紙の本
品ある不思議な話。
2020/10/14 15:10
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
北村薫という作家をやっぱり凄いなと思うのは、紡ぎだされたお話にいつも「品のよさ」があることだ。なのに、よくよく考えてみれば荒唐無稽なありそうもない話。そんなお話が17話もまとめられていた。
もちろん物語にはいちいち引き込まれるが、さらに魅了されたのは、物語の端っこに登場するモノ。
たとえば、眠れる森から持ってきた、人を眠らす「葉っぱ」。
闇なべの会場に、密かに紛れ込んだ持ち主不明な缶詰には、人間が考えたとは思えない不思議な記号の列が刻印されていた。
話の内容がま逆の「走れメロス」...が、よく知られた話の本と並んで、密かに街の本屋で売られていたり、河童の子孫が普通の人間と変わらず生きているらしかったり...。
独立したばかりのアフリカの小国には、動詞や形容詞の変化が殺人的に煩雑な母国語があって、その国で生まれた美しい映像の映画は、言葉を理解できないから、そのストーリーを誰も理解できない。実は、この話がいちばんの気に入りで、その国の言葉を解せる唯一の日本人女性が字幕をつけるが、「そうあったほうがいい」と、勝手に創作してしまう話。...なんだけど。
豊かな話に共通するのは、物語のすみっこにあるものであっても、そのすべてが大切な存在であることなのだなぁと思う。
紙の本
語られる世界に遊ぶ至福
2004/12/09 00:26
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投稿者:花の舟 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新しい本が出れば必ず読む、大好きな作家たちがいます。北村薫さんはその中でも、いつも次が待たれる作家です。
『語り女たち』を手にし、読む時まで絶対開かずにいたのですが、さて読もうとして、緑の活字を目にした途端、次の朝 、家族が皆出掛けるまで待つべきだと判断しました。それほど、一人でゆったりと、大事に読みたいと思わせる本でした。そして読了した今、それは全く間違っていませんでした。いろいろな意味で贅沢な本でした。
満足と言って言い足りないくらい、心満たされて、酔わされたような心地。読み終わりたくなくて、一言一言、大事に活字を追いました。ゆったりと心ゆくまで、読書というものの醍醐味を、こんなに味わわせてもらえる本は、滅多に出会えませんから。もとより、掌篇小説が、格別好きであること。小さな世界に閉じこめられた、とてつもない宇宙が自分に入り込んで来る瞬間が、たまらなく好きであること。
『語り女たち』は、まさにそうした、私の楽しみを充分に、溢れるほどに得心させてくれました。17の話のどれもが、他と一線を画して、静かに密やかに光る世界でした。謎、ノスタルジー、愛、異界……。現実の小さなささくれのような不可思議な話に、頷き、首を傾げ、思いを彷徨わせ、17世界に遊ぶことができました。美しい言葉。表現された世界が、疑いようもなくそこにある凛とした構成。北村さんの世界に遊ぶ時、好きな人の胸に顔を埋めるような安心感と陶酔があります。
「歩く駱駝」「笑顔」「海の上のボサノヴァ」「夏の日々」「ラスク様」が、私のベスト5です。(本当は全部)
表紙の見返しページの、北、村、薫、の文字のデザイン、私は、雪の結晶のように見ました。
挿絵の豊かさといい、紙質の上等さといい、なにより黒と見まがうセピアの活字の洒脱さ、プロローグ、エピローグにあたる“彼”の言葉だけ、鮮やかな色の活字であること……読み手にこんなに心地よさを与えて、尚、完璧な小宇宙を構成することのできる北村さんに、拍手と感謝を贈りたいと思います。
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一人の男の元に次々と女性が現れ、語りかけるともなく、語られていく話。
肩に入った無駄な力抜けていくようです。
風景のあるお話です。
表紙も良いですよね。
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海辺に暮らす男のもとに、ひとり、またひとりと女が訪れて、不思議な話を語っていく。10ページ前後の小作品が17編。これだけきれいな言葉を紡げるなと感心させられる文章が幻想的な物語とマッチしており、数点掲載されている挿絵もうまい。
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北村薫氏の短編集。
甘酒飲み飲み最後の一篇読了。
北村節全開のふんわり柔らかな文体でチョット不思議な物語が展開されている。
現実世界を舞台にしたプチ幻想譚?
