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特別な女性の生き様
2023/01/01 04:12
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投稿者:Hoyobo - この投稿者のレビュー一覧を見る
楠木健「戦略読書日記」の中で紹介されてたので戦略ストーリーの観点からも関心があり読むに至った。実際に読み始めると、この主人公の人生に魅了されていく。当然ながら筆者の筆の力もあると思う。今の時代では許されないことも多いので、こんな方はもう出てこないけど、そこに少し寂しさも感じる。
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かつて「空飛ぶマダム」といわれた女性がいた
2021/06/08 15:54
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『女帝小池百合子』で第52回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した気鋭のノンフィクション作家石井妙子さんが2006年に発表した、デビュー作。
副題に「伝説の銀座マダム」とあるように、この作品は京都と銀座に「おそめ」という名前のバーをつくり、昭和30年代前半この2つの店を飛行機で行き来し「空飛ぶマダム」と呼ばれることもあった上羽秀(うえばひで)という女性の生涯を描いた力作である。
石井さんはこの作品に執筆に5年もの歳月を費やしたといい、取材の時点ではまだ秀さんは存命中でしばしば京都での住まいを訪ねたという。
秀さんは大正12年生まれで、亡くなるのはこの作品が上梓されたあと2012年で89歳の生涯であった。
もしこの作品が秀さんだけの評伝であれば、食指は動かなかったかもしれない。
もう一人の人物の存在が、読んでみたいと思わせた。
それが秀さんが生涯愛し続けた男、俊藤浩滋である。
俊藤浩滋といえば、かつての東映ヤクザ映画を支えたプロデューサーとして有名で、当時の東映映画のほとんどにクレジットされている。
そして、あの藤(現富司)純子の父親としても知られている人物だ。
では、秀さんが藤純子の母親というと、そうではない。
俊藤さんが秀さんに接近した時にはすでに妻子がいたが、それを隠して秀さんと結ばれることになる。
さらには、ほとんどヒモのような生活を送りながらも、秀さんは俊藤さんと別れることはなかった。
一人の女と一人の男。
戦後まもない頃に出会った二人がどのように時代を切り開き、そして幕をおろしていったか、石井さんの労作の賜物のような評伝だ。
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天賦の才
2020/06/28 20:13
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投稿者:ちぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
競争戦略を本分とする楠木建が自著『戦略読書日記』の中で「改めて『商売は理屈じゃない』というどうしようもない真実をイヤというほど思い知らされた」と脱帽した一冊。
「おそめ」と呼ばれた祇園の芸妓が天賦の才と強運を味方にして、昭和財界の大御所や文豪たちが集う銀座のバーのマダムとして一斉を風靡する。当時は「癒し」なんていう言い方はなかったと思うけれども、おそめが殿方たちに提供していたものは間違いなくそれ。川端康成、白洲次郎、小津安二郎らが通ってしまうほどの癒し。しかも、その提供を「仕事だと思ったことがない」と言い切ってしまうのだからまさに天性。
バーのマダムをやるために生まれてきたのではと思わせる彼女の一生が、著者の抑えた筆致で活写される。その頂点への駆け上がり方の鮮やかさだけでなく、その後の凋落の哀しさも含めて。ノンフィクションの傑作。
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会いたかった
2022/12/31 04:36
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投稿者:ママさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
もう少し早くこの本を読んでいたら探して会いに行っていた様な気がします。
素敵だな。とても魅力的な女性を感じました。
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興味深かった
2020/10/26 12:18
