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「しんしんと雪が降りてくる。
天から降りてきた雪で庭は、一面、白い。
優しい雪であった。
雪はあらゆるものの上に降り積もり、地上の何もかもを、
清浄な天の白で覆ってゆく。」
いいですね…。
情景が一瞬で立ち現れるような。
冷たくて優しくて白い。
たぶん、雪の降る映像を見たり、実際の雪を見たりする以上に、鮮やかに“白”を感じる。
そこが本というものの魅力かな。
実際に目に見える以上のものを見せてくれる。
行間含め文章をじっくり味わうと、果てしなく広い世界が目の前に広がる。
そんなふうに、私の中には、動かしがたい確固たる陰陽師の世界がある。
『陰陽師 太極の巻』 夢枕獏 (文春文庫)
お正月といえば、まったりと平安絵巻でしょう。
ということで、シリーズ6作目、(たぶん)文庫の最新刊!
安倍晴明と源博雅が晴明の屋敷の簀子(すのこ)に座し、季節とともに移ろう庭の景色を眺めながら、ほろりほろりと酒を飲むシーンからこの物語はいつも始まる。
何にもせかされていないゆったりとした時間をこの二人と過ごしたくて本を開く。
時にはほそほそと降る雨を、時にはしんしんと降る雪を、そしてまたしずしずと散る桜の花びらをともに見つつ。
100%脱力状態…。
蜜虫になりたいねぇ。この際呑天でもいいけどさ。
(って亀やん!)
陰陽師はドラマや映画や漫画にもなったが、私はやっぱりこの原作の陰陽師が一番好きだ。
あんまりそつがなく完璧、というよりは、ちょっとバンカラ晴明がいいな。
白い狩衣にふうわりと身を包み、いつも飄々としててさ。
聖人扱いするよりは、下世話なことに右往左往して大騒ぎをする都の人々を懇切丁寧に助けるお助けマンの晴明がいい。
さて、この本は6作の短編から成っているが、その中で私が一番好きなのは「鬼小槌」という話である。
まあ事件じたいはアホらしいというか何というか、女のもとへ通う途中に鬼に出会ってしまったがために鬼の手伝いをさせられることになってしまった平実盛が、恋のライバルの藤原中将を病気にさせる、という話である。
ところが、この一件には蘆屋道満が絡んでいた。
病が重くなった頃を見計らって自分が出て行き、病を治してひと稼ぎしようという魂胆だったのが、あっさりと失敗に終わる。
道満いわく、あまりに寒いので何か温かくておいしいものを食べたかったんだそうで(笑)。
晴明は道満を酒の席に招待する。
炭のよくおこった火桶で暖をとり、こともあろうに晴明に酌をさせ、道満は幸せそうにお酒を飲むのだ。
悪人に描かれがちな蘆屋道満が何だか憎めない。
泣きそうになるところなんか子供のようだ。
そしてこの話は、冒頭にも書いたように雪の描写が美しい。
第1巻に登場した白比丘尼の話題も出てきたりする。
あと、「針魔童子」の針をつかまえる晴明が何ともいえずかっこいい!
作者のあとがきによると、縁側で晴明と博���がお酒を飲みながら会話をするシーンはいくらでも書けるそうだ。
マンネリをおそれない、とか言ってるし(笑)。
一生書きそう、とか言ってるし(笑)。
まあね、続きが待ち遠しくて仕方がない、とかいう類の本ではないんだけど、なんとなーく一生のんびりと付き合ってそうな…。
次はいつこの二人に会えるんでしょうね。
やっぱり楽しみかも。
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呪について博雅が分かったような気がした時私も分かったような気がするし、博雅が分かってない時は私もあんまり分かってない気がする
「陰陽師」の話はどれもあまり怖いと思ったことがないけど今回「覚」はちょっと怖いと思った
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「あやかしのお話でありながら、人間関係やれないとも密接に関わってきます。人の感情と呪術は木っても切り離せないものだと実感できる作品です。呪術がお好きな方はぜひ!」(未来屋書店 本屋従業員によるおススメ本の紹介 2023 の紹介より)
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二百六十二匹の黄金虫(読経すると黄金虫がぞろぞろ出てくる)/鬼小槌(奇病を治しに行こうとすると道満が来た)/棗坊主(五十年前行方不明になっていた僧)/東国より上る人、鬼にあうこと(なにかに追われた男が逃げ込んできた)/覚(覚に出会い廃人になった者たち)/針魔童子(朱雀大路で虫のようなものに刺される事件続発、針魔=播磨なので道満関係か)/読み忘れていた一冊でした。