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ピエロさんのレビュー一覧

投稿者:ピエロ

608 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

子供たちと老人の心の交流。おもしろかった。

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

小学生の仲良し3人グループの内の一人が、親戚のお葬式に出るため学校を休む。戻ってきた彼は、ほとんど会ったことのない人なので特別悲しみは感じなかったと言うが、死体を見たことがあるか、死とは何か、死ぬとどうなるのか、グループ内で大きな話題となる。
近所にすぐに亡くなりそうな一人暮らしの老人を見つけた彼ら、死ぬところを見ようと毎日観察しはじめるが・・・。
真剣に観察を続ける少年たち、それに気付きからかい気味の対応を見せる老人、それでムキになり、意地になって後を追い回す子供たち、そのうちにいつしか少年たちと孤独な老人の間に生まれる奇妙な心の交流。
ちょっとだけ大人に近付く子供たちと、彼らのおかげで無気力に過ごしていた毎日を変えることのできた老人の姿が、さわやかにほほ笑ましく綴られていきます。
ほんのわずかの時間で読んでしまえるほどの長さですが、十分な満足感を味わえ、読み終わったあと素直におもしろかったと言える一冊です。

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紙の本

紙の本君主論

2006/05/17 22:13

君主論

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

目的のためには手段を選ばない、目的は手段を正当化するといった意味の「マキャヴェリズム」、権謀術数に長けた人を指す「マキャヴェリスト」の語源となった、著者ニッコロ・マキャヴェリ(本書ではマキアヴェッリ)が、当時、彼が住んでいたフィレンツェの統治者に献呈した、上に立つ者の在り方、国の保ち方、民の治め方などを書いた、政治学の古典として名高い名著。
「マキャヴェリスト」という言葉のせいか、著者にはあまり良いイメージを抱いていなかったのですが、本書を読んでそれが少し変わってきました。民を治める者は時と場合によっては悪人になるべきとか、新しい領土を得てそこを長く保つためには、前統治者の血縁を皆殺しにすればよいなど、確かに厳しいことも書いてあります。が、これらは過去の例をいくつも挙げていることからもわかるように、マキアヴェッリが初めて提唱したものではなく、大昔から何度も何度も繰り返し行われてきたことをマキアヴェッリがまとめたに過ぎないものです。美辞麗句を並べるよりも、たとえ冷酷と思われようとやらなければならないことはやるべきだという徹底した現実主義者マキアヴェッリの姿が見えてくるような気がします。
あまり良くない意味でマキャヴェリストという言葉が使われだしたのは、おそらく本書に書かれているモーゼのことが気に入らなかった教会のせいではないでしょうか?(マキアヴェッリの著作は本書しか読んでいないので憶測です。他の著書にその原因があるのかもしれません)
本書、講談社学術文庫版は、本文に入る前に前書きとして、『君主論』が書かれた当時のイタリアの政治情勢やフィレンツェの状況が簡単に説明されているので、マキアヴェッリが、なぜ、誰に対して、どのような思いで書き上げたのか、『君主論』を読み理解するのに多いに役立ちます。欲を言えば、もっともっと詳しい説明解説をつけてほしかったです。

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紙の本

紙の本蒲生邸事件

2006/02/15 22:42

SFミステリの傑作です

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

平成六年、大学受験に失敗、予備校受験のために再び上京してきた尾崎孝史は、二月二十五日の夜、宿泊していたホテルで火災に遭う。危ないところを同じホテルに泊まっていた不思議な男に助け出されるが、気付くとそこは昭和十二年の二月二十六日、二・二六事件の起こった日、陸軍大将蒲生憲之の邸宅の庭だった。そこで起こる大将の殺人事件。家の外では兵隊たちがバリケードをつくり道路を封鎖、家の中では遺産を巡っての醜い争い、どちらにも不穏な空気の流れる中、果たして孝史は現代へと帰ってこれるのか?
物語の全体に暗い影を落とし、重要なカギともなっている二・二六事件、学校では近・現代史をあまり詳しくは教えないので名前だけしか知らない、どんな事件だったのかよくわからないという人も多いことでしょう。かく言う私もその一人。そんなほとんど知らないような事件が物語の中で大きな意味を持っているということで、読むのをためらっていたのですが、そこは稀代のストリーテラー宮部女史、話の中で易しく詳しく上手に事件の発端とその顛末について説明してくれていますので、心配はいりません。
現代から過去へのタイムトリップと殺人事件の謎への興味ばかりでなく、大学受験に失敗、劣等感に苛まれていた一人の青年の成長の物語としても十分におもしろく読み応えのある、SFミステリの傑作です。

