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紙の本
好きな絵本がさらに魅力的になるエッセイ
2010/03/01 13:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nikoniko - この投稿者のレビュー一覧を見る
江國さんの小説の空気感が好きです。
童話のようだ、と感じる場面も多いのですが、そういえば絵本も出されているのでした。
この本は、絵本好きな江國さんの書かれた、絵本にまつわるエッセイ。
「MOE」に連載されていたエッセイなので、読んだものもあったのですが、江國さんの趣味とやっぱり合うなぁと思いました。
まず、江國さんがフランシスに似ているというところから親近感もてます。
「理屈っぽさと歌をうたう癖は、どうしても他人事とは思えない。」そうです。
今一番好きな絵本が『サリーのこけももつみ』で、子どもの頃好きだった絵本がマーガレット・ワイズ・ブラウンの本という点も似ています。
江國さんのエッセイを読んで、借りてみた絵本は『レナレナ』
オランダ絵本なのですが、絶版になってしまっているようです。
淡々とした中にユーモアが隠されていて、江國さんの小説に通じるものがありました。
「説明しすぎないところがいいのだ。作者といえども登場人物のプライヴァシーは尊重した方がいい場合もある、と私は思う。」
と、この絵本について江國さんが書かれているのを見ても、感じます。
他にも読んでみたい絵本が見つかったので、順に読んでみたいです。
それから、巻末には対談が載っています。
山本容子さんとの対談ではっとした一文は、
「絵本を自分で読もうとすると、まず文章を読んで、その説明のように絵を見なければならなかったりしますが、人に読んでもらえば同時進行になりますよね。その臨場感がすごく好きで(以下略)」
読み聞かせ=絵と言葉が同時進行=臨場感
これまで読み聞かせはいいよーと絵本の専門家に言われたどんな言葉よりも、ずしーんと響きました。
読み聞かせをしてもらって絵本好きになり、作家になった江國さんの言葉だからかな。
五味太郎さんとの対談では、
「子供の複雑さを経てシンプルなものを獲得してきた人は、子供の文化について、ごちゃごちゃ言わないと思う。
何かしてあげることをやめると、子供は解放されるんだよ。」
という五味さんの言葉が印象的でした。
紙の本
絵本っていいもんだ
2003/03/31 16:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紫乃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もう小学校を卒業してからは絵本を全く読んでいなかった。絵本は子どもが読む本だと決めつけていたし、周りに絵本をよく読む友達もいなかったから。でも、この『絵本をかかえて 部屋のすみへ』を読んで、絵本は誰が読んでも楽しめて、心を癒してくれるんだと感じた。この本を読んでからは本屋さんに行ってもついつい絵本を見に行ってしまう。絵本にもいろいろあって、なんで自分は今まで絵本のすばらしさに気がつかなっかったんだろうかと言ってもいいくらい。
細かい字を読むのがイヤで本を読んでいない人にこそこの本を読んでもらいたいと思う。
紙の本
「絵本に対する思いだけはちゃんと語っておこう」という彼女の自意識。
2001/03/11 17:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の江国さんは絵本を決して「子どものための本」とはとらえていないが、この優れた本のタイトルは、子どもの原型を表わしているようで私は好きだ。子どもの原型は成長した大人の原型にもつながっているから、この言い方で許してもらえると思う。
少し前まで、日本の家には薄暗がりが多かった。部屋の中央にはぼんやりと光があったけれど、すみっこの方は昼間でも何とはなしに暗い。その暗がりがいくつかの物語を生みだしてきた。子どもの原型も大人のそれも、薄暗いすみっこに呼び寄せられる。
「部屋のまんなかで遊びなさい」
と、母親からよく注意された。江国さんのご実家の住宅事情がそういうことだったかは分からないが、同じ注意を母親から受けたと「あとがき」にある。
