわる歴史は複雑なものである。
2.評価
著者の専門(プロフィールによると「フランス植民地史」が専攻)の範囲内で書かれていることは評価が分かれるかもしれない。すなわち、日本に関する記述が少ないと判断されるかもしれない。しかし、西洋社会における人種主義の歴史から翻って日本の歴史を思い返せばいいと思うので点数を減らさない。人種主義の歴史や歴史に複雑さを学べるいい本なので、5点とする。
3.追記
本書はジェンダー差別についても言及されている。重要と思われるのであえて特記した。
タイトル通りの1冊です。
2022/06/17 16:14
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルにあるように、人種主義の歴史を、西洋史専攻の現役大学教授の著者が、見事に文章をまとめて、岩波新書にふさわしい内容の1冊に仕上げた1冊です。
様々な人物が多く取り上げられているのに感心しました。当書を読み切り、大変勉強になりました。
まず目を通しておくべきもの
2025/03/28 12:49
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
異なる肌の色の人を差別するというのは人間の自然な本性などではなく、社会的に作られて再生産されていくものである。人種主義の歴史について広い視野で論じられており、このテーマについて考えるうえでまず目を通しておくべきものである。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人種主義について、わかりやすく解説されていて、よかったです。争いの原因となっている歴史が、興味深く読むことができました。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人種主義について、分かりやすく解説されていてよかったです。不幸な歴史を学びながら、現在に活かしていきたいです。
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投稿者:ta - この投稿者のレビュー一覧を見る
人種によっての差別の歴史など、いろいろと日本にいるとわからない部分を学ぶことが出来たので、いい勉強になりました。
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ナチの思想には先立つものがあり、ナチ独自のものはないというのが歴史研究では共通理解である。ナチズムのもとに極端に現実化したことはあるとしても、その時代を特殊なものと言位置付けてしまうと、いずれの社会も同じ意味地を歩む危険をはらんでいることに鈍感になる恐れもある。ナチズムを総体佳するのではない。それを特別視する呪縛から解き放たれる必要があると思われる。
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大きなテーマ以上に、有名な哲学者や学者の多くも時代の制約からは逃れられないというのがひしひし伝わり震えた。どれだけ先進的なことを言っていても、人種観はめちゃくちゃ差別的だったりする(それはある意味不可避でもあったと言える)
自分も、今の社会的には許容される(=誰かが誰にも気付かれずに傷ついている)発言を繰り返している可能性だってある。震えながら生きるしかない。
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筆者がフランスを中心としたヨーロッパの植民地史の研究家であるために、本国と植民地の関係での人種の説明である。したがって、アフリカとヨーロッパという関係を強く説明している。残念ながら日本の中における人種、あるいはアメリカ、ヨーロッパ、オセアニアにおける日本人と欧米人の関係から来た人種問題、さらにもっとも大きな出来事であるアメリカにおける人種問題をあまり扱っていない。
ヨーロッパの植民地史を人種問題とからめて知識を得たい人には役立つ本となるであろう。
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昨日購入した岩波新書の『人種主義の歴史』(平野千菓子)という本を読み始めている。
冒頭あたりに「生物学的には人間の種は一つであり、複数の人種はないはずである」
という文言に出会います。
私が常日頃思っている考えにぴったりの合致するので大変頼もしく頁をめくっております。
私の教科書ともなっている更科功『絶滅の人類史』によりますと、
700万年前に様々な種類の人類がいた。ネアンデルタール人もいた。
しかし、ネアンデルタール人は4、5万年前に絶滅し、
最後に生き残ったのは学名ホモ・サピエンスとよばれる私たち人類だけなのである。
ホモ・サピエンスはアフリカを起点に各地に移動した。北欧、アメリカ大陸南端、
中東、アジア、オセアニアと地上をくまなく覆い尽くした。
それは細胞、遺伝子分析などによって生物学で完全に証明されている。
しかしながら肌色、頭髪、目の色、言語、風習など様々な違い種分け、区別、差別化され、
更に居住地区、政治、国籍、教育、宗教などによって洗脳され、優劣がほぼ制度化されている。
昔、黒人は普通の人間より劣っているという考えが欧米などで広く信じられていた。
しかし、あるニューヨーク市長が「アメリカは移民の国である」と断言されたように、
黒人で、弁護士、科学者などを大勢輩出し、更には大統領までなった人もいる。
日本人だけが偉いのではない、大部人だけが素晴らしいのでは無い。
世界に住む各地域の人びとの能力はそんなに差は無いのだと思う。
ただ、食事、住居、衣服など生活環境の違いによって、
食べる事にに汲々とし、教育が十分に行き届かない所が多いのは現実である。
人種主義、差別主義…、
こうした他の人を見下すことない社会はいつになったら実現するのだろうか?
