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紙の本
こういうチャラチャラした主人公にこれからの人生を絶望的に宣告されるサラリーマンは浮かばれない。
2005/06/27 14:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年度の山本周五郎賞受賞作。この賞は平成15年、京極夏彦の『覘き子平次』平成16年、熊谷達也『邂逅の森』が該当作品であり、新潮社がスポンサーとなってそれなりの文芸作品を対象にしているのかと思われた。垣根涼介の作品は『ワイルドソウル』を読んでみたいと思っていたところで、「山本周五郎賞受賞」をおおきく白抜きした表紙帯にひかれて、まずこの作品から読むことにした。
「リストラを専門に請け負う会社に勤めている真介の仕事は、クビきりの面接官。昨日はメーカー、今日は銀行、女の子に泣かれ、中年男には殴られる。はっきり言ってエグイ仕事だ。それでもやりがいはあるし、心も身体も相性バッチリの恋人もいる。そして明日は………?
笑って唸って泣かされる、女と男の危ういドラマ。」
「小説新潮」に掲載された短編5作を連作風にまとめたもので、人員整理を進めようとする会社の人事部を補助するコンサルタント業のエピソード集である。
「何故わたしなの」と
うそぶき、首を切られるのを渋る能無しを相手に
「こういう理由であなたは必要ないのです」
グウの根いわさず、論駁し、希望退職に持ち込む。真介33歳だ。
長いことサラリーマンをやってきてリストラの両サイドと身近につきあってきたものからすると、普通の企業の人事部であれば、転職先を探すために人材コンサルと契約することはあっても、退職勧告を他人まかせするような不誠実はしないものだから、まず、世間知らずが書いたいい加減な話だなと第一印象。
しかし、山本周五郎賞を受賞できたとすれば、きっとお互いに深刻な問題をゲーム感覚でさらりと描いているその気分が新しい時代の風潮なのかもしれないとそんなところが評価されたのかしら。わたしにしてみれば「職を得る」、これはゲームじゃないぞって腹が立つくらいなのだがね。
「生涯の伴侶を得る」ことだって大切な問題でしょう。それを恋愛とかセックスもゲーム感覚なんだな。真介君自身も、また彼の相手である40歳を超えた熟女たちも考えていることは相手に「どうか結婚してください」と頭を下げさせてその勝利感として自己満足しようとオシャレ、会話、食事、ムード作り、『愛の流刑地』並みのベッドテクニックを競って楽しんでいるように見えてしまう。
ゲーム感覚だって言うのは、要は生活感がまるで希薄なのだな。これは小説がまずいのか、そうではなくて、実際30台の人たちって真剣な生活なんてものとは無関係に生きているのだろうかと、むしろそうならその方が情けない。
ただこの本音をもらせば
「年寄りがわかったようなこといってんじゃないよ。私たちだってマジメに迷っているし、真剣に考え、悩んでいるのよ。そっちには迷惑かけるつもりなんかこれっぽっちもないんだから、そんなお説教はなんの足しにもならないの、オトウサン!!!」
と時々我が家へ顔を出す娘どもからガツンと反撃されるのがオチだな。
さわらぬ神にたたりなし。
「この作品は行間にいいところもあります」
と締めておきましょう。