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Genpyonさんのレビュー一覧

投稿者:Genpyon

49 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本ルポ貧困大国アメリカ 2

2011/03/12 09:16

正統派ルポルタージュ

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

前作と合わせ一気に読めてしまう文量ながら、丹念な取材を元に描き出す内容はしばらく後を引く重さで、本多勝一の「アメリカ合衆国」を髣髴とさせる正統派のルポルタージュである。

アメリカの新自由主義が金融のみならず教育・医療や果ては軍隊・刑務所までいきわたることによって生まれた非人間的な現状を、社会の矛盾はまず一番弱い階層に現れるとの視点から取材し、多くの例を報告している。

特に貧困者を対象としたビジネスに関しては、経済的な波に飲み込まれた人間はこんな非人間的なことまで考えつくのか、という感想を持たされる内容だ。本著では触れられていないが、アメリカでは宗教がこのような非人間性の歯止めになっていない、あるいは、アメリカ的なキリスト教解釈こそが新自由主義を生み出した、との話も聞く。

著者は、もちろんアメリカの現状も伝えたいだろうが、では翻って日本は・・・、というところが最も訴えたいところだろう。その訴えがきちんと届いているがゆえに、本著の後を引く重さがあるのだと思う。

アメリカが新自由主義で行く以上、また、新自由主義に相当程度の経済効果がある以上、日本もその波を被らざるをえない。ある程度その波をあえて被ったうえで、しかし、人間性を失わないような歯止めを設けるという戦略が、新自由主義を完全に拒否するよりも現実的な戦略となるのであろう。

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紙の本

紙の本無限論の教室

2011/06/04 11:11

少数派からの批判と逆転の面白さ

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どんな学問分野でも立場・主張の違いがあるものだと思うが、全てが論理的に構成されている数学に関しては、そういった立場・主張の違いは無いものと漫然と思っていた。本著では、数学も、また、例外ではないことを教えてくれる。

本著では、書名のとおり、無限に関して、実無限と可能無限という二つの対立する数学的立場が示される。よく考えてみれば、無限というのは、理解できるようなできないような微妙な概念であり、そこに対立する立場があっても不思議ではないのかもしれない。

とはいっても、主流は実無限の立場であり、可能無限の立場はあくまで傍流のようだ。著者は、ゼノンのパラドクスなどの無限に関するトピックを、少数派である可能無限の立場から、批判的に解説する。

数学にとって、無限というのは、本当に基本的な概念であるようで、本著では、無限に関するこの立場の違いを足場に、さらに、ラッセルのパラドクスやゲーデルの不完全性定理などの、数学史に残る数学的トピックが解説される。

これら数学的トピックについて解説する著作はたくさんあるが、本著の解説は、数学的厳密性を犠牲にしても、対角線論法という実無限を説明するための道具が、そのまま実無限の限界を示す道具に使われていく、という逆転の面白さを伝えるための解説となっており、本著の独自性がここにある。

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紙の本

紙の本サはサイエンスのサ

2011/06/11 19:34

まさに帯文句どおりの著書

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「確かな科学知識と特異な視点から、これまでの思い込みをあっさりとくつがえす、知的冒険に満ちた科学エッセイ集」という帯文句どおりの著書。エッセイという分野なので、当然、著者・鹿野司氏の個性で読ませる著書となっている。

まず、幅広い分野をカバーする知識。本著は、科学にまつわる幅広いトピックはもちろん、SF(一部ネタばれあり)にまつわるトピック、さらには、宗教論や日本国憲法などという科学とは直接関係ないトピックまでをカバーしており、新しい分野と出会う喜びを楽しむことができる。

これだけ幅広い分野を取り上げながら、興味ないよ、と思わせるトピックが存在していないのが、素晴らしい。また、どんな分野のトピックからでも、最新の文献から新しい知識を取り込んで伝えようとしている姿勢が感じられ、読んでいて安定感が感じられる。

