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「保守主義」を語るにあたっての必要最小限の知識
2016/07/15 21:39
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代は「保守主義」が跋扈する時代ともいえるが、実はいわゆる「新自由主義」程度しか知らない人も少なくない。トクヴィルの民主主義論をはじめとしたフランスの政治思想を専攻されている著者による、「保守主義」とは何かを知るための入門書。「保守」を語るのであれば、本書の知識程度は当然の前提となろう。
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本当の保守とは
2017/03/30 17:30
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投稿者:あいん - この投稿者のレビュー一覧を見る
保守という言葉が胡散臭くなってきた昨今、あらためて保守ということを考えてみたくなり、この本を購入しました。フランス革命期から現代日本まで、本来の保守と保守を標榜する右傾化とが、同じステージで語られていることを何となく認識できました。何ごともバランスが大切であり、極端に傾き過ぎないように意識して見守っていきたいと思います。
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「進歩主義」の時代の終わりに
2021/12/08 21:44
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投稿者:Fontana - この投稿者のレビュー一覧を見る
「今日と同じでない明日」、そんな時代があった。そんな時代は大きな変革・革命・戦争で始まる。フランス革命、ロシア革命、日本で言えば明治維新や1945年の敗戦。そういうガラガラポンがあって過去を清算して新しい世界を作る、それが「進歩主義」。しかし、進歩主義の行きつく果ても結局は停滞であることは歴史が証明したし、今現在、われわれも停滞の時代にいる。
「保守主義」とはそういうガラガラポンを否定する。伝統と歴史を重視し不具合を修正しながら過去につながる明日を愛する、それが「保守主義」。「保守主義」の本家はガラガラポンなしに帝国となったイギリス。そしてアメリカ。
系譜をたどれば、エドマンド・バーク、T.S. エリオット、G.K. チェスタトン、ハイエク、オークショット。アメリカではヴィーヴァー、ラッセル・カーク。アメリカには反知性主義、リバタリアニズムと流れてフリードマン、ノージック。一方、別の保守ネオコン側からの保守革命(レーガン)となるが。このあたりまで来ると本来の「保守主義」と混淆して判然としなくなってくる。
判然としなくなってきたのは、「保守主義」のカウンターパートである「進歩主義」そのものが行き詰りを見せているからでもある。工業化・電子化・グローバル化の果てにもはや「進歩主義」では立ち行かないことがわかってきた、そういう世の中で若者たちがそもそも保守的だったりという現象がおこる。
そこで本著の「はじめに」にあるチャーチルの言葉「20歳のときにリベラルでないなら情熱が足りない。40歳の時に保守主義者でないなら分別がたりない」にもどる。私も含めて「進歩主義」の長い戦後を生きてきた世代は、今でも、60歳でも「進歩主義」を是としているのではないか、まさに分別が足りない。この本によって真の保守とは何かを考える。
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16/06/30。
10/16読了。
保守主義の叡智をバーク、エリオットに遡って明らかにした本。
リベラリストの「実際」の胡散臭さに気づいた者は、此処に行き着く。
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名著。
保守主義の祖であるエドマンド・バークの思想から説き起こし、保守主義とは何か、保守主義と伝統主義、復古主義、原理主義との違いを明確に説明している。
その後の保守主義の世界的な流れも押さえ、明治以後の日本に保守主義はあったのか、丸山真男と福田恆存の議論を引きながら検討する。
保守とは何かを守るものだが、その「何か」が明確ではない現代においての保守主義の難しさが明確になる。
現在の保守主義者の多くは「自称」に過ぎないことが分かるはずだ。過去や伝統が自明でない時代に、何を守るのか、自分に問いかけるためにも参考になる。
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筆者は、イギリス社会学者アンソニー・ギデンズが用いた「ポスト伝統的社会秩序」という言葉の解説によせて、今や広義の原理主義が台頭したと指摘する。なにが「伝統」でなにが「権威」かなど再定義する意味はなく、人々は守ろうとしているものが「私の伝統」「私の権威」に過ぎないという可能性を認めている。「進歩」や「革新」といった言葉が輝きを失った現在、それに相対して生まれた保守主義もまた迷走をはじめたというのである。しかしながらそれでも、共通の認識を欠いたまま「保守」を自認する人が増えているとき、「保守とはなにか」という疑問が生じる。本書はそうした経緯でもって著されたようである。
