紙の本
神頼みも、ほどほどに
2007/10/14 22:24
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
背表紙の「抱腹絶倒にして、やがては感涙必至」という紹介文を読む限りでは、もっと軽妙な人情噺だと思っていた。江戸を舞台に、今ひとつパッとしない男が主人公で、人ならぬものが出没すると言えば、ありがちな設定。軽い気持ちで手に取ったのだが、前半はともかく後半は軽やかどころの噺ではなくて、ズンときた。
なんと言っても時代が重い。主人公彦四郎は貧乏御家人で時代は幕末、しかも彼の家は代々、徳川将軍の影武者を勤めるのがお役目なのである。「明治維新万歳」とはいかない。
文武に秀でながら、運に見放され、人の悪意に陥れられ失意の日々を送る彦四郎は、酔いに任せた神頼みで、なんと貧乏神に憑かれてしまう。しかも彼が手の合わせたのは「三巡稲荷」であり、貧乏神の次は疫病神、さらに……と踏んだり蹴ったりなのだ。
彦四郎が憑かれてしまったのは、邪神であっても神は神。人間には太刀打ちできない圧倒的な力を持っている。倫理も情も、人間のそれとは違う。何とか己に降りかかる不幸を防ごうと足掻く彦四郎は、彼らにしてみれば玩具のようなものなのだろう。神を相手にした時だけでなく、時代の奔流に対しても、人間は無力で小さい存在だと思い知らされる。
だが、最初は不幸から逃れよう(出来ることなら他人にそれを押し付けてでも)とばかり考えていた彦四郎が、何とか踏ん張り、自分なりの生き方を全うしようと心に決めてからは、物語は俄然、面白くなってきた。終盤の彦四郎の毅然とした態度は、人はこれほど変わるものかと瞠目する。まさに「人間、侮れん」という感じである。
この話、リアルな時代小説としても描けた筈である。そうしていればもっと重厚で格調高い話になったかもしれない。しかし作者はあえて、極めて人間臭く擬人化された神というファンタジーを取り入れた。三人(?)の神たちの登場順及びキャラクターは、まさにこれをおいて他はなし、という絶妙さだった。
身を粉にして働いてる邪神と、怠惰に太平を貪る人間。己の務めに誇りを持っている邪神と、意義を失い迷う人間。現実ではあり得ない出会いがあり、葛藤と救いがある。これも、ファンタジーの妙である。
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧乏御家人の別所彦四郎は蕎麦屋で勝安房守、榎本釜次郎が参って出世したといわれる三廻神社の話を聞く。ある日彦四郎は酔って川沿いの場所に小さな祠を見つけ神頼みをする。なんとそこに祭られていたのは貧乏神であった。そこから彦四郎の波乱の生活が始まった。最初に貧乏神、次に疫病神、そして死神まで登場だ。世の中は戊辰戦争が始まり不穏な空気が漂う中、彦四郎と3神はどのようにのりきるのか?
発想がよかったし内容も面白かった、と同時に武士道を感じた。
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浅田氏お得意の幕末の御徒を主役に据えた小説。
帯には抱腹絶倒にして感涙必至とありましたがそこまで面白くも無く感動も無かった。
まあニヤリとしたぐらいか。
それでも小説としては及第点以上だしそこそこ楽しめた。
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多分面白いと思うのですが、頭の中でつまぶ○くんが走り回り過ぎて思うように楽しめませんでした……イメージが合わなかったんです。残念無念です。北村薫が美しい日本語を書く人ならば、浅田氏は「情緒ある日本語を書く人」だと思うのです。大好きだ。
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妻夫木聡主演で映画化されますが、私としては2007年9月に新橋演舞場で中村橋之助主演で舞台化されるのが楽しみ。それはさておき幕末の時代が動こうとするとき、身分は低いなかで文武にすぐれた立派な侍が不運続きで少しでも身をたてようとうっかり拝んだのは災厄をもたらす稲荷だった……という設定が秀逸。この作家は「何かに殉じる」ことを筋にすることが多いけれど、これもそのひとつ。つい笑ってしまいつつ最後にほろっとさせるのはこの作家の巧さだが、あまりに立派なその覚悟が小市民な私には少し馴染めなくて★ひとつ減。専業主婦の母は「どんなに志が立派だろうが、自分のプライドのために妻子を養うことができない男は夫としては最低」と斬って捨てました。さすが、生活に根ざした言葉は強い。
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貧乏神と疫病神は他人に押し付けることにそう抵抗もなかったのに、最後の神だけは「武士道に反する」というのは少し乱暴かな。まぁでも全体的には良くできている作品です。徳川の世が終わる時代に、愚直に徳川家に忠誠を誓うのが彦四郎と時代の流れを見極めて身の振り方を決する多くの人々。その対比と、武士として、何のために生き、そして死にゆくかを考えさせつつも、ライトなノリで書き上げています。宮部もそうだけど歴史もののなかでも、やっぱり江戸の庶民の生活を描いた作品はいい。ラストは結構あついです。妻夫木くん主演で映画化されるとのことですが、彦四郎に妻夫木くんはちょっと若いんじゃないかなぁ。