次に、著者独自の視点と切り口が楽しい。それがメディアや世間一般で広まっている見解と異なるものであっても、わかりやすく説得的に著者独自の見解を展開していく。なかには(世間一般から見ると)過激な見解もあるのだが、遠くから全体を俯瞰するような著者の視点が、その過激さを感じさせない。

そして、著者独特の語り口。著者もあとがきで書いているが、上から目線ではなく、しかも著者が伝えたいことを読者が考えついたかのように伝えることを目指した文体で、読者のイメージを喚起しやすい例を駆使しながら、あらゆるトピックを絶妙に噛み砕いて説明していく。

まさに帯文句どおりの著書でした。

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紙の本

目の眩むようなグルーブ感

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2002~2005年、ニューヨーク在住であった著者が、現地の日本人口高校生を対象とした4日間の脳科学特別講義をまとめた著書。ブルーバックス版では、帰国後、脳科学を研究する側となる大学の研究室で開いた追加講義の内容が追加されている。

高校生を対象とする講義ということで、非常にわかりやすい。が、単純なことを簡単に解説しているわけではなく、大人にとっても難しいと思われる脳の機能や仕組みについて、けっして簡単ではない内容を、生物学的そして化学的にしっかりと説明していく。

たった4日間の講義には、さらに、その時点での最新の研究成果なども織り交ぜられていく。これら最新の研究成果には、常識的な経験からすると驚かされる内容が多く、高校生ならずとも、目から鱗が落ちる体験を楽しむことが出来る。

そして、この講義が素晴らしいのは、著者本人もあとがきで書いているが、その目の眩むようなグルーブ感だ。著者本人ですら、もう、このようなテンポ・潔さ・自身と勢いのある講義はできない、と、書いているように、その時・場所で起こった「たった一度きり感」がひしひしと伝わってくる。

ブルーバックス版で追加された追加講義は、雰囲気的には、研究室のお茶会という感じで、その落ち着いた空気によって、本著はクールダウンしていく。このクールダウンがなかったら、本著のさわやかな読後感は、これほどまでに引き立ってはいなかっただろう。

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紙の本

紙の本ことばと国家

2011/04/23 11:29

偏見を逃れる端緒としての相対的立場

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

相対的な立場から「ことば」について論じた著書で、特に、相対的立場から絶対的立場を批判する迫力が小気味よい。

絶対的立場として取り上げられるのは、題名にも「国家」とあるとおり、国家語・標準語といった国家による制度的構築物で、それらの成立過程が多くの興味深い例を交えながらわかりやすく語られる。

相対的立場としては、標準語に対する方言はもちろん、国家語に対しては、国家を持たない雑種言語としてのピジン語・クレオール語など、日本のような国にいると思いもつかないような言語もとりあげられる。

たとえば標準語話者が方言話者を差別したり、標準語からの文法の逸脱を嘲笑したりするような事実が、本著では、標準語や方言の言語的差異によって引き起こされるものではなく、たとえば標準語に与えられた国家の威信といった、言語外の理由によって引き起こされるものと説明される。

ことばに限らず、ある事実についての差別は、事実そのものが持つ性質ではなく、事実外の理由、特に権威的なものがもたらす偏見が原因となって引き起こされると考えられるが、本著は、相対的な立場こそがそういった偏見から逃れる端緒となることを教えてくれる。

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紙の本

権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」という前提から、だから、国家権力に余計なことをさせないために憲法を定め、憲法で権力を縛る。著者は、そんな立憲主義を軸に、国家権力観や人権観から愛国心や平和主義までの多様な内容について、本格的な憲法論を展開している。

憲法の話は、一般的には「とっつきにくい」と思われているが、著者は、キムタクやサザンの桑田さんからイチローやパタリロまで、憲法とは直接関係のない登場人物をテーマごとに登場させ、まずはとっつきにくさの敷居を下げてみせる。さらに、全体をフランス料理のコースに見立てるという凝った構成である。

