この小説を昔話にできるかは私たち次第
2023/04/07 20:34
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投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小さい時から男兄弟の弟を何よりも優先する祖母。学校でも社会でも常に女というレッテルを張られ、違和感を抱き、たくさんの悔しい思いをしながらも懸命に生きるキムジヨン。これはそんな1人の女性の物語であり、多くの女性が辿ってきた物語でもある。
この本を読んで、愕然とするとともに、鳥肌がたつ場面がいくつもあった。
この本を読んで、女性に対するものだけでなく、様々な差別について考えるきっかけにもなったし、知らず知らずに差別につながる行動をしていないか自分自身を見つめることにもつながった。
この小説が、こんなひどい時代があったのだと次の世代に昔話として語れるよう、今を生きる私たちが、差別によって得られる優越感の虚しさに気付き、また差別をされる側の気持ちを考える共感力を身につけ、声をあげる勇気を持ち、変えていかなければと強く感じた。
21世紀、東アジアの性別ガチャの物語
2024/08/20 11:36
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投稿者:アレックス - この投稿者のレビュー一覧を見る
何の先入観も無く、偶然手に取った一冊。ただ、「韓国の現代文学かあ、面白いのかな。そういえば、韓国文学ってよく知らないけど」という気軽なノリだった。それが、読み始めたらぐいぐい引き込まれ、一気に読了。期待以上の、これはパンチのある作品である。
物語の舞台は大都市ソウルではあるものの、日本の、とりわけ地方に暮らす女性の身の上ばなしといっても過言では無いかもしれない。社会全体が女性を生まれた瞬間からB級市民として扱い、尊厳や人権を貶め、教育を与えず、ただただ婚姻によって従順な家政婦兼生殖者となることを期待し、男児を産むことだけを強要する。女性の側も「男児を産んで溺愛すること」だけが、自らの存在理由になっている。どうだろう、令和の日本でも、その辺の、ちょっと田舎あたりで見聞きすることとたいして変わらないのではないか。こうした社会にあっては、結局、女性とは、自らの人生を自らの意思にのっとって幸福に生きることが禁じられた存在であり、社会(男性)の問題を感情的に解決するための都合の良い道具として、消費・搾取されるだけの、いわば「家畜」。なんともおぞましい。
昨今、日本の各地方で、適齢期女性の首都圏への流出が問題化しているそうだ。こうした現象が起きている自治体のなかには、手厚い子育て支援を打ち出しているのに、なぜ?と頭を抱えているところもあるらしい。それに対する答えのヒントは、もしかしたら本書のなかに見つかるかもしれない。感受性を持って、刮目せよ、だ。
このような作品を勇気を持って世に送り出した韓国の文学シーンに畏敬の念を覚える。
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投稿者:ちひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
そう思ってしまうところが怖い・・・
今の日本では、男の赤ちゃんを優先するということは考えられないけど、私が子供のころはにはまだ聞く話だった。
今でも跡取り息子という言葉が残っているので、偏見は消えてないんだろう。
顔のない女性の顔
2023/04/07 07:09
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
単行本が文庫化される時、
表紙の装幀が変わることがよくあるが、
韓国で130万部を超えるベストセラーになり、
日本でも単行本で20万部を超えるヒット作となった、
チョ・ナムジュの『82年生まれ、キム・ジヨン』の場合、
表紙の装画を変えることなく文庫化された。
イラストを描いたのは榎本マリコさんで、
その「顔のない女性の顔」がこの物語を端的に言い当てているといえる。
つまり、この物語は
韓国で82年に生まれたキム・ジヨンという女性が
どのようにして育てられ、
どのような社会環境で生き、どんな家庭をつくっていったかを描いたものだが、
それは同時に現代を生きる女性一般に共通する
悩みであったり怒りであったり悲しみであったりを
表現している。
「顔のない女性の顔」に、もしかしたら読者であるあなた自身が
はまり込んでしまう可能性がある。
そうすれば、タイトルだって「〇〇年生まれ、〇〇 〇〇」であっていい。
主人公であるキム・ジヨンが女性である故に虐げられいくのは
韓国の女性だからではない。
おそらく日本の女性もまた同じような男性との格差に悔しい思いをしてきただろう。
男性だって、そんな数多くの現象を
時にリアルで、時に社会的な事件として目にしてきたはずだ。
だから、この物語を読んで「よしっ!」と立ち上がるのは女性だけではない。
男性たちが立ち上がるためには、
まずこの物語を読むことから始めたい。
男性たちなら、表紙の女性にどんな顔の女性をはめ込むだろうか。
