紙の本
大阪の本屋と問屋が選んだ ほんまに読んでほしい本!
2018/10/16 15:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
大阪の本屋と問屋が選んだ ほんまに読んでほしい本!2018年度 大阪ほんま本大賞 特別賞。この本の販売収益の一部で、大阪の子供たちに本が寄贈されます。
戦時中から戦後直後の大阪。さながら「お聖さん」版「この世界の片隅に」。初めは他人事のように思える戦争が、次第に音もなく身近に迫る様が市井の人からの視点で実に巧みに描かれています。お聖さんファン、小松左京さんならではのあとがきが。日本SFの巨人が語る「同世代の女の子文学」としての田辺聖子はこんなにもみずみずしい。何度でも読み返したいし、読まれて欲しいと切に願う。
紙の本
軍国少女トキコの青春
2023/11/30 11:08
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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前から始まり、戦中、戦後までを写真屋の娘武田トキコの視点で、戦時色が徐々に深まるなか、大阪に住む人たちの生活や、愛国心豊かなトキコがその時その時の出来事に何を思い、感じたのか、そして彼女の成長していく姿が描かれており、素晴らしいです。
電子書籍
繋いでいく風景と人々の気持ち
2024/06/03 06:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
今の時代にまで残る大阪・下町の人情から、次の物語が受け継がれていきます。全編を通して静かで力強い、平和への祈りに満ちあふれていました。
電子書籍
天満の写真屋の娘
2018/05/11 16:28
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投稿者:pope - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタばれあり。
天満の写真屋の娘の目から見た戦中・戦後の大阪。
戦時中であっても少女は夢を見るし、妄想もする。
「美しい」と思える人に憧れて真似してみるが大失敗w
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田辺さんは自分の親よりも20歳くらい年上で、生まれ育った時代も環境も全く違うのに、どうしてこんなに共感できるのだろう。この本に書かれているのは、どうも田辺聖子さんご本人が戦時中に送った女学生時代らしい。先日見た映画「この世界の片隅に」を思い出すような、「普通の」人たちの戦時中の生活が描かれる。知人友人に戦死者が出たり、空襲があったり、そんな異常な状況下でも、人は淡々と日常を営もうとできるものなのだなぁと思って読んでいたけれど、終戦後の章、とりわけ最後の1ページに心を打ち抜かれた。考えさせられたし、多くの人が読んだら良いのにと思った。
小松左京さんの後書きも面白かった。
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戦争の時代に子供~青春時代を過ごしたトキコが、世間の空気に何を感じ、どう思っていたかが綴られる物語。
やわらかい頭には、大人の言葉を通じて天皇万歳とか一億総玉砕とかいう言葉がするすると入り込み、トキコの思考をたどっていると当然の成り行きのように思えてくるから恐ろしい。そうやって、自分の思いや命、人生というものを顧みることを教わらなかった若者たちが、空に海に散ったのだと思うと・・・。大人の責任は重すぎるくらい、重い。
子供の将来を決めるのは、ある意味「今の大人」なんだな、と思う。子供自身ではなく。親や教師はもちろん、国を動かす立場にいるのも「今の大人」だ。誰が戦争を始め、誰が続け、誰が命じ、誰が支持したのか。
乙女になろうと奮闘するトキコの、けなげで(ちょっとおもしろくて)かわいらしい一面が、ぴかっと光って見える星のよう。
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田辺聖子さんの自叙伝的小説である。
その1 民のカマド<福島界隈>
その2 陛下と豆の木<淀川>
その3 神々のしっぽ<馬場町・教育塔>
その4 われら御楯<鶴橋の闇市>
その5 文明開化<梅田新道>
解説 小松左京
昭和3年生まれの大阪のお嬢さんが戦争という時代に翻弄されながら、女性・娘としてどのように戦争社会立ち向かってきたのか、ほんわかした雰囲気もあり、死と向き合う人生、そして、朝鮮人の当時の置かれた立ち位置など、本音で語れれている。
戦後の、民主主義的傾向強化という国の方針の大転換についても、一定の矛盾を感じながら、また、人間天皇に対する感じも、当時の世相を緩やかに描いている。
それは、お父さん、お母さんの平衡感覚の下で育った田辺さんの感性なんだと思いました。
大阪・河内生まれの私としては、親しみやすく、読みやすかった。
しかしながら、戦争がなかったら、もっともっと楽しい人生がおくれたに違いない。
絶対、戦争はしてはいけないということです。
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田辺聖子の自伝的短編連作。自身の少女時代を題材に第2次世界大戦前後の大阪の風景や市井の人々の様子を描いている。
戦争を背景とした小説、映画、ドラマ等は多いが、今まで読んだり観たりしてきた作品はなかなかその当時の生活を実感できなかった。
