紙の本
星新一の父・星一の清廉潔白でタフな姿を描き、国家を挙げて彼を抹殺しようとする理不尽を描いた伝記。
2011/03/03 18:53
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、星新一の父であり、星製薬社長である星一(ほしはじめ)氏を主人公とした伝記である。
その内容は大正時代から急成長を始めた星製薬と、清廉潔白かつあらゆる困難にも挫けず乗り越えていくバイタリティー溢れる星一の姿、そして彼を快く思わない権力者たちによる理不尽な冤罪との闘いが描かれている。
本書は、一気に読んでしまうほど魅力に満ちた作品だった。
しかし読み進めるにしたがって不快が募る作品でもあった。
作品自体が不快という訳ではない。星一が不快なわけでもない。星一を嫌う官僚、星製薬のライバル会社と、それに癒着した政治家らの行為が不快なのだ。そして恐ろしく思う。星一を潰すべく官憲の仕組む不当な罪の数々。一人の人間を葬り去るために権力があの手この手で襲ってくるのだ。
物語は星一の視点であるため、一方的に官憲の行為は悪とも決めつけられるものではないが、それでも読者の気分を悪くさせるのは、星一に対して行われている悪質なイジメが、容易に想像できてしまう現在の政治家や官僚の姿があるからだろう。傲岸不遜な官僚、政権を争う政治家、何ら進歩していない日本に失望すら感じる。
その不快な感情の一方で、星一の不安を押しのけ困難を乗り越えてゆくタフな姿、国や人民のために奉仕しようとする清廉潔白の姿に感動させられる。星一の心情の深淵を描いていないにもかかわらず、彼の奮闘する姿が浮かんでくるのは、端正な文章とショートショートで培われた物語性が、星一の心情や置かれている状況を伝えるのに余りある役割を果たしているからである。
ところで解説では、後藤新平の孫・鶴見俊輔氏が、作中で仮名となっているライバル製薬会社社長三原作太郎の実名(塩原又策)を記載している。星新一の父が被った理不尽さへの抗議に、彼も少しだけ助力をしたかったからではないだろうか。
電子書籍
令和も大正も政治家はやり方が汚い
2024/04/04 09:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:恵恵恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
悔しさの訴え。暴露。共有。
こんなことされたら世間に知ってほしい。
政治家の家系は汚いと再認識できる。派閥争いに民間を巻き込み、国民をいじめる。民主主義なんて単語は辞書にないひとたちが昔から政治をやっている。
派閥争いのための急なルール変更→献金疑惑ひっかけ→内内はスルーして民間人を起訴→ネガティブキャンペーン→無罪→上告→無罪→経営困難に追い詰める
やり方が汚い!!!!
阿片てアヘンチンキしか見たことないけど医療用モルヒネとか医療用のアヘンとかを国産化することの意味が国の成長にとってどんな重要性があるのかまでは分からないけど、多分意味のあることをただ気に入らないとかプライドを傷つけられたとかでいじめ抜いてた。最低の政府。
政治と金と癒着と身内贔屓と理不尽に次ぐ理不尽。頭は悪いのにプライドばっかり高くて、国民ひいては日本の成長なんてどうでもよくて、自分のプライド、天下り先だけが大事な外道がいっぱい出てくる。
私情持ち込みすぎ。一民間企業をいじめる。プライドのためにいじめる。お里帰しれる。憲政会とかいう最低の集団派閥かわからないけど、意味がわからない。かわいそう。
検察との癒着はひどい。
”捜査権のある検察が調査した結果“と現代の内閣のひとが何度か口にしていたけど、大正か昭和かにこんなにひどい癒着があったんだから検察は内閣の思いのまま動かすことができるに違いないと確信した。
星一かわいそう。
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これは彼の父親、星一氏について書いてあります。私は彼の父親がこんなにすごい人とは知らなかったので、驚いてしまいました。一氏は、モルヒネの精製に日本で初めて成功した方なのですが、その時の話やその後、官吏(政治家さん)の人達の妨害にあった話などが書いてあります。
小説と言う感じではないのですが、日本の医学界について、少し考えさせられてしまう一冊です。
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著者独自の筆致で当時のようすを書いてあって、読後に正にタイトルの通りかもしれないなとの感想を抱いた作品
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2007/4
図書館から借りて読んだ。役人は自分がもつ権力に無自覚で、歯止めがきかない。そんな相手にまともに立ち向かうようすは、おおいなる無駄になる。
頭がよいはずの役人が、ささいな意地悪に頭をつかうのも、なまじ正直にふるまったばかりに埋もれてしまった、星一のアイディアも、ともにもったいない。
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明治末、12年間の米国留学から帰った星一は製薬会社を興した。日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展したが、星の自由な物の考え方は、保身第一の官僚たちの反感を買った。陰湿な政争に巻きこまれ、官憲の執拗きわまる妨害をうけ、会社はしだいに窮地に追いこまれる…。最後まで屈服することなく腐敗した官僚組織と闘い続けた父の姿を愛情をこめて描く。
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星一が製薬会社を興し、ビジネスを行いながら官憲の力によって潰されていく軌跡。
星一の能力に感嘆するとともに、官僚および政治の力、そしてそれに取り入る商敵の恐ろしさを感じる。
後藤新平や加藤高明など、明治時代の政治が大きく絡んでくるので、北岡教授の授業を思い出させ、理解の助けになる。
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星新一は中学生のときにショートショートをよく読んだ.これは星新一の自伝だけど,こんな過去をもっていたなんて想像だにしなかった.
