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今や社会現象ともいえる、大人気マンガの原点とは―?!『進撃の巨人』著者・担当編集者インタビュー、諫山 創&川窪 慎太郎―「トラウマ」から生まれた情熱―読者の「考えるおもちゃ」になる作品を届けたい。

創作の原点は「読者に同じ衝撃を与えたい」

—『進撃の巨人』を描こうと思われた動機を教えてください。

諫山:小学生の頃に読んだ『地獄先生ぬ~べ~』※というマンガに、「人食いモナリザの謎の巻」という怖い話があったんですよ。トイレに行けなくなるなど、すごい被害に遭ったのですが(笑)、今となってはそのトラウマが財産です。作り手が「お客様」である読者に対して恐怖やトラウマを与える作品を作ることもできるのだと、大きな影響を受けました。読者にも自分と同じ体験をさせたい、トラウマになるほどの経験をさせたいという欲求が、僕が作品を描く動機になっています。人に衝撃を与えることで、無意識に「自分がここにいる」と主張しているのだと思います。

※ 『地獄先生ぬ~べ~』全20巻 原作:真倉翔 作画:岡野剛 集英社文庫 本体600円+税

—投稿作も『進撃の巨人』だったそうですが、その時から作品の世界観は固まっていたのですか?

諫山:投稿作はあれっきりの感じで、先のことは考えていませんでした。本格的に物語の設定を固めていったのはデビュー後、編集者の方に「あの投稿作で連載を考えてみませんか」と言われてからです。巨人を中心とした世界観を売りに勝負したいと思っていたので、ストーリーを先に考え、それから登場人物を作っていきました。読者にとって憧れるキャラクターと、少し弱くて自己投影しやすいキャラクター、まずその2人は必要だなと思ったんですね。あとはヒロイン。男2人、女1人という「旧ドリカム※」状態の3人組の設定があり、そこにキャストをはめていったという感じです。

※Dreams Come True(ドリームズ・カム・トゥルー):日本の音楽グループ

—それがエレン、アルミン、ミカサですね。それぞれ具体的なモデルはいるのでしょうか?

諫山:ミカサは、当時僕がバイトをしていた店で「これだ!」というお客さまに出会いました。マフラーをしていらしたので冬だったと思うのですが、ああいう顔というか、記号的なルックスの女の子だったんですよ。シルエットだけでわかるような、キャッチーなキャラクターを(主人公のひとりに)考えていたので、すぐに手近にあった紙にメモをしました。作品の世界観は「ヨーロッパファンタジー」的でしたが、「この女の子は西洋人には見えないな。でも、1人東洋人でもいいかな」と、そこからまた設定が広がりました。

—巨人にもモデルはいますか?

諫山:先ほどもお話しした、『地獄先生ぬ~べ~』の「人食いモナリザ」です。絵から巨大なモナリザの顔が出てきて人を食べるという話なのですが、それが僕にとっての「巨人」でした。そのことに気付いたのは、連載開始から3~4年経ってからで、「巨人はこういうふうに描けばいい」という手本がなぜ自分の中にあるのだろうと思っていたら、「人食いモナリザ」だったわけです。あのトラウマがなかったら、巨人のコンセプトは生まれなかったかもしれません。

「予定調和な展開はあえて描かない」作家の矜持

—先ほど編集者の方のお話が少し出ましたが、作家にとって編集者はどういう存在なのでしょう?

諫山:良い作品を作る上で、作り手は万能ではありません。むしろ、最も読む人の気持ちになることができない存在ですから、編集者の方からの意見がないと不安ですね。
 たとえば、僕は、読んですぐに理解できるものより、「あれは何だったんだろう」と引っかかるものの方が、人の記憶に残ると思うんです。でも、あまりにノーヒントではわけがわからないままで終わってしまう。読者にとって適度に答えが用意されているくらいのバランスが好ましいです。そのバランスをはかる意味でも、一歩引いて見てくれる編集者の方の意見は参考になります。

—「読者に衝撃を与えたい」というのが執筆の動機とのことでしたが、「読者の記憶にメッセージを残したい」という思いもあるのですか?

