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オリンピックデザインを語るにはまず“亀倉雄策”を知れ!
椎名林檎もリスペクトを送る、デザインの巨人の正体とは

さまざまな競技のメダル争いがニュースで毎日のように話題をさらい、いよいよ日本時間の19日朝には閉会式が控えているリオパラリンピック。オリンピックの時と同様に、閉会式では東京を紹介する「フラッグハンドオーバーセレモニー」が行われるとのことです。

オリンピックの閉会式で行われた、リオ五輪のフラッグハンドオーバーセレモニーの演出や登場キャラクター、「安倍マリオ」などは大きな話題となりました。YouTubeで公開された「トーキョーショー」動画は、まだ公開から一か月経過していないのに、既に700万再生に迫る勢いです。

しかし、そのトーキョーショーの演出や2020東京五輪のデザインの背景に影響を与え続けている人物を知るのと知らないのとでは、その魅力の感じ方が大きく違ってきます。ここでは、トーキョーショーの演出をより深く理解し、2020年に開催される東京五輪の魅力をさらに味わうためにも、かつて開催された1964東京五輪を語る上でこの人の存在を抜きにして語ることはできないであろう日本デザイン界の巨人・亀倉雄策と、オリンピックにまつわる物語をいくつか紹介します。

オリンピックデザインを語るにはまず“亀倉雄策”を知れ! 椎名林檎もリスペクトを送る、デザインの巨人の正体とは

日本をデザインし続けた昭和の巨人・亀倉雄策の生涯

まず紹介したいのは、『朱の記憶 亀倉雄策伝』です。昭和のデザイン史を語る上で、それどころか昭和史を語る上でも外すことはできない存在である、デザイナーの亀倉雄策。彼の生涯を追いながら、彼が昭和という時代に残した爪痕を、まるでドキュメンタリードラマを見ているようにひとつひとつ追っていく物語です。

冒頭にて語られるのは、彼のデザイン・ワークの中でも未だに語り草となっている、1964年の東京オリンピックのシンボルマーク、そのコンペの模様です。このデザインは、彼の名を一般にも広く知らしめました。

日の丸の、そして昇る太陽の強さを表すような大きな赤丸と、あえて金一色にまとめられた五輪のマーク、そして「TOKYO 1964」の文字。シンプルながらも、その場の誰もが圧倒され、納得せざるをえなかったほどに完成されたデザインは、歌手の椎名林檎も、かつてオリンピックロゴの盗作問題で一度決まったロゴの使用中止が決定された時に、公式ツイッター内で「1964年ロゴを再利用しては」と発言したほどです。

なお椎名林檎は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの、フラッグハンドオーバーセレモニーのクリエイティブスーパーバイザーとして参加しているので、その発言には深い意味が秘められていたのかもしれませんね。

前述のフラッグハンドオーバーセレモニー内で使用された動画の中にも、亀倉雄策がデザインした1964年のオリンピックポスターのデザインを彷彿とさせる画面が存在しています。あらゆる競技のアスリートたちが、それぞれにポーズをきめながら画面の右方向へと力強く足を踏み出す、そして画面に「WARMING UP! TOKYO 2020」という文字が浮かぶあのシーンは、1964年に亀倉雄策がデザインしたオリンピックポスターデザインのオマージュのようでした。

1997年に亡くなってからもなお、その強いデザインの力で人々を魅了し続ける亀倉雄策という人の魅力と、成してきた数々の業績。この本の中で語られる、亀倉雄策の単なる「デザイナー」という枠にとどまることはなかったパワフルな生き方と、狂乱と熱狂の渦の中であった高度経済成長中の日本の姿は、ある一視点から見た近代日本史としても読みごたえたっぷりです。

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亀倉雄策のデザインワークを知る入門編に

亀倉雄策という人自身への興味が湧いてきたのであれば、次はそのデザインの仕事についてを知りたくなってはきませんか。とはいえ、ここまで偉大なデザイナーの仕事量は膨大、かつ多岐に渡るもの。しかも「全デザイン」を網羅した本を探そうとすると、「ちょっと気になって」というレベルでは太刀打ちできない情報量とお値段になってしまいます。

