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堀江貴文のレビュー

堀江 貴文

マンガHONZ代表。1972年福岡県生まれ。SNS株式会社ファウンダー。現在は自身のロケットエンジン開発とジャンルに問わず興味が湧くビジネスの立ち上げにほとんどの時間を費やしている。 好きな本:ジャンル問わず面白いもの全て。 主な読書方法:Kindle paperwhite。 代表著書 『ゼロ』『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた』など

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「奴らはラーメンを食ってるんではない。情報を食ってるんだ。」無駄な修行は寿司業界だけでなくラーメン屋でも不要である。最強のラーメンコンサルの名言続出の『ラーメン発見伝』

ラーメン発見伝 1

日本の飲食業界は世界でも最先端の進化を遂げている。四季がはっきりしており、国中を海で囲まれ野菜から肉、魚まで豊富にとれることからこの国の支配層は昔からグルメであった。また首都が京都という内陸部だったために保存食の技術も進化したこともあり料理技術から器や箸といった食器にまでアートが古くから進出していた。トップ層がグルメであると庶民まで経済発展の過程でグルメになるのである。その最右翼とも言える日本の国民食がラーメンであることは万人の認めるところであろう。

もともとは中華蕎麦と言われるように中国から伝わったものであるが、日本独自の調味料や出汁の取り方とフュージョンしてしまい、本家とは似ても似つかぬ存在となってしまっているのもご存知の通り。また、つけ麺やら二郎系といったガラパゴス的な進化を遂げていてまさに百花繚乱。そんなラーメン業界に対し、ビジネスコンサルという切り口で鋭く切り込んでいった漫画がこの「ラーメン発見伝」だ。

最近私が寿司屋に長い修行は必要ない。独学ですら人気の美味しい寿司屋は作れると言って炎上しているがラーメンビジネスも同様だ。例えば人気の博多ラーメンチェーンである「一蘭」は創業者がラーメン店で修行せずに日本全国の和食店を食べ歩いて味を作ったというのは有名な話である(あの暖簾に書いてあるので常連は暗記している)。本作には数々の名台詞があるが、その中でもピカイチなのがタイトルにもあるが「奴らはラーメンを食ってるんではない。情報を食ってるんだ。」であるが、これを地でいくのが「一蘭」のやり方だ。有名な一蘭の一人一人の個食システムは友人といっても殆ど会話ができないがゆえに、あの暖簾に書いてある一蘭の創業ストーリーを読まざるを得ない。それで美味しさが倍増するわけだ。まさに情報を食らっているのである。

一蘭はそれ以外にもラーメン店にイノベーションをもたらした。暖簾のお陰でモラルの低い従業員が多い傾向のある飲食店の従業員を客に晒さなくても済む。自動で流れるいらっしゃいませも同様だ。毎回同じテンションでいらっしゃませを言ってくれる。替え玉や食券システムも従業員との会話を最低限にしてくれる。厨房も覗かれないので実はセントラルキッチンから運ばれてくるラーメンスープがその店で作られてるかもしれないと思わせることができる。でも味は安定するわけだ。それ以外にもいろいろあるが正にラーメンとは情報ビジネスの世界なのである。

本作は既に連載終了しているが続編に「ラーメン才遊記」がある。本作の内容が更にパワーアップされているので是非読んでほしい。特に飲食店ビジネスを手がけるものには必読書であるとさえ言える。

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「鉄ヲタブランド化計画」なる荒唐無稽なビジョンとその実現までの軌跡『鉄子の旅』

鉄子の旅 1

私はどうやら鉄道の旅が好きらしい。友人と旅行に行くとできれば鉄道を利用しようとしている。子供の頃は地元の鹿児島本線の駅名を全部暗記してたし、初めての東京は博多駅から6時間!かけて新幹線でいったくらいだ。友人はそんな私を本名の「貴文」にひっかけて「鉄文」と呼ぶ。
そんな鉄文が思い余ってアニメDVDにまで手を出してしまった作品がこの『鉄子の旅』である。いまでこそ市民権を得た感じがする鉄ヲタ女子が、ほとんど認知されていなかった10年ほど前に、やはり鉄ヲタ(しかもマニアックなスイッチバックヲタ)であるIKKI元編集長江上さんが無茶振りをしたマンガなのだ。

