紙の本
田辺聖子氏の古典文学に対する気持ちがよく伝わってくる一冊。上巻では平安時代までの11の作品を取り扱っているけれど、それぞれについて、もっと詳しく知りたくなってきた。
2011/11/04 09:46
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
田辺聖子氏の本を初めて手にしたのは高校時代。清少納言の枕草子の現代語訳ともいうべき「むかし・あけぼの」だった。ここから清少納言の大ファンとなり、同時に田辺聖子氏の古典語りのファンとなったのだ。
本書は、「古事記」から始まり、平安時代末期に書かれたと思われる「とりかへばや物語」まで11の作品について田辺氏が語っている。収録されている作品は次のとおり。
「古事記」「万葉集」「土佐日記」「和泉式部日記」「蜻蛉日記」「落窪物語」「枕草子」「大鏡」「堤中納言物語」「今昔物語集」「とりかへばや物語」。
「落窪物語」は田辺氏が「おちくぼ姫」という本で現代語訳しており、「枕草子」は前述したとおり「むかし・あけぼの」がある。「とりかへばや物語」は、これをもとにして故・氷室冴子氏が「ざ・ちぇんじ!」という作品を書いている。私が読んだのはこの3作品。「古事記」については、いろいろと他の著者の解説書などを拾い読みしているくらいかな。
田辺氏の語り口調で書かれた文章はとても優しい。これは”易しい”と言い換えても構わない。11もの作品が一冊に詰め込まれているわけだから、それぞれについてそれほど深く語れるわけではない。けれど、彼女の言葉を読むごとにもっともっと知りたくなってくるのだ。古典文学への先導役となってくれているように思う。それぞれの作品から一番魅力的な部分を抜き出しているのかもしれない。田辺氏の古典文学への愛情の深さが伝わってくる。
神代の時代を描いた「古事記」、大和王朝の歌の数々、平安王朝に花咲いた様々な物語。それはみな、一部の貴族のみのものなのかもしれないとも思っていた。けれど、もしかするとそうでもないのでは…。もちろん文字を扱える人々がそれほど多くいたとは考えてはいないけれど、こういった歌や文学を愉しんでいた人というのは想像していたよりも多くの層にいたのではないかなと思う。その傾向は平安後期になればなるほど顕著になっていったのではないだろうか。
さて、下巻は武士の時代から江戸時代あたりの文学を取り上げるようだ。と考えると上巻に「源氏物語」が入ってこないのが少し気にかかる。ところどころ紫式部の名は登場し、「源氏物語」と比べるような文は出てくるのだけれど、一つの章としては存在しない。ここに一緒に並べるには「源氏物語」は壮大すぎるのだろうか。私は紫式部より清少納言派なのだが、「源氏物語」は好きだ(もちろん現代語に訳されたものを読んでいる)。田辺氏自身も「新源氏物語」を著している(文庫本で宇治十帖含めて5冊)。これもまた面白い。
ここに選ばれた作品は思えば1,000年を超えて読み継がれてきたベスト・セラー。現代、創り出されたものでそれらに続いていくものは何だろうか。
1,000年前の世界、1,000年後の世界を覗いてみたい。
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古事記、万葉集、土佐日記などの古典を現代の凡人に分かりやすく解説してくれます。登場人物にたいする田辺さんの感想が、今も生きている人に対する感想のようで微笑ましいです。「とりかえばや物語」というのは、兄弟で男の子が女の子のように、女の子が男の子として成長していく話だそうです。いったん社会で活躍する楽しみを知った女性(男装している)は、なかなか女性としての生活には馴染めないと。いつの世も変わらないですね。
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田辺聖子氏の本を初めて手にしたのは高校時代。清少納言の枕草子の現代語訳ともいうべき「むかし・あけぼの」だった。ここから清少納言の大ファンとなり、同時に田辺聖子氏の古典語りのファンとなったのだ。
本書は、「古事記」から始まり、平安時代末期に書かれたと思われる「とりかへばや物語」まで11の作品について田辺氏が語っている。収録されている作品は次のとおり。
