紙の本
難解、ではあるけれど。
2017/02/22 08:12
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投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
文系上がりの私が先日、興味本位で手に取った「フェルマーの最終定理」と言う本。これが意外にも楽しく読めてしまい、数学の面白さとロマンを改めて認識させられることになった。そこで調子に乗ったわけではないけれど、続いて手に取ってみたのが本作品「ポアンカレ予想」。フェルマーの最終定理と並んで稀代の難問とされていると言うことくらいは知っていた。位相幾何学を扱ったこの難問、さて読んでみて率直な感想を言えば、非常に難解だった。内容は一割も理解し得なかったかも。この作品のテーマとなるポアンカレ予想、すなわち「単連結な3次元閉多様体は3次元球面 S3 に同相である」を少しでも理解できるなら…うーん、高校レベルの数学をしっかりと理解してきた人ならそれなりに理解はできるのかも。私にはちょっとハードルが高すぎたかも。でもつまらなかったかと言えば、これまた数学の面白さとロマンを十二分に感じさせてくれ楽しく読めた。100年もの間多くの数学者が挑戦し跳ね返されて、とうとうペレルマンによって証明されるまでのドラマはやはり胸熱くなる。誰にでもオススメってわけにはいかないけれど、数学の面白さやロマンを感じてみたいと言う方は、ちょっとした覚悟を持って(笑)挑戦してみては。
紙の本
基本的にはおもしろい読み物なのだがと
2019/01/12 10:39
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
如何せん、理解できたとは言えない。一般読者にある程度わかってもらおうという努力はしているけれども、そもそもポアンカレ予想自体からしてわかりづらい。そうした予想が成り立つというギリシャ時代からの歴史の部分は読み物として楽しめるのとは対照的。読む側の努力も相応に必要ということだろう。勉強したらまたいずれ。
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歴史的な難問であるPoincare予想に関する歴史的な背景及び問題を説いたPerelmanの人物像と解答のざっくりとした流れが記載されている一冊である。
少し前にNHKでPoincare予想のドキュメンタリーが放映されて、宇宙の形を決める問題とかPerelmanの不思議な人物像が話題になったのは記憶に新しい。
Pincare予想とは、簡単にいってしまえば「多様体上のあらゆる閉じたループを一点に縮めることができる3次元多様体は球面と位相的に同相である」という主張である。
一般の方は、多様体とは、位相とは、同相とはということを理解する必要がある。これがわかっている読者は本書をほとんど読む必要はない。(問題の歴史的な経緯が知りたければ、もっと適当は書籍があるのかと思う)
位相幾何学を学ぶとこの主張内容は素朴で、自然に疑問として湧き上がる命題であるが、それを数学的に証明するとなると非常に非常に難しい。
Poincare予想の二次元バージョンならば簡単で、二次元多様体は位相的には球面とトーラス(いずれも立体の表面)しかないので、トーラスは一点に縮めることができないループが存在するため、一点に縮めることができる多様体は球しかない。
しかし、これが3次元となると直感的に扱いにくい。三次元多様体を埋め込むためには4次元以上の空間が必要で、これは我々の宇宙のモデルに近いがそれを頭のなかでイメージするのは難しい。
そして、3次元多様体は、二次元多様体の時と同様に全ての多様体を有限個に分類することができるのであろうかという問題も面白い。
ちなみにこれはズバリ有限個に分類することができ、8つに分けることができる。Thurstonの幾何化予想と呼ばれ実はPoincare予想を包括している。
Perelmanはこの予想も肯定的に解決してPoincare予想も解いたのである。
位相幾何学は名の通り、物体を伸び縮みさせても変わらない構造上の性質を研究する学問であり、物理学的な応用も広く、とくに素粒子理論方面に活用されている。
ちなみに、Poincare予想を解くと宇宙の形がわかるというのは当たらずといえども遠からずであり、地球から紐を持ってスタートして再び戻ってきた時に、その紐が回収できるのであれば宇宙は球体と同相といえるが、その経路を無限に調べないといけないので、実際はこの方法では調べることができない。
(現在は銀河規模で距離は計測し、その曲率を精緻に計算している。それによると、宇宙の形はほぼ平面であるらしい)
この問題に対して挑戦した人の歴史もまた、面白く書かれているので、この手の本を読んだことがなければお薦めしたい。
ただし、数式をほぼ使用していないので、逆にわかりにくい表現となっているので、一般の方はそれらはそんなものか、という軽い感じで読み進めれば良いと思う。