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投稿者:creammochi - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白かった~取材力がすごい。気持ちは☆4.5です
よしゑさんの呪いの話が印象に強く残りました。
表紙のおそめさんがきれいで魅力的。お会いしてみたい。
寺島しのぶさんと五代目尾上菊之助姉弟は俊藤さんのお孫さんだと
今知ってびっくり!再読の際はまた見方が変わりそう
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな女性もいたんだなと思うと、なんとなく昔の時代を感じとることができたような気持ちになり、しんみりしました。
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戦後から昭和30年代まで、京都と東京にあったバーおそめは、
著名人(男性)で賑わい、その時代のHUBみたいな役目をしていたのだなと感じた。
そして、客が客を呼ぶ、お金がお金を連れてくるといったような場所でもあったのだろう。
連鎖が次の連鎖を呼ぶように。
おそめさんの全盛期に会ってみたかったなと思う。
人をとらえて離さない、「人気」の正体っていったいなんだろう。
「男に好まれる女の魅力は、女には理解されない」
といったことが、どこにいても同業者、同性の嫉妬を買ったことに現れているが。
人生はいいことも悪いことも半分ずつなのだなと感じる。
おそめさんは稼いでも、いろんなところでチップをばらき、金はあるだけ使ってしまう。
内縁の旦那が原因で、家庭や類縁関係は複雑だった。
また、興隆を極めたバーおそめは
「屏風とお店は大きければ大きいほど倒れてしまう」、
「おできとお店は大きければ大きいほどつぶれる」
というたとえどおりになってしまった。
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人を「もてなす」ということ
仕事をして「お金をもらう」ということ
一人の人を「愛し続ける」ということ
小説では得られない、心に迫る感じ。
誰かと強くつながりたい、と最後には思わせる本だった。
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祇園の元芸妓さんの半生記。
清楚な見た目と違い、飛行機が珍しい時代に京都と銀座を飛行機で行き来したり、銀座でライバルとやりあったり…と行動は大胆である。
その一方、異性についてはひとりの男を愛し続ける古風な一途さがある。
そのバランス感覚に柳のようなしなやかな強さを感じさせる。
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実在の人物について書かれたもので、これ程までに曇りのない目、寄り添うような温かな目線で書かれたものを、私は知らない。
白州次郎が通い詰め、川端康成がこよなく愛したバー「おそめ」のおそめママ。川口松太郎が彼女をモデルに描いた『夜の蝶』は一世を風靡し「夜の蝶」は華やかで妖しい夜の女たちの代名詞ともなった。その「夜の蝶」でありおそめママであった上羽秀なる女性は、文壇バーの世界の頂点を極めるに相応しい美貌と知性の持ち主であったことは勿論だが、世に知られたイメージとは正反対といえる素顔を併せ持っていた。その素顔が、著者のこれ以上ない程の丁寧でゆっくりとした文章で浮き彫りにされていく。
「夜の蝶」なる言葉にまつわる苦い思いが、私にはある。
Aさんは、59歳のケアマネジャーで私の部下だった。プロレスラーだったご主人を若くして亡くした未亡人でもあり、三味線と小唄を嗜み、訪問先のお年寄りに請われると一曲披露して帰ってくる、そんな異色のケアマネだった。半年前、定年まで1年を余し「これからは趣味に生きたい」と退職する事になったAさんを、後任として入った若い社会福祉士に紹介した。ひと通りの紹介の台詞の後に、「“夜の蝶”になるんだよね、Aさんは」と言った私のひと言に彼女はキレた。退職後は趣味の腕を磨き、やがてはお座敷デビューをも目指していたAさんは、本気とも冗談ともつかぬ調子ながら、「“夜の蝶”になるのが夢なの、ワタシ」と自慢していた。目をキラキラせながらそう話していたのは、他ならぬ彼女自身だったのにだ。
人からはそうは言われたくない。この言葉に込められた危険なニュアンスに私は無頓着すぎたのだった。
今は京都に隠棲する主人公の、「夜の蝶」であった過去をある意味で暴いてしまうことは、一歩間違えば下衆な暴露話に成り下がってしまう危険を孕んでいる。事実、今更書くことに抵抗を示す主人公の関係者も居たという。
毎日新聞の囲碁欄の記者という、これまた異色の経歴の著者は、写真を見る限り和服の似合う知的美人だ。彼女が、おそるおそる主人公を訪ね、「この箱は棺だ。中には、おそめ、と謳われた女の亡骸がいっぱい詰まっている」と書き著した、夥しい数の写真が詰められた小箱を見せられた場面から、この著者をしてはじめて描きえた真実の物語ははじまったと言っていい。
