紙の本
善と悪とは
2023/07/04 16:20
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
老親の介護で心身ともに消耗する家族。少ない人手と少ない報酬で働く介護職員。一方で介護事業で何とか利潤を出そうとする民間企業、なるべく福祉を切り下げたい政府がいて、老人の経済力から利益を引き出そうとする詐欺集団がいて……。
八方塞の世界で起こる被介護の老人の死亡。一見自然死のようでいて、統計的に大きな不自然がある。
それは善や救いなのか? 許されざる罪悪なのか?
罪を問う検事、罪を犯した者、どちらにも言い分があり、双方ともにどちらが正しいともあなたは言えない。
紙の本
時代にコミットした傑作
2021/01/23 19:17
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
少子高齢化の日本の介護の未来を目を背けたくなるほどリアルに描いたミステリー。社会から無情に弾き出された人間の過酷で脆い道程の描き方が秀逸。飾り過ぎないキャラに完全に感情移無理のないキャラ設定に完全に感情移入させられ、触れられそうなほどの距離の恐怖を犇々と感じた
紙の本
答えのない問いかけ
2023/06/06 17:41
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投稿者:mk - この投稿者のレビュー一覧を見る
介護問題は当事者にならなければなかなか知ることができない問題だと思っています。それでも、みんなが自分の問題として考えなければならないのですが、やはりつらい。そして、正解のない問題だと思いました。
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最近、めっきりミステリーを読まなくなったが、久しぶりに読んだ本作は掛け値なしの傑作。ネタバレになってしまいそうなので、多くは書けないが、ミステリーの枠を超えて、読者に訴えてくる厚みのある社会派作品だ。
冒頭で語られる言葉が、後半になって別の意味を持つところや、読者をアッと言わせる展開の構成力など、30代半ばとは思えない筆者の力量が伺える。今後の作品にも大いに期待したい。
個人的には、先日、上野千鶴子の本を久しぶりに読んだことや、自分の親が介護の必要な年齢に差し掛かりつつあることなどもあって、非常に考えさせられるものがあった。自分は"安全地帯”にいるとは決して言えないので、いざというときはどうしたらいいのだろう・・・今の日本の制度では不安だ。
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期待していたが面白くなかった。
介護の実態を描いているミステリ。伏線などは無いが登場人物が少ない事もあり犯人はすぐ読める。
主題はミステリでは無く社会システムの不備に置かれているが、内容は今更感があり作中でも語られている通り「分かっていたはず」。「半落ち」のような重厚感もない。
「王様のブランチ」で大好評という作品はだいたい面白くない。
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内容(「BOOK」データベースより)
社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今を生きるあなたあに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
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これは現代の黙示録です。
家族の絆をベースに犯罪が行われます。
ぐっとくる文章に魅かれ
どんどん読み進めていきました。
芯のある本を読みたい方におすすめです。
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第16回日本ミステリ-文学大賞新人賞受賞作
選考委員満場一致、大絶賛!
綾辻行人「掛け値なしの傑作。脱帽ものです」
近藤史恵「デリケートな問題を扱う公正さに驚嘆」
今野敏「構成の見事さにうまく騙された」
藤田宜永「作者の批評精神が素晴らしい」
人間の尊厳、真の善と悪を、今を生きるあなたに問う!
これが21世紀を引っ張る、骨太エンターテインメントだ!!
