紙の本
読むんだったら文庫本で
2020/04/04 10:35
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫本というのは、文庫オリジナルというのは別にして、基本的には単行本が出てから大体2年か3年経ってから刊行されると聞いたことがある。
作家の(というより純粋に村上春樹さんのファンという側面の方が大きいが)川上未映子さんが聞き手で村上春樹さんがそれに答えるというインタビュー集であるこの文庫本の場合、単行本が出たのは2017年4月。
その当時出たばかりの村上春樹さんの『職業としての小説家』と『騎士団長殺し』をテキストにして4つのロング・インタビューが収められている。
単行本の場合は出たばかりのエッセイと長編小説がテキストであったから、それは刺激的だったし、それから2年経って文庫本で読んだ時は正直色褪せたところもあったが、中には全然変わらなく、村上春樹っぽい(当たり前だけど)箇所もたくさんあった。
それは春樹さんがいうところの「信用取引」で、私という読み手が村上春樹という書き手を全面的に信用しているということだと思う。
そして、「文章自体はどこまでも読みやすく、素直なものを使いたい」という春樹さんの小説スタイルに共鳴しているのでもあるのだろう。
そんな単行本から2年が経って文庫本になったわけだが、この文庫本にはなんといっても「文庫版のためのちょっと長い対談」がオマケでついている。
そこでは春樹さんが「文藝春秋」の2019年6月号に書いた父親の話「猫を棄てるー父親について語るときに僕の語ること」のことが結構話されている。
さらにいえば、前期のベステセラー『ノルウェイの森』についても。
だから、こんなことを書くとおかしいかもしれないけれど、この作品を読むなら絶対文庫本の方がお得だ。
紙の本
信用取引
2023/09/01 08:39
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投稿者:みずたまり - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹の小説に出てくる女は、いっつも、主人公の男を苦悩させるためだけに使われてるよねー、と不満に思っていて、だから正直川上未映子さんがファンというのが少し不思議だったけれど、私自身も、不満ながらほとんど読んでいる読者ではあった。それがなぜなのか、この対談集を読んで、未映子さんが信用取引と言っている「眠り」という短篇を読み直して、目から鱗だった。これからは春樹さんの小説を、もっと好意的に読めそう(いや、今までも面白く読んではいたのだけど)。あと一作、二作、新作長編を書いてくれることを願っています。
電子書籍
インタビューの形
2022/07/25 06:22
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
だから、語りかけみたいな口調になっています。感想は、この作者は、かなり村上春樹さんのことが好き、なんだなぁ、ということが伝わる筆運びです。なんでも、10代終わりから……みたいで。
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村上春樹のインタビュー集。聞き手は川上未映子。
長編のインタビューというのも珍しいが、それが1冊に纏まるというのも、昨今ではなかなか無いことだろう……というか、村上春樹じゃなきゃあ1冊には纏まってないような気がする。
川上未映子の質問もユニークで面白かった。
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村上作品がどうしてこんなに他の作家の作品と違うのか。手法を明らかにしたところで、それをできる人はそうそういない。
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そうか、こういうタイトルだったんだ。村上春樹がどこかで書いていたのだろうか。川上未映子が前書きで書いただけだろうか。とにかく、情報量が多過ぎて、頭に残っていることがほとんどない。もう、知らないことが多すぎる。村上radioはまだ続いていたんだ。文庫版の付録を読むと、この2年で相当たくさんの仕事をされているとのこと。お父様について書かれたものは少し立ち読みをしたけれど、それ以外はほぼ気付いていない。雑誌まで追いかけていると身がもたない。まあ、とにかく文庫になったものだけは読み続けよう。あとは翻訳をどうするか。すでに何冊かはスルーしてしまっている。