紙の本
人間って
2018/11/11 17:53
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴォネガットの作品は、どの作品もすべて人間は正しくあろうとする生き物で、そういう生き方をしている人が報われるというとてもシンプルなメッセージが含まれている気がして、とてもほっこりします。
紙の本
ふつうの人
2017/06/21 20:09
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
カート・ヴォネガットの小説は、何かがズレた変な人が出てくるイメージがありましたが、この短編集はふつうの人ばっかりで少し意外でした。少し切なくて、読んだ人に「これでいいんだよ」と言っている感じがします。真面目バージョンなヴォネガットです。
紙の本
アイデアを、丹念に育てあげ、ユーモアをまぶし、思いっきり捻りをきかせて、ストンと落とす。サプライズ効果満点のエンタテインメント小説
2014/08/20 09:59
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投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る
2007年に84歳で亡くなったカート・ヴォネガットの未発表短篇集である。SFや、ショート・ショートでよく使われるような、ちょっとしたアイデアを、丹念に育てあげ、ユーモアをまぶし、思いっきり捻りをきかせて、ストンと落とす。サプライズ効果満載のエンタテインメント小説が十四篇。手ごろな長さのものが多いので、手元に置いておいて、手の空いたときなどに一篇ずつ賞味するのに向いている。これがどうして未発表なのか、と不審になるほど完成度の高い作品が目白押しで、机の抽斗から出てきたなどという宣伝文句が信じられなくなる。
「夏は眠りの中で安らかに息をひきとり、秋がソフトな語り口の遺言執行人としてその命を安全に保管し、やがて来る春にそれをひきわたすことになる。ある秋の朝まだき、小さな家のキッチンの窓の外に広がる、このさびしくも美しいアレゴリーを頭に浮かべながら、エレン・バウアーズは、夫のヘンリーのために、火曜日の朝食を用意していた。」
巻頭を飾る「耳の中の親友」の冒頭部分。見てのとおり美文調で始まるが、この後に続くのは、隣の部屋で冷たいシャワーを浴びながらダンスを踊り、自分の体をぴしゃぴしゃたたくヘンリーの姿である。このギャップがたまらない。こつこつと真面目に働いてきた技師のヘンリーが自分の発明に有頂天になっているのだ。それは補聴器ほどの大きさで使い方も同じ。ただし、聞こえてくるのは自分の心の奥底にある、ふだんは圧し殺して聞かないふりをしている声である。夫は、その機械コンファイドーが、万人の心の友となると信じ、今から成功を夢見ているが、妻の耳に聞こえてくるそれは…。
GEに勤めていた経歴を持つヴォネガットは特にSFを意識しなくても、科学やそれを利用した機械が人間にとって果たす役割の大きさをよく知っていたのだろう。フレドリック・ブラウンあたりが扱えば、世界中が大騒動になるスラップスティック劇にもなるだろう設定が、ヴォネガットの手にかかると、こんな結末になる、という見本のような話。ヒューマニストを自認するヴォネガットだが、一筋縄では括れない人間心理の観察家でもあったようだ。
最も心に残ったのが、「ハロー、レッド」。船乗りを辞め、生まれ故郷に帰ってきた男が会いたかったのは、一人の赤毛の少女だった。かつての恋人は別の男と結婚し、娘ができていた。今では、はね橋の昇降機操作係となった男は、娘の父親に会いたいと伝言を頼む。垂直に対置された近代的な跳ね橋を操作する鋼鉄の箱と、その眼下にある河口に打ち込まれた杭の上に建つおんぼろな牡蠣小屋。少女は、毎日正午になると、父と自分用の昼食を対岸の食堂にとりに行くために渡り板を渡る。箱の上から望遠鏡でのぞき見る男は、事態を支配しているつもりだ。かつての仲間が注視する中、話し合いが始まる。やがて二人の男の対話が果て、最後に残った手札の一枚が、事態を逆転させる劇的な効果を見せる。「短篇小説の鑑」のような一篇。
ヒューマニストを標榜するヴォネガットの真骨頂のような作品である。ヒューマニズムというやつは、それを支持するだけで、錦の御旗をいただいた気にさせ、当人を自己批判を忘れた俗人にしてしまう。そのせいか、ややもするとその作品も、上っ面ばかりきれいなものになりがちだが、しっかりした構成と文章力があれば、人の心をうつような作品にもなる。
少し前の時代に書かれた作品だが、大森望の訳のせいか、洋書を思わせる洒落た装丁のせいか、古びた感じを受けず楽しく読めた。もう一冊未訳の未発表作品集があるという。刊行を楽しみに待ちたい。
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待望のヴォネガット未発表作品集。バーで出会った殺人アドバイザー、夫の新発明を試した妻、“見る影もない”上司と新人女性社員……やさしくも皮肉で、おかしくも深い、珠玉の短編14編。
