紙の本
現代社会に欠けているものを感じ取れた
2014/04/12 12:13
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投稿者:BACO - この投稿者のレビュー一覧を見る
お薦めです。
「慟哭」に類する手法で読者の興味を引きつけ、一気読みとなった。
脇役は脇役に徹し、ストーリーが脇道にそれることなく本筋をまっすぐ進めていたことが本書を飽きさせず一気読みに導いたと思う。
2つのストーリーが進行しており、それぞれの主人公に共通していることは「異常的な思い込み」だと感じた。
大きなきっかけは無いものの、いずれの主人公もいつの間にか異常的な人物に仕上がっているのは不思議であった(ある意味騙された、まんまと引っかかった、という気持ち)。
この辺の術は貫井徳郎の醍醐味だと思う。
また、この作品のもうひとつの面白さは、新興宗教の成り立つが「こんな背景から創立するんだろうな」と想像できたことである。
登場人物の誰もがまともな人物でありながらも、いつの間にか組織化され運営されていき、客観的に見ると「宗教集団」と見受けられてしまうのである。
結末はこの集団の行くすえが書かれると思っていたが、意外とセンチメンタルで綺麗な終わり方となっているのも好感が持てた。
文庫本でのP445 天美の講演、P527 雪藤の言葉がこの作品の訴えたいことかな、と勝手に受け止めた。
殺伐とした現代には大事なことだと思う。
紙の本
悲しみと救いの深層心理を大胆に描いた作品
2010/02/10 14:38
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投稿者:ぱやぴす - この投稿者のレビュー一覧を見る
後半の不意打ち展開な展開に驚かされる劇的チックな仕様。
宗教団体の信者の心理を覗き見るような緊迫感が面白い。
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新興宗教、とかって書いてあると、手に取りがちな自分。
のぞいてみたい世界の一つ。
その割に、フィクションで面白いものに
めぐり合えることが少なくて悲しい。
この本では、目を引くような教義があるわけでもなく、
(というかそういったものは何もなく)
ものすごく法外なお金を強要されるわけでもなく、
取り立てて悪い人も出てこず、
そういうところで、作り物めいて書かれていなくて、良かった。
物語として面白くなるか、というとまた違うんだけど。
おぉ、そう来たかという驚きも2,3か所。
でも、メンタルクリニックの先生の存在が
フラットでいいな、とか思っていたらあんな展開。
なんでだったんだろう。
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この人のことだから何か仕掛けてあるんだろうとは思いつつ。
それよりも丁寧な心理描写に引き込まれた。
理想通りに進まない歯痒さ、本人だけが気付かない妄信や執着の怖ろしさ。
何が正しくて何が間違っているのか、何を信じればいいのか。
人間ってほんと主観の世界で生きているものだと思い知らされる。
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作者のデビュー作「慟哭」にあったような、人の淀んだ心の気持ち悪さと壮絶さと見事さ、というものがなくなり、なんてゆーのかなー、こう、「理想はそうだけどさー」といいたくなるような、キレイなキレイな救いの話。
確かに、キレイでない心の内面も出てくるけど、それですら「不幸だから仕方ない」「こんな過去があるなら仕方ないよ」というような言い訳じみた説明が透けて見えるのが、かーなーりーイラっときた。
狂気ってそういうもの?
理性とか理由とか理屈とか、そういうのを根こそぎ倒して、すべてを破壊しつくすのが狂気でしょうが、といいたくなる。そして、それにつけこみ、弱すぎるものからなお搾取するのが悪徳宗教でしょうが、と。まあ、今回はずっと「宗教ではない」「人々を救いたいだけだ」と言い続けていたけれど、それこそ「宗教的なもの」だ、というのは、作中で何度も書かれていたわけだしさ。
まあ、自己救済がテーマであると思うから、実際は宗教は関係ないのかも知れないけれど、題材に「宗教的なものにすがらなければならない人々」を描くのであれば、もっと違ったアプローチがあった方が、もっとカタルシスがあったように思う。
うーん、なんか、貫井さんらしいダーティさがなかったなあ。そこがとても好きなのに、今回は残念でした。
でも、やはり読ませる力は大したもんだと思うので、★3つ。
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ちょっと特殊な能力を使って困っている人を助けたい。そういう思いのある女性と交通事故で妻と子供をなくした男性が出会い、人助けの活動を広げていくという話。主人公目線ではこの活動は「新興宗教」などでは断じてないので、読んでいるこちらもそんなつもりはなかったのだが、ふと我に返って客観的にみると、彼らの活動は「新興宗教」と思われても仕方ないよなぁと思ってしまうようなもので、私のまわりに主人公の男性のような人がいたら、引いてしまうだろうなぁ、と感じてしまった。
私は典型的な日本人なので、「新興宗教」には何か胡散臭いものを感じてしまうので。。。
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本屋で表紙が気に入り、テーマも面白そうだったので買った本。
読んでみるとグッと惹きこまれはしないけど、すいすい読める。
素人でも想像の及びそうな範囲内で物語を進めているのかな。
それでも飽きがこないのがすごいけれど。
描写が巧いというより丁寧という印象を受けました。
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デビュー作『慟哭』で大好きになった貫井徳郎サン。
ここへくるまで何冊も読んだけど、『慟哭』以降で一番好きかな。
やっぱり、
人の内側の狂気を書かせたら天下一品ですね。
"普通"ってなんだ?