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とっても興味深い内容。サイモン・シンの一連の作品と同様に数列などは一切出てこず前半は数論の歴史に終始するが後半からポアンカレ予想の核心に迫るためどんどん難解になってゆく。もうほとんど理解不能な領域だけど高次元空間の面白さは伝わってくる。本そのものの難易度で言うとフェルマーの最終定理やリーマン予想よりはるかに高いかも。
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「ポアンカレ予想」
ペレルマンとポアンカレ予想。
ポアンカレ予想とは何か。それは、調べて頂くとして、この世界で最も美しく最も難解な数式に挑んだのは、天才の中の天才と名高いグリゴリー・ヤコヴレヴィチ・ペレルマンである。
ペレルマンは、3つの驚きを多くの数学者に提供した。1つは、ポアンカレ予想を鮮やかに解決すると言う驚き、2つ目は、多くの数学者が位相幾何学(トポロジー)の観点から挑戦する中、微分幾何学や物理学的アプローチをとったと言う驚き、そして3つ目は、ペレルマンの解決方法は、さっぱり分からなかったと言う驚きである。
しかしながら、本書は希代の大天才ペレルマンのみに焦点を当てた本では無い。地球は円形なのだ、と言う事から話は遡り、一歩一歩ポアンカレ予想に近づいていくのだ。
地球は円形であると言うのには、コロンブスが絡んでくる。コロンブスは、地球は丸いと認識した上で、海を渡ったと言う。てっきり、コロンブスは地球を平面だと思い込んでいたと思っていたが、当時でさえ地球は丸いと言う認識で一致していたのだ。これは、知らなかった。そんな時代に世界を股にかけたコロンブス、少し悲哀を感じてしまうのは何故だろう。
また、ピタゴラスやアリストテレス、プラトンも出てきただろうか。ギリシャ哲学黄金時代の話も登場する。やはり、謎はいつの時代も人を惹きつけるみたいだ。彼らの知らない歴史も知れて「へー」を連呼していた。
そして、いよいよ、ポアンカレ予想である。この数々の数学者を楽しませ、悩ませる難題に向かうは、ペレルマン。ペレルマンの前に解明に取り組んだ天才達も必見だ。
しかし、しびれる。
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ポアンカレ予想が証明されるまでの物語として楽しめた。
ポアンカレ予想そのものや数学の理論については、理解と想像の助けになる具体的な例を挙げ平易に説明がなされている。
とはいえ、私の数学的素養が及ばす理論の説明部分のほとんどは読み流した。
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読書録「ポアンカレ予想」4
著者 ドナル・オシア
訳 糸川洋
出版 新潮文庫
p388より引用
“数学は個人の営みだ。だが、数学の概念や
定理は、一個人のものでもなければ、特定の
民族や宗教や政治団体の所有物でもない。
数学の概念や定理は、人類全体の資産であ
る。”
目次から抜粋引用
“地球の形
宇宙の形
リーマンの遺産
ポアンカレの遺産
新ミレニアムを飾る証明”
数学者である著者による、数学の難問とそ
の証明がなされるまでを記した一冊。
古代の数学から難問の証明まで、数学の発
展に尽力した学者たちや、彼らの生きた歴史
背景を交えながら書かれています。
上記の引用は、ポアンカレ予想の証明とそ
こまでの数学者の努力について書かれた章で
の一節。数学だけでなく科学的な実績につい
ても、これは言えることなのでしょうね。
最近は知的財産権や特許の保有期間を長くす
る傾向にあるようですが、この引用を読んで
いると、少し考えさせられます。
ひと通り読んでもイマイチ分からない程度
の私でも、証明を成し遂げたグリゴリー・ペ
レルマン博士の奥ゆかしさには、頭が下がり
ます。噂ではこの証明の後、精神を病んで表
舞台から消えたなどと聞いていましたが、た
んに見せ物になりたくなかっただけとあって、
安心しました。
ーーーーー
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幾何学と位相幾何学の発展の歴史、ポアンカレ予想が生まれた背景は興味深い。何より、ポアンカレ予想に挑戦した数学者達がドラマチックに描かれ、歴史小説としても面白い。位相幾何学や四次元以上の概念に関し理解できなかった部分も多いが、学べたことも多く、世界を見る新しい視点が得られたように感じる。
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第1章 2003年4月、ケンブリッジ
「数学の革命は音もなく進行する。軍隊の衝突も銃撃戦もない。新聞の片隅に短い記事が載るだけだ。それもぱっとしない記事が。」
...から始まる。
本好き、特にノンフィクション好きなら、この冒頭を読んだだけでワクワクしてくるだろう。
本書を楽しむために数学が特別に得意である必要はないけれど、難解であることは間違いないので、頭を使うのが苦手な方にはオススメできない。
同じ数学モノでも、たとえば『フェルマーの最終定理』などとはまるで違う(頭を使う)ので、買う前に実物をパラパラ捲ってみたほうがよさそう。。
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題名にだまされるが、これは"ポアンカレ予想の本"ではない。