日本全国の駅を全て制覇した世界一の「乗り鉄」横見裕彦さんは鉄ヲタブランド化計画なる荒唐無稽なビジョンを掲げ、作画担当の菊池直恵さんを毎回のようにブチ切れさせる。そんな様子を半ば呆れ気味にレポートするマンガなのである。

流石IKKIである。たぶんこの雑誌以外では成立しないニッチすぎる分野なのだが、連載がはじまりアニメ化が決まる頃から実際に鉄ヲタのアイドルが登場し、最初どうやっても無理ゲーと思われていた「鉄ヲタブランド化計画」が実現してしまうのである。

これまで鉄ヲタであることを隠していたであろう女子達は、まずはタレントによって、それが武器になることを発見され、そこから鉄ヲタカミングアウトがブームとなるまでの、まさに嚆矢だったわけである。

しかし、この横見裕彦さんの乗り鉄ぶりはまさに脅威。毎回テーマは違うのだけどJR線をいかにして最低料金で長い時間のれるかとか、単線のローカル線でできるだけ多くの駅に降り立つのか、とか(全駅制覇は降りないとダメらしい)いまでこそメジャーな存在の秘境駅などもこの漫画がメジャーにしたと言っても過言ではない。

残念ながらいいキャラを醸し出していた菊池直恵さんは本当に愛想を尽かしたらしく、2では作画が変わってしまい、漫画のテイストやノリが変わってしまったのは残念だが、一度でいいからオリジナルメンバーと鉄道の旅をしてみたいものである。と江上さんに以前会った時に言ってみたら割と乗り気だったんだけどIKKIが休刊しちゃったからなあ。当分お蔵入り企画なのかもしれない。

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マンガの中で天国のニョーボとまた一緒に飲みたい、そんな祈り『実在ゲキウマ地酒日記』
美味しい地酒を知るだけでなく、この世から乳がんを無くすために読んで欲しい

実在ゲキウマ地酒日記

須賀原洋行といえば20年ほど前週刊モーニングで連載されていた人気漫画『気分は形而上』の作者として知られていた。この漫画はおそらく哲学を題材にした初めてのヒット漫画ではないだろうか。しかも時折登場する哲学キャラみたいなのがシュールすぎるし、説明もさっぱり頭に入ってこない。なにより絵が素人レベルに下手くそなのである。
あ、某編集者に「漫画家さんに絵が下手くそというのは、性器のサイズの話をするのと同じだからやめてください」と言われたの忘れてた。。でもあの絵が苦手すぎて、たぶんモーニングで最後まで読む気にならなかった漫画だと思う。

そんな『気分は形而上』がおもしろく感じられたのは作者のニョーボ(実在の)が時折登場してその独自のライフスタイルや存在感が独特だったからだ。その後、ニョーボはスピンオフして『よしえサン』という漫画になり作者得意の酒のツマミ料理や好きな地酒なども登場し、子供も生まれ子育て要素も漫画には取り入れられていった。
作者の作画レベルも少しずつ上がっていったのであるが、そんなネタで長期間続けるのは限界もある。そう考えると、やはりクッキングパパは偉大なのだが、『気分は形而上』の連載も終わり、恐らく蓄えを切り崩すような暮らしをしていたはずだ。そんな中ひっそりと始まった連載がこの『実在ゲキウマ地酒日記』だ。彼の趣味である地酒とツマミ料理だけで構成される漫画。当然それだけでは全く面白くないのでニョーボや大きくなった息子たちが登場する。

どこまで行っても彼はニョーボ頼みなのだ。とはいえ一定の支持は得られ、小規模ながらも漫画家を続けていけるくらいの状態になったと思われていた。ところが突然作者がツイッターであの、最愛のニョーボの死をカミングアウトしたのである。しかも連載は続いていたのに既にかなり前に亡くなっていたという。。。