"救い"ってなんだ?って考えさせてくれる、そんな面白さ。
不慮の交通事故で妻と子を亡くし天涯孤独となってしまった主人公雪藤は、
自暴自棄の生活を過ごすうち、
モノに宿った記憶を読み取る不思議な能力を持つ
とても美しい少女、遥と出会う。
その出会いをきっかけに、
新しい道に踏み出すのだけど・・・・という話。
不思議な力を持つ見目も心も美しい少女、っていうのは
ちょっと使い古された感じだけど
この小説に限っては悪くない。
ってかやっぱり何が、誰が、マトモなのかなんて
わかんないもんだよね。
みんな弱い心を抱えて生きてるんだよね
って改めて気付かされる作品。
"救済"の意味をつくづく考えさせられた。
個人的には雪藤が遥を「先生」って呼び始めちゃうところがすんごい切なかったな。
後半にでてくるオバチャンの投入は貫井さんっぽくてさすが!
本当につらくなったらもう一回読み直したい作品。
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突然の事故で妻子を失った男性・雪藤が、特殊な力を持った美しい女性・遥と出会い、その他愛の精神とそれを広める活動に救いを求めるが…という話。
正直、展開はありがちというか、まぁこうなるだろうなーと思うとおりに進んでいきますし、中盤から後半にかけての終わり方もやはり予想通り。
とはいえ、雪藤が遥に傾倒していく様や、活動に熱心になるあまりにどんどん視野が狭くなっていくところや、既存の宗教団体とは違う、と言いながらも、雪藤自身の言動がどう見ても宗教関係者のそれになっていくところなどは、さすがの一言。
それぞれの心理描写も丁寧に書かれているけど長すぎず、理想と現実のズレや、ちょっとしたすれ違いなんかがどんどんどんどん大きくなって、終盤に向けて加速していく様はある種の爽快感すら感じさせます。
特に娘を探す母親の常軌を逸した行動は、まさに狂気が垣間見えて怖い。
この人の作品の、この「読ませる」力、本当に凄いなぁと思いながら、一気に読みました。面白かった。
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物語は、事故で妻子を亡くし抜け殻のように生きている主人公「雪藤」がある日街で「遥」という[ある特殊能力]を持った女子大生と出会う所から始まります。
「遥」は特殊能力のせいで、子供の頃から辛い思いをしていたが、父親の影響もあり「人を救う仕事をしたい」と願う純粋な女性でした。
※[ある特殊能力]がある意味この本のキーポイントになるので、ここでは秘密にしておきます。
そんな「遥」との出逢いで妻子を亡くした辛さから癒されていった「雪藤」は「遥」の夢を叶えることが自分に与えられた使命だと感じ、「遥」を中心とした「人生相談を行う」ボランティア団体を作ります。
最初は顔見知りで初めた小さなボランティア団体でしたが、宣伝活動のおかげで有名になり人も多く集まるようになっていきます、そしてある男の加入によって「コフリット」という名前の宗教団体に発展していきます・・・
サブストーリーでは、娘に見捨てられてしまう母親が登場し、娘を捜しに東京に出てくる流れで「コフリット」と出逢うと・・・。
本当は宗教団体という言葉、体裁に違和感を持ちつつも大きな流れに逆らえず飲み込まれてしまった「遥」と「雪藤」はそこに生まれる歪みに思い悩みつつ動かされていき、その最後の爆発がサブストーリーに登場する母親の乱入となります。
特殊能力ゆえ諦念の感がある「遥」と必要以上の責任感で突き進む「雪藤」、そして無責任に「癒し」を求めている人、お金の匂いをかぎつけてハイエナのように群がってくる人などそこに絡んでくる数々の人間模様が物語を奥深い物にしています。
救おうとする側の迷いや戸惑い、逡巡などといったことがしっかりと描かれているので、「救い」「癒し」といった最近軽く使われる言葉をより深く意識することになる作品です。
ただ、さすがに500ページを超える長編なので中盤のたるみ~とくに「コフリット」立ち上げ当たり~がしんどいです。でもそこを超えて後半になると、展開が一気に変わってくるし終盤の「その後」でのちょっとしたトリックはさすがだと言えます。
※トリックは気がつく人はきっと気がつくと思いますが・・・・
宗教についての展開が誤解を生む部分もありそうですが、人が「救い」や「癒し」を求める一番のよりどころが宗教になっているのは疑いのない事実なので、ここはストーリーを支える土台になっているため避けては通れない題材だと思います。