乱暴に要約すれば上記の様な感じかと。
例えばそれは純文学を購入したら内容が全然違う色合いを帯びていて驚いた女子中学生の話や、闇鍋ならぬ闇缶詰中突如として現れた得体の知れぬ缶詰、踏み込むと眠り姫の様に永久的に眠ってしまう森。
これまでの北村作品の様に解決される謎はひとつとしてないけれど、不思議な余韻が楽しめる。
とは云えコレ系なら原田宗典の『透明な地図』の方がレベルは高いと思う。
不思議を追求するなら原田氏、日本語の美しさ優しさを求めるなら北村氏、と使い分けたいところ。
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恵まれた環境に育ちもともと空想壁があった主人公。30歳を過ぎた頃から急激に視力が落ちたことがきっかけとなり 活字を読むよりは市井の人の話を聞くほうが興味深かろうと 新聞や雑誌に広告を出し語り女を募集した。
様々な境遇・年齢の女性が 入れ替わり立ち替わり寝椅子の主人公のもとを訪れて自分の体験したちょっと不思議な出来事を語っていく、ただそれだけなのである。語られる話も 謎のようなものもあれば 気にしなければやり過ごしてしまうようなものもあるのだが なんとも言えない穏やかな時が流れているのである。女はどんな女でもきっと 語りたがりなのだろう という気がする。
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170ページのほどの本の中に、17人の女性がそれぞれの語り口で話をしていきます。そんな作品ですが、1つ1つの話は10ページ程度。先だって、この作品は直木賞の候補になっていました。
独特の雰囲気があります。しかし、17編とも似たようなパターンで、それだけ続くとちょっと飽きてくるかもしれません。ですから、出来たらこの作品は、その気になれば1〜2日で読める量だけど、あえて1日1作品くらいを読んで、17日間で読むような作品かもしれません。ひとつひとつの作品の余韻を十分に楽しまないで、次に行くと、時間の流れが本の中の雰囲気の流れと違ったものになのかもしれないです。2004.7.24
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幻想的で不思議な物語に引き込まれ、気がついたら自分自身が迷い込んだ感じがしました。
挿絵と内容がとても素敵で、こんなにも挿絵と内容が一致している作品は殆ど無いんじゃないかと思います。
1つの話がたった10ページ程度なのに、話の1つ1つにたくさんの物が詰まっていて、まるでプレゼントが小さな箱から溢れ出ていくような読後感。
現実では実際に有り得ないけど、思わず信じたくなってしまうかのような語り女たち17人の話はとても印象に残りました。
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幻想的な連作“超”短編集。夢見がちな性質に生まれたある男が、視力が悪化したことをきっかけに、本を読むことをやめる。代わりに、雑誌や新聞に語り女を募集する広告を載せる。
語り手たちの話は、ごく普通の日常から始まる。取材旅行で京都の竹やぶに行った。運転中に前後の車が気になる。夫に「特別に」愛されている。書店で見付けた「走れメロス」。中東や北海道の土産物。アフリカ映画。変わったプレゼント。長距離フェリー。美術館の展覧会。父との思い出。小学校の思い出。赤い本。本物の染めのハンカチ。そんな風景や事物が、突然姿を変える。硬く丸い蕾が、ある夜突然くるりと開くように。霧が晴れたのに、あるはずのものが見えないように。ある時は心地よい驚きに。またある時はセンチメンタルな発見に。そして、時には柔らかく包み込む恐怖に……。オチはあったりなかったり、なるほどと思わせるミステリ風もあるが、多くはもやもやと幻想的なムードを残して終わる。はっきりと怪異譚となっているものすらある。
さて、不思議な雰囲気はしっかり出ているが、やや物足りなく感じることも否めない。この状況設定で長さがこれしかないのは勿体無いなあ、という数編が生み出す欲求不満なのかもしれない。
挿絵の謡口早苗氏に興味を持ち調べたところ、宮部みゆきの「ブレイブストーリー愛蔵版」のイラストを担当している方とのこと。銅版画で幻想的な雰囲気の画風……「ターン」じゃん!と思ったら、映画「ターン」で銅版画を担当されてもいた。なんだか不思議。
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水彩で描いたような短編集。技巧をこらしてはあるけれど、淡々と美しい。挿絵も幻想的で綺麗で効果的だった。日本語が美しいことが何よりだ。
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いつ出たのか。久々に北村氏の新作を読みました。
不思議な雰囲気の話ながらも、非常に北村さんらしいお話。
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人公の男性が17人の女から聞いた17の話が順にのっている短編集。
どの話も不思議で、じんわり涙が出てくるあたたかな感動のお話も。
ただ残念なのは(カラーイラストや文字の為だろうか?)この本の紙質がつるつるなこと。
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語り出されるのは、幻想的な――そして日常的な――“謎”のものがたり。
微熱をはらむその声に聴き入るうち、からだごと異空間へ運ばれてしまう、17話。
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語り出されるのは、幻想的な――そして日常的な――“謎”のものがたり。微熱をはらむその声に聴き入るうち、からだごと異空間へ運ばれてしまう、17話。
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アラビアンナイトの千夜一夜物語のように、女性が短いストーリーを話すもの。短編集とも言えるかもしれない。
女性が話すストーリーは、「世にも奇妙な物語」のような感じで、とても奇妙なものもあれば、現実にもありそうだな、と思われるものまである。