紙の本
サードマン 奇跡の生還へ導く人
2021/06/04 15:50
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
極限の状態に置かれた人間には、往々にして自分のそばに別の「何か」がいると感じるという。その何かを本書では「サードマン」「神」「天使」「存在」などと呼ばれている。本書はその何かの正体について、経験者の体験談、脳科学、心理学、宗教など様々な面から迫っている。
人によっては、低濃度の酸素にさらされた時に現れるというが、海上で現れた体験談もあり、海水にさらされると現れるという言説もあれば山や宇宙空間で現れた大家もあり、助けてくれた話が多いが、その何かにおびえる人もいたり、その何かの存在を助けに進んでいくと語ったのを最後に帰らなかった人も紹介されている。
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振り返れば奴がいる・・・か?
2014/05/18 21:27
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投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
「サードマン現象」
山での遭難、海難事故、災害などで極限状況に追い込まれた人が、しばしば体験する現象。
いるはずのない第三者の幻覚(存在するという感覚だけ、または声だけの時も)が現れ、奇跡の生還に導いてくれる、という。
ただ、サードマンが現れたとしても、必ず助かる訳ではない。
なぜなら、生きて帰ってきた人からは、サードマンの話を聞けるが、死んでしまった人からは話は聞けないから。
つまり、証言は生還した側に偏っているのだ。
オカルト信者なら、即、神サマ(もしくは、それに近い存在)のおかげ、という説明にするだろう。
が、著者は、そのような主張とは、あくまで一線を画す。
生き抜こうとする強い意志や、外的要因(ストレス、酸素不足、低体温など)が組み合わさった結果、自分の脳がサードマンを作り出しているのではないか、というのが基本的なスタンス。
(ただし、本書では原因の特定までは至っていないが・・・。)
それを裏付けるように、(少なくとも本書で紹介されている事例では)サードマンは物理的に助ける事はしないし、話したとしても、「頑張れ」など、励ましの言葉をかけるだけ。
稀に具体的な指示をする例もあるが、後から考えれば、その内容は当事者が知っている事であったりする。
本書で紹介されている事例は、ほとんどが「ただ、そこにいる」だけ。
当事者の方が勝手に「救済者」「守護者」と思い込んでいるだけなのだ。
それだけの事。
それだけの事にも関わらず、人間は
「自分は一人ではない、という感覚」
や
「自分以上の存在が見守っている感覚」
がある、というだけで、「生きる力」を取り戻すことができる。
一種の「偽薬効果」と言ってもいいかもしれない。
脳にそんな仕組みがある、というのも驚きだが、人間にとって「社会性」が、これほどまでに重要だ、という事にも驚く。
ただ、なによりサードマンが出てくるような状況とは無縁でいたい。
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解説が組み合わせとして絶妙
2015/10/12 19:07
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投稿者:rooibos tea - この投稿者のレビュー一覧を見る
訳文はいいし、数多く事例を引いた力作ではあるのだが、「説明(もしくは現段階での仮説)」の方をもっと重点的に欲しい私には、やや隔靴掻痒感があった。
だがそのキレの悪いうんこのような読後感は、解説を読んですっかり解消された。
文庫版の解説は作家・探検家の角幡唯介氏。本書を読んだあとでなければ、この解説の妙も引き立たない。解説まで読んで、総体としていきなり面白い読書になった。こういうどんでん返しもあるんですな。
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遭難という極限状態から生還した人達のうち、少なくない人数が、生還の過程で感じた「もう一人」について、生還者の発言をひきながら、その原因に迫ろうとする。
そういう内容だとは全く知らなかった。
たまたま、山田太一の「遠くの声をさがして」を読んで、二重身のことを知ったり、オリヴァー・サックスの「妻を帽子と間違えた男」を読んで神経学をかじったりしていたので、原因がオカルト的なものではないのだろうと想像していたけど、改めて、人間の脳には驚かざるをえない。
この本が、サードマンを脳が作り出したものと結論づけているかどうかはわかりません。
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九死に一生を得るという言葉どおり、極限の状況下で生と死を分けるものは何か?その違いに何か訳があるのでしょうか・・この本では実際にあった様々な極限状況の体験談をもとにある現象を取り上げその解明に挑んでいきます。その場にいない筈の「存在」、謎のサードマン現象とは・・?