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昨年ハン・ガンがノーベル文学賞を受賞して話題になったが、考えてみるとわたしはいままでに韓国文学を読んだことがなかった気がする。そこで今回は買ったままずっと読んでいなかった『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んでみた。今作ではキム・ジヨンという1人の女性の半生を通して、現代の韓国社会におけるジェンダー意識や女性差別を浮き彫りにしており、小説というよりは小説の形式で描かれた社会問題にかんするレポートのような趣が強い。そもそも「キム・ジヨン」という平凡な姓名が示すとおり、本作では「ふつう」の人生を歩むなかでさまざまな困難に直面するということを描いているため、小説としては派手な展開やエピソードがなく、ややおもしろみに欠ける。もちろん作品としての意図はわかるのだが、個人的にはまずその点に引っかかって高い評価を与えることができなかった。いわゆる「社会派小説」のように、深刻な社会問題を取り入れつつも本来の小説的なおもしろさと両立させることはできるはずである。さて、ではその社会的な要素についてはどうかというと、これもなかなか難しい。もちろん全体的に意義じたいはあったと思うし、わたし自身も韓国社会にそのような問題があるのか、日本でははたしてどうであろうかと考えさせられた。ただ、読んでいてどうも「余儀なくされた」ことばかりではないようにも思った。つまり、キム・ジヨンがみずから進んでその道を選んだ場面も何箇所か見受けられたように思う。自分で選んだ道だからそこで出逢った困難もすべて自分で背負うべきであるとは思わないが、そうはいってももうすこし自分の責任を顧みるような描写があってもよかったのではないか。わたし自身は日本社会で生きる男性であるが、男性は男性でやはりマチスモのような問題を抱えており、実体験上もそういった問題に出くわしたことがある。そういうときに社会だけが悪いとは思わないし、そういうふうに考えるべきであるとも思わない。もうすこしキム・ジヨン「個人」として社会に接続する部分が描写されていればよかったと感じる。あるいはそういう個人が見えないというところも含めて社会の病巣を描いているのかもしれないが、そこまで来るとやはり小説では描写しきれないのではないか。意慾的なテーマを小説として十分に昇華できていないような印象を受けた。
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キム・ジヨン氏のカルテという形で書かれているのは、最初は感情移入できるかな?と思ったが、そもそも感情移入するための小説ではなかった。
自分も経験してきたことがこの形で書かれることで、自分が経験してきたことや当然と思ってきた価値観を客観視でき、違和感を感じるようになる。
違和感、それはすなわち怒りだったのかもしれない。それすら気づかないように構成された社会の中で生きてきた。
今、違和感や怒りは声に出していいことを知った。
その声は相手を叩くものではなく、自身が持つ違和感に声を上げ、互いを尊重し、新たな形を作り上げていくものでなければならない。
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韓国の歴史にも無知だし、韓国ドラマでしか韓国という国を知らなかった私は驚きの連続だった。
なんというか、女性蔑視がひどくてびっくり。
兄や弟を学校に行かせるために働くって何?
なんで女というだけで、そんな言われ方されないといけないの?衝撃だったけど、ちょっと待て。
日本でも程度の差はあれ、同じではないか。
男女平等だとは思わない。
体の作りがそもそも同じではないから何もかも、平等にしろとは思わないけど、もっと女性を一人の人間として考えて、同じ人間なんだと思って欲しいと思ったなぁ。
男性にこそ読んで欲しい本かも。
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冒頭、主人公が夫と幼い娘とともに、秋夕(旧暦の8月15日。里帰りして先祖の墓参りをするのが恒例とのこと。日本のお盆みたいなもの?)夫の実家を訪ねるあたりで、恐怖・嫌悪のような感覚が軽い吐き気のようにやってきた。
里帰りでつらい目にあった経験があるわけではないが、私は父が長男の三世代同居の家に育った。物心ついた頃から周りにあった、女性にのしかかってくるもの、「女性の役割」を果たせるかどうか、その分野で使えるやつなのかどうなのか、で全てが決まってしまい、それ以外の私には何の価値もないような空気が、とにかく怖いのだ。
だから、その辺で話の続きは一旦置いておいて、巻末の解説を読んでみた。それから読み進めた。
主人公キム・ジヨンが物心ついた頃から、子育てに専念するようになり、そして、心に変調をきたすまでのことが淡々と描かれていた。
多くの方が既に書いているとおり、ジヨンの母・オ・ミスク氏の強さ、しなやかさが何とも印象的で、救いのようにも感じられる。