「ポアンカレ予想」だけで話がおおよそわかる人にはこの本は向いていない。
トポロジーをかなり理解している(=途中までの話を退屈に感じる)ような人はこの本の想定する一般人ではないので、より専門的な内容に踏み込んだ本を探すべきだろう。
本書は、幾何学に理解がない、空間の曲率など考えたこともない人間を対象に、空間を考えることの歴史(幾何学の問題・理解の発展)を、紀元前から説明している。
n次元空間のような図示できない物の考え方(直線を数の集合とする定義はすごい!と思った)や、内角の和が180度とならない場合の三角形の話などは、球面三角を学んである程度の知識がある私でも面白く新しい発見があった。私の学んだことは位相幾何学のごく一部だったのだなぁと改めて思う。
ルジャンドル(球)関数のルジャンドル、リーマン面のリーマン、ヒルベルト空間のヒルベルト、クラインの壺のクライン、エルミート行列のエルミート(ポアンカレの師匠だった!)、そのほかにもユークリッドやガウスなど私でも名前を知っている天才達が次々に登場してくる。
古代、バビロニア・ギリシアの頃からポアンカレに至るまでの空間の認識の発展と、ポアンカレ予想以降も続くトポロジーの進展、様々に進歩しながら何度も挑んでも解くことが出来ないポアンカレの問題。
微分幾何学の分野からのリッチフロー(幾何学に偏微分方程式!)の導入で活路が開け、ペレルマンが仰々しくない形でソッと解く。
解かれた後には多くの人が解説を行って解が広く浸透し、一悶着もあったが、ポアンカレ予想は予想通りの結果で解かれたという、長い数学史の一分野が上手く描かれている。
個人的に少しさみしく感じるのは、
20世紀の中盤以降は中国人研究者の名前が何人も現れてくるのに、日本人名は一人も出てこないこと。数学オリンピックで金を取ることもできるし、高校レベルならアメリカをも超える平均数学力を有しているのに、才能が無駄遣いされているなぁ(活かされていない)と感じる。
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ポアンカレ予想が解かれた当時,NHK スペシャルの番組(本にもなった)をみて未消化な紹介が残念だった記憶がある.別の本は,ポアンカレ予想の紹介というよりは,ペレルマンの人物調査と.旧ソ連でのユダヤ人差別が中心的な話題でこれも興味をそそらなかった.
この本が単行本ででたとき,「ポアンカレ予想を解いた数学者」という題名だったらしい.手に取らなかったのはこの題名のせいかもしれない.文庫になってより内容にふさわしく「ポアンカレ予想」という題名になった.
著者はCox らと共著の教科書「グレブナ基底と代数多様体入門」の著作で有名なオシー.
この本は専門書ではなく一般読者向きの概説書.
ユークリッド以来の幾何学の発展を織り交ぜながら,ポアンカレ予想の成立と解決の過程を緻密に追っている.数学の概念も数式を使わないながら丁寧な説明がある.
ポアンカレ予想がどんな問題かを知るには格好の本.
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ポアンカレ予想:多様体の基本群が単位元でありながら、その多様体が3次元球面と同相でない可能性はあるのだろうか。
何を言っているのかよくわかりませんが、宇宙がとり得る形について1904年にフランスの数学者ポアンカレが提出した難問です。
ロシアの数学者、グレゴリー・ペレルマンが2002年投稿の論文で証明しますが、その論文も一般人が理解できるものではなく多くの数学者の解説が必要だったようです。
本書ではユークリッド幾何学、非ユークリッド幾何学、位相幾何学、微分幾何学という幾何学発展の歴史が世界情勢に絡めて解説されています。革新を起こした主要な数学者の一人、リーマンが数学的実態と物理的実態を区別して、数学的対象についてのみ語り出すと以降は概念的な話が増えてきて難解です。そしてポアンカレがポアンカレ予想に至るまでの思考がまた難しいんです。
二次元の任意の地点はX、Y軸の二つの数字で表せて、三次元上の地点はX、Y、Zと三つの数字で表せます。数字を増やしていけば、四、五次元といくらでも次元を拡張していけます。その世界が図示できるかどうかは関係なく、この理論によればそんな高次元の世界があるということになります。SFの世界です。
平面の世界地図が地球の姿だとすると地図の右端を過ぎれば奈落の底、実際は右端の外にでると左端から戻ってきます。平面な地表は2Dの四角が集まった地図で、空間の宇宙は立方体が集まった地図になります。2Dの世界地図と同様に考えると立方体地図の上の面から出ると下の面に戻ってくるということになります。宇宙の果てに向かって進めば元に戻ってくるという理屈がわかったようなわからないような気分。
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数学ほど自由で想像的な学問はない。
ただ、その夢をみるには才能と努力と強固な意志が必要で、夢をみる段階にたどり着けるのは限られたごく一部の人だけだ。
その営みを、なんとな〜くぼんや〜り垣間見れる…かもしれない本。
正直数学的な部分はチンプンカンだけど、美味しい部分だけは味わえた気がする。