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2007年に84歳で亡くなったカート・ヴォネガットの未発表短篇集である。SFや、ショート・ショートでよく使われるような、ちょっとしたアイデアを、丹念に育てあげ、ユーモアをまぶし、思いっきり捻りをきかせて、ストンと落とす。サプライズ効果満載のエンタテインメント小説が十四篇。手ごろな長さのものが多いので、手元に置いておいて、手の空いたときなどに一篇ずつ賞味するのに向いている。これがどうして未発表なのか、と不審になるほど完成度の高い作品が目白押しで、机の抽斗から出てきたなどという宣伝文句が信じられなくなる。
「夏は眠りの中で安らかに息をひきとり、秋がソフトな語り口の遺言執行人としてその命を安全に保管し、やがて来る春にそれをひきわたすことになる。ある秋の朝まだき、小さな家のキッチンの窓の外に広がる、このさびしくも美しいアレゴリーを頭に浮かべながら、エレン・バウアーズは、夫のヘンリーのために、火曜日の朝食を用意していた。」
巻頭を飾る「耳の中の親友」の冒頭部分。見てのとおり美文調で始まるが、この後に続くのは、隣の部屋で冷たいシャワーを浴びながらダンスを踊り、自分の体をぴしゃぴしゃたたくヘンリーの姿である。このギャップがたまらない。こつこつと真面目に働いてきた技師のヘンリーが自分の発明に有頂天になっているのだ。それは補聴器ほどの大きさで使い方も同じ。ただし、聞こえてくるのは自分の心の奥底にある、ふだんは圧し殺して聞かないふりをしている声である。夫は、その機械コンファイドーが、万人の心の友となると信じ、今から成功を夢見ているが、妻の耳に聞こえてくるそれは…。
GEに勤めていた経歴を持つヴォネガットは特にSFを意識しなくても、科学やそれを利用した機械が人間にとって果たす役割の大きさをよく知っていたのだろう。フレドリック・ブラウンあたりが扱えば、世界中が大騒動になるスラップスティック劇にもなるだろう設定が、ヴォネガットの手にかかると、こんな結末になる、という見本のような話。ヒューマニストを自認するヴォネガットだが、一筋縄では括れない人間心理の観察家でもあったようだ。
母の介護で人生を棒に振ったと自己憐憫にふける会社員の前に降ってわいたように現われた美人の秘書が。表題「FUBAR」とは軍隊のスラングで、” fouled up beyond all recognition ” の略で「見る影もないほどひどい状態」の謂。地方の高校教師を夫に持つ妻が地元民をモデルに小説を書いたことから起きる家庭内悲劇を突然の訪問者の視点から描いた「ヒポクリッツ・ジャンクション」。禁酒法時代のとある地方都市を舞台に、無実の市民が町中の実力者の口裏合わせにより追い詰められてゆく、この短篇集では異色のサスペンス劇「エド・ルービーの会員制クラブ」と、手を変え品を変え、読者を楽しませようとする作品の数々は、数え上げればきりがない。
なかでも、最も心に残ったのが、「ハロー、レッド」。船乗りを辞め、生まれ故郷に帰ってきた男が会いたかったのは、一人の赤毛の少女だった。かつての恋人は別の男と結婚し、娘ができていた。今では、はね橋の昇降機操作係となった男は、娘の父親に会いたいと伝言を頼む。垂直に対置された近代的な跳ね橋を��作する鋼鉄の箱と、その眼下にある河口に打ち込まれた杭の上に建つおんぼろな牡蠣小屋。少女は、毎日正午になると、父と自分用の昼食を対岸の食堂にとりに行くために渡り板を渡る。箱の上から望遠鏡でのぞき見る男は、事態を支配しているつもりだ。かつての仲間が注視する中、話し合いが始まる。やがて二人の男の対話が果て、最後に残った手札の一枚が、事態を逆転させる劇的な効果を見せる。「短篇小説の鑑」のような一篇。
ヒューマニストを標榜するヴォネガットの真骨頂のような作品である。ヒューマニズムというやつは、それを支持するだけで、錦の御旗をいただいた気にさせ、当人を自己批判を忘れた俗人にしてしまう。そのせいか、ややもするとその作品も、上っ面ばかりきれいなものになりがちだが、しっかりした構成と文章力があれば、人の心をうつような作品にもなる。
少し前の時代に書かれた作品だが、大森望の訳のせいか、洋書を思わせる洒落た装丁のせいか、古びた感じを受けず楽しく読めた。もう一冊未訳の未発表作品集があるという。刊行を楽しみに待ちたい。
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夏は眠りの中で安らかに息をひきとり、秋がソフトな語り口の遺言執行人としてその命を安全に保管し、やがて来る春にそれをひきわたすことになる。という冒頭を読んだだけで痺れました。学生時代に夢中になって読んだカートヴォネガットの未発表小説。懐かしく思いながら読みました。
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朝倉久志氏以外の翻訳は実に40年ぶりなんだそう。
でも大森氏も朝倉訳育ちらしく、雰囲気を継承していると思う。
◆ハロー、レッド
育ての親を選んだ少女の取った意思表示が光る。
「リリアーナの黒髪」って、同じ主題の少女漫画があったなあ・・・
◆小さな水の一滴
パラノイアな女たらしにはパラノイアックな復讐を★
あー爽快w
◆新聞少年の名誉
そう、少年の名誉は殺人事件よりも大切。。。!?