こういった凝った構成が企画倒れになってしまう例はたくさんあるが、本著では、たとえば、イチローには立憲主義が要請する個人主義、といった具合に、各登場人物が立憲主義の各テーマにうまく割り当てられ、とっつきにくい憲法論をわかりやすく伝えてくれている。しかも、その内容は本格的であり、各テーマとも文量としてはコンパクトにまとめられているにも関わらず、読みごたえがある。

立憲主義は「国家権力を憲法で縛る」と一言であらわすことも可能だが、すべてのテーマは、きちんとそこに立ち戻り、そこから説き起こされる。あくまで原理原則に忠実に、そして、あえて理想論を現実論に優先させる、そういった爽快さを本著からは感じる。

理想論を語ることは「甘い」「青臭い」と言われがちだが、本著の理想論、特に憲法9条についての理想論は、個人主義的な強さを前提としており、甘さは微塵も感じられない。逆に、はたして自分にその強さがあるのか、そんなことを考えさせられる著書だと思う。

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紙の本

紙の本人体失敗の進化史

2011/12/19 23:31

腑に落ちる遺体解剖学

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

遺体解剖学を提唱する著者が、様々な解剖学の知見をもとに、さまざまな動物とくに人間が、ときに無謀とも思える「設計変更」によって進化してきたことを教えてくれる。

専門用語を交えながらも分かりやすく語られる解剖学の知見は、その多くが我々の人体への進化に結び付けて語られ、著者のウィットを交えた落ち着いた語り口もあって、楽しく読み進めることができる。

解剖学では、宇宙や素粒子などの分野とは違って、実際のモノとして想像可能な題材がほとんどで、さらに、フライドチキンや秋刀魚の塩焼きなど、読者自身が実体験できる食材までをも題材として取り上げる著者の工夫もあって、本著は、読んでいて、本当に「腑に落ちた」感がする。

科学的知見が落ち着いた口調で語られる一方で、著者の提唱する遺体解剖学を取り巻く状況については、語り口がとたんに熱くなる。その熱さからすると、科学的知見の語りのほうは、単なる話の「つかみ」でしかないようにすら思える。

著者の語る遺体解剖学の重要性はなるほど良く解るのだが、著者が熱くなればなるほど、「つまりは予算が少ないという愚痴?」などといった、あらぬ受けとめら方をされかねないような気がしてならない。

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紙の本

紙の本インド・カレー紀行 カラー版

2011/10/07 22:34

インド料理本の「味付け」のうまさ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本で営業するインド料理店の大部分は、実は、主に北インドの料理を供する店であるため、日本人がインド料理と聞いてイメージする料理は、ほぼ北インド料理という現実があるのだが、
本著は、そういったポピュラーな北インド料理に加え、日本ではマイナーな南インド料理やスリランカ料理まで幅広く取り上げる。

そもそも日本でのインド料理は、あまり地域のバリエーションでカテゴライズされたりしないので、南インド料理やスリランカ料理というカテゴリーの存在を伝えてくれるだけでも、南インド料理の愛好者としては嬉しいかぎりだ。

本著は、いわゆるレシピ本やグルメ本ではなく、インド文化論を意図した著書となっている。インド文化については、本著も含めた多くの著者が、「多様性を許容する統一性」をその特質として論じているが、本著では、これをインド料理という側面から切り取って見せてくれている。

インド文化論の論点としては、そういうわけで、月並みな感じがしないではないのだが、そこにインド料理を絡ませてくる本著には、他のインド文化論とは違い「味付け」のうまさがあるように思った。

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紙の本

紙の本タバコ有害論に異議あり!

