紙の本
情緒の風景
2018/10/28 12:39
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投稿者:まな - この投稿者のレビュー一覧を見る
岡潔の口述を松村洋(当時毎日新聞奈良支局勤務)がまとめあげたのが本書。
本書を読んで湯川秀樹を私は思い出しました。どちらも科学者であるけれど、芸術・古典への造詣や仏教観など、内的世界がとてもゆたかな科学者がいたのだなと思うと同時に、おそらく、市井の人の中にも、言語化できない部分に内包されていた豊かさがおなじようにあったのではないかとも考える。現代にも通ずる未来への示唆に富む本です。
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
天才と言われていた人でも忘れられてしまう。こんなに早くから教育問題について懸念を表していたが今も教育に問題は残されたままだ。教訓はあちこち残っていてこの本もその一つと言える。
紙の本
源氏物語のような風情を
2015/12/26 10:26
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投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数学者の文章であり、澱みが無い。理性か論理どころか情緒を語るのである。
日本の失われていくものを惜しむだけでなく、失われるのは日本人の心にある情緒の調和だと説く。
このかたの日本の花鳥風月を愛でる心映えの美しさは流れる文章によって存分に効いてくる。あたかも源氏物語の風情をつくりだしている。
心を整え、まっすぐにして、日本人らしくと。
紙の本
令和の今こそ、戦前戦後を生きた日本の数学者の言葉が身に染みます。
2023/01/15 16:44
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投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
文化の型について、西洋はインスピレーションを中心としているのに対し、東洋は情操が主になっている。だから、欧米の数学者は年をとるといい研究はできないが、筆者は情操型なので老年の方がかえっていいものが書けそうだ。。とのこと。
数学者は若いうちが勝負と思っていましたが、岡先生のように隙間の時間を大切にする姿勢に感心しました。私も無意識のうちに、西洋の思想に流されていたのかもしれません。
芸術や宗教についての意見も述べられていて、大変興味深く拝読しました。教育観についても、令和の時代でも共感するところがあり、今でも多くの日本人に読んでいただきたいと思える名著でした。
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おすすめです
2016/03/21 08:15
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投稿者:kazu - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞にこの『春宵十話』が復刊ブームであるという記事を読んで、手に取りました。まだ途中までしか読んでいませんが、面白いです。文章もとても読みやすいです。
これは、半世紀前に書かれたものですが、今に通じることがたくさん書かれていて、特に冒頭、教育に対して「芽なら何でも育てばよい思っているのではなかろうか」という岡先生の言葉に、いろいろ考えさせられました。
日本中の人に、一読してほしい一冊です。
紙の本
春宵十話の部分が読み終わりました。
2022/01/19 21:15
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投稿者:ねこさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいて、どなたかも書いていらっしゃいますが、教育には情緒がたいせつだと。これが読みたく購入したのですが、情緒と教育者から見た視点が記されていて興味深いです、
紙の本
凡人には若干難解
2016/10/13 09:44
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投稿者:トニー - この投稿者のレビュー一覧を見る
不思議な人だ。天才数学者で、かつ経歴も凡庸ではない。自己の信念に生きる人である。
そんな人の書いた文章が凡人の自分においそれと理解できるはずはない、ということが、読み始めてすぐにわかった。
全編、形容しがたい「何か」につつまれている。こういうのを「オーラ」とでも言うのだろうか。
ところどころ、「えっ?こんなこと言っちゃっていいの?」という表現もあるが、共感できる部分もある。
息子に読ませようかと思って買ったのだが、それは取りやめにした。柔らかい頭でこれを読んで全て真に受けたらまずい気がする。
息子が自分の力量を悟って、凡人と天才の違いがわかる歳になったらそっと本棚に入れておこう。
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2014/11/24読了。
偉大な数学者らしいがほとんど存在を知らなかった。この本で語られている内容は「情緒」をキーワードとした著者の考えである。今時「今の教育はダメだ」系の文章がストレートに読めるのは新鮮だった。少し「何様だ」と思うような文章が無いでもなかったが。
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2014/12/16図書館から借りてきた。
人の中心は情緒である。と岡潔は言うが、どういう意味であるのか。