この2巻にはその顛末が描かれていて涙無しには読めない。ニョーボだけを愛した男が、まるで人生の全てを失ったかのような喪失感。立ち直るまでに相当の精神的努力をしたのだと思う。そして満を持して、いや相当の覚悟を持って始めた新連載が『天国ニョーボ』。かれは一生「ニョーボ」を背負って生きる覚悟を決めたのだろう。

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イケメンが性的サービス何もなしで添い寝をするというビジネス『シマシマ』
添い寝屋を出来るくらいのイケメンに生まれたかった!切なる願望。

シマシマ(1)

不眠症に悩むバツイチ、マッサージサロンオーナーの女がふとしたきっかけで見つけたビジネスはなんと、イケメンが一晩性的サービス何もなしに添い寝をするというビジネスであった。誰しも一人で寂しく寝るのは嫌なもの。しかし面倒臭い恋愛やセックスをせずにただぐっすりと眠りたいというシチュエーションはあるものだ。そんな自分の思いから彼女はビシネスを立ち上げる。メンバーは四人。一見するとみんな草食系男子に見えるが実際にはどうかわからない。そんな四人が当初は添い寝屋ビジネスを順調にこなしていく。

しかし別れた旦那や添い寝屋ビジネスそのものに怪しさや胡散臭さ、違和感を感じる潔癖女子がいたり、そもそもオーナー女子との間の色恋沙汰などが発生してしまい、添い寝屋ビジネスはどんどんグチャグチャになっていくのである。しかしギリギリのところで踏ん張って添い寝屋という非常に特殊なビジネスはそれなりに継続していく。

しかしなんというか、この物語に出てくる男の子たちのイケメンぶりがやばい。全員がタイプが違うものの、とにかく周りの女性が大体ちょっとしたことで惚れてしまうタイプの男の子たちなのだ。そりゃあそんなルックスに生まれたらそうなるよなあってな感じなんだよね。だから、ちょっとしたトラブルに巻き込まれても誰かが助けてくれるのである。いいなあ。いいなあ。って思いながら読んでる。一度でいいからこんな感じの生活味わってみたい(切なる願望)。

という感じでリアルにそんなサービスあるのかって調べてみたらあったよ笑。
恐らくこの漫画きっかけなんだろうなあ。どんなサービスなんだろうなあ。体験談が聴きたいなあ。

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『東京タラレバ娘』20代のモテモテからのギャップという人生の現実を受け入れられない人々のリアル。

東京タラレバ娘(1)

人気マンガ家 東村アキコによるアラサー女性のリアルに迫るストーリーといえば買いたくなるだろう。『海月姫』でおそらく自分の周りのリアルなオタク女子=腐女子像をリアルに描き、『かくかくしかじか』で自分の恩師の死をリアルに描いた彼女が次に題材に選んだのは自分がかつて歩んできたであろう、アラサー女子の悲哀である。それも非モテのアラサーではない。20代前半の頃はそれこそウザいくらいに男子が群がってきたであろう、イケてる女子のアラサー悲哀物語である。

主人公は20代の頃にモテていた。その当時に振ったいわゆる草食系男子から再びアプローチされ、当時よりも洗練されて年収も高くなり社会的立場もレベルアップした男子に意気揚々とデートにでかけ、当然付き合ってと言われると思いきや自分の後輩の若い女子との間を取り持ってくれと言われ愕然とするのである。しかし、これが世の中のリアル。20代女子のもっている価値の大きさをリアルに感じていない女子が多いのには呆れるばかりである。

しかもこれはモテ女子のほうがギャップが高い。東村アキコは美人マンガ家として有名であり、これは実体験がかなり含まれている。これまでの東村アキコのマンガは『海月姫』しかり、『かくかくしかじか』しかり、実体験をベースにした漫画のほうが圧倒的に面白いのである。若いころにウザいくらいにモテ女子だったのに、一気にアプローチしてくる男性のレベルが下がったことに納得いかないのだろう。しかし、それが女子にはかならず来る試練であることは仕方がない。