※索引があればな~
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「人種」は生物学的には存在しないが、人類学的には存在するらしい。つまり、社会的・政治的なものであり、「人種」に差別感情が加わると「人種主義」になるとのこと。日本では「人種差別」の方がよく使われるように思えるが、主に肌の色の違いを指す印象が強いため、それ以外の差別も含むという点で「人種主義」を使う方が適当なようである。
「人種主義」という言葉が誕生したのは19世紀末のフランスのようであるが(ちなみに日本に登場するのは20世紀末)、本書は15世紀末の大航海時代に遡ってその歴史を叙述する。現代的価値観から過去を裁くのは簡単ではあるが、その辺に関しては抑制的であり、全体を通して「人種主義」的な思想が生まれた時代を問うという姿勢が感じられる(尚、「進化論」に関してはダーウィンよりもスペンサーの方が先だったというのは知らなかったので、この辺は詳しく調べてみたい)。
啓蒙の時代を経て、19世紀になると「人種主義」的思想を裏付けようとする科学の役割が大きくなるが、それを求めた大衆も登場する。そして、国民国家の形成と共にナショナリズムが台頭してくるわけだが、当然のことながらナチスが取り上げられる。ただし、ナチの思想には先立つものがあり、独自のものはなく、ナチを特別視する呪縛から解き放たれる必要があるという著者の主張は傾聴に値する。また本来差別を脱却するはずの文化相対主義が、時代の変化に伴って逆利用されるという指摘も興味深い。
本書の難点としては所謂「女性差別」の視点が入り込み、インターセクショナリティに足を突っ込んでしまったため、結果として「人種」からやや話が広がってしまい、焦点が少々ボケてしまった点にあると言えるかもしれない。また、著者の専門の影響により日本に関する記述が殆どないのも物足りなさを感じる。とはいえ、歴史を語るひとつの切り口として、とてもよく整理されてまとまっているので、大変読み応えのある一冊ではある。
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マイノリティや歴史的背景を鑑みて適用されるアファーマティブ・アクションなどの制度に対して、逆差別だという主張がなされることや、被支配者側でありながら、支配者や宗主国側の思想や論理を内面化してしまう者がいるということがこの問題の複雑さを明示しているように思った。
近代社会がまだまだ歴史の浅いことにも気付かされる。今では考えられない思想だとしても、それはほんの2、3世紀前なのだ。私たちが今、正しいと考えていることもほんの少し先の時代では全く正しくないとされていることだって不思議ではない。
いろんな国でポピュリズムが台頭していることも、この問題とは切り離して考えられないのではないだろうか。
常に物事を批判的に見つめ、さまざまなな問題が絡み合う人種という概念がこの先どのような解釈や理解をされていくのか、自らも願うのみではなく行動しながら、注意深く観察していきたい。
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筆者は、本書が唯一のあるべき人種主義の歴史ではないと述べていて、やはりどの国の視点からどのような解釈をするかによって歴史や差別というものの捉えられ方は変わるのだなと思った。私自身まさか奴隷制度の被害者側である国の中にも奴隷制度があるなんて思いもしなかったし、中学生の歴史の授業では簡単に学んでいたものがとても複雑なものなのだと理解できた。