kotepさんのレビュー一覧
投稿者:kotep
2022/02/15 11:28
高田さんには脱帽です
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
五十鈴屋は火の用心の浴衣や勧進相撲の浴衣を浅草太物組合の仲間たちと共同で製造・販売することで信頼を得た。そして組合の長老から五十鈴屋への恩返しとして呉服を扱える「浅草呉服太物組合」へ転向する提案を受ける。そして全店の承認を受け、奉行所へ届けるも回答は未だにこず。
五十鈴屋が江戸に出店してはや10年の月日が経つ。女店主・幸はいろんな人たちに助けられ、商売が続けられたことに感謝する。しかし、幸の前には新たな敵、災いが襲い掛かるが・・・・・。
どんなときにもどんなことにもいろんな知恵を捻りだす姿には頭が下がる。商売敵だけではなく、奉行所も幸の足を引っ張るとは。逆境に立ち向かう幸の姿には勇気づけられることばかりでした。しかし、次作への宿題が気になっています。早く出版して下さい。
2021/08/11 11:29
爽やかな気分ですね。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
江戸に出店して8年、いろいろな困難にも負けず乗り越えてきた五十鈴屋に新たな災難が降りかかる。宝暦の大火と冷夏による綿の不作であった。幸は「「買うての幸、売っての幸」の考えを元に所属する浅草太物組合にある提案をする。それは五十鈴屋の藍染めの手法を伝授し、「火の用心」の藍染め浴衣地を組合と共同で製造販売するというものであった。白生地の在庫がないため、翌年まで見送りかと思われたが、重鎮の河内屋が在庫の3分の1を儲けなしで組合の仲間に譲るという提案により、製造販売が行われ成功に終わった。
ある日、年に一度五十鈴屋に来店するお客から年に一度の勧進相撲の浴衣地を作って欲しいという依頼があった。どのようなものにするかを考えていたところ、賢輔からある提案があった。幕下には手型、幕内には四股名入りの浴衣地というものであった。14名の四股名入りの浴衣地と手型の浴衣地を浅草太物組合15人で分担し、製造販売したところ・・・。
この作品は本当に勉強になるところが多い。単純にアイデアの良し悪しではなく、経営の方針・信念に基づいて出てくるアイデアが凄いのでしょう。現在の経営者でも強い信念を持っている人はさほど多くない。それを実践できる経営者はもっと少ない。
幸は知らず知らずその能力を身に付けていた。だから協力者が出てくるし、人が離れず、育っていくのであろう。この作品は一番感動できた。高田郁さんは素敵の人ですね、江戸の歴史や文化にも精通されていて。それを上手に作品に散りばめて。
次作も楽しみにしています。
2022/08/12 12:16
満足でした
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浅草呉服太物組合の力で改めて呉服を商えることになった五鈴屋。吉原で行われる衣裳勝負でも高評価を受け、呉服商いも順調に進み、菊栄と共同で新しい店を出す。商いは順調に進むも再び五鈴屋に危機が襲い掛かる。「買うての幸い、売っての幸せ」を実践してきた五鈴屋はこの危機を乗り切れるのか?
