紙の本
小市民を目指す非・小市民
2010/02/15 00:05
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙のイラストがネックが気になって敬遠していたのだけれど、多くの方が絶賛されているのに負けて(?)読んでみた。
そうしたら!
そうしたらっ!!!(2回言った)
面白いのなんのってーーーー!!!!
物語の主役は小市民を目指す高校一年生になったばかりの小鳩くんと小山内さん。このふたりの関係は、いわゆるカップルのそれではなくて互恵関係という。三省堂の辞書によると「互恵」とは「互いに相手に利益や恩恵を与え合うこと。」とあった。小鳩君は小山内さんに利益をもたらすためだけに小山内さんの側に存在し、小山内さんもまたしかりということだ。
それではここでいう「利益」とは何か――それは単純明快――小市民でありつづけること、ただそれだけである。ふたりが手に手を取り合って目指すのは、慎ましく清く正しい小市民なのだ。なんてちっちゃいスケールなのだっ!!と侮ってはいけない。小市民を「目指す」ということは即ち、彼らは小市民「ではない」ということだからだ。
できるだけ目立たず平平凡凡と、10人いたら11番目の人を目指す小鳩くんと小山内さん。ふたりを小市民へと向かわせるのは、15年という決して長くはない人生における「後悔」だ。
自らの性格から招いた過去の過ちに改心し、人畜無害の人間になるべく努力を重ねるふたり。しかし彼らの前には、過去においてきたはずの「性癖」を刺激する日常が広がる。過去との決別、後悔からの学びなどなど人生における大きなテーマ或いは闘いが軽いタッチで描かれていて読みやすい。
ただ読みやすいだけでなくところどころに織り込まれる、はっとさせられる言葉――このバランスがいいんだろうなぁ。
そして何よりも読者の心を奪って話さないのは、小鳩くんと小山内さんが人畜無害の小市民を目指すきっかけとなった「過去」だ。彼らはなぜ小市民を目指すことを決意したのか――その答えは本書では明かされない。彼らのささやかな闘いと、その心の奥に秘められた「過去」を知りたくてたまらない。こうやって焦れるように読書をするのは久しぶりだ。
ちなみに作品タイトルにある「いちごタルト」は、小山内さんが超・甘党でスウィーツに目がないことかとある事件に巻き込まれたことに由来するもの――詳しくはぜひ本書を手にとって確かめてください。
『春期限定いちごタルト事件』収録作品
・プロローグ
・羊の着ぐるみ
・For your eyes only
・おいしいココアの作り方
・はらふくるるわざ
・狐狼の心
・エピローグ
電子書籍
可愛い小佐内さん
2022/11/22 11:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆみこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
小佐内さんの甘党っぷりがたまらない。
太るからと気にしつつ、感情がすっきりしない時はもりもりとお菓子を食べてしまう小佐内さんが可愛らしいです。
一話ずつ日常の謎解きが展開されていきますが、最後には小鳩くんの葛藤も描かれていました。謎が解けるからって、良いことばかりじゃない。でも、そういう葛藤を幾度も経験して人は大人になっていくんだろうな、とも思わせられました。
紙の本
古典部シリーズとはまた違ったテイストの小市民シリーズ
2022/03/21 08:31
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投稿者:WakaWaka - この投稿者のレビュー一覧を見る
古典部の役割でいうなら、小鳩くんは折木奉太郎、小佐内さんは千反田えると似ています。
ただ、性格が大きく違っていて(特に小佐内さん)物語の進み方が新鮮でした。
紙の本
読みやすい
2016/07/18 18:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
米澤穂信氏の作品を初めて読んだのは「ボトルネック」2009年9月新潮文庫なのですが、正直あまり印象に残っていなかった。ここ2〜3年に色々なベスト10で取り上げられているので改めて読んでみようと思って読んだのが「さよなら妖精」2006年6月創元推理文庫でした。これが私にはとても素晴らしかったので他の作品も集め始めました。
さて本作ですが高校生を主人公に据えた良い意味で軽い感じの推理小説でした。扱われる事件も事件という表現が大げさに感じるような日常に接した謎からなる5編の物語です。主役の二人のキャラがとても可愛くて、謎解きを楽しみながら彼らの学園生活を見守っていたいような気分にさせられました。
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最新作。