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紙の本

記紀への入門書に最適

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『古事記』と『日本書紀』、古代史や日本神話に興味を持つ人ならば、一度は目を通しておきたい書ですが、読み難いのも確か。多くの出版社から現代語訳や対訳の本が出ているものの、それでも通して読むのは大変です。『古事記』はまだおもしろく読めるのですが、『日本書紀』ときたらもう・・・。本を買ってはみたものの、途中で挫折してしまったという方も多いのでは?かく言う私もその一人、『日本書紀』はなかなか読み通せません。
で、そんな方には本書がおすすめ。読みやすく、地図や写真が多く使われていてわかりやすく、記紀の概略をつかむことができます。とは言ってもあくまで概略、本書で大まかな流れをつかんだら、ぜひ本編に挑戦しましょう。今度はきっと読み通せる!かな?

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紙の本

紙の本重耳 上

2005/07/13 08:53

名君重耳の生涯

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

古代中国、春秋時代、晋国の王の子として生まれながら後継者争いの陰謀に巻き込まれ若くして国を出奔、以来各国を放浪、苦難の旅を繰り返し62歳のときに帰還、春秋時代を代表する賢王の一人に数えられる晋の文公 重耳(ちょうじ)の生涯を描いた長編歴史小説。
文庫では上中下3巻で、上では幼少期から青年期までの成長を、中では王の子として国政に参加しての活躍と国からの出奔を、下では旅の苦難と帰還、中国全土の覇者となるまでが、多くの登場人物と当時の国の情勢を交えて語られていきます。
大きな成功には苦労が必要、苦労は報われるといった教訓めいた、道徳の教科書にでもでてきそうな成功譚という感じがしないでもないですが、重耳をはじめその周りに集まる人々はとても魅力的に、仇役はいかにも憎々しげに活き活きと描かれています。質・量ともに読み応え十分な歴史小説、遥かなる古代中国に思いを馳せ、重耳とともに一喜一憂、楽しみましょう。

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紙の本

紙の本UMAハンター馬子 完全版 1

2005/07/10 18:47

祝完結

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

学研からシリーズ2冊が出版されて、その後中断したまま(どうやら出版社の都合だったよう)、どうなるのかとても気になっていた『UMAハンター馬子』が、この度出版社を替えて無事完結。まずはめでたい。
UMAとは、ネッシーや雪男(イエティ)、ツチノコなど目撃情報や足跡などは見つかるが、その存在が確認されていない生物のこと。伝統芸能である「おんびき祭文」の語り手である蘇我家馬子が、祭りやイベントで訪れる日本各地でUMAと遭遇、不思議な事件に巻き込まれるといったストーリー。なぜ馬子がUMA情報のある土地を選んで出向くのかも、シリーズを通した大きな謎になっています。
さてこの馬子という人が、なんとももの凄い。芸の腕は超一流なのだが、その性格といったら・・・。派手でわがまま、下品で図々しく大食い。どケチでどすけべえと、もうどうしようもない。こんな最悪なおばさんをはじめ、その芸にあこがれて弟子入りしたまだ未成年の少女イルカ、二人の前に姿を見せる全身黒ずくめの服装の謎の男などなど、キャラが立ちまくりの登場人物に、意外性と笑いにあふれたストーリー、スーッと力が抜けていくようなダジャレ等々、SFファン伝奇ミステリファンならずともじゅうぶんに満腹満足するてんこ盛りな内容です。読んで驚き笑うべし。