本書の冒頭にて筆者が引用しているチャーチルの言葉に、「20歳のときにリベラルでないなら、情熱が足らない。40歳のときに保守主義者でないなら、思慮が足らない」というものがある。わたしは20代であるから、チャーチルの論理でいえば正常で、保守主義に対する嫌悪感がある。良い伝統はあるだろう。実益のある権威もあるだろう。しかし他方で、その伝統と権威に圧殺されているものもあるだろう。
保守とは、守るべきものがある「一人前」の上からの権利主張ではないか。守るものもない、ただ生きることに精一杯の「半人前」には縁遠い。しかしながら、「半人前」が再生産される閉鎖的な社会にこそ保守は力を増す。保守の射程にあるのは、人でなく国であり制度である。秩序あっての人。そのリアリズム、割り切りの良さにやるせなさを感じるのは、わたしが20代だからか。
以上のように、相容れないとは思うけれど、わたしが違和感を感じる相手とはなにかを知りたい。だからこそ本書を手にとったわけだが、読み終えてみて、なるほどやはり「うっとおしい」と感じる箇所はある。けれどわたしの理解は、多様化した「保守主義」の一面しかとらえられていないこともまた学んだ。
とくにここで詳しくは述べないが、 エドマンド・バークの「偏見」を逆手にとった政治、オークショットの「人類の会話」という考え方などには非常に惹かれた。守るだけではなく部分的変更を加えること、すなわちは現実的困難から逃避しない態度、自由への容易ならざる闘い、それは耳触りのよい理想論よりよほど魅力がある。
しかし一点、どうにも納得のいかない箇所がある。わたしは普段「宗教」を軸にフランス史をみている。だからこその疑問なのだが、筆者はフランス革命を歴史における「断絶」とする。すべてをさらにしてしまった革命。たしかにそれは妥当な指摘ではある。しかし、種ないところに生命はない。フランス革命は、はたして過去の否定なのだろうか。すくなくとも宗教に関していうのであれば、長い歴史を紐解いてみたとき、フランスはケルト、ローマ、ゲルマン等々の宗教からついぞ解脱することはなく、キリスト教は妥協の歴史を編んできたのであり、ライシテにしても、フランク王国とローマ教会が接近したときからの絶えざる主導権争いに土台がある。フランス革命はあらゆる起爆剤になったが、引火物なければ爆発もない。否定ではない。フランス革命にも保守のいう「伝統」はある。抽象的な���念を持ち出す政治体制は、むしろフランスの伝統でさえあるように思うのだが、まだわたしの理解が足らないのか。文脈が別のところにあったとしても、やはり筆者の主張にはまだ疑問が残る。勉強はつづく。
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○書店で本書を手に取って、保守主義って何だろう?って改めて考えてみたのですが、答えは出ませんでした。あまり意識するようなことではないですから。
○そこで本書を読んでみたところ、保守主義とは、現在の法制度や制度は、歴史的に形成されてきたものであることから、抽象的な理念やイデオロギーで全面的に変更することには慎重であること、それでいて変化することには必ずしもいとわないような思想をいうのだそうです。
○本書では、このような保守主義がどのように形成されてきたのかについて、その端緒であるイギリス、それからアメリカについて検討した後、わが国ではどうなんだろうかということで、わが国における保守主義について論じています。
○現在、進歩主義や社会主義の後退により、そのライバルである保守主義もその存在が問われているといった状況だそうです。著者はどうやら保守主義に期待しているような記述がみられるのですが、今後、わが国の保守主義としては、歴史の連続性を見出すこと、そして守るべき価値を見出すことが必要とのことでした。
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いわゆる保守の考えについて、筆者なりに定義をした後、その学説の変遷について、筆者なりの分析軸を設定してまとめた本。
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保守主義とは何か
イギリスのEU離脱を考える上で、一度保守主義について勉強したいと考えて読んだ。
かねてからトクヴィルなどを読んでいたため、保守主義と私の考え方は親和性が高いと考えていたが、読んでみるとやはり親和性の高さを再確認した。
保守主義といっても実はバラバラで、フランス革命に対してや社会主義に対して打ち出した保守主義と現代アメリカに存在する保守主義はかなり違うように思える。
前者の根本的な考えとしては、人間の持つ知に対する懐疑(自己の能力への不信)から、抽象的な原理に基づく未来への飛躍という近代人にありがちな幻想を排することで、歴史や伝統にいったん範を求めたうえで考える糧にするというものである。バークやエリオットなどの紹介されている保守主義者は、フランス革命や社会主義から人間の理性への自信過剰を読み取り、そのような驕りを排すように訴えたのである。バークの章で面白かった点は、偏見や迷信の再評価である。人間社会とは複雑であり、明快な抽象的原理では説明がつかないという前提から、偏見や迷信という長年はぐくまれてきた人間の精神活動に、理性を補完拡張する潜在可能性を見て取ったのである。