これは、主人公が無気力ではなく、ある感情を必死に「耐えている」風情がおもしろく、なおかつ小山内さんのキャラも楽しくて、素直に楽しめました。
お勧めです。
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高校一年生の小鳩君と小山内さんは恋愛関係でもなければ依存関係でもない「互恵関係」なるものを維持し、常に「小市民」であることを目指している。それなのに、二人にはちょっとした謎が頻繁に現れ、解きたくもない謎を解かざるを得ない状況に陥ってしまう…。
● 「羊の着ぐるみ」
旧友である健吾から吉口さんの盗まれたポシェット探しに協力を頼まれた小鳩君。分担して校舎内を探すが…
● 「For your eyes only」
楽しみにしていた「春期限定いちごタルト」を自転車ごと盗まれてしまった小山内さん。一方、小鳩君は美術部に残された2枚のそっくりな絵の謎に挑む。
● 「おいしいココアの作り方」
健吾の家へ招かれた二人。健吾はちょっとした工夫でおいしいココアをごちそうしてくれた。ところが台所では健吾の姉が…
● 「はらふくるるわざ」
中間考査のテスト中、教室の後ろでガラスが割れた音がしたために思い出しかけていた答えを忘れてしまった小佐内さん。犯人は誰、何のために? 知りたいのに「知りたい」と言えないのはまさに…。
● 「狐狼の心」
「春期限定いちごタルト」とともにサカガミに盗まれていた小佐内さんの自転車。自転車は見つかったが、小佐内さんはそれに満足せず…。
いわゆる「日常の謎」に属する連作短編集。前4編の謎は特に日常的で、そして小さく地味ですが、うまく処理してあります。それを補うのが小鳩君と小佐内さんのキャラクター。「小市民でありたい」という二人の願いは、4つの謎を解く中で「なぜ、小市民を目指すのか」という新たな謎を読者に向けて提示しています。この「なぜ、小市民を目指すのか」という謎ははっきりとして形では明らかにならないのですが、最終編「狐狼の心」ではここまでに繰り出されていた伏線が収束され、ちょっと大きな謎を解き明かすという展開です。よくあるパターンではありますが、これも連作短編集の醍醐味の1つでしょう。
「小市民でありたい」という願いとはうらはらに、隠していた旧来の姿を出さざるを得ない状況に追い込まれていく二人。とくに一人称の語り手である小鳩君の心理的葛藤、そして健吾とのやり取りは非常に緊迫感がありおもしろかったです。
結果として過去に関する謎が残されたということは、続編が期待できるということ、と決め付けて楽しみに待ちたいと思います。
収録作:「羊の着ぐるみ」「For your eyes only」「おいしいココアの作り方」「はらふくるるわざ」「狐狼の心」 (2005.01.19)
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初めはすごいビミョー、と思ったのよ。小鳩くんは小市民小市民言う割に思いっきり顔突っ込んでるし。小市民をめざすからには、その理由があるはずなのだけど、小鳩くんにしても小佐内さんにしてもなかなかそれが語られないのだ。前半はかなりイライラしましたよ…一人称なのに語られないというのが!三人称ならここまでイラつかなかったと思うんだけど。
ついでに私に言わせてもらうと、本当の小市民はテレビに映ってはピースサインをし、インタビューを受けては友人に自慢するものだよ!(笑)いちごタルト事件も犯人がわかってるんだから、長いものに巻かれる…ではなくて、なんていうの?こういうの。とにかく、権力を利用しなきゃ~(学校にチクる・警察利用)
後半になってやっと小鳩くんがなぜ小市民をめざすのかちぴっと語って、少なくとも小鳩くんの事情は非常に納得。でも、やっぱりこの点についてはかなり消化不良感が残ります…表現自体も小市民的で(笑)狙ってんのかな。
小佐内さんも、最後にはキター!という状態になります(笑)ただ、そのキレ方ももうちょっと描写して、それまでの小市民・小佐内さん像をめちゃめちゃに破壊するべきだったかな、と。カタルシスの度合いがいまいちかも…。小佐内さんに関しては一人称がないから、もう少し漫画的描写をしたら良かったのでは。その方が小佐内さんがより面白く描写できたんじゃないかな。
小山内さんサイドの事情を知りたいなあ。小山内さん一人称の続編希望~。
小市民をめざすふたりは、ちょっといじらしい。だけど、なんだかんだいって二人には小市民は似合わないよ(笑)
そのうち、小鳩くんも小佐内さんも、その力(?)をうまく使うことを知る時が来るだろう。健吾から学べるかな?「ばかとはさみは使いよう」、自分の能力や性格も然り…だと思う。
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青春ミステリーの王道。
殺人事件が起きないミステリー。
僕と小山内さんは普通の高校生に、あの小市民の星をつかむんだ!?