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紙の本

紙の本時をかける少女 新装版

2008/08/27 21:03

何度読み返してもおもしろい

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

巨匠 筒井康隆の、古典と呼んでもいいくらい超有名なタイムトラベルもののSF小説。何度も映像化、アニメ化されているので、見たこと読んだことはないけれども、そのタイトルだけは知っているという人も多いことでしょう。

発表が1965年、学生向けの科学雑誌ということもあり、古臭く子供っぽく感じてしまうところも多々ありますが、それでもとてもおもしろい。何度も読み返していて、意外とあっけなく感じる結末もわかってはいるのですが、読み返すたびに、初めて読んだときの感動とちょっぴりの切なさ、こんなにおもしろい小説があったんだという新鮮な驚きが蘇ってきます。
映像作品も見てはいますが、小説にはかなわない。映画・アニメ版の『時をかける少女』しか知らないという人は、ぜひ一度読んでみてください。

いっしょに収録されている二編『悪夢の真相』と『果てしなき多元宇宙』も、なかなかおもしろい作品です。

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紙の本

紙の本ぼんくら 上

2007/07/15 22:43

いつもながら読み出したら止まらない宮部みゆきの時代小説

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

江戸は深川、通称鉄瓶長屋で起こった殺人事件。続いて長屋の取締役ともいえる差配人が失踪してしまう。代わりに若い差配人 佐吉がやって来たが、さらに長屋に住んでいた三家族が出て行ってしまう。次々と住人が減っていく鉄瓶長屋に何が起こっているのか?面倒なことが大嫌いな本所深川方の同心 井筒平四郎が探索に乗り出すが・・・。長屋で貧乏ながらも明るく懸命に生きている人々と、そこに起こった降って湧いたかのような不思議な事件の顛末を、連作の形で描いた時代小説です。
いつものことながらとてもおもしろい、読み出したら止まらない宮部みゆきの時代小説。そしてこれもいつものことながら、鉄瓶長屋に迷い込んでくる長助、驚くような記憶力の持ったおでこの三太郎、何でも計ってみたくなるクセの持ち主で平四郎の甥の弓之助ら、出てくる子供たちがよく描けています。暗くなんとも重苦しくやるせない内容なのですが、この子供たちと主人公の井筒平四郎の飄々とした人柄のおかげで、読後感はとてもさわやかなものになっています。
名前だけですが、回向院の茂七が出てくるのもファンにはうれしいところ。少しでも事件に絡んでくれたらもっとうれしかったなあ。
続編『日暮らし』もありますので、井筒平四郎と弓之助を気に入った方は、ぜひそちらも手に取ってみてください。

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紙の本

ピノコがいるワケ

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「ブラックジャック」が雑誌連載されているころは、ピノコがどうしても好きになれませんでした。ブラックジャックの後ろからチョコマカついていって、手伝いもするけど失敗して迷惑をかけることのほうが多い。ブラックジャックはクールで何事にも、どんな傷や奇病を目にしても超然としているからこそブラックジャック、彼の調子を狂わせるピノコはなんか目障りでした。「ワタチノ…」とか「ナノネンノネン」などのセリフも読みづらく、読んでも何を言ってるのかよくわからないことが多かったのも、好きになれなかった理由の一つです。
 十数年たってから読み返してみて、自分の読みの浅さ、青臭さにガッカリしてしまいました。ピノコがいなかったら、ブラックジャックはあまりにも救いがなさすぎ、ミジメすぎるではないか! つらい過去、暗い現在、光の見えない未来。これらの全てを癒していたのがピノコだったんですね! ピノコの存在の大きさに、ようやっと気付きました。
 ピノコ、嫌っていてごめんなさいね。あのころはまだピノコの大事さに気付けないようなガキだったんだ。これからもズッとブラックジャックのそばに寄り添っているんだよ。