「古事記」「万葉集」「土佐日記」「和泉式部日記」「蜻蛉日記」「落窪物語」「枕草子」「大鏡」「堤中納言物語」「今昔物語集」「とりかへばや物語」。
「落窪物語」は田辺氏が「おちくぼ姫」という本で現代語訳しており、「枕草子」は前述したとおり「むかし・あけぼの」がある。「とりかへばや物語」は、これをもとにして故・氷室冴子氏が「ざ・ちぇんじ!」という作品を書いている。私が読んだのはこの3作品。「古事記」については、いろいろと他の著者の解説書などを拾い読みしているくらいかな。
田辺氏の語り口調で書かれた文章はとても優しい。これは”易しい”と言い換えても構わない。11もの作品が一冊に詰め込まれているわけだから、それぞれについてそれほど深く語れるわけではない。けれど、彼女の言葉を読むごとにもっともっと知りたくなってくるのだ。古典文学への先導役となってくれているように思う。それぞれの作品から一番魅力的な部分を抜き出しているのかもしれない。田辺氏の古典文学への愛情の深さが伝わってくる。
神代の時代を描いた「古事記」、大和王朝の歌の数々、平安王朝に花咲いた様々な物語。それはみな、一部の貴族のみのものなのかもしれないとも思っていた。けれど、もしかするとそうでもないのでは…。もちろん文字を扱える人々がそれほど多くいたとは考えてはいないけれど、こういった歌や文学を愉しんでいた人というのは想像していたよりも多くの層にいたのではないかなと思う。その傾向は平安後期になればなるほど顕著になっていったのではないだろうか。
さて、下巻は武士の時代から江戸時代あたりの文学を取り上げるようだ。と考えると上巻に「源氏物語」が入ってこないのが少し気にかかる。ところどころ紫式部の名は登場し、「源氏物語」と比べるような文は出てくるのだけれど、一つの章としては存在しない。ここに一緒に並べるには「源氏物語」は壮大すぎるのだろうか。私は紫式部より清少納言派なのだが、「源氏物語」は好きだ(もちろん現代語に訳されたものを読んでいる)。田辺氏自身も「新源氏物語」を著している(文庫本で宇治十帖含めて5冊)。これもまた面白い。
ここに選ばれた作品は思えば1,000年を超えて読み継がれてきたベスト・セラー。現代、創り出されたものでそれらに続いていくものは何だろうか。
1,000年前の世界、1,000年後の世界を覗いてみたい。
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田辺聖子さんが古典の名作を簡単に紹介した本。
取り上げられているのは、古事記、万葉集土佐日記、蜻蛉日記、枕草子など、幅広い。
個人的には枕草子がとても好きです。紹介の文章にも改めてうっとりしてしまいました。
詳しい紹介はこちら→http://monogatarigatari.blog.fc2.com/blog-entry-12.html
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古典(古事記、土佐日記など)をお聖さんが解説した講演をまとめたもの。
講演が元になっているものなので、とても読みやすいです。
私は清少納言が大好きなので、枕草子のところは涙なしには読めませんでした。
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田辺聖子さんが好きです。源氏物語も田辺聖子さんの現代語訳で読みました。古典をあまりに読んでいないので、その最初の一歩として読みました。蜻蛉日記、とりかへばや物語は全く読んだことがないので、読んでみたいなぁ。枕草子は部分的にしか読んでいないので、あらためてきちんと読んでみたい。その他、出てきている古典文学はどれも古典と呼ばれるにふさわしい面白さ。古典文学で日本人を知ることも楽しそうです。
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蜻蛉日記、今昔物語集など、聞いた事あるしあらすじも知ってるけどしっかり読んだことないなぁ、といった作品を田辺さんの解説の元で読むことが出来てとてもよかった。
古事記や土佐日記、枕草子は古典の授業で触れたものの、田辺さんの解説を読むと数段面白く感じた。
下巻もあるので読んでみたいと思う。