この作品は私の地元大阪が舞台であり、よく知る土地、場所が登場すること、また主人公の少女の目を通して観た「当時の世の中」を素直に表現していることで昭和初期の生活を肌で感じることができる。
また感受性豊かな年頃の少女がその世の中を、大人たちをどのように捉えていたかも知ることができる。戦争初期はまだ普通の生活を続け、また子供達は戦争する日本を当たり前に受け入れている。これが末期になると実際に空襲があり、焼け出され、と日常の生活ができなくなっていくこと、また終戦でものの捉え方が全く変わってしまったことなど当時の子供や若者たちがどのように受け止めてきたか痛感した。
田辺聖子独特の優しい文体でありながら、自身の経験を客観的にみつめ、書き表した当時の市井の人たちの様子が手に取るようにわかる作品である。
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戦中~敗戦の大阪の女の子の話。
おもいっきり軍国少女。
いろいろ憧れたり模索したり儚くなったり。罪はないよなあ。
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すぐ舞い上がったり憧れたり貶したり落ち込んだりする思春期は時代によらずって感じなんやな。敗戦の気持ちは汲みがたいものがあるけど、トコちゃんの昂奮するなアて気持ちが日本人の心になかったら、日本はこんなに起き上がらんかったかもなって思うとちょっとじいんときた。
にしてもトコちゃんアツい子やな、いや素敵やと思います。
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戦時中を生きた女学生の、日々のお話。
主人公が女学生というところが良かった。大人と子どもの狭間期から見える戦争は悲惨さや暗さばかりではなく、そのような状況下にあっても純粋な明るさがあった。
〈海軍さん〉への憧れから頭の中で巡らすアリエナイ妄想や、女学生ながらに宮本武蔵に染まる様子はいつの世のおんなのこも大体は通る道として共感できる部分であり、親近感が湧く。
読んでいると戦時中の時事や単語がたくさん出て来るので、調べたりもした。それは当時を知る上で参考になり、戦時下の大阪の様子を垣間見ることができる良き一冊と思う。
こまごまと出てくる地名を地図と照らし合わせ、主人公の足取りをたどることでより深く物語を楽しめた。知らずにいた戦争遺跡の場所が多くあった。
今年は戦後77年。
明治維新から終戦までの77年間と、さらに同じだけの年数が経つ節目のような年だという。その節目に、海外では再び戦争が始まり、日本国内でも国防のためと危険な考えを唱える人も散見されるようになった。
歴史は繰り返すというが、たとえ繰り返すような状況があるとしても過去から学ばなければ先人たちに対して申し訳が立たない。ただ繰り返すだけではなく、過去起きたことから学び、活かして対処していくことこそ本当の慰霊なのではないかと考える。
トキコにとっての清川少年の存在というのは、戦争がどのような結果をもたらすかということをもっとも身近な表現で、淡いながらも暗示しているものと印象深く残っている。
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戦後29年後にかかれた小説。戦時中の大阪のひとびとの暮らし、どんどん戦争の正当化を植え付けられていく子どもたち。戦い、死ぬことを美化され戦争だけが生きる目標とされていく人々。田辺聖子さんはコミカルな小説を書くと思っていたので、少し意外で、でもより戦争の怖さや深さを感じる作品でした。
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kindle。
田辺聖子の戦中、戦後の自伝的小説。
本人と同じく写真館の娘という設定。写真館の内情への興味もあって読みすすめた。残念ながら写真関係はほとんど描かれていない。それでもいい本ではある。
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「大阪に暮らす市井の人々が戦中・戦後をどう生きたのか。どんなことに喜び、怒り、心を震わせたのか。激変する社会の中で成長する少女の姿が活写される。」
(『いつか君に出会ってほしい本』田村文著 の紹介より)
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表紙の淡い絵が、「この世界の片隅に」の世界に似てる。
ただし、新米奥さんではなくて、日々成長していく思春期の女の子の日常のお話。ほのかに異性に憧れたり、女は損だと感じたり、仲のいい友人と憧れから教会に行ってみたり、と思うと、世の中の思想にどっぷりつかったり。そして、正直でユーモラスで、大阪風味。かいらしい、ってやつです。私らにもそんなころがあったかいな、と優しく思い出したりもします。
ただ、そこにモザイクのように戦時下のあれこれが挟み込まれていて、それが次第に膨らんでいきます。淡々とした筆遣いで、焼け跡の土が燃えつくされ、死人が腐り、どこの町にも異臭が漂っているとか、防空壕と機銃掃射とか、主人公や友人の父親との死別のことも描かれます。今、ガザの空爆が行われているのですが、テレビの中の色のない廃墟のような画像が、どこかリンクします。あと、朝鮮人が出てくるエピソードが、時期を置いて少しずつ出てきます。静かに語られているからこそ、ぼんやりと戦時下の日常が見えてくるような気がするのです。
解説は、小松左京さん。当時、少年の世界と少女の世界は全く交わらなかったという観点から興味深いものが書かれていて、大阪縁のお二人の深い交流を感じます。