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紙の本
新聞連載小説の黄金時代
2006/03/01 13:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松井高志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
親の無念を晴らすため、遺児(昔の小説では「わすれがたみ」とふりがなをふってある場合多し)が綺麗な役者となって仇(往々にして複数)に近づき、迫り来る危機を突破して次々に復讐を果たしていく、という筋は大衆読み物ではよくあるパターン。
森川久美の少女マンガ「シメール」(’78〜’79年)もそうだったし、山本周五郎の「五瓣の椿」だって、主人公はまだ少女なので、女形に媚態の特訓を受けて、巧みに仇敵に接近していく(彼女が忌み嫌うはずの、淫蕩な母親の血筋もその点で巧まずして武器となるのである)。古くは「八犬伝」の、対牛楼での壮絶な仇討ちが印象的な犬阪毛野(これは女田楽に身をやつしているのだが)。
こういう話は、最初に主人公に視点を設定して、その犯行の「正当な」動機を説明してから、あらためて視点を主人公の外(全知的位置か、主人公を追う刑事・同心役)にぱっと移動して、犯行の経緯をサスペンス豊かに書かねばならないから、段取りがややこしく、書く方にはちょっとストレスが溜まる。
この手のお話のお手本ともいえるのがこの「雪之丞変化」。小説というよりも、長谷川一夫や美空ひばりの映画や、宝塚雪組の歌劇化(高嶺ふぶきのお初が好評)でむしろ有名かもしれない。昭和9年11月から翌年8月まで、東京朝日新聞に連載され大好評を得た。新聞の連載小説が今とは比較にならないくらい人々に待ちこがれられていた時代であった。復讐の経緯は小説を実際に読んでいただくのが一番だが、やはりこういう話の結末には、復讐をとげた主人公がかき消すように行方知れずになるか自らをも裁くように亡くなるか、という「型」を回避できないんだろうな、と思った(曾我兄弟だって赤穂義士だって荒木又右衛門だって、その後末永く幸せに暮らしましたとさ、ということには決してならない。概ね仇討というのはそういうものなのである)。宝塚ではその辺なんとなくぼかしてあったような気がするが。
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