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いい本だ。ここ10年で読んだ本で一番面白かった。
イスラム社会における、特に辺境の地や都市の貧困層など、虐げられた者の、どうしょうもない性の現実が書かれている。どれも悲惨な話ばかりだ。人身売買、性犯罪、幼児に対する性犯罪、同性愛者への社会の差別、、、
どれも行き着くところも含めて書かれていて、ほとんどが真っ逆さまに落ちて行くような深い絶望がある。そして、そんな境遇に落ち込んだ者同志のいたわり、慈しむ様子と、逆に騙し合い、蹴落としあう様子が書かれていく。社会と個々人がその中で葛藤する様が、すごくストレートだ。
そこに著者の視点が加わる。熱いが、冷静で物事を一面からだけでは切り取らない、複眼的な視点。しかし、複眼的に見えすぎてしまうだけに、何もできなくなってしまい、もどかしさだけが募っていく。そして最後にそれを爆発させる。
各章ごとに歯切れが良く、起承転結がキッチリついている。しかもそれが著者か主人公の思いで統一されていて、非常に上質な演劇の短編集を読むような趣がある。ただ、若干歯切れが良すぎて「創ってませんか?」と聞きたくなる。それでも、ぶっ飛んでいい本には違いない。
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この本の著者、石井光太さんは本当にすごい!
旅で自分の弱さや未熟さを感じたと言われてるけど、充分に体当たりの旅です!
私には到底できそうにない。怖さが前に出て自分の身を守ってしまうだろうから、現地の人とこんなに深く交流できないだろうし、アンモニア臭がする路上生活者が 抱きついてこようもんなら、避けてしまいそう。
日本でぬくぬく生活してるだけでは全く知ることはないだろう世界。でも同じ地球上で同じ人間。
彼らの生活はあまりにも悲惨過ぎる。痛くて目を背けたくなるし、想像も絶するような状況。
このような現実があるんだってことを、知るだけでも大切なことだと思う。
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南アジア~中東を半年かけて旅した著者による、イスラム世界の性風俗の実体を告発する本。
著者曰く、「ノンフィクションを文学にまで高めて新しいジャンルを作りたい」そうだけど、単に「事実を基にしたフィクション短編集」になってる印象。著者というか主人公?が現地の人に対して幼稚な正義感をやたらと振りかざすところが不愉快。
興味深かったところは、体を売る理由が生活のためでなく、自分の精神の安定のため、という女性や子どもの話。愛されたい、優しくされたいとか、誰かと一緒にいる間は戦争のトラウマを忘れることが出来るから、とか。日本の風俗嬢でも同じような話を聞いたことがあるから、切っても切れない問題なんだろうな。
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求められることで生きがいを感じる13歳の売春婦。
戦時中の拷問で歯と膣を失っても男を欲してタダでフェラチオをする中年女。
弟には苦労をさせまいと自らはゴミを拾い体を売って家計を支える少年。遊んでいると見せかけて兄を安心させ、実はゴミ拾いも男娼もして兄の負担を軽くさせようとしていた弟。弟の行為を知っても知らないふりをする兄。「どんなに陵辱されたとしても、それを隠すことで、人としての誇りをなんとかぎりぎりのところで守っている」
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PCの調子が悪いのです。
先日も「源氏川苦心の日々充実」の文章を入力してゐて、さて更新ボタンを押さうとしたその瞬間、「ちゆいーん...」といふ力のない音に続き突然PCの電源が落ちました。入力した内容がすべてパアであります。
世間にとつて役に立つものなら、ひとふんばりして再度入力するわけですが、かかる下らない読書日記をもう一度やり直すのはやるせないものがあります。で、予定と違ふ本を今日は取り上げます。
著者の石井光太氏は、イスラームの国々における性事情を取材する旅に出かけました。2006年のことであります。
イスラーム事情については、かなりの情報が出回るやうになりましたが、本書はメディアでは取り上げられない(今後もおそらくさうであらう)男女間の裏側をテエマにしたルポルタージュであります。
街娼の少女や身体を売る兄と弟、女として生きる男たち「ヒジュラ」の実態、一夫多妻制の本当の意味など、現地に住み込んで密着取材です。
時には日本人の感覚のまま振る舞つてしまひ、衝突も起きます。子供の写真を撮つただけで誘拐犯と誤解されたりもします。そして良かれと思つてした行動が、結局現地の人たちを傷つけたり困らせたり。無力さを感じる著者ですが、その行動力は一目を置かざるを得ないでせう。
わづか半年ほどの間に訪れた土地は、インドネシア・パキスタン・ヨルダン・レバノン・マレーシア・バングラデシュ・イラン・ミャンマー・アフガニスタン・インドに及びます。
このことから、本書の内容はフィクションではないのか?といふ疑問も一部にあるやうです。文章もまるで小説のやうであります。
しかし私としては、やはりこの新しい才能の出現を歓迎したいのであります。石井氏はさぞかし活力溢れる熱血漢に相違ないと勝手に考へてゐるのです。
本書の後も順調に作品を発表されてゐるやうです。注目しませう。
http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-243.html
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体当たりなルポ。筆者の対象への温かい目や率直な姿勢があるからこそ書けるのだと思う一方、もっと突き詰めた視点も欲しくなった。
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春をひさぐことが子供の頃から当然で、大人になってもそれ以外の選択肢はない。
そんな現実が同じ地球の遠い国には存在するということを、頭では分かっても、なんとなくしか自分の体に理解は出来ていなかった。
もちろん全てが解るわけではないけれど、この本を読んでその現実が単なる活字ではなく、熱のこもった事実として伝わったように思う。
イスラムの国々の売春宿に住み込みで働いたり、一夫多妻についてのインタビューをしてみたり。日本人がそこまで生活に食い込んでいるだけあって、すごく興味深かった。
あとがきの、このイスラムの現実をどうすることもできない無力感、というような著者の言葉が心に重く沈んだ。
同性愛者が虐殺されたり、兵士にレイプされ妊娠した女性が白い目で見られたり、幼い子供が体を売って生活したり。自分には何が出来るかわからないけれど、もっともっとこの世の中で起こっていることを知りたいと思った
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著者の未熟な正義感を振りかざす自分本位な姿勢が非常に鼻につきます。
ただ、それは日本という国の途上国に対する姿勢に他ならないのかもしれません。
一時的な同情は自己満足に過ぎないということです。
売春宿やストリートチルドレンの現状、一夫多妻制の意義など知っておかなければならない事実もたくさん書かれています。
私情を交えずに情報を提供してほしかった。
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ノンフィクションを狭い意味に捉えると、これは当てはまらないかもしれない。著者の体験から再構成されたイスラムの性の世界、とでもいうべきか。老人の一人語りがでてくるが、「忘れられた日本人」の土佐源氏を思い出した。これはあくまで想像だが、著者が意識しているのは「沢木耕太郎ミーツ宮本常一」ではないだろうか?