これは避けられない事態であるから対処法はいくつかある。一つは自己評価をあまり高く持たないことである。しかしモテまくりの若いころにそれを認識するのは難しいだろう。そういう意味ではこの漫画を読んでそういう先輩たちの二の舞いにならないように予防するしかない。アラサー女子が読むには酷なマンガであるが、彼女らも自分の立ち位置を認識するための痛い教材だと思うしかないのかもしれない。

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『ハピネス』思春期の異常性欲を描かせたら右に出る者がいない押見修造の新作はドラキュラ性癖がテーマだ!
ドラキュラになって女子の血を吸いたかった童貞男子に捧げる

ハピネス(1)

うだつのあがらない、メインストリームからつまはじきにされた少年、青年が主人公で美少女がヒロインってのはいつもの王道の押見修造マンガなんだけど、今回はドラキュラ的な性癖がテーマとなっている。つまり血が欲しくて欲しくてたまらないという状態から、人を襲って血をすするという行動に出てしまう、という奴である。ある日レンタルしていたDVDを返しに行くときに、美少女に突如襲われ、血をすすられたあと主人公はこのまま死ぬのか、それとも生きて自分達の仲間になるのかを選択させられるのである。

思春期の血がテーマ、そして美少女といえばそれは始まったばかりの生理であろう。男性からはまったく想像できないが、毎月彼女らは「ツキノモノ」と格闘している。溢れ出す血をあの手この手でブロックしているがドラキュラ化した主人公からしてみればそれは大好物の匂いに他ならない。どうにかしてあの匂いの元に辿り着きたいのだが、必死に理性を駆使してその欲求をブロックしようとする。

その様々な副作用によって彼の周りには様々な美少女達が群がってくることとなる。モテモテというわけではないのだけど、ドラキュラ化した彼には暴力もコントロールできない、衝動が湧き上がってくる。思春期の男子の魅力というのは理性では計り知れない種類のものが多いのだ。しかし多くのマトモな少年達はそれを発露できないまま大人になっていく。

これから続く物語は、そんなつまらない大人になってしまったもの達がなしえなかった、ぶっ飛んだ少年時代。できれば美少女と仲良くしたかった思いがほとばしる物語となっていくはずだ。

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少年期の性の暴走、元少年A「酒鬼薔薇聖斗」との共通点とは『水色の部屋』

水色の部屋

若くて綺麗なお母さんがいる童貞少年というシチュエーション。主人公はそのお母さんがDVを受け、そしてレイプされるのをみて欲情している歪んだ性の持ち主だ。正直いって世の中の童貞男子なんてものはそういう歪んだ性の持ち主であることがほとんどだ。もちろん、ソッチのほうが普通なのかもしれない。だけど、それを正面切って吐露するものなど居るわけがない。そもそも若くて綺麗なお母さんなんてのがほとんど存在しない。そういうシチュエーションになりようがないのだ。

そして主人公には仲良しの幼馴染で、割りと美人の同級生がいる。男子校に通っていた私にしてみればさらに羨ましい環境だ。しかしこの童貞の主人公はそんな幼馴染の好意にも気づかず、いや気づいているのかもしれないが、美人の若いお母さんのことが気になって仕方がない。そんな彼はあまり話したこともない、実は鬼畜の同級生にその幼馴染を紹介してしまう。彼は鬼畜だったために幼馴染は蹂躙されてしまうのだ。さらにその彼の性欲は止まらない。イケメンで性欲旺盛な思春期の若者が暴走しだすと止まらない。

彼の魔の手は主人公のお母さんにも向かってしまうのである。しかし主人公の歪んだ性欲はそれを止めようともせず、むしろ嫌だとは思いつつ、鬼畜が彼のお母さんを蹂躙する事を望んでいるかのような振る舞いをしてしまうのである。ゆがんでいる。それは若さゆえの歪みなのか、それとも大人になってからも持ってしまう種類のものなのだろうか。上下巻からなるこの作品はそれに対する回答も用意していていると思う。

最近話題となった元少年A「酒鬼薔薇聖斗」が自身の告白本「絶歌」を出版したが、彼は結婚して子供もいるという。あのような猟奇殺人犯と同じレベルではないとはいえ、少年期の暴走というのはもしかしたら、ホルモンバランスも整っていない少年だからこそ犯してしまう犯罪なのかもしれない。