でも、彼女が、身ごもった3人目の子どもが男ではないという理由で、堕胎をする場面は、ただただ悲しく衝撃的だ。そして、その直後に、当時、産児制限政策の下で、性の鑑別と女児の堕胎がおおぴらに行われていたこと、三番目以降の子どもの出席比率は男児が女児の2倍以上だったことに触れられる。あらゆる場面で、この物語はフィクションであっても決して絵空事ではない、と突きつけてくるのが、この作品のすごみだと思う。
ジヨンが直面する女性だからのあれこれは、小さな針のようなもので、夫の実家への里帰りのようにものすごく心当たりのある話も、私はそういう目には運よく会わなかったというのも、あった。ただ、その小さな針が次々に刺さってくる息苦しさは、ずっと前から知っていたように思う。
オ・ミスク氏の話では、ジヨンの姉・キム・ウニョンの進路に意見をいうところも印象的だ。子どもを育てながら働くのに教師以上の職場はないとして地方の教育大学を勧めるのだ。姉にはほかに将来の夢があり、部屋には世界地図が貼られていて、行きたい国にシールが貼ってある。姉に私にはほかに夢がある等と言われた母親は、自分が間違っていた、勉強をがんばりなさいと言う。
私は、女性であることのハンデができるだけ少ない職業の中で、自分にできそうなものを選んだ。やりたいかどうかはほとんど考えなかった。私に20歳前後の娘がいたら、私と同じような考え方で進路を選ぶように言うだろうか。私にできなかったことをしてほしいと願うだろうか。ともあれ、若い頃のその選択の延長線に今の私があって、たまには読みたい本を読んで好き勝手できる生活をしているのだけど。
巻末の解説では女性差別やミソジニーにとどまらず、さらに視点を広げて、マイノリティへの支援とそれを理由とする攻撃や社会の分断についても少しだけ触れられている。私も、マイノリティでありながら、マジョリティでもある。
こういった本が出版され、多くの人に共有されること、それだけでも大切なことと思う。それは始まりにすぎないということを理解したうえでだが。
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かなり前に話題になっていたので文庫化に伴い読みました。読み終わってすぐに#metoo運動を思い出したけどやっぱり意図的な感じではそうか。女性差別をわたしはあまり感じないで生きてこれたけど、それは多分俗にいう世間が求めて来た女性として生きてきたからかもな。。反省。
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女性として生きていることの困難さ、事あるごとに対面してきた不平等への憤り、それらが声高にではなく、まるで何かの報告書のように淡々とつづられている。
私は、私たちは、これら当然のようにされてきた行為や言動をもう甘受することはない。これは、多くの女性にとって決意表を促すものとなるはず。
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読みやすい。
出産できるのが女性だけであるという生物学的事実に加えて、男性のみが兵役の義務を負うという韓国特有の事情を背景にしても、キム・ジヨン氏の人生はあまりにも過酷だ。
現代社会における分断が淡々とリアルに描かれていて、フェミニズムだけにとどまらない、弱者の生き辛さが言語化されている様は圧巻だと思う。
この手の本は、本来読んで欲しい層には読まれないもんだと思ってたので、ここまで売れて、話題になったことが、女性としては素直に嬉しいです。
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できるだけ多くの人に一度は読んでほしい。何を感じるかはその人次第だが、社会における男女の生き方についてなにかしらの気付きを与えてくれるはず。
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男尊女卑が根強く残った社会に翻弄される女性の話。
すっきりした解決策が見出せず、結局は女性に負担がかかってしまうところも日本社会も同じだと思いました。
制度だけでなく、国民の価値観がアップデートされなければ変わらない問題。世代間の価値観の違いも大きく、根深い問題だと思います。
果たして、世代交代しても解決する問題なのか。考え続けなければいけない問題だと思います。
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グロい……ショックな描写がいっぱいあって陰鬱な気分になる……けど、実際に起こってることなんだよな
韓国ってこんなに極端だったのか、意外だ
一括りに男尊女卑と言うのも違う、、
時代が違えば産まれてくることも許されない性別なんだって怖くなったし、当時優秀だった女性はどんなに歯がゆかったんだろうなって思う
自分が出産する時にこれを読んだらどういう感想になるのか気になる
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韓国で起きていることなのに、日本のことを語っていることのようにも思える箇所が多々あった。客観性を持って近代社会を振り返れる作品でした。