どんなときでも諦めずに前を向いて知恵を出し続ける五鈴屋の皆さんには頭が下がる思いですね。そして彼らを支え続ける職人さん達、浅草太物組合の方々達全てに「買うての幸い、売っての幸せ」が理解されたことが本当に素晴らしいですね。
紙の本壬生義士伝 下
2021/06/14 10:14
感動の作品でした。
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南部藩屋敷で自刃した吉村貫一郎。南部の雫石に残した妻のしづ、息子・嘉一郎、娘のみつは主の脱藩後どのように生き抜いてきたのか。家族は妻の実家に身を寄せる。
嘉一郎は秋田藩討伐に加わり、函館の五稜郭で最後まで薩長軍と戦う。みつは家老の大野次郎衛の息子・千秋と結婚し満州で医院を開業する。そして最後に生まれた子供には最高の名前が・・・。
嘉一郎の生き方にも父の武士道の精神が受け継がれていたことや、母への手紙を含めて生き方にただただ驚くばかりでした。上下巻ともに本当に感動した作品でした。新撰組の有名人ぐらいしかしりませんでしたが、少し興味を持ち始めました。次は一刀斎夢録や輪違屋糸里を読んでみようと思います。
紙の本雲を紡ぐ
2022/09/06 12:02
感動作
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いじめが原因で学校に行けなくなった美緒。ある日、美緒の大事にしていた赤いショールがなくなった。母に捨てられたと思った美緒は母と電話で口喧嘩し、祖父のいる岩手の盛岡へ向かう。美緒は岩手山をはじめとした自然に感動し、祖父の家で仕事を手伝いう生活が始まる。糸から作られる様々な色を見て美緒は自分でも何かを作りたいと感じ、自分で機を織り始めるが・・・・・。
祖父と両親と美緒に糸が紡がれてよかったですね。両親が離婚せず家族もバラバラにならず済んで安心しました。両親も一緒に盛岡でホームスパンの仕事をすればもっと良かった気もしますが、両親と美緒はどこに住んでいても紡がれた糸で繋がっているということですね。
紙の本野良犬の値段 上
2022/05/16 10:23
ホームレスの誘拐
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6人のホームレスが誘拐された!犯人側からホームレスの名前と写真がネット上にアップされる。警察は本当に誘拐なのか、また被害届が出てないことから、暫くは静観する。しかし人質の1人の頭部が発見された。そして犯人側から、新聞社とテレビ局に身代金を払えとの要求が・・・・・。
今までにはなかった誘拐で、警察や身代金を要求された企業側の困惑ぶりが、見事に表現されていましたね。しかし、ホームレスを誘拐するという発想は面白かったですね。
下巻で次の展開を読みたいと思います。
紙の本八本目の槍
2022/05/06 10:44
八本目の槍
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豊臣秀吉と柴田勝家の賤ケ岳の戦い。そこには秀吉の小姓組の活躍があった。彼らは後に賤ケ岳七本槍ともてはやされるが、表に出てこないもう一本の槍があった。八本目の槍は佐吉であった。官吏としての能力もあり、武闘派と呼ばれた虎之助、槍の名手・助右衛門、女性に目がない甚内、家族を徳川家に質にとられている孫六、普段から大人しく穏和な助作、自分を見失った権平、そして最後まで分かり合えなかった市松。彼ら七本槍と佐吉の深い交わりを表した歴史小説。
佐吉の頭の良さには惚れ惚れしますね。あの時代に誰が考え着いたのでしょうか。今ではコミュニケーションの必要性が言われますが、彼らが膝を突き合わせて議論していたらどうなっていたか。歴史は変わっていたはずなんですがね。そもそも虎之助、市松は佐吉と仲が悪かったか不思議になりますね。勝者・徳川方の歴史の書き換えが行われた感じもします。内容は非常に良かった。
2022/01/24 11:25
皆、読んでみよう
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生活の利便さを求めるあまり、自分たちの国の安全が脅かされているとは。外資系企業は日本の金融・教育・行政に本格的に参入しようとしている。国土だけでなく、日本人の伝統や文化までを教育から支配しようとする行為には恐怖すら感じる。日本の政治家は売国なのか?アメリカだけでなく、中国やロシアも虎視眈々と日本の資産や国土を狙っている。その危険信号を一冊に纏めた作品だ。
平和ボケと言われる日本に作者のような提言は耳に入らないかもしれないが、最悪の事態を考えて思考し、行動しないと日本が日本でなくなってしまいそうですね。政治家やマスコミも揚げ足取りや、ポピュリズム発想をやめて真剣に国防を考えるときにきたのではないでしょうか?デジタルやITを理解してない人が大臣ということから見直さないといけないですね。
紙の本泥流地帯 改版 続
2021/10/11 10:36
感動作です。
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十勝岳噴火で荒れ果てた土地に変わった村や田畑を拓一は昔の姿に戻すことを決意する。拓一は大木を取り除き、硫黄のしみ込んだ土を洗い直し、祖父が開拓してきたように鍬と鍬を持って大地とともに生き始める。しかし村の復興に賛成する者がいる反面、反対する者もおり、両者が醜い争いを始め、復興の盛り上がりに水を差す。拓一は周りの声を気にせず、ひたすら復興へと邁進する。その結果、米が土地に根付いた。そして拓一が本当に欲しかったものは・・・。
下巻を読んでもっと感動しました。今の時代に拓一のようなバカはいないので、なおさら拓一の一貫した芯の強さが心地よく思えました。また母の悲しみを押し殺して生きる強さにも感動しました。
紙の本メイド・イン京都
2021/01/14 10:05
美咲さん頑張れ!