そういう意味でも鬼畜な少年や、この主人公のその後に少しだけ触れらてているが人間というものは大人になって少しは落ち着くというのはあるのかもしれないなあ、と感じるのである。

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『のの湯』孤独のグルメで地味系おひとりさまグルメブームを作り、花のズボラ飯で手抜きグルメブームを作った男が次に狙うのは銭湯系女子結びつけなければブームか? なんと久住昌之がグルメの次に選んだテーマは銭湯だった。

のの湯 1

なんと久住昌之がグルメの次に選んだテーマは銭湯だった。といっても孤独のグルメも彼によればグルメ漫画というより町歩き漫画なのだそうだ。それについてはグルメアプリ、テリヤキから生まれたグルメ本「ばかウマ」の久住昌之との対談を是非見てほしいが、彼は何気ない日常の街に潜むちょっとした面白さをアピールするのが得意なのだと思う。

さて、今回の主人公は銭湯が大好きすぎてたまらない20代女子だ。好きすぎて仕事も浅草の人力車の車夫というハードな仕事だ。男性ばかりの力仕事になぜ従事してるかというと仕事のあとのひとっ風呂を浴びたいからなのだ。そして偶然銭湯チケットを支給してくれるという下宿にたどり着く。まあ風呂なしの共同アパートなんだけど、その代わり下町にたくさんある銭湯のチケットを支給してるというわけた。銭湯好きの人募集という我田引水的なキャッチフレーズが素敵である。

そして同じアパートにすむ二人の女子も半ば無理やり巻き込んで銭湯巡りが始まるというわけだ。たかが銭湯と侮るなかれ。東京には元気に運営されている銭湯が山ほどある。三人で港区方面へオシャレパーティに出かけるときは麻布十番にある銭湯で身体をきれいにしてばっちりメイクをして出かけるといった具合に女子が銭湯を楽しめそうなシーンが描かれている。

おそらくショートドラマの題材としてもピッタリだから映像化もされそうだ。そろそろ銭湯系女子ブームの予感がしてくる感じだな。

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『グリンゴ』ザ・ベスト・オブ残尿感漫画。

グリンゴ

連載漫画の中には唐突に終わる作品も少なくない。週刊少年ジャンプならアンケートの結果でバッサリ切られるし他雑誌はそこまでではないもののやはり人気のない作品はいわゆる「打ち切り」に遭うことは少なくない。私の好きな漫画の中でも例えば山田芳裕の火星探検漫画「度胸星」なんかはもっと続けてほしいと思ったりとか。しかし打ち切りにあっても今ならブログやアプリなんかで連載を再開するって選択肢も十分に考えられるのし、実際そうなっている漫画も多いと思う。つまり作者が存在している限り好きな漫画の続編を読むことは可能なのだ。クラウドファンディングでやってもいいかもしれない。しかし、作者がいなくなった場合はどうか。

好きな漫画の続きが読めないことほどストレスのたまることはない。以前海外を旅行中に立ち寄った日本の本屋さんでつい買ってしまったゴルフ漫画の続きが読みたくて当時ガラケー向けに配信されていた漫画アプリで続編を読んでしまいパケ死したことがある私がいうのだから間違いない。漫画の続きが読めないのは残尿感が激しく残る。今はKindleなどでWiFi接続していくらでも続編をダウンロードできるようになっているのでパケ死の懸念もない。ハマったら最後まで残尿感なく読むことができるのだ。しかし、作者が亡くなった場合はどうだろう。。。これはかなり困る。残尿感といったら失礼かもしれないが、その残尿感たっぷりの漫画の中でも続きを読みたいと思う漫画が、手塚治虫の遺作「グリンゴ」だ。

