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紙の本
死の商人竜馬暗殺の闇背景
2007/04/30 03:43
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
慶応3年の竜馬暗殺の犯人は新撰組説からいまや見廻り組み説が有力になっている。しかし、見廻り組み説は座りは良いが、どうも説得力が無い。有力根拠である今井の自白についても、今で言う自白法則からしてとても信用できない。
この当たり障りのないふたつの組織に罪を押し付けられれば、御用学者側としてはとても楽である。要するに、敗者側の会津藩に罪を押し付けられる。会津藩主松平容保は、固陋な馬鹿者と思われがちである。しかし、彼は竜馬など土佐の馬鹿者よりも格段に早い時期に開国を主張している。会津は真の武士でありながら、柔軟な思考も持っていた。ただ、方法論として公武合体か王政復古かという違いがあるに過ぎない。要するに、上述の2説は単なる押し付けインチキ論である。
他にも諸説があり、本書は様々な説に言及している。例えば、利害関係から言って倒幕側の薩摩藩である。竜馬は当初、薩長と歩調を合わせていた。ところが、いよいよという時に大政奉還を推進し始めた。これには西郷らも拳を握ったことだろう。なにしろ倒幕に向けて準備を練ってきたのに、その対象を消滅させてしまおうというのである。おそらくこの裏に居たのは勝海舟だと思われる。そうして江戸無血開城はこの西郷と勝の八百長出来試合の中で行われた。それは竜馬の死後である。
薩摩藩の奇怪なのは、捕縛した近藤勇を拷問にかけ暗殺犯の口を割らそうと提案した谷干城に対し強行に反対し、死刑を強行した点である。ただやはり動機は弱いというしかない。
本書では他にも様々な説が紹介されている。新たな物証も呈示されている。死の商人グラバーの背後にあるフリーメーソンの影を指摘する向きもある。だが、はっきりいってどれが真実かを断定するには十分ではない。
ただ、1ついえるのは、歴史は勝者により書き換えられるものだということを忘れてはならないということである。私は坂本竜馬という人間は好きではない。確かに、男としての器はでかいと思う。しかし、事績を見る限り利己的な商人といった方が実像に近い。大体、グラバーとつるんで商売をしていたが、最新の兵器を長州に売り渡し、長州の食料を薩摩に回すなどというのは正しく商人そのものである。そのグラバーの正体はアヘン戦争を惹起したマセソン社のやり手の支社長であった。その生ゴミと組んで貨幣をばらまき銃をグラバーから買い入れるなどというのは利用するつもりが利用されている証拠であろう。
許せないのは、例のいろは丸事件である。自分のボロ船を故意に紀州船にぶつけ、朴訥な紀州藩の船に速攻で乗り込み証拠を取り上げ、莫大な賠償金をふんだくるにいたっては、もはやただの暴力団である。
そう考えると、紀州藩が候補に上がる事も理解できる。紀州藩の家老三浦休太郎などは現に竜馬の弟子陸奥宗光らに散々警戒されていた。
とはいえ竜馬の死については、本書を読んでもいまだに確信は持てなかった。説が多すぎる。それだけ竜馬はやはり人気があるという証拠なんだろう。しかし、竜馬が無くても、薩長無くても、井伊直弼や勝の政的小栗上野介ら主導の方法で開国・革命はなっていたことは間違いない。幕府主導なら果たして今の日本はどうなっていただろう。私の予想では、太平洋戦争はなかったかもしれないが、活力の無い、少なくとも現在より豊かな日本があるとは思えない。長期的内戦という最悪のシナリオもあり得る。
その意味では、いかに倒幕側が陰謀をなそうと、西郷が暗躍しようと、結局日本にとって全てはあるべくしてあったのだろう。竜馬やグラバーの武器売却も結局良い方向に作用した。そして、倒幕側が圧倒的に勝つという明治政府に不可欠な条件は竜馬無くしては難しかった。
そういうターニングポイントに身をおき、故にこそ10重20重のしかも陰陽入り混じる人間関係がますます暗殺を覆う闇を濃くする。
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