2011/07/16 16:17

喫煙者の言い訳で終わらないために

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本著では、医学博士と社会学者の二人の著者が、それぞれ専門とする学問的立場からタバコについて好意的な見解を説く。

両者とも、嗜好品であるはずのタバコをとりまく現状は厳しすぎるとの見解で、タバコに対する疫学的評価の妥当性を問題点の一つとして、反タバコ有害論を展開していく。

疫学的根拠の弱さや、疫学という方法論の不確実さが説かれており、なるほどタバコ有害論には一方的で学問的に不正確な面もあるのだろう。

しかしながら、確信的喫煙者・非喫煙者は、そんな事とは無関係にタバコを吸う・吸わないと考えられ、残念ながら、本著の論調は、不安な喫煙者の言い訳とも取られかねない。

そういった立場を超えた議論が必要であれば、学問的議論はいろいろあってもタバコは合法的な嗜好品の一つでしかない、と論旨を絞るべきではないだろうか。

たとえば、喫煙率が下がっても医療費は減らない現状において、ただの嗜好品を止めさせるために保険医療を使うのは浪費であり、喫煙者の不安をあおって医者の利権を作っただけのような現状は、立場を超えた議論の対象になりうると思う。

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紙の本

紙の本チョムスキー

2011/03/05 10:31

チョムスキー言語学と言語学史と言語学的思想

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

チョムスキーの言語学を、言語学史的な観点から批判的な視線で紹介する著書。

言語学という学問は、問題の立て方こそが学問としての本質であり、そこにこそ学問の思想性が現れるとされている。言語学史とは、この学問的思想の歴史であり、チョムスキーの問題の立て方が、言語学史の中にどのように位置づけられるべきかを批判的に問うている。

著者の主張は、言語学理論的立場というよりは言語使用者的立場からの主張とみられ、その意味で、著者の主張の理論的厳密性については問題もあるのだろうが、その分、著書のほとんどの部分は非常に平明な語り口で書かれており、著者の言いたいことはすっと頭の中に入って来る。

著者の主張自身も、当然、個別言語の等価性などの思想がベースとなっているようで、それをチョムスキーの学問にあてはめて批判を行うことの是非は判断できないが、著者のその思想自体は、読んでいて好もしく感じられる。

本著単独でも面白く読めると思うが、言語学史の入門書などを先に読んでおくと、より面白く読めるのではないかと思う。

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紙の本

宗教か経済か

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の三つの宗教について、各宗教界における指導的立場と目される人物との対談を通し、現代社会の諸問題を宗教という面から読み解こうとする。

対談に先立ち、著者は、同じ唯一神を信仰するこれらの三宗教について、それぞれで共通し、また一方で相容れない教義を、非常に良くまとまった形で簡潔に概説してくれる。

必要十分な予習に続く対談は、多くの宗派を含む大宗教のほんの一面にすぎないかもしれないにしても、特に日本では見聞きすることがあまり無い内容で、アメリカにおける政治と宗教の関わりを紹介してくれる「後書きにかえて」という章もあわせ、興味深く読みすすめていくことができる。

現代の諸問題、とりわけ各地で頻発する紛争やテロにおいて、三宗教間の相容れない教義を大きな要因の一つと考える著者は、各宗教者との対談において、この側面を引き出そうとするのだが、敵もさるもので、そのあたりは上手くかわされてしまっている。

解りやすい概説のおかげで、相容れない教義を紛争等の大きな要因とみる著者の考えは、理屈の上では容易に理解できるのだが、残念ながら、これを対談によって実証するのは至難の技のようだ。

対談者の一人は「紛争等の大きな要因は宗教よりも経済」といった主旨のことを語るのだが、個人的には、このような見解のほうが、スッキリと納得しやすいように思われる。このような見解に対する有効な反論が欲しかった。

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紙の本

紙の本2円で刑務所、5億で執行猶予

2011/07/23 09:21

自己責任の議論に組み込まれないために…

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「2円で刑務所、5億で執行猶予」という刺激的な書名にも関わらず、本著では、刑事・司法と刑罰・矯正に関してデータに基づく堅実な議論が行われる。議論の結果、一般的な常識とは異なる認識が説得力をもって導かれ、興味深い内容を多く含んだ著書となっている。

日本では、刑事・司法と刑罰・矯正の実務には大きな溝があり、両者を経験する人はまれであるらしいのだが、著者は幸運にも両者を経験できたとのことで、本著からも全体を俯瞰する視点を感じることができる。