有名な詩人、T・S・エリオットの詩集「荒地」からの一節
「いつもきみのそばを歩いている第三の人は誰だ?
数えてみると、きみとぼくしかいない・・」
から取った呼び名だそうですが、エリオットは、20世紀初頭、南極探検で壮絶な体験をした冒険家のシャクルトンの体験談に強い印象を受けてこの詩を作ったようです。極地または宇宙への探検、未踏峰への登山、思いがけない災難など・・をくぐり抜けた人々の中に起こる共通の特殊な体験は、極限の状況下での精神の異常?と単に片付けられない多くの謎を含んでいます。
この本では2001・9・11テロでのツインタワー崩落で奇跡的に助かった男性の実話が最初に取り上げられていますが、やはり想像を絶する緊迫した場面にどきどきします。崩落する寸前のビル内で上層階から階段を降りてくる時、多くの人が煙で意識を失い外に出られないまま犠牲となりましたが、この男性は「誰かに助け起こされた」「階段のところに連れていかれた・・」と見えない存在の力を得て、崩落するビルの最後の脱出者になりました。
この本に登場する人々は自ら望んで極限の状況に挑む人もいますし、思わぬ事故に遭った人もいます。それでも生還した人々が出逢ったそこにはいない筈の人とは誰なのかと想像すると、いわゆる「守護天使」などの神さま仏さまの領域なのかと宗教的な要素も頭に浮かびます。最近のテレビ番組でもこれまでの常識では解明できない超常現象を取り上げていましたが、この本でも多くの実例をもとに様々な角度からの研究の成果を紹介しているので、興味がつきません。
最新の脳科学で解き明かされる部分がこの謎の解明に果している役割は大きいのですが、大昔の人間が現代人よりはるかにストレスが大きい状況で生き延びてきた理由は、その社会性にあるということをあらためて強く認識しました。
「・・・人が深い孤独のなかで苦しんでいるとき、脳や精神は自分は一人ではないと思わせる方法を見つける。そしてその同胞感覚が、結局は生と死を分ける。」
「・・災難に対する典型的な反応は挫折ではなくて、どれほどの苦境にあっても生き延びようと決意することである。」
私たち人類が歩んできたはるかな道を思います。
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神秘と科学が重なる場所にサードマンが現れる。。既にメカニズムが解明されている幽体離脱やスキゾ幻覚ととてもよく似た現象なんだろうね。ただ信仰の厚さによって現れ方が違うところや、必ずしも生存に導かれるパターンだけではないという点にロマンがある。
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危機的状況に陥った人の傍らに、気づくと寄り添い、生還に導く「サードマン」の謎に迫るノンフィクション。様々な事例を元に、推測していくのだが、その事例の凄まじさには息を飲むばかり。登山中の遭難や、海難事故って助かった助からなかったしかわからないけど、気づくとこんなになっちゃうのねと衝撃を受ける。生き延びる人と、そうでなかった人の違いはなんだったのか、またサードマンはどこからくるのか興味深い内容でした。
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事例がてんこ盛りでちょっと飽きたのと、結局助かった人たちの話なので(こんなこと言ってはいけないが)思ったより凄みに欠ける。極限状態で生死の境目にいる人の前に現れる者と、病気で見る幻視や子ども時代の「友達」とが一緒っていうのは違和感を感じたが、一方で聖書や古代の物語に出てくる「奇跡や魔法や呪術」といった、”フィクション”でこれまで片付けていたものが、サードマン現象として説明できるというのは新鮮と思った。以下、心に残った遭難話。
・シャクルトンの話はこうしてコンパクトにまとめられたのを改めて読むと、やっぱり随一だと思う。あとT.S.エリオットの「荒地」の一篇のモデルになってるなんて!
