ブックキュレーター作家・翻訳家・俳優・進路指導講師 有北雅彦
世界に出会う若者たち。この夏こそ読みたい本
世界を見ることは最高のエンターテインメントだし、世界と交わることは人を成長させる最高のチャンスでもあります。実際に旅をすること、知識を蓄えること、内省すること、ネットを通じて情報発信すること―その方法はさまざまですが、肝心なのは、自分と他者との違いをしっかり認識することだと思います。フィクションも含めて、人の営みに目を向け、世界と関わることの魅力を感じられる本を選んでみました。
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パレスチナ系イスラエル人として育った英語オタクでネット少年のヌサイア・ヤシン(NAS)は、故郷を離れてハーバードに進学、エリート街道に入るもドロップアウト。千日間世界を巡り、毎日動画を投稿する「NAS DAILY」の旅を始めます。総再生回数45億回。貧困、紛争、自然災害、宗教と人種など、世界が抱えるあらゆる問題に向き合い、みずからの目で見た「人びと」の姿を全世界に発信しつづけてきたNASの言葉は、自分の目で世界を見て、人びとと触れ合うことがいかに人生を豊かにするかを教えてくれます。
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奇界遺産 3
佐藤 健寿(編著)
TBS系『クレイジージャーニー』などでも人気を得た写真家・佐藤健寿が、「好き」と「好奇心」のおもむくままに世界の奇妙な風景を切りとった超豪華写真集の第3弾。同じ世界に生きていても、その世界をいかに見るかはその人次第なんだと改めて実感させられます。ひと晩千回以上も落雷する村などの信じられない光景はもちろん、死者を担いで踊る儀式「ファマディアナ」、砂漠のアートフェス「バーニング・マン」など、人の営みに焦点が当たっている点はNAS DAILYとも共通します。
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FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング , オーラ・ロスリング , アンナ・ロスリング・ロンランド , 上杉周作 , 関美和
自分の好きなことに目を向けるのも大事だけど、データや統計という事実から目をそらさないことはもっと重要。なぜ、「事実に基づいて世界を見ろ」と本書がこんなに言うのか?それは、「世界はそんなに悪くなってない」からです。常識(という思いこみ)を疑えば、「世界はよくなってるんだ」と少し気持ちが軽くなり、さらによくしていこうという気持ちも湧いてきます。膵臓がんによる短い余命のなか、ただ真実を届けたいと執筆に取り組んだ著者の想いにも胸を打たれます。
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窓から逃げた100歳老人
ヨナス・ヨナソン(著) , 柳瀬 尚紀(訳)
「世界に出会う若者たち」をテーマに掲げておきながら、世界に出会った「老人」もご紹介。主人公である100歳のおじいちゃんアラン(爆弾の専門家!)の波乱の人生を、20世紀の世界の歴史ともリンクさせつつ語る冒険小説です。「ほんとの話しかしない人の話はつまらない」という著者の哲学が、たしかにこの壮大なフィクションを貫いている気がします。わりとあっさり人が死んだりして、かなりブラックユーモア満載。映画化もされ、数年前に韓国で演劇化もされていましたね(知人の韓国人俳優がたまたまそれに出演していたところに、韓国旅行の際に出くわすという偶然もありました)。
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一億人の英文法 すべての日本人に贈る−「話すため」の英文法
大西 泰斗(著) , ポール・マクベイ(著)
こんなに賛否両論ある英語の文法書も珍しいですが、僕は嫌いじゃないです。過去形のもつ心理的な遠さを表現するニュアンス、助動詞を使うときに込められた話者の気持ちなど、納得させられる説明も多数。情報量が膨大なので、はじめから読破しようとせず、参考書または辞書的な感覚で、そのつど必要な箇所を楽しみながら読むのがオススメですね。いずれにせよ、外国語を学ぶことは、人の気持ちを理解する手段を手に入れることなのだなというのを感じさせてくれる「文法書」です。
ブックキュレーター
作家・翻訳家・俳優・進路指導講師 有北雅彦1978年、和歌山県生まれ。映画や文学などのイタリア文化を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」に設立時から所属。著書に『あなたは何で食べてますか?』(太郎次郎社エディタス)、訳書にピエルドメニコ・バッカラリオほか著『13歳までにやっておくべき50の冒険』シリーズ(太郎次郎社エディタス)やシルヴァーノ・アゴスティ『見えないものたちの踊り』(シーライトパブリッシング)などがある。
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