大宅壮一文庫は、物書きや研究者には欠かせない記事検索目録と膨大な雑誌の蔵書を誇る特異な図書館だ。また、優れたノンフィクション作品に贈られるのが大宅壮一ノンフィクション賞なのだが、『おそめ』はその年の最終候補にまでなった。一読すれば、著者が『おそめ』を書き上げるために、やはりこの大宅文庫の記事検索を活用したであろうことは明らかだ。昭和30年代を中心とした時期の膨大な数の「おそめ」関連の記事が引用されている。
しかし誠に皮肉なことに、引用されている数々の主に週刊誌の記事は、著者の目線とは正反対の色眼鏡に満ちている。あらかじめ、夜の蝶とはこんなものという偏見に溢れた決め付けと、結局は書く対象を揶揄するしかない、最早あわれとさえ思える雑誌記事の下劣性を露呈している。
著者の石井妙子は、まるでレンズに張り付いた色セロファンを一枚一枚丁寧に剥がしていくように、世間に流布してしまった虚像の虚を剥ぎ取っていく。ゆっくり優しいその真相への迫り方、描き方は、物語の素晴らしさを超え、読むものに著者への敬意を抱かせずにはいない。
先日、Aさんからお礼の電話があった。
在職中にいただいたヒルティーの『幸福論』のお返しに、何か一冊プレゼントしようと長らく考えた末、『おそめ』を差し上げたことへのお礼の電話だった。
「室長、いただいたご本読ませていただきました。素晴らしい一冊をホントにありがとうございました。それと・・・アノ、辞めるときに言った大変失礼なこと、スイマセンでした。私は馬鹿だから。許してくださいね」
魅力的な女性が、ここにも1人いた。
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面白い。読み応えあり。
白州次郎、寺島しのぶ、などについて、見る目が変わった。
女の子の育て方、東西の文化の違い、金銭感覚、家族関係、老い、ビジネス、時代など多方面に考えさせられた。
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ノンフィクションはあまり読まないのだが、腰巻の“白洲次郎が通った。川端康成が愛した。”という文句に惹かれて買った。
京都に生まれ、芸妓となった“おそめ”こと上羽秀。瞬く間に多くの客の心を捉え、やがてバーのマダムとなったおそめは銀座へ進出、いとも簡単に成功を収める。
その生い立ちも人間像もすべてがあまりにもドラマチックである。あっと言う間に引き込まれた。天真爛漫、素直すぎるがゆえに銀座のバーのマダムたちをはじめ周囲の女性たちには理解されずにきたおそめだが、取材者であり作者でもある石井氏が(おそめ本人が饒舌に語ったわけでもないのに)おそめの本質というかその時々のおそめの心情をよく理解し掘り下げているのが、読んでいてとても気持ちがよかった。
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『夜の蝶』と言ったら、今じゃ派手派手しいイメージの言葉ですが
元はあんなにも無垢な女性を指した言葉なのですね。
水商売の女の人の印象を覆された感じ。
とても不思議な夫婦だった様ですが、連れ添えて幸せでした、と思える程に一途に思われてたのですね。
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一橋MBAの楠木建教授推薦の一冊。これまたおもしろい。
京都出身、「おそめ」という昭和初期のバーを経営した上羽秀さんの半生を著している。
この人は、旦那に尽くしつくした「秀」としての一面と、バーで客前に立つ「そめ」としての2つの顔を持ったように思える。
詳しくはぜひ本書を手に取っていただきたい。大成功した「おそめ」であるが、どの経営者にも共通でいえることは、たいがい成功している経営者というのは仕事自体を楽しんでいるプレーヤーであるということだ。
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サブタイトルの通りの伝説の銀座マダム。男の小説家が書くヒロイン(化粧をしなくても美人、いるだけでそこが輝いている、芯が強いけど男を立てて万事に控えめ、自分からなにもしなくても男たちが寄ってたかっていろいろとやってくれる、etc…)って、女の私から見てどうもピンと来なくて、そんなキャラって男が都合よく作っているだけじゃないのか?って思っていましたが、「おそめ」を読んで、そういうキャラの人がほんとうにいたんだ、ということにまずびっくり。これでは錚々たる文士たちが放っておかないわけだ、と納得しました。おそめと対比されて登場するエスポワールのマダム川辺るみ子はおそめとは対照的に一所懸命にがんばっちゃうキャラで、晩年は辛いことが多かったようだけど、凡人の私としてはるみ子さんのがんばりに1票投じたい感じでした。