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紙の本

悩む聖徳太子

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 聖徳太子(ここではまだ厩戸王子)というと、切れ長の目にふっくらとした頬、ヒゲを伸ばした旧一万円札の肖像を思い浮かべます(年がバレるかな…)。仏教を保護し、十七条の憲法を定め、と授業で習ったことのほか、一度に十人の話を聞き分けたなどの伝説もあり、その偉大さが今に伝わっています。
 しかしここで描かれる聖徳太子像は、家族に恵まれず、自分の望みのためならば姑息な手段を使うことも厭わない。権力を握るために策謀を巡らせ、決して成就しない愛にもだえ苦しむ、といったように、今まで持っていた「立派な人物」のイメージとはまるで違っています。が、それがかえって数々の伝説を打ち破って、聖徳太子だって人間だったんだ、と知らせてくれているような気がします。
 歴史なんてホントのところは誰もわからないんだから、こんな聖徳太子像があってもいいんじゃないでしょうか。物語を創造する力、マンガのおもしろさと可能性を感じさせてくれる作品です。

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紙の本

まさに名作集

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本探偵小説全集の12巻目は、「名作集2」として葛山二郎、大阪圭吉、蒼井雄、三人の短編長編あわせて七作が収録されています。
葛山二郎「赤いペンキを買った女」は、シリーズキャラクターの花堂琢磨弁護士の活躍する、戦前(昭和四年雑誌掲載)では珍しい法廷ものの本格ミステリ。トリックは小粒ですがスッキリときまっていて、法廷での検事と弁護士の白熱した攻防もおもしろい佳作です。これで興味を持った方は、さらなる花堂弁護士の活躍が読める国書刊行会刊『股から覗く』をどうぞ。
近年再評価されつつあり、文庫版で傑作集も出た大阪圭吉、「とむらい機関車」、「三狂人」、「寒の夜晴れ」、「三の字旅行会」の四短編が納められていますが、どれも作者の代表作と呼ぶにふさわしい、短編本格ミステリのお手本にしてもいいくらいのできばえです。傑作選などではなく、ぜひ全集を出してほしい作家の一人です。
蒼井雄の長編「船冨家の惨劇」はアリバイくずしの名作、全盛時の鮎川哲也の作品に匹敵するといえば、どれほどのものなのかわかってもらえるでしょうか。以前一度読んでトリックやら犯人やらミステリの大事なところを覚えていたにもかかわらず、十分におもしろく読めました。このほか、怪しい雰囲気漂う中編「霧しぶく山」も収録。
巻末には、中島河太郎「日本探偵小説史」がついていて、これも読み応えのあるうれしいおまけです。
本書のようなアンソロジーを読むと、忘れられてしまった作家、自分の知らないミステリの名作がまだまだ数多くあるんだろうなと思わされます。各出版社の方々には、新作ばかりに目を向けず、そういった作家を一人でも多く、作品を一作でも多く紹介してくれるよう期待します。

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紙の本

紙の本ウォータースライドをのぼれ

2005/11/03 13:21

待ちました

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いやあ、待たされました待ちました。シリーズ前作『高く孤独な道を行け』からなんと六年。ようやくのニール・ケアリー四作目です。
恋人と同棲中、所属する朋友会の仕事は休暇中、引退も考えているニールの元に現れた養父ジョー・グレアム。「簡単」だとの言葉を信じて仕事を引き受けたもののそう簡単にいくはずもなく、恋人カレンまで巻き込んだ大騒動が・・・。
前作までは、シリアスさの中の気の効いたジョークや無駄口、シニカルな笑いのバランスが絶妙でした。本作でもそれは同じなのですが、笑いの比重が大きくなっているよう、これまでと比べるとかなりコミカルで軽妙、ヘタをすればただのドタバタ劇で終わってしまいそうな事件ですが、そこはニール・ケアリー、決めるところはビッと決め、今までのファンを安心させてくれます。
『歓喜の島』で活躍した人物が、本作にも重要な役割を持った人物として登場しているのも、ウィンズロウのファンには嬉しい(そしてちょっと悲しい)おまけです。
このシリーズ、全五作なのだそうですが、最後の一作は後日談的な内容なんだとか。ということは、ニール・ケアリーが本格的に活躍するのはこれが最後ということなのかな?とても好きなシリーズなだけに、とても気になるところ。五作目も、早く読みたいような、読んでしまえばシリーズ終了なのでまだまだ読みたくないような、複雑な心境です。