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実家の稼業を継ぐために銀行を辞めた和範についていくことを決めた美咲。しかし京都に今も残る独特な言い回しや、文化になかなか馴染めない美咲。そんな美咲の苦しみを知りながら仕事を言い訳に逃げる和範。そんな中、美咲は滋賀で焼き物の工房を持つ大学時代の同級生の佳太と再会する。佳太の作品に刺激された美咲はアパートを借り和範と実家から距離を置き、昔好きだった刺繍を始める。刺繍を始めてから美咲に変化が現れる。その変化とは・・・。
紙の本きのうのオレンジ
2020/10/27 09:44
きのうのオレンジ
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33歳の若さでガン宣告を受けた遼賀と彼を支える母・燈子、弟・恭平そして看護師の泉の家族愛の物語。
言葉にするよりも一度読んで戴きたい作品です。死期が近づいたことを知り、残された時間をどのように生きるかを考える姿に感動を覚えた。自分にここまで強い意志があるのか、またそれだけのことをやってきたのか自問自答したくなった。
紙の本おしょりん
2020/07/01 11:07
おしょりん
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福井県をメガネのフレーム生産で有名にした増永兄弟の奮闘を描く。
主な産業がなかった福井県麻生津村に増永五左衛門は私財を投げ打ち羽二重の生産を始めるが、火事により事業を撤退する。ある日大阪から戻ってきた弟の幸八からメガネの必要性を聞き、メガネの将来性にかけ、工場を建て、職人を集め製造準備に取り掛かる。しかし、村人の反応はなく、反対するものが多く、前途多難な船出となった。
メガネをする習慣のない福井の人々にメガネは定着するのか、また日本で増永メガネは通用するのか、兄弟の奮闘の結果は・・・。
日本の伝統の物づくりの神髄をここに垣間見る。先人たちの知恵や経験がもっと今に活かされたら素晴らしいと思える。
増永兄弟の生き方にも共感できる作品でした。
紙の本オムニバス
2023/04/03 18:38
姫川を支える刑事たち
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捜査一課の姫川が係わった事件を共に捜査した刑事たちのそれぞれのドラマを扱った短編の作品集。
姫川の活躍の裏には彼らのような刑事がいた。ガンテツや日下のキャラクターに及ばないこともあるが、チーム姫川は最強のチームになりつつある。そろそろ次作が待ち遠しいのですが・・・・・。
2022/12/07 11:54
武本刑事、結婚か!
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鬼瓦のような顔をした警視庁鎌田署の武本刑事。生まれてこの方、異性に興味を持つことがなかったこの朴念仁に警察官の娘との見合いが持ち込まれる。その見合いの場所のホテルで異臭騒ぎがおき、武本も協力を申し出る。異臭騒ぎのフロアへ行き、現状確認を行っていると、そこには銃を持った子供が武本に襲い掛かり・・・・・。
警察官の武本シリーズと消防士の大山シリーズは楽しく読ませて戴いております。久々の作品でしたが、面白かったですね。武本さんの見合いの話からちょっと笑えて来ました。孤軍奮闘する武本とサポートに回った元上司の潮崎さんの信頼しあった仲間同士のやりとりもよかったですね。次作は発売されているようですので、早速購入したいと思います。
紙の本彼方の友へ
2022/11/14 11:07
伊吹さんのファンになりました
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老人施設で一人死を待つ佐倉波津子。その波津子の元にある小さな箱が届けられた。それを見て波津子は自分が過ごした戦時中のことを思い出す。母と二人で生活していたこと、歌手になりたかったこと、出版社に就社したこと、恋をしたことと失ったこと等を一つ一つ思い出し始める。そして70年を超え、「友よ、最上のものを。」の言葉を思い出し、佐倉波津子はハッちゃんとして再び生き始める。
感動という言葉しか頭に思い浮かばないですね。戦時中に精一杯生きたハッちゃんや戦地に赴いた人たちの思いがたくさん詰まった作品でした。伊吹作品にもう少し早く出会っていればよかったと思いました。