ブックキュレーター哲学読書室
フランス現代哲学裏街道一番地を訪ねる
フランス現代哲学といえば、といった定番の影には、常に参照され続ける裏街道があった。そのなかでもとりわけ知られざるものだったのはフランスの数理哲学の系譜であり、その端緒には、アルベール・ロトマンとジャン・カヴァイエスがいた。そしてこの系譜の端には、バディウ以後に広がる近年の多様で広大な議論の海が開けている。今回はその険しきも悦びに溢れた道を案内してくれるだろう本たちを紹介しよう。【選者:近藤和敬(こんどう・かずのり:1979‐:鹿児島大学法文学部准教授】
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36歳という若さで対ナチスレジスタンスの最中に歿した、真に天才と冠して遜色のない数理哲学者であるロトマン。彼の哲学の大部分は、いまだ十分に理解されることも展開されることもないまま、ただそこにあり続ける。本書はそのロトマンの重要論文を集めた論文集であり、訳者らによる四つの解説論文を併載している。
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ロトマンの盟友にして戦友であったジャン・カヴァイエスが、レジスタンス活動のなか一度目に収監された監獄で書き上げたとされる草稿をもとに、彼の死後、ジョルジュ・カンギレムとブルバキの初期メンバーであるシャルル・エーレスマンらの監修によって本書は出版された。戦後のフランス哲学裏街道の旗印となる「概念の哲学」の記念碑的著作。
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存在と出来事
アラン・バディウ(著),藤本一勇(訳)
戦後のフランス哲学のなかでも、とくにポストドゥルーズ(/フーコー/デリダ)という状況下において新しい時代の口火を切ったのは、カヴァイエスやロトマンの伝統を参照しつつも、独自の路線で数学を哲学と結びつけたバディウであり、『存在と出来事』は、そのバディウの主著三部作の第一部をなすものである。そこでの集合論の議論は、様々な問題点を指摘されつつも、カンタン・メイヤスーの新しい哲学に決定的な影響を与えており、本書以後の展開を含めて、近年大きな注目を集めている。
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現代フランス哲学の裏街道を行く好個の書。カヴァイエスの数理哲学の議論から説き起こし、彼の哲学を現象学との関係で考えようとしたジャン=トゥサン・ドゥサンティ、彼の影響下で現代現象学の観点から数学の問題を取り上げるドミニック・プラデル、数学者でもある異色の現象学者ジャン=ミッシェル・サランスキらの数理哲学が明晰な筆致で解明されるにとどまらず、探偵小説論に顕著に示されるような著者の独自の「概念の哲学」が試みられる。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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