南米の某国に単身赴任した「日本人(ヒノモトヒトシ)」というある意味ふざけた名前の主人公が政情不安に巻き込まれ奥地にある隔離された村でいろいろなトラブルに巻き込まれる。。。というところでここから面白くなりそうなところでプチっと終わっている。本当に唐突に終わっている。手塚治虫はその後の構想を持っていたのだろうが、誰にもそれを明かさずに胃がんでなくなってしまった。今でこそ胃がんの原因の99%以上はヘリコバクターピロリ菌によるものと判明しているから、あの時代に手塚治虫がヘリコバクターピロリ菌の除菌を行っていれば、あのような天才を若くして亡くすことは無かったし、この漫画の続編も楽しめたはずだ。。。

ストーリー漫画ではなく一話読み切りの時事ネタなどを元にした漫画は続編をアシスタントたちがプロダクションとともに作り上げていくケースはある。あるいは暖簾分けのように同じスタイルの漫画を描いていく場合もあるだろう。難しいだろうが手塚治虫の弟子たちの誰かにグリンゴの続編を描いてもらいたいものである。。それが叶うまでは残尿感を気にしがちな人たちは読まないほうが賢明だ。ストーリーに引き込まれて一生残尿感を引きずることになるだろうから。

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『JIN-仁』 医療漫画の最高傑作と私は思う。ドラマしか見てない人はこの原作にきっと感動することだろう。

JIN―仁―

ドラマが大ブレイクしたのでこの作品名をご存知の方は多いだろう。しかし、最近のドラマは冗長過ぎるというか、もどかしくなることが多い。もちろんドラマ版も面白いのだが、そう思われるなら原作の面白さはドラマ版の比ではない。一話一話の話の作り込みや作画が超ハイレベル。間違いなく村上もとかの最高傑作といっていいだろう。それほどまでに話にグイグイと引き込まれるのである。

主人公の外科医が江戸時代にタイムスリップするところは非常にありがちで安易なSF設定だと思ったのだが、そこからが凄い。手持ちの緊急手術キットで頭を尊王攘夷派の闇討ちで斬られた旗本を緊急手術することによって命を救ったことから数奇な運命に翻弄されていく。話のコアは現代の医療技術を江戸時代末期の日本でどこまで再現できるかというところだ。最高の刀鍛冶にメスをはじめとする医療器具を特注したり、麻酔をしたりと出来る限りのことをやっていく。バックには高度な医療技術監修者が付いているからこそできることであろう。

そして当時は抗生物質が発見されていない時代。手術の最大のリスクは感染症対策だ。彼は世界で最初に発見された抗生物質であるペニシリンを自作することに挑戦する。ペニシリンが青カビから作られたことは有名な話だが、ペニシリンを単離し大量生産するのは非常に多くの工程を経る必要がある。青カビの中でもペニシリンを効率よく生産できる種を選別し、大量生産に至るまでには色々な人々の手を借りる必要があった。そんな中、現代まで脈々と続く醤油生産メーカーが手を貸すというのはなかなか興味深いストーリーである。

また、坂本龍馬を筆頭に幕末のキーマン達が次々と登場し、主人公と絡んでいくのも見ものだ。全国各地を飛び回り彼は色々な人達の命を救っていく。その都度、彼の医療技術は現代に少しずつ近づいていく。サバイバル的な医療技術と、医療の限界をまざまざと感じさせるこの作品のストーリー展開のバランスは素晴らしいものがある。こんなマンガが登場して何十年も読まれる名作となっていくところがマンガ文化の素晴らしいところであるし、電子化でそれが促進されることも素晴らしいと思う。

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本当の自分はどこに住んでいるのだろうか?迷走する自分を見つけに行く作品『アイムホーム』

アイムホーム

1997-1998年にビッグコミックオリジナルに連載された比較的古い作品だが、以前にドラマ化されていたにも関わらずキムタク主演で再度ドラマ化された名作である。なにしろこの漫画の凄い所は主人公の家族が全員仮面を被ったような描写をされていることだ。奥さんや子どもたち家族が仮面のまま描かれる。対して主人公の元家族や懐かしい友人たちはみんな普通の顔として描かれている。同種のマンガには浅野いにおの「おやすみプンプン」などがある(主人公の家族は良くわからない鳥みたいな生物として描かれている)が、それにしても不気味な仮面家族なのである。