私は数学なんかをして人類にどういう利益があるのだと問う人に対しては、スミレはただスミレのように咲けばよいのであって、そのことが春の野にどのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだと答えて来た。
新明解国語辞典によると、
情緒とは、その・もの(場)に接した時に受ける、特有の情趣。
情趣とは、そのものに接した人に感じさせる、ほのぼのとした・よさ(味わい)。
情操とは、美しいもの、純粋なもの、崇高なものを見たり聞いたりしてすなおに感動する、豊かな心(の働き)。
これらを踏まえて、岡潔の情操、情緒という言葉を眺めて見たい。
購入。
何回も読まないと分からないだろうなぁ。何回も読みたい内容だなぁ。
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購入。
「情緒」が失われているという。情緒とはどのようなものか、きちんと説明されないが本文のいたるところに出てくるので何となくイメージがつかめる。
目先の刺激が強いものを受け取り過ぎて、細かなニュアンスが分からなくなっていると言われると我が身を省みてしまう。そして一度失われた情緒は回復しないというのも分かる気がする。周りからも失われていたら自分だけでは回復させられないし、緩やかにしか育てられないものだと思うから。
解説にあるように自然から色々と受け取れるよう経路を確保しておきたい。
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キーワードは“情緒”。
→https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12142356616.html
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昔から数学が苦手だったので、数学者の随筆をいつか読んでみたいと思っていたところ、見つけたのがこの本でした。
おそらく自分の理解のおよばぬ考えを持っているのだろうと思いながらいざ本を開いてみると、”数学とは「自らの情緒を外に表現することによって作り出す学問芸術の一つ」である”という驚くべき宣言が目に入る。数学は表現手段であり、芸術なのだ。これを覚えろ、答えを出せと言われ続けてきたわたしの数学は、まさに「わかったかわからないかもはっきりわからないのに、たずねられたらうなずく」教育だった。
数学というと無味乾燥した小難しい計算だと思ってしまうけれど、この筆者の考えていることはとてもシンプルなことだとわたしは思う。つまり、当たり前の物事を当たり前だと見通す純粋な目を養うということ。これに尽きる。純粋な目を養うということは、見えるものをそのまま受け入れる心をもつということだから、これは情緒の問題にほかならない。
こう考えたうえで昭和44年に著されたこの本を読んでみると、筆者の危機感はまったく色褪せないどころか、ますます重みを増しているように思える。わたし自身が今もっとも共感を覚えるのは、この一文である。「ただ、選ばれるべき優れた人というのは、少なくとも日本のくにでは、情緒のきれいな人という意味である。邪智の世界の鬼才と混同してはいけない」。物事を否定し相手を黙らせる人が優れているのではない。本当の物事を本当だと見通し、相手の悲しみがわかるということ、そういう純粋な目を持った人間を選ぶということ。それには、選ぶほうもそういう心を養わないといけない。動物性が入り込み、人の情緒が崩れれば、社会も文化もあっという間に悪くなってゆく。
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表題作の春宵十話には、数学者・岡潔の人生が語られている。そこには一般的なイメージでしか数学を知らない私には驚くようなことがたくさん書いてあった。
なによりもまず、人の中心には情緒がある、数学を成立させているのもこの情緒である、というのが岡さんの主張である。「芸術の目標は美の中における調和、数学の目標は真の中における調和」といった表現もあった。私個人の言い方になってしまうが、数学というのが人間の生の営みからすればごく限定された自意識の中でやるものと思っていたけれど、この本を読むと、それは人間の知られざる領域までを駆使した肉体的・総合的な営みであり、どこか自然の中に投げ出されているようですらあった。そこには風が吹き、すべてのものとつながるような清々しさがあった。
後半のエッセイには、最近の世の中や人の心はどんどん悪くなっていて、それが心配である、ということがたくさん書かれている。その心情を汲むことには努めたいが、あれもこれも悪くなっている、という見方をすることには賛成できなかった。孔子さまの時代から続くこの観察には、必ずしも客観的とは言えない観察者の視点の問題も含まれていると思うからだ。
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冒頭、人の中心は情緒である。その言葉に衝撃を受ける。数学者の言葉であること、普段あまり考えていなかったことだからだ。岡潔は思想家でもあったことを知る。教育について多くを語る。自分自身が受けた戦後間もない頃の教育を考える機会となった。数学者は百姓、物理学者は指物師という。なるほどだ。便利だけど落ち着かない現代社会。今、現代にこそ読まれるべき本だ。
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何故かわからないが岡潔さんがTVドラマになったので著書を借りてみた。
数学者として凄い人だったとのことであるが,エッセイも素晴らしい。全面的に合意できる訳ではないが,21世紀の今でも当てはまるというか,今になっても解決されないというか,悪くなっていることの方が多いか?