「村上春樹が好きなものは全部自分も好き」って言いたいところだけど、翻訳はどうも違うなあって思うことがあって、すべてはフォローし尽くせていない。「心臓を貫かれて」とかむちゃくちゃ良かったけど。「スタン・ゲッツ」の本は文庫になれば必ず読もう。本書と同時に「レンマ学」を読んでいて、地下2階の話が非常に興味深かった。何がどうつながっていくのかはわからないのだけれど。無意識のさらに奥を意識しようと思う。(意識できないのか。)本書を通して、「ねじまき鳥・・・」を再読しようと思った。ただ、このころだけは単行本を買っていて、持ち運びができない。枕元にどんと積もうか。あっ、それから、どうして文庫版の付録対談では春樹さんになったんだろう???川上未映子という女性にもちょっと興味がわいた。いつか読んでみよう。
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予想外に楽しめる一冊。作家同士の対談で、川上未映子の村上に対するリスペクトと深読みがわかる。
一方村上は、過去の作品につての記憶が薄れているとのこと。ありえそう。
作品への姿勢は、終始変わらない。70歳の村上の作品は、あと10年は楽しみたい。
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村上さんは、本当に誠実な方だな、と改めて思った。
川上さんの質問は、インタビューという枠を超え、作家としてその創作のあり方を「知りたい」気持ちそのままに、どんどん追求していく感じで、そこまで聞く?とハラハラするくらいだけど、村上さんがどこまでも答えてくれるからこそ、だと思う。
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村上春樹のインタビューとしては聞いてみたいことを聞いてくれていると感じた。まあ帰ってくる言葉はいつもの村上春樹さんの小説方法論でブレないといえばブレない。目新しさはそんなにないと言えばない。ジェンダーに関する部分は川上未映子さんならではのポイントだったのだろうけど、そこはある意味はぐらかされている印象。これは村上春樹さんの年齢を考えると突っ込んでも詮無いエリアの様な気がする。
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再読。やはり川上さんの予習量が半端なく膨大で恐れ入る。ファン目線と作家目線の両方からの遠慮のない質問が村上さんの答えを豊かに引き出している。村上さんも答えるのが楽しそうなのが伝わってくる。作家にとって書かれた小説がすべてであることはわかっているけれど、たまには小説家自身の声も聞いてみたいという欲求を十分にかなえてくれた。対談ではなくインタビューという形式なのがまたよかった。
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春樹&未映子さんの対談集。両作家とも好きなので購入。ちょうど『騎士団長』を読了直後で、裏話的なこともわかりとても良かった(^^) 鋭い質問も多く、さっすが未映子さん(ハルキストですものねw)と言ったところ…(*´꒳`*) ハルキ作品をもっと読みたいなぁと思わせる良書でした♪
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対談物をあまり読まないが、テンポよくスルスル読めた。
不思議と読みやすい。
鋭い質問をどんどんしていて、こんなふうに小説書いていたのかと感じることができた。
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いやあ、語ってますね、村上さん。川上さんが聞き上手なのか、村上さんが70歳を迎えて思うところがあるのか。今まではぐらかされていた様々なことを、川上さんがズバズバと切り込んでくれています。なぜ文壇や私小説が嫌いなのか。なぜ主人公は30代なのか。なぜ登場する女性が性的な役割を担わせられるのか。などなど。読み応えありました。しかも堅苦しくなく、ユーモア満載の軽快な会話の中で。
「物語」に対する村上さんの熱い思いにも、心を打たれるものがありました。本当に物語の追い求めている作家さんなんだな、と。なんだか『サピエンス全史』の「認知革命」を思い出しました。「物語」を創れることは、人類の根源的な力なんだという話。村上さんの次の「善き物語」を期待しています。
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重厚なインタビュー。