◆はい、チーズ
新手の強請り・・・うわ、ブラックだああ
◆この宇宙の王と王女
この話、誰も悪くないのに、とても切ない。
そう、人は誰でも「置かれた場所で咲く」しかないんですね。
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おもしろい‼︎
ユーモアと皮肉がきいていて、すべての話しに勢いがあって。
別の話しももっと読みたい。(著者がすでに亡くなられてるのが残念で仕方ない)
カート・ヴォネガット氏の小説の多くは別の方がしてきたそうなので、そこも気になる。
1番すきな話は、「セルマに捧げる歌」
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未発表短編集ってどうなんかなーとか正直思ってたけど、読んでみて良かった。
皮肉とユーモアとあとはちょっぴり意地悪だったり優しかったり。どれもヴォネガットらしくて好き。
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一番すきといってもよいボネガットの未発表短編集
機械化が好きではないって主張が前面に出てくる「耳の中の親友」、なんかよくわからん「FUBAR」、これまた金持ちの悲哀かなぁ?ぴんとこない「ヒポクリッツ・ジャンクション」、自由への戦いと明るいエンディングの「エド・ルービーの会員制クラブ」はなかなかいい。
天才ってなんだろうな?「セルマに捧げる歌」を読むとそう思う。少しだれてきたからか、「鏡の間」は意味混乱だ。続く「ナイス・リトル・ピープル」にしてもイマイチ。
半分を過ぎ、「ハロー、レッド」のトンチンカンな結末に驚き、「小さな水の一滴」のわけのわからなさに閉口する。
アリの文明ってな「化石の蟻」の楽しさがあまりわからずがっかりして、「新聞少年の名誉」を流し読み。
表題作「はい、チーズ」はブラックにおもしろい。まともなショートだ。続く「この宇宙の王と女王」も金持ちと貧乏がテーマかなぁ。
ラストの「説明上手」は単なる5分間ミステリーだな。辻褄が合う珍しい結末。
全体的にはボネガットの香りが濃いけど、やはり寄せ集め。ローズウォーターさんが傑作だと思う私には、少し残念かな。
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中島さんに借りた本。
読んだヴォネガットの中では一番面白かったが、短編なのでのめり込む感じはなくて読み終わるまで時間がかかった。
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この本でヴォネガットと出会った。なぜこの本を手に取ったかは謎だけどたぶんジャケ借りかな?表紙めっちゃかわいい。どの話も面白くてびっくりした、特にSF要素がある短編、星新一ぶりにハマった。
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ショートショートと言うと、星新一しか知らないのよ。日本人では。でも割と輸入物ではけっこう読んでる気がして、何故なんかな。海外もの信仰があるんかな。
でもってこの手の小説と言えばやっぱりピリリと風刺が効いたというか、そういう風に思うのも全部星新一のせいじゃねーか!とも思いつつ、しっかりその感じは受け継がれてて、まぁ要するにあれ、星新一風なんである。
そして短ければ短いほど感情移入されないのか、あれまぁ残念、的な展開でも受け入れられる。そしてちょっと長めな話だと感情移入するからハッピーエンドやら勧善懲悪を求めずにいられない。そしてそこらへんの欲求ををうまいこと満たしてくれる。バランスが良いというか。
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生前に未発表だった短編集。どれも序盤から興味と緊張を持たせ続け、鮮やかに終わる。
ごく一般の人がいつのまにか悪夢のような環境に置かれ、こちらも緊張したり、家族の問題を正面から展開させ、胃をキリキリさせたり。
例えるなら、ジェットコースターが長い坂を登っていき、急に真下に落とされたり、防護ネットに守られて安堵したりする。
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「この宇宙の王と女王」魂の奥底まで届く愛の深さに触れていないことでは、ふたりは、くまのプーさんレベルだった。(略)そして、汚れたことは汚れた人々にしか起こらないという、くまのプーさん的な思い込みの中で…
カルピンスキーがいい人。