そんな時、入門編としておすすめなのが、この「世界のグラフィックデザインシリーズ」内の『亀倉雄策(世界のグラフィックデザイン 3)』です。

この本には、亀倉雄策の数々のデザインワークの中でも、代表的なものばかりがフルカラーで収録されています。もちろん、先ほど話題に上った64年東京オリンピックのポスターも冒頭に収録。

その他にも、72年の札幌冬季オリンピックのポスターデザイン、カメラメーカーのニコンのポスターデザイン、70年の大阪万博のポスターデザイン、燃え落ちる蝶の絵が世界を戦慄させた83年の「ヒロシマアピールズ」のポスターデザインなど、現代でも色褪せないデザインの“ちから”を感じさせるポスターの数々。そのデザインからは今でも、亀倉雄策という人のデザイナーとしての才能、そして「伝える力」の強さをひしひしと感じます。

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世界に広がるピクトグラムは、実は東京オリンピック生まれだった!?

なんだかんだ言われても、デザインって結局のところよくわからないもの。亀倉雄策という人は確かに偉大な人だったみたいだけれど、世の中にたくさんいる「デザイナー」という人の中の一人だよね、としか思えない人にもおすすめなのが、この『ピクトさんの本』です。

トイレや非常口を表すためにつけられたあのマーク「ピクトグラム」ですが、今でこそどこにでもありふれているあのマークが生まれたきっかけこそ、1964年の東京オリンピックだったのです。

まだ「グローバル化」という言葉の片鱗すら存在しない時代に、外国語でのコミュニケーションが難しい外国人と日本人との間を取り持つ目的で作られたもの、それがピクトグラム。何を隠そう、それを「作ろう」と提案したのは、この亀倉雄策だったのです。

言葉ではなくひと目で、どんな人でも理解できるようにデザインされたピクトグラムは、その後、著作権が放棄されています。それは、ピクトグラムデザイン計画の中心的役割を担った人物である勝見勝の「社会に還元すべきものである」という考えからでした。

実はこのデザイン案を、狭い赤坂離宮のデザイン室内で、カンヅメ状態になって考えていたのは、その後の日本のデザイン界を担うことになるそうそうたるメンバー ―― 福田繁雄(67年の万博公式ポスターを作成)、横尾忠則(一時期の「週刊少年マガジン」の表紙を担当)、田中一光(「無印良品」のアートディレクター)などであり、驚くべきことに彼らはボランティアで作成していた、というエピソードが残されています。

その便利さと手軽さから、ピクトグラムは瞬く間に日本中、そして世界中に広まっていき、この本の中で「いつもひどい目に遭っている人」として紹介されるような“ピクトさん”が生まれたのです。

ピクトグラムという「今までになかったもの」の開発は実に難航を極め、若きグラフィックデザイナーたちはああでもない、こうでもないという試行錯誤を繰り返しながら、生み出していきました。

そう考えると、不注意に工事現場でつまづくピクトさんも、大型機械に手を挟まれる危険性を訴えるピクトさんも、なんだか尊いものに見えてきたりはしないでしょうか。 ……もちろん、この本の本質的に、「このピクトさん、間抜けだなあ」と思ったりしながら読んでも、一向に構わないと思いますが。

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強いデザインは古びない。今も残る亀倉雄策イズム

戦前から戦後、そして高度経済成長の時代を駆け抜け、その時代時代に力強く残るデザインを数多く残してきた亀倉雄策。時代と共に古びていく宿命を負うのがデザインというものですが、亀倉雄策のデザインは不思議と時代を経ても残る力強さを持っています。

19日朝に見ることができるであろう、リオパラリンピック内でのフラッグハンドオーバーセレモニー。そして、4年後に迫る東京オリンピック・パラリンピックでのデザインアートワーク。それらのデザインに、亀倉雄策デザインがどれぐらい影響を及ぼしたのか? その背景や、そのデザインに至るまでの物語に思いを馳せながら見ると、より贅沢に楽しむことができることでしょう。

現在のオリンピック・パラリンピックに登場する最新のデザインと、過去にデザインの巨人が生み出した、今も古びない強いデザイン。その二つを比較することで、「よいデザインとはいったいどういうものなのか?」という問いの答えが、見えてくるかもしれません。

プロフィール

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kujira

ライター

書籍・マンガといったサブカル系カルチャーにまつわる職を転々としながら、細々とフリーで仕事を請ける副業ライター。副業を本業にすべきかどうかで人生の迷子真っ最中。

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