・1913年のカナダ北極海探検家・民族誌学者のヴィルヤルマー・ステファンソンの探検。1人でとんずら。マッキンリーら20数人を置き去り。
・1912~13年、英探検家A.F.R.「サンディー」・ウォラストン、ニューギニアのウタクワ川を遡上しナッソー山脈を探検。帰路、多数の餓死死体を発見。
・1957年、オクスフォード大山岳部4人パーティがカラコルム山脈のハラモシュ登攀で遭難。最初ジロットとエメリーの2人が雪崩に巻き込まれて雪窪に落ちるが、上にいたストリーザとカルバートの2人が下の2人を救い出したあと逆転して雪窪に残されてしまう。最終的にエメリーとストリーザは助かって帰国した。これすさまじく壮絶。
ところで参考文献の番号が振ってあるのだが、新潮社のサイトにあるというのはわかりにくいし、さっき見に行ったら既になかったんですけど(怒)。
もう1つ、サードマンを見てなくて悔しがる角幡唯介さんの解説が超面白い!
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極地や高山、ジャングル、深海、宇宙、そして9.11などの極限状態において、事故や遭難に遭い生命の危険にさらされた時に、生存への手助けをする存在が現れ、励ましたり見守ったりすることで遭難者が救われるということがあるという。これをサードマン現象と呼び、体験者のある者は神や精霊だといい、ある者は亡くなった家族や友人を感じたという。何れにしてもサードマン現象を経験した人は全員「生存者」なので、どんな困難な状況であっても生きて帰るんだという意志を持ち続けた人である。現象の真相は分からないけど、意志の強さが大切ということが印象に残った。
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ジョン/ガイガーのサードマンを読みました。
ヒマラヤ登山や南極横断などの極限状態で幻の同行者が現れることがある、というサードマン現象の解説書でした。
それは最近亡くなった近親者のように感じられたり、守護天使のように感じられたりするとのこと。
私にはそのような極限状態に置かれた経験はないので、ふうん、そういうこともあるのか、と読みました。
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人が極限状態に陥ったとき、傍らに現れて生還へと導く、あるいは自分自身を含めて状況を俯瞰的に観る視点を感じるという「サードマン」現象の事例と、それが何であるのか、なぜ起こるのかという推論が紹介されているが、これが答えだということではなく、このような説があるというもの。
それならば、この本の内容とは異なるが、「サードマン」の存在に気づくのは極限状態だけれど、それは日常的に機能しているという説もあってよいと感じるし、その方が守護霊的な機能として相応しいように感じられる。私見としては、自分自身や自分のこれまでの人生で関わってきた人々(親族、友人、メンターなど)への想いやイメージが潜在意識の中で、それぞれの人格をなしており、それは常に自分自身の一部として関わってくれており、「サードマン」現象とは、それを存在として意識した状況のように感じられた。
14-73
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危機的な状況に陥った人たちだけが遭遇する「サードマン現象」について検証した作品。
サードマンは登山家や航海者が遭難した場面に多く現れるらしい。登山家のラインホルト・メスナーや、南極横断に挑戦したアーネスト・シャクルトンなど、多くの著名人も経験している。また過去の事例をもとに脳科学の視点から、このサードマン現象の謎を解明しようとするアプローチも興味深かい。
仲間の死や極寒の地での食糧不足など、複数の強いストレスが引き金になることが多いようだが、共通しているのはサードマンが具体的な助言をしてくれたり、そっと寄り添って励ましてくれるところだ。実際サードマンのアドバイスにより無事生還した人も少なくない。
おそらく自分はこの先、サードマンに助けられるような場所に行くことは無いと思うが、もしその場面に遭遇したならば、サードマン出現のスイッチとなる「生き延びるというシンプルな信念」だけは持っていたい。
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角幡唯介のあとがきが笑えて興味深い。
本文中でドーキンスに触れているが、ドーキンス先生はそんな馬鹿なことを言ったわけではないと思う。証拠はないけど。
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極限状態に置かれた人のそばに一緒につつ、助言を与える存在であるサードマン。まだサードマンの存在を感じるほど厳しい自然環境にいた経験が当然のようにありませんが、その自分以外の存在というのは感じることがありますね。本書を読むまでは、普通に頭の中での間違った認識のせいだと思っていましたが、この現象を説明できる日が来るのかな、と思ったり。
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別名は守護天使。ま、守護神と考えてよかろう。文庫本の改題は誤解を与える。「サードマン」が存在となっているためだ。飽くまでも「サードマン現象」と考えることが望ましい。
http://sessendo.blogspot.jp/2014/10/blog-post_94.html