紙の本
切なさと苦さと、魔女と呼ばれた女の子と。
2004/04/26 01:15
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投稿者:Piyota - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の広也は、テレビ局の報道部で売り出し中の美人で野心あふれる姉から、もと彼女の千秋の謎の焼死について知らされる。キャスターへの転向を狙う姉は、就職浪人中の広也を5万円で雇い、その謎を調べさせ始める。
主人公の広也は、他の樋口作品の主人公と同じように、クールでちょっとさめていて、しかもとぼけた奴である。周囲が彼をそう見ているほどには、本人はセンチメンタルでもロマンチストでもない。ただ、別れて二年経ったあと、広也は千秋のことを何も知らない自分を発見し、千秋を探して、千秋の死の謎を解明するために、彼女の過去に会いにでかけるのだ。そこで明らかになってくる「魔女」の正体とは? これ以上書くとネタばれになるので、詳細は読んでのお楽しみ、ということにしておこう。
たとえば著作中にでてくる魔術書の古典と呼ばれている本、たとえばアレイスタクロウリイの著書とか世界魔法大全とかを、実は評者も学生のころ買い漁ったことがあり、登場人物のセリフをかりて作者自身がそうした魔術のもつ構造をどのようにとらえているか、という片鱗がのぞけたのが個人的に興味深いといえば興味深いが、それはこのミステリーの本筋にはあまり関係がない。
そして、これが評者のもっとも好きなところなのではあるが、他の樋口作品の期待に違わず、この作品もまた、読後感は切なく苦い。
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枯葉色グッドバイの前身らしい。
この作家さんらしい表現の生きた文章で、わりと軽快に読めた。
ただ、読み終わったときに残らないので、ちょっとキビシ目だけどこの評価で。
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再読。
母と姉、年上の恋人の尻に敷かれモラトリアムな毎日を送る就職浪人中の広也は、二年前に別れた恋人・千秋の死の真相を追うことになる。
彼女は、中世の魔女狩りのように生きたまま焼かれた。果たして彼女は魔女のような女だったのか・・・。
母、姉、恋人と登場する女たちが強く魅力があり、千秋の人となりが霞んでしまった感があるが、真相を含め、ミステリーとしても面白かった。
2010.10.28
いつもながらの樋口氏の世界。
今回の探偵役は就職浪人中と若めで「ぼくと、ぼらの夏」をに近い。
猟奇系に対抗して、「懸命に生きる人びとの常識を重みを大切に描いた」という著者に共感。
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表面的には感情の起伏が乏しく周囲に流されるように生きている少年が、個性豊かで気が強く魅力的な女性に振り回されながら謎を解決していくストーリーは著者ならでは。本作もその持ち味が存分に発揮されています。デビューから長い間それほど人気がなかったのに、最近になって結構注目されている(ように思う)のは、草食系男子vs肉食系女子の時代にマッチしているからでしょうか。
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死んだ元恋人の足跡を辿るうちにそれまで知らなかったもう一つの顔が見えてきて・・・よくあるストーリーと言ってしまえばそれまでだが、オカルトチックなスパイスと作者得意のライトな文体が飽きさせずに最後まで読みきらせる。犯人は確かに意外な人物だったが、ちょっとアンフェアかもと言う気がした。よく読み直せばわかるのかもしれないが。それよりも本当に黒魔術ってあったのかもと思わせる展開はお見事。オカルトに流れてしまいそうで不安にさせておいて、そのギリギリのところでミステリーに帰ってくる。決していい読後感ではないのだが、ほっと一息つかせるエピローグは印象的だった。アリバイも密室も何かトリックがあるわけではない。シンプルミステリーというカテゴリーがあるならばお手本になるだろう・・・とまで言い切ってしまうと誉めすぎか。
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樋口ワールドの男子には女難の相があります。結構男前で、なにやらもてもてで、当人はクールに生きて行こうとしているのに、ど〜しても女子に振り回されてしまうんですね〜元恋人 年上の彼女 姉貴さま 元彼女の妹 このすご〜い女子パワーの真ン中で事件の真相を暴いていく広也くんはある意味すごい!