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[簡単なあらすじ]
主人公:雪藤は事故で家族を失い絶望の中で日々を暮らしていた。そんな中である少女とである。その少女は特別な能力を持っており、その能力で雪藤の悲しみに共感し涙をながす。雪藤はその少女によって立ち直ることができた。そして少女のすばらしさを他の人に伝えることこそ自分の使命として行動を始める。
貫井徳郎の新刊(文庫だけど)です。この人の初期作品である慟哭と同じ宗教を扱った物語ということが帯に謳われており、どらっとばかりに手にとって見ました。慟哭については、宗教は絡んではいましたが、どちらかというとミステリーらしいトリック(叙述的)が中心であり、宗教は闇の部分を強調する形で使われていました。しかし、本書では正面から宗教を扱っています。一般的に新興宗教が話題になるときはいろいろと騒動が起きたときであり、何であんな怪しい宗教にはまり込んでしまうんだろうと思うものですが、本書を読んでみると、なるほど、(すべての宗教がそうではないでしょうが)そんな感じで出来上がっていくのなら、熱心に活動してしまうのもわかるかなあなんて思ってしまいました。宗教といっても小規模であれば、お金やら権力やらは何もなく、ただ、救いを求めることが目的なんでしょうが、それが組織となったときにいろいろと壊れていくのだなあと。普通の会社にしても、ベンチャー企業が大きくなっていくことでおかしくなっていくことがよくありますが、おんなじ感じなのかなと。人が増え、組織ができることにより誰も求めていないにもかかわらず変わってしまうことがあるのかと。特に本書は登場人物に明確な悪意(犯人)というものが存在しない。にもかかわらず誰も望まない結果になってしまう。まあ、所詮フィクションですから、すべてがおんなじなわけではないですが、なんとなく組織論について考えてしまいました。爽快感というものはないですが、いろいろ考えさせられるよい本かと思います。ただ、ミステリーというくくりじゃないよなあ。
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テーマは、デビュー作である「慟哭」と同じく、『宗教』。
夜想はさらに『新興宗教』に焦点を絞っています。
「慟哭」から14年 再び『宗教』をテーマにする
…と帯には謳われていたが、今作のテーマは「宗教」ではないように思う。
あくまで1人の人間が悲しみや苦しみにどう向き合い、どのように生きていくのか、それらを主人公を始めとした登場人物を通じて投げ掛けているんじゃないだろうか。
デビュー作の「慟哭」以来、ほぼ全作品(文庫本に限るけど…)を読んできた貫井作品ではあるがその中でも重い作品だった。
雪籐の被った悲劇。「新興宗教」とはなっているが、要は組織作りの過程における葛藤や雪籐により新たな道を選択する遙。
ひとつひとつが丁寧に、そして表現豊かに描かれてているので物語の進行的には歯痒い部分もあるものの、それらの過程をじっくりと読ませることで結果としては最後に雪籐が導き出す答えにも得心のいく展開となっていた。
…まぁ、よくありがちで先き読みできてしまうトラブルが多いのはこの際置いとくとしよう。。
とにかく、目新しいプロットやギミックは一切ないので派手さはなく、『悪党たちは千里を走る』のような軽さも全く影を潜めている。
ただ淡々と流れる時間の中で「人の苦悩」にフォーカスしたヒューマンドラマとして心に残る作品だった。
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オビ
『救われる者と救われない者』
前作に続き、新興宗教の話。
こうやって宗教ができるんやなあ
宗教のはなし
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帰国中に読んだ本。
よくできているとは思うけれど、感情移入ができず、なかなか読み進められなかった。重複が多く、くどい感じだった。
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ちょっとなぁ…と思いながらも最後まで読んだ。新興宗教って書いてたから最初はてっきり慟哭みたくのめりこんじゃうのかなと思ってたら組織を作る側だった。
最後は感動できたし、おおっと思う箇所もあったし、それなりに楽しく読めたからいいかな。