主人公はなぜそんな状態になったのかといえば、単身赴任先のアパートでの火事による一酸化炭素中毒が原因で最近の記憶が飛んでしまっていたことである。彼は沢山の鍵がついたキーチェーンと古い記憶を頼りに様々な彼の「ホーム」を渡り歩き記憶をつなぎ合わせていく。それは愛人の家だったり旧友の家だったり。既に記憶喪失で閑職に追いやられ穏やかな暮らしをしていた彼が実はバリバリのエリート銀行員で周りの人達や離婚した家族たちとの間に大きな軋轢を作っていたことを思い出していく。

そこがなんというか、石坂啓らしい描写というのか本来今の愛するべき家族が仮面に見えてしまっているのにも関わらず、捨ててしまった昔の家族や友人たちが愛するべき人達のように見えてしまうように描かれている。捨てられた人達の戸惑いの状況や、再び主人公を受け入れていく様が妙に生々しい。本来の彼が持っていた資質なのだろうか、人間の本質とは何なのだろうか、環境が変えてしまった彼の人格というものを考えてみると、自分の功名心や出世欲というものが周りにどのような影響を与えているのか自省したくなるようないたたまれない気持ちにさせられる部分も多い。

そしてエンディングについては伏せるが、石坂啓らしい淡々とした現実とはこういうものなのだろうな、という結末になっていることだけはお伝えする。ドラマ作品と併せて原作も読むとさらに興味深いだろう。

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『忘却のサチコ』ある意味突き抜けた女性版「孤独のグルメ」はこのマンガに決定だ!

忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス)

久々に突き抜けた面白さのグルメマンガが登場した。作者の阿部 潤は「パパがも一度恋をした」のような、オッサンの姿で蘇った亡き妻を夫が愛する、というぶっ飛んだ設定での泣けるコメディを描ける作家なのであるが、今回もなかなか設定がイッている。

サチコは会社でもある意味一目を置かれている超合理的OL(実は美人)なのだが、ある日一人の男と出会い結婚をすることになる。結婚式当日も合理的行動を突き通していたのが原因かどうかはわからないが、一枚の書き置きを残してその男が結婚式から去ってしまう。サチコはこんなことで自分がショックを受けるはずはないと思い込んでいたが、突然道端で男を思い出し彼の事を好きだったという感情が爆発して泣きだしてしまう。彼のことを忘れられなかったのだ。

そんな彼女は偶然入った定食屋でサバの味噌煮の美味しさに突如目覚め、美味しいものを食べている時だけは、その食べるという行為に没頭して彼の事を「忘却」できる事を知ってしまった。そして彼女は時折「忘却」飯を求めて全国を飛び回ることになる。「忘却」飯を食べている時のサチコの恍惚とした表情がまたなんともいえず旨そうだし、ある意味コミカルなのがこの漫画の持ち味だ。

この漫画に登場する「食」はサバの味噌煮などのいわゆる伝統的なB級グルメが多い。誰しもが楽しめる定番のグルメという意味では女版「孤独のグルメ」に近い。サチコのキャラもかなり「立って」いるのでドラマ化しやすい題材のように思われる。果たして誰がサチコ役をやるのだろうなあ。。。

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自殺を図った「犯人」が閉じ込められサバイバルを行う猟奇的な島『自殺島』

自殺島 12 サバイバル極限ドラマ (JETS COMICS)

私は自殺をしようと思ったことはない。が、日本は自殺大国と言われている。例えば学校のような狭い世界で精神的に追い込まれるとそのような気分になったりするのだろう。都心部の鉄道などでは毎日のように「人身事故の為の遅延」などが起こったりする。練炭自殺など新しい自殺方法が「開発」されると、それを利用しての後追い自殺が爆発的に増えたりする。