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2月-6。3.0点。
元彼女が、放火殺人で殺された、就職浪人の主人公。
TV局勤務の姉や、元彼女の妹や、元彼女の不倫相手など、
話を聞きながら、犯人捜査。
樋口節。いろんな女に振り回されながら、真相へ。
まあまあです。樋口初期作品。
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魔女っぽい女の人だらけで、誰がホンマもんか!?
主人公の男の子は相変わらずだらだらしていてとても好き。
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タイトルと裏表紙の紹介文に誘われて読んでみたが…ふつうだった。あんまりミステリー感もなく、魔女感もなく。ワクワクもドキドキもなく、読みが進むわけではないが、かといってつまらなくて読みが落ちるわけでもなく。普通。男は『魔女』と聞くだけで普通でないことを期待しちゃうものなのに。
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えらいひとより「どうということなく楽しめる」とかいう微妙すぎる理由で強制貸し出しをくらったわけだがさて。感想を一言で言えば、心の底から好きじゃない。たいしておもしろくもない2時間ミステリをだらだら見せられてるようだった。登場人物のキャラクタは見事に全員魅力を感じないし謎そのものを楽しめるわけでもなく。とりあえず、初読の樋口氏の文章が好みでないことがよくよくわかったのが収穫でありました。当たり障りなくそっと返却しなくては…むぅ。
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悪夢から目を覚ますと、部屋は火の海。
逃げようとするが力つき、生きたまま焼かれる女。
...そんなショッキングなシーンから始まる本作。
全体の印象は...何と言うか、かなりクセがあるか。
「元カノの死の原因を探る」といういモチーフは、
樋口作品には何度か登場している。
当然「素人探偵」なのだが、樋口描くところの主人公は
韜晦しつつも常に鋭い頭のキレを見せて、
淡々と真実を暴いて行く。
本作も、その系譜。
死んだ元カノの「引きこもりの妹」という存在が
作品に特異性を付加してはいるが。
細かいことを言い出すと、実はツッコミどころ満載。
樋口作品では、よく「警察はアホ過ぎ」に描かれる。
が、気楽なエンタテインメントとして読めば、
「妹」のツンデレ気味を楽しみつつ読める。
ストーリーもきちんとひねくれてるので、
タイトルにある「魔女」は誰を指すのか、
なぜ魔女にならなければいけなかったのか、
ちゃんと完成作品として楽しめます。
...作者はきっと女性恐怖症に違いない...
と思うほど、登場する女は魔女ばかりですが(^ ^;
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強い人間と弱い人間。
いったい誰がその判定を下すのだろう。
強そうに見えていても、黒魔術に頼ったり自分を変えようともがいている人間だっている。
いつだって自分は被害者で、いつだって誰かのせいで自分は幸せになれない。
そんなふうに考えていたら、どれだけ恵まれていようが一生幸せだという実感は持てないのでは?と思ってしまった。
主人公である広也が元恋人が焼き殺された事件を調べていくという物語だ。
元恋人・千秋の実家を訪ねたり、友人だったと思われる人間に会いに行ったり、そのたびに広也は自分が知らなかった千秋を知ることになる。
本当の千秋を知ろうともしなかった広也と、自分を見せようとしなかった千秋。
二人がともに過ごした時間はいったい何だったのだろう。
人にはいろいろな面がある。
そして、人は自分に都合の良い面だけを見て、その人を評価しようとする。
殺されたことによって千秋の人生は終わった。
人に知られまいと隠してきたことも、自分なりに修正しようとしていた人生も、すべてが無になった。
最後まで、千秋とは本当はどんな人間だったのか。
捉え所のないあやふやな印象しか残っていない。
犯人の言い分もよくわからなかった。
殺して、この世から抹殺して、それで何が変わるのだろう。
殺したいと思うほどの怒りが感じられずに、やけに犯人の中途半端さだけが気にかかった。
実際に人を殺そうと思うときには大した理由なんて無いものだ・・・と言われてしまうかもしれないけれど。