ブックキュレーター哲学読書室
現代フランス哲学――トリスタン・ガルシアとその周辺
「フーコー・ドゥルーズ・デリダ」の時代が終わり、現代は「ポスト・ポスト構造主義」の時代と称されることもある。カンタン・メイヤスーらによる「思弁的実在論」の動向が注目されるようになってからも久しいが、現代フランス哲学は単純にこれに還元されるものなのだろうか?【選者:栗脇永翔(くりわき・ひさと:1988-:フランス文学・思想)】
- 34
- お気に入り
- 4356
- 閲覧数
-
メイヤスーとも交流があるガルシアは「思弁的実在論」の論客として紹介されることも少なくない。しかし、彼の思考はそれを大きくはみ出すものでもある。哲学史講義をベースにしつつも文学や芸術、科学史、文化史を横断するこの小著はメイヤスーとは別の「新しいフランス哲学」を体現しているのではないか。
-
制度的には、ガルシアはリヨン第3大学の「美学」の准教授である。そしてそこでタッグを組むのがイタリア人哲学者マウロ・カルボーネ。元々メルロ=ポンティの専門家であるが、その思考を映画やテレビ、スマートフォンの「スクリーン」の分析に応用している(なお、ガルシアの修論もメルロを扱うものであったと聞く)。
-
ガルシアの博論の指導教員はカヴェルやバトラーなどアメリカ思想の専門家サンドラ・ロジエであるが、近接分野で邦訳があるのがブルジェールのこの小著。ガルシアもまた英語圏の「スタディーズ」に多くを負っており、白人男性の哲学者であるがフェミニズムやポストコロニアル理論などにも通じている。
-
最後に古典新訳を一冊。ガルシアの最初の著作は教授資格試験の副読本『イメージ』(未訳)であるが、そこでも古典として参照されるのがサルトルのこのイメージ論。筆者は常々ガルシアはサルトルのアップデートを試みていると感じている。なお、サルトルの哲学に関心がある向きにはPhilippe CabestanによるQui suis-je ? (Hermann, 2015)をお勧めしたい。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です