著者は、犯罪と自己責任を結びつける厳罰化などの議論には犯罪防止に対する実効性はなく、犯罪の原因を社会と個人との関係から考えるべきとの見解を示す。一見、犯罪者を甘やかすかのように思えるこのような見解においても、多くのデータに基づく堅実な議論が行われており、説得力がある。

同様の議論は、貧困についても成り立つが、米国のような二極化が進む日本では、一部の勝ち組を除けば、犯罪や貧困までの距離はそう遠くなくなってきている。本著のようなデータに基づく議論に加え、明日は我が身と考えられる想像力が、勝ち組が強調する自己責任の議論に組み込まれない秘訣と思われる。

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紙の本

紙の本偽善エネルギー

2011/06/26 11:18

有用な一冊

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本著は、日本のエネルギー問題に関して論点を整理し、問題解決の方向性を示唆する。特に、地球規模での視野からエネルギー動向の変化を検証し、エネルギー動向全体に対して影響を及ぼしえない無意味な方向に向かって進んでいく現状の批判が、小気味よく展開される。

政治的利権や経済的エゴに操作された口当たりのよい偽善的な情報が、日本のエネルギー問題を根本的には解決しない方向に導くばかりか、本当に対処すべき問題への対策を遅らせているとの著者の警鐘には、聞くべきものがあると思われる。

著者も前書きで書いているように、本著は、たしかに政治的利権などとは無関係に書かれているようだ。もちろん、だからといって正しい内容が書かれているとは限らないのだが、視野の大きさは参考にするべきものがあると思われるし、個別的テーマにおいても説得力のある議論が展開されていると思う。

一部、不可知論に逃げ込んでいるのでは、と、残念に思われる部分もあるが、全体として、参考になる視点や見解が多く掲示され、有用な一冊だと思う。

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紙の本

紙の本言語学とは何か

2011/04/24 10:39

視点が対象を作る学問

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

言語学と呼ばれる学問分野における様々な視点を簡潔にまとめた著書。

一般の学問分野では、一つの学問対象に様々な視点から近づくのに対し、言語学では、視点こそがその学問対象を作り出す面があるのだという。本著では、豊富な事例でその様子を分かりやすく描き出しており、言語学の面白さの一面をうまく伝えていると思う。

様々な視点は、学界の主流の視点であったり、傍流であったりすると思うのだが、著者は、つとめて相対的に伝えようとしているようだ。ソシュールやチョムスキーなど、門外漢でも知っているビッグネームについても、言語学の歴史のなかに位置付け、その限界がどこにあったかを述べている。

相対的と言っても、著者の主観は随所に溢れだしており、その主観に対する好き嫌いが別れそうな著作ではあるが、それを差し引いても興味深い内容をふくんだ著作であると思う。

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紙の本

紙の本日本の税金

2011/04/02 10:26

税金と憲法の関係

4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「日本の税金」というタイトルだが、実用書ではなく、教養書です。しかも、明晰な語り口と鋭い指摘で日本の税金を網羅的に解説した素晴らしい教養書だと思う。

日本の各種税金を、その目的や理念から説き起こし、また、その目的や理念から多かれ少なかれ逸脱していっている現状に警鐘を鳴らし、さらに、その対策まで示している。特に、各種税金の目的や理念が憲法に根ざしている、という視点と、その視点からの解説が、目から鱗が落ちる感覚を呼び起こす。

所得税の基礎控除や配偶者控除の問題が、憲法の生存権の問題であったとは考えたこともなかったし、消費税が逆進的であることは知っていたが、その理論的に最も優れた緩和策もなるほどと思わされた。

税金の制度については、古い制度が廃止され、新しい制度が施行されていくため、著書の個別的な内容については、古くなっていくことも考えられるが、「税の目的や理念が憲法に根ざしている」という視点が古くなることはありえず、基本に立ち返る際には、かならず必要となる一冊だと思う。

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