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紙の本

過去からの解放と新たな未来

2009/10/03 00:59

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

今回は啓介の良い意味で過去との決別と、友月のいろいろな意味での血族的な問題に絡む、ある一族の過去とその決着をあぶり出しながら、それらを受け止めつつ新たな敵(?)の登場を示唆させるという濃い内容だった。

前半は、過去に向き合い、前向きであろうと努める啓介の心境を主軸に、旅の様子や親戚宅でのやり取りが丁寧に描かれる。様々な場所を巡ることで過去に対する怯えとか、これまで逃げてきたことなどを改めて振り返り、かつてとは異なる心境に達していることを綴っている。これを適当に端折ることなく、きちんと押さえておくことで後半への布石とするのが本シリーズらしい。何げに叔父・叔母・従姉がいい味を出していて雰囲気をつくっている。特に従姉の咲さん、あなたもフラグ立ってたのね、というところも無くはないのだが、むしろ啓介の過去への想い、その呪縛の核心を指摘する役目を担っている。

後半は、突如発生した連続焼死事件の全貌が徐々に明らかとなっていく中で、どこか様子が変だった友月の、その変調の理由も明らかになっていく展開。少々重苦しくシリアスである。少しばかりの謎解き要素を含みつつ、友月家の暗部がまたも出てくるのだが、ここで同時に「愛」いうもののあり方が問われている。全てを捨ててたった1つのものを愛する者、一度全てを失くしたことで今度こそ全てを失くさないようにしようとする者、相反する想いがバトルとともに交錯していく。ただ、ここで少し面白いのは、これにより啓介ハーレムにきちんとした理由が生じていることである。

今回の事件を契機に、ある意味新しく生まれ変わった友月の動向、みんなとの付き合い方が次巻での焦点になりそうな引きだが、それにしても友月がここまで重要なポジションに就くとは思わなかったなぁ。アリッサなんて今回嫉妬したり悶々とする場面の方が目立ってて思いっ切り脇役だったし。

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