紙の本
井上ひさし全著作レヴュー 7
2010/07/31 05:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後間もない頃、東北一の名門校の落ちこぼれ四人組(稔、ユッヘ、デコ、ジャナリ)と、東京の名門校から転校してきた俊介がまき起こす珍事件の数々。叶わぬ恋に悶々とし、権威にささやかに抗い、未来に夢を抱く高校生たちの姿を生き生きと描いた長編。
刊行当時“井上ひさし版「坊っちゃん」”と称されていた記憶があるが、主人公が先生と学生の違いはあれど、確かに雰囲気的には似通ったところがある。今のような、規則規則でがんじがらめに「管理」された学校が到底真似出来ない自由と大らかさが溢れており、この時代をリアルタイムで経験した昭和ひとケタ世代もそうでない世代も、心地よいノスタルジアに浸りながら「青い山脈」を仮想体験出来ることが、今でも本作が人気を博している最大の理由であろう。
筆者は70年代半ば(自分が高校生の時)に初めて読み、井上氏の逝去を受けて今回読み直してみたが、井上作品の中ではそんなに高い評価を下していない。井上氏が過ごした高校時代は実は過酷そのもので――「四十一番の少年」などにその一端が反映されている――『青葉繁れる』はこういう高校時代を過ごしてみたかったという、作者の願望・理想像の物語なのだとぼくは解釈している。井上文学の「笑い」は本質的にもっと過激で、もっと屈折しているものだと確信している筆者からすると、本書におけるユーモアは何か微温的過ぎて物足りない。今でも新たに多くの読者を獲得していること自体は喜ばしいことだが、これが井上ひさしの代表作と思いこまれてしまうと、氏の熱狂的ファンとしては複雑な気分になってしまうのである。
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アホですな(笑)
2022/07/14 13:42
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔のの学生さんも女性が絡むと馬鹿丸出しだったんですね(笑)
あの校長先生も奥さんもその後どうなったのか、モヤモヤしました。
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モテもせず、どこかくずぶっている男子高校生の気持ちを追体験できます(笑)
「僕ら」もこんな高校時代だったなぁと。
僕の大先輩でもある、井上ひさしさんの自伝的青春小説。
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井上ひさしの初期作品。
冒頭から笑いがこみ上げてくる。女生徒を見ると自分を主役にした妄想劇が繰り広がる旧制高校生。
チョロ松の色紙『熟慮断行』の4文字が必要な若者たちの蛮行の数々。
楽しく読める作品。
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ムッシュ・カマヤツが歌う"下駄を鳴らしてヤツが来る~♪"って曲が聴こえてきそう。バンカラの時代の素晴らしい大人たちと大人になりかけている少年たちの日常が、いきいきと描かれている。こんなめちゃくちゃは、現代では許されないなぁ。古き良き時代。でも人の気持ちは変わらないはずだよね。
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♪あーおばしーげれる…とくると、私にとっては、ばあちゃんから口移しにおしえてもらった、「桜井のわかれ」の正成と正行のあの歌になるのだが、井上ひさしということは、青葉城の仙台かと、3/11の地震後の仙台が気になっていたこともあって、文庫で借りてくる。
仙台一高へ通った井上ひさしの自伝的小説でもあるらしい。妄想気味、性欲昂進気味の高校生群像をえがいた、仙台弁あふれる(私にはナマの口吻は分からないが)小説。かなり笑える。十代の後半、アホみたいなことに一喜一憂してたよなあと思ったりする。
その青春群像のうごめく、青葉城の仙台とはまったく別だが、「桜井の訣別」はいまでも歌える。最近知ったが、これは文部省唱歌であったらしい。ばあちゃんに教わったときは、お経のような(字の横に点や丸がついたような)のを見ながらだった。あれは詩吟だったんかな~。
あーおばしげれるさくらいのー さーとのわたりのゆうまぐれ~
このしたかーげにこまとめてー よのゆくすーえをつくづくと~
しーのぶよろいのそでのえにー ちるはなみだかはたつゆか~
(私が読んだ本のカバーは、この柄ではない)
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いやいや痛快痛快。盛りを過ぎたオジさんの話だから嫌味もなく楽しめた。いちいち思い当たる節があり、想像恋愛 自家発電やりまくりのわが身を思いだし大笑いしながら読んだ。稔たち五人万歳。チョロ松乾杯。
これは小説と言うより、エッセイである。
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なんか映画っぽいなあと思ったら映画封切りにあわせての文庫化だったのか。どことなく「青春デンデケデケデケ」に似てる。しかし昭和49年公開の作品とかTUTAYAで借りられるかなあ・・・。
非常に喜劇的な内容だけれども、先行きがはっきりしないで終わるあたりが青春小説らしくてよろしい。てか「黄色い目の魚」の感想にも似たようなこと書いてるなあ。
「壁なんか抜けろ!」
それは彼女の眼のせいだろうな、と稔はいつも思う。
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やる事なす事ハチャメチャ。まあ時代なんでしょうね。現代であれば、親の呼び出し、謹慎、退学となるのでしょうが。寛容な校長の姿勢にはジーンとした。
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初めて読んだ井上ひさし作品。
図書館で立ち読みしたところ、シーンとした館内で何度も笑い声が漏れそうになり途中で断念しました(続きは購入して自宅で)。
終戦から数年経った仙台の、名門校の落ちこぼれ5人組を中心とする青春小説。
全編が仙台弁での会話で、仙台に生まれ育った私は楽しく読みましたが、他(東北以外)の地域の方には読みにくい(分かりにくい)かもしれません。
とにかく一つ一つの言葉にユーモア満載。おバカな主人公たちを始めそれを取り巻く登場人物も個性があり魅力的です。
主人公たち一高生とお隣の二女高生が合同で劇をやるエピソードと、「それじゃ初雪だっぺ」がお気に入り。
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若さという強さと弱さを、惜しげもなく、そして恥ずかしげもなく押し出したThe青春小説。それをただの「青い話」で終わらせないのが井上ひさし氏の日本語の巧。特に終盤の描写は、それまでの流れを全て収斂し、不思議な涙を誘います。
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なんだろうか、この痛快な青春小説の後ろにある得体のしれない闇は。大人に噛みついたり、大人のだらしなさを笑い飛ばしたり、大人を真似て酒を呑んだりしながら、戦後の混沌としたモラルが透けて見える。性的なものに関する少年たちの憧れを描きながら、一方で現実には性風俗の暴力的な描写が挟まれている。切ないが、それを笑い飛ばすような乾いた笑いが主人公たちにある。
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著者の精神的故郷である仙台で、少年時代に妄想ばかりしていた男の思想的半自叙伝を、すべての権威を相対化してしまうパロディー意識で描いた愉快な青春小説。
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主人公達の通う高校の卒業生として読みたいと思っていた。井上ひさしは大先輩として高校に通っていた時から名前は何度も聞いていた。作中で出てくる応援歌一番!自分が通っていたころはもうこの小説とはだいぶ雰囲気も変わっていたが受け継いでいたところもたくさんあり小説を読みながら懐かしくなった。特にチョロ松(校長先生)が…一高生には涙もの。
今だと大問題になりそうなこともあるが時代が時代ということだろう。それがいいというわけでもないが、今の方がいいとも一概には言えない。
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読んでて物凄く風景が浮かぶ。
N高とI高の関係は、何だかんだ言って全然変わってなくて、そこもまた素敵。