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衝撃のひとこと。いずれも具体的で生々しい実話。
性という、取材するのが困難であろう題材に挑んだだけに、
その内容はいずれも切実なものになっている。
いろんなエピソードがちりばめられているが、
どれもわれわれ日本人に咽喉もとに匕首を突きつけてくる内容ばかり。
統計上の数字での話や観念論ではなく、
本当に物事を語ることはできないのだと痛感した。
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初めて石井光太さんの書籍を読んだけれど、この引き込まれる感じは何なんだろう。そこにいる、というよりも石井さんがインタヴューしている情景を第三者視点で実際にみているようなそんなリアル感を感じる。それか彼の書き方なのかと思うとすごいと思う。
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人は、生まれてくる所を選べないことを、改めて思い出さされた。どうしようもない厳しい現実がある。この本の中では、同じ空気を吸い、一緒にごはんを食べなければ見ることのできないそれ、そしてそうした上でも一部を垣間見れるにすぎないそれが、衒う風もなく提示されている。危険自慢、苦労自慢を感じないところがいい。厳しい現実の中にある一縷の救い、明るい一シーンが、すべての話でそれぞれ切り取られているところがいい。
そして、どうしようもない現実を記録しながらも、決してあきらめてはいない著者を感じられるところがいい。著者は、知り合いになったら、きっとすごく好きになれる人に違いない。
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著者の考えには同意できる点もそうでない点もあったけど、書かれている内容は事実だと思う。
中学生のとき、中東で湾岸戦争のあと(らしき景色)を見たことを思い出した。
スーパーマーケットや住宅地が並ぶ街並みのなかに、穴だらけのマンションがそのまま建っていた。本書には、それよりも生々しい現実がいくつもあった。それも過去ではなく現在に続いているもの。
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この本に記録されているイスラム世界の「風俗産業」は壮絶の一言。
人権なんてなく、理不尽に虐げられ、犯され、殺される。
安全で平和な環境で生きる私たちにとって、文章だからまだなんとか向き合える、別世界の記録。
この「人間以下」の環境を文章とし、告発すること自体は意義のあるものだ。
しかし、著者の責任のない正義感に基づく行動がイライラする。
いろんな国々で虐げられる人たちに会うたびに、彼は日本人と言う安全なところから「そんなことはいけない、逃げなさい」と告げる。
そして常に拒絶で返されてしまう。
なんと幼稚なんだろう。
特にひどいと思ったシーンは、売春をする浮浪児の女の子に対して、「嫌なら自分の宿に逃げてきなさい」と言ったにもかかわらず、その言葉を信じて逃げてきた女の子の「抱っこして」というささやかな願いすら拒絶したシーンである。
「明日も明後日も面倒をみる羽目になるのではなかろうか」(P272)
何を当たり前のことを、と罵倒したくなる。
そんなことも考えずに女の子に声をかけたのかと、愚かすぎる著者を殴りつけたくなる。
一度救いの手を差しのべたならば、最後まで責任を持つべきだ。
助けてと伸ばした手を拒絶され、その後二度と著者の前に姿を現さなかったこの女の子の絶望は、言葉にはできないだろう。
著者は「己に何ができるかを模索してみよう」として旅に出る。
そして、あとがきで「自分の小ささ、弱さ、情けなさ、醜さ、そんなものしか見えてこなかった」と言う。
当たり前だ。
責任が持てないのであれば、関わるべきではない。
どんなにひどい世界でも、そこに住む人たちにとってはそれが日常であり、傲慢な助けなど必要としていない。
私たちがすべきなのは、この著者のように個人で正義感を振り回すことではなく、組織として彼らを支援し、差別する人たちへ働きかけることなのである。
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新潮文庫の100冊に入っているから、ムスリムのルポかと思ったが、的はずれ。
能天気な著者が旅行した結果に知り合った友人とやらの個人的な可哀そうな事情を羅列しているだけか。
著者は友人だと称しているが、知り合った人たちの生活を自分勝手に解釈して興味本位に暴露している。
著者の精神的な主体はどこにあるのかが不明。ちゃんと宗教と向き合ったほうが良くありませんか?