諫山:「メッセージ」はちょっと恥ずかしいというか、自分に対して「おまえは人にメッセージを与えられるような人間か」とか思ってしまうんですよね。いつのまにか僕も20代後半になりましたが、あまり大人になっているという気がしなくて。人に何か言えるような立場ではないですから偉そうなことは言いたくない、偉そうになりたくないと考えています。だから、読者にはそれぞれが感じたままに、トータルで作品を楽しんでいただければ充分です。

—作品を描く上で、心がけていらっしゃることを教えてください。

諫山:100回見たことがある展開の、101回目を自分がやる必要はないと思っています。悪い意味で「予想通り」というストーリー展開は避けたいですね。自分もやってしまいがちなことだけに、常に憤っている感じはあります。「マンガを描くというのは結構しんどい行為のはずなのに、人の記憶に残らないことをしてどうするんだ」と。「これを描いているやつは、人として間違っている」というような感想でもいい。作品が、読者にとっての「何かを考えられるおもちゃ」になれば嬉しいです。

—漫画家として、今後描いてみたい作品はありますか?

諫山:現代を舞台にした、ロボットとか機械が出てくるような話です。自宅の両親の寝室には、僕が幼少時に描いた絵がいまでも飾ってあるのですが、それが怪獣とロボットが戦っている絵なんですよ。そのモチーフからは、たぶん、一生逃れられないのではないかという気がしています。

著者プロフィール

諫山 創(いさやま はじめ)

1986年大分県に生まれる。漫画家。
2008年、『orz』で第81回週刊少年マガジン新人漫画賞に入選し、デビュー。
2009年に『別冊少年マガジン』で「進撃の巨人」連載開始。同作で第35回講談社漫画賞少年部門受賞。

諫山先生のおススメの一冊

電子書籍

シドニアの騎士

シドニアの騎士

弐瓶勉(著)

出版社:講談社

税込価格:540

【諫山推薦コメント】
弐瓶 勉先生はハードSF作品で有名ですが、この作品はかなりラブコメ要素が強いです。しかも、今までそんな引き出しは持っていらっしゃらないと思っていたのに、非常に質の高いラブコメ。異生物の襲撃により地球は崩壊し、船で宇宙を旅している人類をさらに異生物が狙ってくるというストーリーなのですが、ラブコメ的日常と、それが明日なくなるかもしれない緊張感とのバランスが絶妙です。

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『進撃の巨人』担当編集者に聴く

Q諫山さんの作品に初めて触れた時の感想を教えてください。

一読して、「すごい!」と思いました。何よりの才能は、マンガを通じて表現したい、表現しなければならないことを持ち、なおかつそれを作品に落とし込めている点。
僕は、マンガは何かしらのメッセージを込めて描かれるべきだと思うんです。
それがないマンガは、絶対に素晴らしい作品にはなりません。

Q持ち込みから諫山さんのデビューまで2年間ありますね。

その間はデビューを目標に、担当編集者として、絵のトレーニングとストーリー作りをお願いしていました。
諫山さんはアクションマンガを描くことになると思ったので動きのあるマンガや、線が荒削りだったので線がきれいな他の作品を模写してもらいました。
諫山さんは絵が下手だといわれることもありますが、マンガにおける「うまい絵」というのは登場人物の感情が伝わる絵です。
そこも含めて諫山さんに才能を感じたからこそ担当になり、一緒にデビューを目指してきました。

Q担当編集者は、作品づくりにどれくらい関わるのでしょう?

作家や編集者により異なりますが、作者が描きたいものだけでも、読者が求めているものだけでも、売れる作品はまずつくれません。
両者の思いをくみ取った上で、どうやったら売れるのかを考えるのが編集者の仕事。
そのため、作者、読者、編集者の3つの目線で作品に臨むように心がけています。
たとえば、諫山さんは「わかりやすく伝えたらつまらない」というタイプなんですね。でも、少年マガジンは大衆誌。
「伝わらなかったら意味がないですよね」「もっとわかりやすくしましょう」という話し合いはよくしました。

Q大ヒットとなったわけですが、理由は何だと思いますか?

まずは、面白いからだと思います。その上で、「人間が巨人に食べられるマンガ」というキャッチーな設定で、SNSなどで伝えやすいことが理由のひとつだという気がします。しかも、読んでみると、骨太でわかりやすい王道の少年マンガ。
そこがウケたのではないでしょうか

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