彼女は、まんなかとすみとでは時間の流れ方も空間の質も全然ちがう、絵本のなかのそれとは、あきらかに部屋のすみの方が近い、と書いている。
部屋のすみの薄暗がりでひざをかかえるようにして座り、その上に絵本をのせて小さな宇宙に入っていくような姿が、この時間には確かにふさわしい気がする。
子ども時代に楽しんだ記憶と、成長してから出逢ったものと、自分の血肉になってしまったように感じられるという絵本の数々がエッセイに綴られている。
「この本いいよ」と人に薦める場合もあるが、読書の趣味というのは極めてプライベートなものだ。「本とこのように過ごし、本をこのように愛した」という内容は、読み進めていくと、人の秘密を覗きこんでいるような感じすらして、気恥ずかしくもある。
と同時に、とても私的なものだという前提があるからこそ、江国さんの表現には小説にない力強さがある。力強さというのか、「審美眼で選びとったものに対しての執着」とでもいうのか、さらりと水が流れていくような作品世界にはあまり見られない「欲」とも呼ぶべきものが見え隠れする。
それを「愛」と言ってしまっていいものか。頑固とも取れる「思い」が、江国香織という人の自意識の存在をアピールしているようなエッセイだった。
素敵な絵本がたくさん選ばれている。センダックやビアトリクス・ポター、ブルーナやガブリエル・バンサンといった有名なロングセラーに加えて、1960年代に刊行されていたトッパンと講談社の童謡絵本、邦訳がないグスタフ・ドレなどのお蔵だしもある。
絵本というものの豊かな広がりと味わう喜びを受けとめて、とてもハッピーになれるのだ。
エッセイのあとに付された絵本作家・五味太郎氏と山本容子さんとの対談も、絵本がどう作られていくかが引きだされていて興味深い。絵は描かないのかと聞かれた江国さんが、五味氏には「家ではよく描くんですけど、とても人に見せられるものじゃないです」と答え、山本さんには「私は全然…」と答えているのだが、その相反する答にも、頑固なニュアンスの違いが出ている。
「こんな素敵な絵本たちを子どもだけに楽しませておけるか」 そんな気にさせられる1冊である。
紙の本
本を読む能力
2001/02/28 16:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:麒麟 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『絵本を抱えて部屋のすみへ』では、江国さんが、じつに多くの絵本を紹介してくれている。その中には、読んだことのある本もあれば、タイトルすら見たことのない本もある。
ただ、この本を読んで思ったのは、人には文章力があるように、読書力というものもあるということ。たとえば、自分も読んだことがある絵本についての、江国さんの文章を読むと、自分の読書力のなさにがっくりする。その本の持つ、「すてき」をたくさん発見し、感じとることができる江国さんだから、彼女の書く小説もまたすばらしいのだと納得した。
前に、京極夏彦さんが、つまらない本など存在しないと、雑誌のインタビューで語っていたことがある。もし、自分がある本をつまらないと感じたら、それは、自分にその本の面白さを読み取る力がなかったということだと、そのようなニュアンスのことを言っていたと思う。
私が、『絵本を抱えて部屋のすみへ』を読んだときに感じたのは、まさにそういう力のなさだった。逆を言えば、今まで読んだことがある本でも、読書力のある江国さんを通して見ることで、さらなる発見があるということである。とくに、今まで、いい絵本に出会ったことがないなどと言っている人。ぜひ読んでみては?
紙の本
2000/12/17朝刊
2000/12/26 15:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人気作家による、絵本についてのエッセー。「うさこちゃん」で知られるディック・ブルーナ、圧倒的な絵の迫力で見る者を圧倒するグスタフ・ドレら、著者が幼少期から親しんできた絵本への思いを、三十五編の文章にまとめあげた。
著者の絵本についての知識はかなりのものだが、文章は好事家的な冗舌とは無縁で、作品世界にそっと寄り添うようなやさしさがある。読むうちに、自分の子供時代の心境がよみがえってくるような本だ。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000