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読んだ本 徳川家光(2) 山岡荘八 20230120
二巻目は、島原の乱への対応が中心になっています。
だけど、山岡荘八が描くのは主人公の生涯であり、その生涯を通した治世観が主題なので、これだけの題材が作品のほんの一部になってしまうんですね。
島原の乱を描いた小説で、飯嶋和一の「出星前夜」というのがあるんですが、これがすごく読み応えがあって、島原の乱というものが、病的な緻密さで描きこまれています。島原の乱というのは、キリシタンの一揆という教科書的なイメージがありますが、実際には関ケ原以降に大量に発生した牢人が中心となった一揆なんだと改めて認識させられました。幕府を手こずらせたのも、信仰の力だと思っていたのですが、戦乱を生き抜いてきた牢人達が戦巧者ぶりを発揮させたとのことでした。
一向一揆なんかも同じ構図なのかもしれません。本願寺も雑賀党なんかを取り込んでの戦ですもんね。
「徳川家光」も同じ史観で描かれていて、それが一エピソードになってしまっているのがもったいない気がしてしまいました。
描きたいことは作家それぞれですもんね。
次の作品は、正に牢人を描いたものなので、真剣に読んでしまいます。