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星新一といえば「ショートショート」
気持ちよく読者の"読み"を裏切ってくれるSF。
しかし、この本は実話ベースで
星新一の実父・星一(ほし-はじめ)がモデル。
星製薬の経営者である父・一
星薬科大の創立者として今も名前が残っています。
民間における努力がいとも簡単に
官吏の論理によって搾取されてしまう
時代の不条理。今なお続くこの状況は問題ですよ〜本当に。
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ショートショートで知られる星新一が父親星一をモデルに書いた小説。
明治末,12年間の米国留学から帰ってきた星一が製薬会社を興し,成功し発展していく中,政治・官僚から受けた陰湿な仕打ちに対し最後まで屈することなく戦っていく姿を書いたものですが,非常に割り切れない思いを持って読み終えました。 どんな納得のいかない苦境に立たされようが前向きに真っ直ぐ対処していこうというおおらかなかな星一にやりきれない思いを持ってしまいました。
客観的に淡々と書かれた文章が余計に社会の醜さや理不尽さを際ただせる感じがします。
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ショートショートでおなじみの星新一さんが書いたお父様の伝記。
「明治・父・アメリカ」では、子供時代から留学、帰国まで。こちらは、帰国後に星製薬を立ち上げて官と戦い、亡くなるまでの記録です。
星一と言う人の、あくまでも前向きな精神には感銘します。ぜひ、続けてお読みくださいね。
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文字通り、「人民は弱し 官吏は強し」
日本社会に通底するアレなのかなあ。
泣く子と地頭、とは良く言うけれど、
そういう世界には入らない方がいいんだろうなあ。
欲はなく、決して怒らず、いつも静かに笑っている人生が良いんだろうね。
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ショートショートの大作家、星新一の父上
星一さんの伝記です。
この本の前に「明治・父・アメリカ」を読むと
より一さんのバックグラウンドがわかりますが、
とにかく努力家であり、頭がきれる開拓者。
努力すること、壁を越えていこうとすること。
人と違うことをやってみる勇気。本当に素晴らしいです。
その星一が、戦前の日本で国益の為に一所懸命働く中で、
忍び寄る官僚や政商の面子や策謀。
嫉妬や面子は、ほんと使われ方を間違えると恐ろしい。
最後に向かっていく時のもどかしさと言ったら。。
今の日本の官僚や政治家に、ぜひ読んで欲しい作品です。
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事前知識のないまま
題名から星新一のペーソスとシャレの効いた
ショートショートを期待して読みはじめ
「へー星新一ってこんな社会派小説を書くんだ!」と驚き、
最後のあとがきで(そこにくるまで
全く気がつかなかったのだ!星一なんていかにも
彼の話に出てくる登場人物の名前みたいではないか。)
父親の半生を描いた伝記だったとは!!
彼の軽快で含蓄のあるショートショートとは
また違ったどんでん返しをくらった気分。
あっぱれ、星新一。
激動の時代に自分の信念を持ち続けた尊敬すべき
一人の男の生き様。
それにしても現実は物語より甘くないのはありだとして
最後の最後まで救われない暗い話であることよ。
がんばっている、そして信念のある生き方をしていれば
道が開けるというものではないとしても
最後にすかっとくる、そういう結論が欲しかったなぁ。
それは星新一のプロットの立て方に
文句をつけているわけではなくて
時代がそうであって欲しかったという
ただのセンチメンタルな現代人の
つぶやきなのだけれど。
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いつものSF短編とは一線を画した星新一氏の父親のお話。製薬会社を興して成功するものの、政治家ににらまれてしまい、あの手この手で嫌がらせに近い濡れ衣を着せられて奮闘している。よくぞここまで理不尽な事をされてエネルギーが途切れなかったものだと思わせるぐらい壮絶。。。関連する他の書物も読んでみたい。