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途中まで面白かったけれど、
ラストが好きじゃなかったです。
幕末&歴史好きな人にはたまらないのかもしれないですが、ワタシはファンタジー志向なので。
なんで、こうなるの?と唐突な展開に思えました。
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「人を呪わば〜」をしみじみ実感してしまう作品。ユーモアに溢れた子気味良い流れですが、個人的にはラストがちょーっっと格好良過ぎかなと。
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購入者:梅村 (2007.6.7)
喜劇要素が多く、落語のような小気味良いテンポで楽しく読めました。それでいて日本語の(忘れていた)奥深く美しい表現を見直せるあたりは流石大御所といった所です。ストーリーは派手さはありませんが、暖炉の灯のような、じんわりとした面白さは健在でした。
貸出:藤本 返却:藤本(2008.2.18)
幕末に生きたの一人の下級武士の生き様が描かれています。実際には存在しない神様なんかが登場してユーモラスに描かれていますが、最後は泣けます。さすが浅田次郎、これぞ「武士道」です。★★★★
貸出:矢北(2008.5.19)返却:(2008.6.2)
「武士道」。現代の感覚の中にいる自分には納得し難いものでしたが、大切なものを守り通そうとする主人公の姿は、とても素敵でした。
貸出:丸橋(2008.10.15)返却:(2008.11.20)8/12
登場人物それぞれに、人情たっぷり。
小説が面白かったので映画も観てみましたが、ちょっと残念な感じでした。
貸出:宇都宮(2009.12.10)返却:(2010.3.20)
おもしろかったです。古きものを守ろうとする気持ちがとてもかっこいいです。
貸出:滝口(2,010.5.10)返却:(2010.7.24)
古き日本らしくテンポよく面白く読みやすい本
貸出:吉田愛(2011.12.1)返却:(2011.12.9)
貧乏神、疫病神、死神…出てくる神様はとんでもない神様ばかりですがどうにも憎めない感じ。
これでもか、位に苦労する主人公ですが、その度に武士道、と何度も口にしてまっすぐ生き抜く姿勢が潔いと思いました。
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久々に感動した作品。
設定は漫画のようですが、斬新であり、文章も読みやすくまとまっています。
最後の最後まで終わりが読めず、どうオチをつけるのかわくわくして読みました。
映画のようなラストは必見。
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文武に秀で、忠義の心にも篤いにも関わらず出世の道からは遠く見放された下級武士の彦四郎と、彼がひょんな事から拝んでしまった稲荷から出てきた迷惑な“憑神”さまとの物語。次々に降掛る厄災に立ち向かう様は抱腹絶倒とまではいかないが、十分に面白い。物語の〆はあからさまに感動的ですらあるが、落とし方としてはそれでイイと思う。お勧めです。
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江戸ファンタジーなストーリーかと思って読み始めたが、最後は浅田次郎らしい終わり方。武士道を貫く主人公。こりゃ映画化の主人公選択ミスだな、と思った。(070809)
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時代物の小説は苦手だったけど、映画化されるのと浅田次郎ならってのがあって読んでみた。やっぱり読みにくかったし当時の人々の生活とか風習とかわかんないから曖昧なまま読み飛ばしたところもあるけど、おもしろかった。彦四郎がただの善人じゃなくて人間らしいところをちゃんと持ってて、でも周りに愛され助けられながら苦難に立ち向かっていく様に、最後ちょっとうるっときた。
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すばらしい人材を生かすも殺すもその人の生き様ってことでしょうか。
何を目的に生きていけばいいのかを考えさせられた。
愛らしい貧乏神・疫病神・死神のキャラクターがいきていた。
朝田次郎のほんはぽっぽや以来だから、ずいぶんと趣のちがう、あかるい印象をうけたよ。
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神様に憑かれた主人公。本当は文武両道なのに次男に生まれてしまったせいで家を継ぐこともできず不幸な彼。終わり方が本当に彼の幸せなのかはわからないけれど、涙が出そうになった。