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氷菓と同作者。作者買い。内容は氷菓とほぼ同一。ていうか、コレ氷菓でやってもよかったのでは。いえ、作者の経済的生命線上、違う出版社でなくてはいけないのはわかりますが。
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久々に「キャラが立っている」本に出会えました。 主人公とヒロイン(?)の互恵関係コンビが「小市民」を目指すために悪戦苦闘する様が読んでて笑えます。 この作者の他の作品が欲しくなりましたよ。
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うぅぅんと、唐突ではありますが、大学を卒業するあたりまではそれなりの野望や将来への希望を抱いたいたのですよね、恥ずかしながら。
それが、就職して何年か働いて退職して、転職活動に迷走して思ったのです、ふと…
「どういうのが幸せなんだろう?」
(この時点で野望だの希望だのはどこかにいっちゃってる訳です、もちろん)。
ワタシに出来ることなんてたかかしれてるし、いっそスーパーのレジかキオスクで昼はこつこつとバイト、定時にあがって美味しいお茶菓子のひとつでも買って、夜は趣味の読書三昧。
仕事に煩わされることなく、職場の人間関係に悩むこともなく、1日の読書とご飯とお風呂に困らない程度の収入で日々平穏に暮らす。
そんな真綿にくるまれたような日々を夢想(現実逃避?)していた時期がありまして、まさしく目指せ!小市民生活です
(とはいっても、いまも充分、小市民なのですけどね)。
そして、ここにも"清く慎ましい小市民を目指す"若者が!
米澤穂信 『春期限定いちごタルト事件』。
小鳩くんと小山内さん、ともに高校1年生です。
目立たず、でしゃばらず生きたいけれど、なぜかつぎつぎと奇妙な謎(おいしいココアの謎!etc)が現れて、気がつけば謎を解く必要に迫られる小鳩くん。
同じく普段は小鳩くんの背中に隠れ小動物のようだけれど、災難続きでとうとう牙をむく(!?)小山内さん。
(教訓、乙女の甘いものに対する執念を甘くみてはいけませんッ!)
ふたりの関係はお互いを言い訳に使う、互恵関係。
依存関係よりもシビアで、友人関係よりも責任重大で、恋愛関係よりもストレートで相手を理解しているふたり。
高校生活のスタート…"青春"なんて言葉は彼らの辞書にはなく、シニカルだけどほほえましい。
果たして彼らは小市民となりえるのか!?
私信:求ム、協力者。互恵関係をむすびませう。
もちろん、親への言い訳に使わせて頂きます。
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久しぶりにタイトルと表紙に惹かれて購入した一冊。
その名も「春期限定いちごタルト事件」!!そして可愛らしい表紙。
一見ライトノベルかと思いきや、創元推理文庫から出ているきちんとしたミステリーでございます。
小市民を目指す高校生、小鳩くんと小山内さんの話。
トリックは小難しくなくて、殺人も起きない。小鳩くんが解くのは、日常の謎。
北村薫さんや、倉知淳さんの書くミステリーの雰囲気に似ているように感じます。
起こった謎も気になるところですが、どちらかというと、小鳩くんと小山内さんが何故、小市民の星を目指すにいたったかの方が気になったり(笑)
表紙買いでしたが、「あたり」かな?
他の作品も読んでみたいです。
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ものっそかわいい。そして面白い。
小市民をめざす高校生二人のお話です。ちょっとだけミステリ仕立て。
まず登場人物がかわいいです。みんな一癖も二癖もあって、なんだか頬が緩んでしまう。最後の最後まで微笑ましく(時に笑いながら)読めました。深読みすればちょっと社会に対して問題提起してるのか?とか思わないでもないですが、まぁそんなのは置いといて楽しく読める作品です。
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なんて温いミステリ!いや、マジでいい意味で。
ミステリの基本ってやっぱ「死体」とか「密室殺人」とか、グロいもんじゃ無いすか。
この本全然グロくねーの、むしろほのぼのする罠w
謎は割とマジで推理させられるものが多いし、こりゃ楽しいっ
キャラ設定がいいよね、小鳩くんと小佐内さん。
特に小鳩くん、推理してる時のキャラがあの佐山・御言と被ってもう・・・
こういうキャラ大好きだw
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古典部シリーズとおんなじようなノリだけど、古典部のほうが多少完成度が高いかなーとは思います。評価しにくいです。比べにくい。★つけにくかったです。
古典部とこちら、どっちがキャラクターが好きかっていう個人の好みの問題な気がしますね。乱暴ですけど。