保守主義の議論は、外山滋比古の知識と創造性の話を彷彿とさせる。外山は知識偏重の現代社会への批判として、知識がありすぎることは逆に創造性を阻害するということを述べているが、やはり知識が全くなければ創造性そのものも危うくなる。結局、同じようなパターンに陥って終わりであろう。知識と創造性の関係は保守と改革の関係に似ている。どちらもないといけない、バランスが重要である。クリエイティビティという言葉が跋扈するが、やはり知識あってのクリエイティビティである。
保守主義のよい点は宗教を認めている点である。宗教とはバークのいう偏見や迷信であり、理性を補完する役割を持っている。絶対者の存在を設定することにより、人間は驕りを抑制することが出来る。人生哲学としても十分すぎる文句である。
保守主義は、実存主義と親和性が高いようにも思える。近代において世俗化された社会では、人間は絶対的に信奉するものを、神ではなく自らの抽象的規則に求めた。しかし、それ自身はやはり人間が作り出したものであるゆえに脆弱であり、実存主義的な言い方をすれば、伝統にアンガージュすることによって、その自由な身の上に重しを乗せて浮遊しないようにすることこそが保守主義のかんがえかたであるのであろう。
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保守主義の父であるエドマンド・バーグを生んだイギリスが、EUから撤退し、アメリカではトランプが大統領になり、このような時代だからこそ、もう一度「保守とは何か」を問い直す時期なのかもしれない。
保守というとよく言われるのが、変化を嫌いカビの生えた伝統を墨守することだと思っている人も多いと思う。しかしこれは保守ではなく、伝統主義です。
保守とはエドマンド・バーグが「フランス革命の省察」の中で以下のように述べている。
「何らか変更手段を持たない国家には、自らを保守する手段がありません。そうした手段を欠いては、その国家が最も大切に維持したいと欲している憲法上の部分を喪失する危険すら冒すことになり兼ねません。」
守るべきものを守るために自ら変わることである。それは気候に応じて着替えるのと同じで、服は変わるが中の人間は変わらない。これを「心頭滅却すれば火もまた涼しい」という理論で人間限界も考えずに、服と一緒に人ごとごと変えようとするのがリベラルだ。
周辺各国の政治思想が大転換期にある中で、今まさに、日本は何を守り、そのためにどう変化するのか?問われる時期。
そんな時期だからこそ、この「保守主義とは何か」を読む必要がある
この本は保守の源流とその変遷を、リベラルとの戦いを通しわかりやすく説明している。
保守主義を大雑把に全体を知るにはいい入門書になると思う。
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仲正氏の著作にも言えるが、愛国者でない人が書いた保守主義の解説書は、対象への距離感が冷静で、手際よくまとめられている。本書は、第3章の近年の保守主義(ネオコン)に対する論考は類書にないが、バーク由来の保守思想とは完全に別物であるような気がする。結論として、保守主義を憲法9条の擁護につなげるのも、仲正氏と同じ。9条を守るためなら何でも利用するのだなあと思う。なお、参照文献で中川八洋氏を完全スルーするのも、仲正氏と同じ。「触らぬ神にたたりなし」で、こっちは理解できる。インテリとして正しい判断だろう。
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「保守ってなあに?」子供に聞かれて答えられないやつです。本書は保守主義を、歴史を紐解きながら位置づけと考え方を明確にし、今後への提言を行っている。
本書では始祖であるバーグの、自由と民主主義の実現のために継承された制度や秩序を守ることが保守主義の定義とし、論を進めている。しかしながら、保守主義は、過去から継承されている"何か"を対抗する"何か"から守るという相対的な思想。時代により、進歩主義やリベラル、共産主義、大きな政府など、対抗軸が変わっている。昨今の保守主義者の言動から、守るものも変わっているような気がする。
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これまでいい加減に考えてきた、保守、革新、右翼、左翼ったものについて、ちゃんと整理できてよかったと思います。
その上で保守についてのイメージがだいぶ変わりました。守るべきものは何か、そしてそれは、どういう歴史的経緯で守るべきとされているのか、その自覚がなければだめなのですね。
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進歩主義に対抗して生まれた保守主義は、それゆえにその内容は不明確な部分が多く、何なのかが分かりにくいところがあります。それは何故なのかについて、その歴史的な成り立ちを解説することで解かれています。時代時代でその主人公は変わりますが、保守たる意義を受け継いで、保守の定義を守り続けること、これが弛まなく続いて来たのだと分かります。保守というが何を守っているのか。本書を読むことで彼らの成さんとするところを知ることができました。
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保守とは昨今人口に膾炙する言葉ではあるが、定義するのはなかなか難しい。そんな中で、保守主義についてコンパクトにまとめた本。特に日本の保守主義についての部分が示唆に富む。