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紙の本

紙の本忙しい蜜月旅行

2005/10/31 14:48

ピーター卿最後の長編

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『毒を食らわば』の事件で出会ってから、ようやく結婚へとこぎつけたピーターとハリエット、まずはめでたいですね。新婚旅行はハリエットが幼い頃に住んでいた田舎で過ごそうと二人はそこへ向かうが(もちろんバンターはいっしょ)、到着早々問題が次々とおこり、さらには死体まで・・・。甘い蜜月旅行中も事件はピーターを放っておいてくれないよう、地元の警察に協力し事件の調査をはじめるが・・・。
貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿が活躍する最後の長編です(ピーターとハリエットのその後を描いた短編はあります)。
殺人のトリックは、今読むと時代がかったちょっとお粗末な感じもうけ不満もありますが、あちこちに古典や文学作品の引用がちりばめられ、さらには事件担当の警官との引用合戦、ピーターとハリエットの会話、バンターの苦労と活躍など、そのトリックを解明するまでの過程が軽妙に書かれていて、いかにもセイヤーズらしく抜群におもしろい。また、事件解決後、犯罪を犯した者とはいえ人一人を絞首台に送ることになったピーターの苦悩、言葉をかけたくともジッと我慢して優しく待つハリエット、二人が結婚とお互いに対する主張と妥協についてなども、とても興味深く読めました。さらに、ピーターとバンターの出会いについても触れられていて、これはとても感動的です。
ピーター卿最後の長編という大舞台だけあって、まさに総決算とよぶにふさわしい質・量ともにとても充実したできばえ、傑作です。

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紙の本

紙の本宝石泥棒

2005/07/08 23:52

代表作(仮)、

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

山田正紀のデビュー作『神狩り』をはじめて読んだとき、これはすごいと驚きました。とにかく衝撃で、デビュー作にして作者の代表作になるんじゃないかと感じました。が、それは大きな間違い、本書『宝石泥棒』では、『神狩り』で見られた偉大な力を持つ存在(神)対人間の対決というモチーフをさらに発展させ、果てのないほど大きなスケール、読み手の世界観をも変えてしまいそうなくらいの神話が語られています。
参りました。
やられました。
これぞ傑作、山田SFの最高峰にして、日本のSFを代表する作品、と断言してもかまわないのですが、作者のこと、きっと本作を上回るような作品を書き上げてくれることでしょう。このまだ見ぬ傑作に期待して、仮の代表作としておきましょう。

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紙の本

紙の本榛家の伝説

2005/07/03 23:24

『伝説』シリーズ2作目

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『伝説シリーズ』の二冊目。「榛」は「はしばみ」と読みます。
遺産を伝えられた一族の末裔の女性が、伝説に引き寄せられるかのように崖の館へとやってきた。二人目は館の人々を信頼して、遺産の手がかりを預けてくれるだろうか?
シリーズ前作に続き、時間跳躍や超科学、恋愛などを絡めたSFミステリ。館の人々が遺産継承者の女性やその関係者と交わす会話、駆け引きは緊張感にあふれて読み応え充分。また、この人物たちが語る病気と食事の関係や美と若さに対する女性の執念、憧れの気持ちはとても興味深く読めました。
このあと、三人いた遺産相続人の最後の一人のことが書かれる予定になっていたこととは思うのですが、いまだ書かれておらず、現在のところ本書が著者の最新作(とはいっても発表が1983年11月)になっています。とても残念です。続きを読みたいと思っているのは私一人だけじゃないはず。佐々木先生、なんとかシリーズをまとめ終わらせてください。ファンはいつまででも待ってますよ。

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