しかし、自殺は必ずしも上手くいくとは限らない。多くが自殺初心者なので失敗することも多い。そんな人達は自殺未遂者と呼ばれる。ある人が自殺の研究をしようと彼らにヒヤリングしたところ驚くべき結果がでたらしい。どうやらずっと自殺をしようと思っていて計画的に事を進めていた人は少なく、突発的に飛び降りたり首をつったりという人が多いらしい。もともと精神的に追い込まれうつ状態になっているところに酒が入ったりして衝動的に自殺に向かうらしい。多くの人はそれを恐怖体験として語ってくれるのだそうだ。そもそもそんなうつ状態にある人は誰しも自殺のリスクが高いといえるだろう。

自殺は文字通り「自分を殺す事」。刑法には殺人罪の規定があるが、自らを殺す事は諸説はあるにせよ処罰はされないし犯罪には分類されていない。このマンガは自殺を罪とみなし、その未遂すら処罰されるという近未来を描いた作品である。自殺未遂者は有無をいわさず離島に送られ海岸近くの海に投げ落とされる。船に戻ろうとすると撃ち殺され、仕方なく多くの人は島に渡ることになる。様々な理由で自殺未遂をしたものは島に到着して絶望し自殺を再び行うもの、自暴自棄になってレイプ行動に移るものなど様々である。

そして一部のコミュニティに秩序が生まれてくる。主人公のセイは控えめではあるが狩猟のサバイバルスキルを活かして鹿猟を行うようになり自分を取り戻していくし、コミュニティの食糧確保にも貢献していく。しかし平和は訪れない。自殺教唆をする仲間がいたり、別の集落には女性を性奴隷化して秩序を保つ野蛮なコミュニティがあったりして、そこから紛争に発展したりする。私はサバイバルモノが好きなので鹿の解体処理や一から農園を作ったり、漁を効率的に行う手法を開発したりというシーンが沢山でてくるので面白い。また、極限状態での殺し合いに発展するかどうかのせめぎあいも手に汗握る所である。
まだ連載中なので今後の展開が楽しみなマンガである。

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『高嶺の花』アラフィフ漫画家の恋愛ストーリーて、もしかして作者のリアル・エッセイ漫画なのか?それとも妄想なのか?(笑)

高嶺の花 上 (ヤンマガKC)

しげの秀一といえば古くは「バリバリ伝説」、そして代表作となった「頭文字D」ではトヨタの名車「86レビン・トレノ」を一躍有名にしたことでも有名だ。ある意味伝説を作ってきた売れっ子漫画家だ。頭文字Dはその後3DCGを駆使したアニメ作品で大ヒットし、あのドリフトキング土屋圭市が実際に走行した音声を使用したリアル感溢れる走行シーンでも話題を呼んだ。

私が「頭文字D」の大ファンだったこともあって漫画家の福本伸行さん経由で一度会食をしたことがある。その時は確か50歳前後だったと思うが、イケメンでとても50歳には見えないルックスだったことがかなり印象に残っている。だからこそ、この漫画に出てくる主人公(アラフィフの売れない漫画家)は、しげの秀一そのものなのではないか(売れない漫画家や冴えないルックスと卑下してはいるが)と感じたのである。

頭文字Dの長期連載が終わったのでその合間に気分転換にエッセイ漫画的に描いたのかな?と思うくらいのテンポよい展開。アラフィフで20代の元ギャルと恋愛関係になるなんて普通なら完全に妄想の都合の良い世界だと思われるけど、しげの秀一だったらそれもあり得るな、と実際に会ったものとしてリアリティを感じてしまったため、「あ、これは実話なんじゃないか?」って思ってしまって面白く読ませてもらった。

なんせ、ヒロインの名前が「高嶺花」という名前なんだよね(まんまやん!)。その設定からしてなんというかギャグなんじゃないかって思ってしまうんだけど、頭文字Dでもそうだったように、しげの秀一が書く恋愛ストーリーにはある種のピュア感を感じてしまうんだよね。時折吹き出しの外に小さな手書き文字のキャラクターの独白みたいなのがあるんだけど、あれもリアリティに溢れているんだよねぇ。。。

世間的には「頭文字D」の続編希望が非常に多いみたいなんだけど、彼はまた新機軸をやりたいんだろうなあ。。なんだか面白い作品が待ち構えていそうで、期待したいと思える予感を感じた。

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