川上未映子さんは村上春樹さんの小説とその熱心な読者たち(或いは村上春樹読書としての自分自身)について鋭い考察がなされている。
p40『村上春樹をめぐる読書は「内的な読者」というニュアンスが強いと思うんです。面白い何かを外に取りに行くっていう感じじゃなくて、そこに行けば大事な場所に戻ることができる』
まさに熱心な村上春樹の読者はこの感覚が強いのだろう。
だから、原初的な、最初に村上春樹を体験した感覚を大切にしているし、まるで愛着障害かのように引きずってさえもいる。
従って、新しい長編が出るたびに村上春樹らしかった、とからしくなかった、とか言って満足したり、裏切られたように哀しくなることもある。
あの時読んだ村上春樹はもうここにいないんだ、とか。
川上未映子・村上春樹両者の物語の作り方が大きく異なる事も明らかになったように感じる。
村上春樹はこの本の中でも語っているように、「洞窟の中で語るストーリーテラー」的な語り部であるという点。
この点においては一種の集合的無意識が村上春樹という語り部を通じて春樹の小説という元型として表出していると考えることもできるだろう。
従って、世界の多くの人が共感可能となる交換可能な主人公が生まれる。
それ故にバルガス・リョサやガルシア・マルケスのような南米文学、レイモンド・チャンドラーやらサリンジャーのような北米の物語性とも連なっているのだろう。
一方で川上未映子においては、集合的無意識ではなく、個人的無意識に抑圧された葛藤や、実存が物語となっていそうだ。
p.234『何かものを書く時って、鮮烈な体験がベースにあったりしませんか。(中略)それらの関係を克服する行為だったりもする訳じゃないですか。-村上 そうなの?』
従って、両者は物語を書くにあたっての根底が大きく異なっている。
このインタビューの中で村上春樹は自身について『どこまでも個人的な人間だと思っている』と語っているが、およそ表現された物語は川上未映子の方がどこまでも『個人的』と捉えることができる。
とはいえ、これはどちらが優れているとか言う優劣の次元では比較できない。それこそイデアであるかもしれない。
ではなぜ、物語を求めるのか。
物語よりも、How To本や自己啓発本、株で儲けるテクニック云々が書かれた本の方が、役に立つではないか。
小説を読む理由がわからない、と言う人は一定数存在する。むしろ増え続けているとすら感じる。
しかし、物語には役に立つ・立たないとか、ある考え方が好きか嫌いかと言う二元論の次元を超えた力が存在する。
P.462『村上ー 今のSNSもそうだけど、みんな自分の好きな意見だけ読む訳ね。自分の嫌いな意見には悪口をいっぱい書くわけじゃない。そういうものに対抗できるのはフィクションというか、物語しかないと僕は思っている。』
物語を通す事で一定の距離が置かれて事象を眺める事ができる。
���じ文章でも自己啓発本やhow-to本、ヘイト書籍やそのカウンターヘイト書籍、Twitter等々の文章は唯一の立場に依って立つ他ない。
しかし、物語ではその構造から距離を置くことができる。
ほどよい母親と言ったのはD・ウィニコットだった。曰く、子どもはほどよい距離の中で安心感と自立欲求を満たすことが出来る。
物語を通して見ることで、自身の考え、筆者の考え、社会一般通念や価値観とをそれぞれ冷静に眺める事ができるようになる。
かつてニーチェもパースペクティブの重要性を説いていたように。
およそ、2010年代から徐々にパースペクティブやほどよさが損なわれ、よりわかりやすい極端さを求めるようになっていないか。
余裕よりも集約、寛容よりも排斥、科学よりも願望。
我々はスマートデバイスを手にしてプレモダンへ退行してしまったようで。
その他
嫉妬心について、牛河のセリフ。懐かしい。よく覚えている。
P185『「それは自分自身が欲しくて欲しくてどうしようもないもの、死んでも手に入れられないかどうかわからないものを、いとも簡単に手に入れている人を見た時に湧き上がる感情ですよ」
バーで飲んでいて、隣の女性と話しが弾んだと思ったら、さらにその隣の男性に話題を持っていかれ、一人で会計を済ませる感覚だろうか。
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面白かった。川上さんの鋭い質問、疑問を感じると諦めずに何度もぶつかっていく姿勢が新鮮で、村上さんが少し答えに窮している感じも初めて見ました。ライブ感が伝わってきて読み応えあります。
川上さんは小説家で元々村上春樹作品の熱心な読者とは言え、インタビューをする側の事前準備としてはこのレベルまで行かないと、深い話は聞き出せないんだと感じました。準備の質と量が凄いです。