ある男〈彼〉が死刑判決を受けるところから物語がはじまる。
〈彼〉は43人もの人間を殺害した罪で裁かれるのだが、傍聴人によっては〈彼〉に救われたと感じる人間もいたのである。
この小説は日本の介護問題を中心に添えながら、性善説や死刑といった人間の抱える矛盾を炙り出し、問いかけてくる。
ミステリとしての仕掛けも非常に秀逸だと思う
(特に作者がなぜ〈彼〉という表現を遣わなければならなかったのか、
また登場人物に検察事務官が登場するのだが、彼の統計知識が契機となって物語が展開する部分など)。
〈彼〉の思想を批判することはできない。
……けれど間違っていると感じてしまうのは、これも同じ人間だからなのかもしれない。
ミステリ:☆☆☆☆☆
ストーリー:☆☆☆☆☆
人物:☆☆☆☆☆
読みやすさ:☆☆☆☆☆
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以前に介護職についていたため
分かる部分が多かったです。
すらすらと読めました。
よく市長さんとかが長寿の皆さんに
「これからも長生きしてくださいね」と
いってる姿が、敬老の日ニュースとかであるけど
いつも白けた気持ちで見ていました。
そりゃあ、立場上そういうコメントがふさわしいだろうけどね・・
テレビのコメンテーターなんかは
偽善的なことしか言いませんが
痴呆のかたの介護は壮絶です。
自宅介護なんて、簡単なことではないです。
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介護現場を舞台にして、絶対に殺人は犯してはいけない、人にしてほしいことをしなさい、の間の矛盾を描いた物語。
自分は延命治療なんてして欲しくない、と思うわけだが、その前にまずは介護する側の立場になるわけで、どうなるか不安ですね。。
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まず、ミステリーとしては、私はまんまとどんでん返しにやられた。
「あれ?あれ?」と何度も前の方を読み返し、「あー! そうか」と天を仰いだ。うまくミスリードするなあ。何度も読み返したくなる構成。
さて、本命のテーマに関して。
私は《彼》の思想に激しく共感してしまった。だから、逮捕後、大友検事と対峙するシーンでは、大友が「安全地帯からモノを言う偽善の人」に見えてしかたなかった。
《彼》が大友に投げかける痛烈な言葉は、日頃私が持っている疑問そのものだった。
他人の命を奪うことはすべて罪だというなら、死刑制度も同じことではないのか。かけがえのない命、と言いながら、特定の人の死を望むとはどういうことなのか。
高齢化社会はもうすでに到来している。これからもっと厳しい高齢化社会となっていく。世の中は高齢者であふれていくのだ。すべての人が健康で裕福であるべきだというのは理想論で、実際には二極化は進んでいくばかりだろう。いつまで理想論をふりかざしているつもりなのか、と、まさにロストジェネレーション世代の作者は問いかけてくる。
元総理大臣の失言が取りざたされたが、私にはどこが問題なのかわからなかった。健康な老人を殺せと言っているのではないのに。袋小路で行き詰まって、自分も周りも苦痛しかないとき、「死」は確実にひとつの救いになる。現代は人が死ななすぎる、と言ってもいいくらいだ。どうして尊厳ある人生の終わりが迎えられないのか。
「絆」というキレイ事で周囲の人間まで引きずり込んで共倒れになることがそんなに素晴らしいことなのか。
育児もそうだが、「人間の世話」には物理的に時間も手間もかかるのだ。そして身内であるからこその激しい消耗や失望もある。
介護のために、収入の道が閉ざされてしまう現状を変えて行かない限り、いつかほんとにこのような「ロスト・ケア」が待ち望まれるようになるだろう。
私の母は、自分も70歳の老人でありながら、老人施設でヘルバーの仕事をしていたことがある。入浴介助をしていたのだが、あるときしみじみと言ったことがある。
「死ぬのも大変なんだよ」と。もうこのまま静かに逝かせてあげればいいのに、というような人も、病院でかろうじて命だけとりとめて施設に戻される。戻ってきてもそこにあるのは苦痛の日々だけなのに。
「なかなか死なせてもらえないんだよねえ」と言っていたことが忘れられない。
他人の命を勝手に奪う権利がないのと同じように、他人の命を勝手に引き伸ばす権利もないんじゃないだろうか。
ふだんからいろいろ考えていることがたくさん盛り込まれた作品だったので、読み終わっても、いろんな思いが渦巻いて止まらない。
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最後にどんでん返しがあるのだろうと予測ができた。
映画『愛・アムール』を観た時期なので、介護のことを考えた。
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老人の経済格差は若者よりも顕著だ。何億とかかる高級な老人ホームに身を置ける者。かたや万引きを繰り返し寝食に困らないからという理由で刑務所に入りたがる者。
高齢化社会での介護制度による歪から起こった大量殺人が起きていた。それを統計学を持って割り出していく過程にわくわくした。
自分自身はどうだろう?もう遠くない将来、自分が認知症になり家族に迷惑をかけているのなら、こっそりと死に至らしめてほしいとやはり考えてしまう。
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考えさせられた。
自分の親が要介護になったときどうなるのだろう、とか。
これから先の日本にこの本の意味がもっと重くのしかかるだろう。
かなしい話でもあった。
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この作品では、人間の善性に関する二つの価値観が提示され、物語上、明白な勝敗は記されていません。しかしながら、物語中盤に突如出てくる、登場人物の一人が大金を寄付するエピソード。この、ある意味物語上無くてもいいような描写こそが、上記の価値観の対立に対する作者の見解又は祈りを示しているように思います。