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(2008.02.06読了)
本屋でいつものように何か面白い本はないかと、本の背表紙を順番に見ていたら大岡昇平という文字が目に入りました。知らない題名だったので、裏表紙の紹介文を見たらB級戦犯の話だったので購入しました。
映画化(映画『明日への遺言』)のために最近、角川文庫から再刊されています。
元陸軍中将岡田資(たすく)は、「第13方面軍司令官兼東海軍管区司令官として、降下B29搭乗員38名の処刑の責任を問われ、昭和23年5月、B級戦犯として、横浜の連合軍軍事裁判所で絞首刑の判決を受けた。翌24年9月17日執行」(7頁)された。
岡田は、「公廷で降下B29搭乗員を取り調べた結果、無差別爆撃を行ったもののみを処刑した、と主張した。そしてアメリカ空軍は、国際法に違反して、軍事目標ではない都市爆撃を行い、多くの非戦闘員を殺傷したことを立証した。」(8頁)
岡田に対する起訴理由は、米軍B29搭乗員を正式な裁判を行わずに、処刑したということでした。岡田の反論は、連日の都市爆撃で、とても裁判を開ける状態ではなく、また、B29搭乗員の罪状は、裁判を開くまでもなく、明白だった、ということでした。
結果として、アメリカ軍の無差別爆撃が立証され、岡田よる裁判無しの処刑命令も違法という相打ちに終わった、というところです。
本の内容の主なところは、法廷での裁判の様子の再現ですので、読み進むのが結構しんどい。検察官、弁護士、証人、被告たちのやり取りで、結局何が明確になったのかを読み取るのが余り得意ではないためなのでしょう。
戦争裁判で、問題になるのは、命令者が裁かれるべきか。執行者が裁かれるべきか。ということでしょう。この本の場合も、日本の天皇とアメリカの大統領に責任はないのかということに触れたところがありますが、結論としては、そこまでは踏み込まない、ということで終わっています。
映画は、どのようなところを主題にするのでしょうか?是非見てみたいものです。
部下の責任を一身に引き受けたというところは、余り強調して欲しくないところです。
☆大岡昇平の本(既読)
「野火」大岡昇平著、新潮文庫、1954.04.30
著者 大岡 昇平
1909年3月6日 東京生まれ
1932年 京都帝国大学文学科卒業
1944年応召、フィリピンに出征
1948年 『俘虜記』を発表
1952年 「野火」により読売文学賞受賞
1961年 「花影」により毎日出版文化賞、新潮社文学賞受賞
1988年12月25日 死去
(2008年2月10日・記)