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紙の本
「八日目の蝉」ってどういうことなのだろう。巻末で池澤夏樹が「この小説を読むに際して、まず育児が快楽であることを確認しておこう」とその悦びの経験?を語っているのだが、これは蝉とは無関係。死の淵にたってこその真の再生ってことかな。いやそんな長生きの蝉はいないね。このタイトルに託した著者のメッセージはどう考えても謎である。いっそ、「空蝉」のほうが深遠で想像するに広がりがあっていいのじゃぁないだろうか。
2011/04/09 00:45
8人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化されまもなく上映とテレビでしょっちゅう宣伝されている。話題作ということで野次馬的に手にしたところ、たまたま同年代の友人が電話で、ちょうど読んでいるところだという。彼はなんでこんな作品がベストセラーになるのかと腹を立てていた。が、あえて理由は聞かなかった。
「逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか………。東京から名古屋へ、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活。そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶられるラストまで息もつがせぬ傑作長編」
「優しかったお母さんは私を誘拐した人でした」
「罪深い逃亡の果てに母と娘が見た光―――」
性衝動も手伝って、とても優しい彼だから、結婚している男だけれど彼女は好きになりました。そして妊娠しましたが、奥さんは許してくれそうもなく、彼は離婚ができません。仕方がないから中絶し、子供の生めない体になりました。それでも優しい彼だから、彼女はあきらめきれないで、ずっと彼につきまとう。彼ら夫婦に子供がうまれ、あまりにかわいい女の子だから自分の子として育てよう。女ならば母性の本能そのままに、にっこり笑いかけた乳飲み子を抱っこ、そのまま遠くへ旅立った。他人の子供だろうと自分の子供だろうと母子の愛には変わりがない。母と子の絆ほど強いものはない。警察の追及からなんとしてでも逃げのびて、私はあなたを守る。それが私の生きがいだ。世間にはおなじようにかわいそうな女がいてお互い寄り添いながら生きているところもあった。そこは全財産の運用を任せるだけでとても面倒見がいい集団だった。だから親の残した保険金・4千万円を寄付することもためらいません。周囲の人はみなさん善意の人たちです。意地悪そうにしていてもどこかで私たちをかばって励ましてくれます。
昭和60年ごろのお話だからまだ当時の日本女性は女の業というのでしょうか、こういうかわいそうな女性が多くおられたんでしょうか。「女は弱し、されど母は強し」という古い言い伝えは腹を痛めた経験を前提にしているのだけれど、誘拐という現代的テーマで装いをあらためたものかもしれません。
後半はこの女の子が大学二年生に成長して始まります。
やはり結婚している男だけれど、性衝動も手伝って、優しい彼が好きになり、やはり彼が離婚できないままに妊娠します。ところで時代が変わっています。生みの親と育ての親を冷静に見つけることのできた女性として、彼女は親たちには見えなかった新しい世界への踏み切りを決意するのでした。
ベストセラーになった作品ですから
「あなたは一人じゃないよ」
「みんな見守っているよ」
と多くの読者から善意の支援が聞こえるようです。
私だって彼女が育ての親に再会できることを期待し、新たに踏み込む世界で平穏に暮らせる明日を願っています。
ただ、リアリストであるオジサンとしては、彼女がどうやって食っていくのだろうと、気になって仕方がありません。
余計なお世話かもしれませんが、自己陶酔はほどほどにして、とりあえず就職先を見つけなさいと忠告します。