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紙の本
無辺の世界に言葉無し
2001/05/29 04:54
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投稿者:春都 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人々の「不幸」のみを望み、はるか昔から歴史の闇に暗躍してきた異能の者たち——鬼道衆。様々な超常能力を持った彼らの崇める、不可侵の絶対者・外道皇帝が、永い沈黙を破りこの世に復活した。鬼道衆が求めつづけていた伝説の「黄金城」の扉は、いま開かれんとしている。
人とは、時間とは、宇宙とは、存在とは何なのか。一人の人間が一生かかっても答えきれない命題を、いささかも躊躇することなく、次から次へと物語のなかにぶち込んでいく。
すべてを語ってやろうじゃないかという半村良の意気込み、ここまでくるとすでに狂気にすら感じられるその想いに、読者はただただ圧倒され、綾辻行人や京極夏彦と同じく、自らの価値観を一変させられてしまうだろう。
これが小説として書かれ、そして今手に取れることの幸せを、なによりも喜ぶべきである。にわかには信じがたいかもしれないが、『妖星伝』はこの地に住む同じ人間が創りだした代物、手を伸ばせば、広大無辺な世界がそこにあるのだ。言葉はいらない、今すぐ飛び込め。
このままずっと終わらないでほしい、読み進めながら何度そう思ったことか。人には死があるように、物語には完結という終わりが待ちかまえている。己が「今」を体感している以上、すべての時が止まる一点に近づきつつあるのは、逃れようのない現実だ。すなわち頁を繰る行為とは、生を疾走し、死に向かっていくことと同義であるのかもしれない。
しかし『妖星伝』は、本を閉じてからも生き続けた。いや、存在すると言った方が良いか。身体という名の器から脱した魂は、時の緊縛から逃れ永遠の営みを得るように、この物語は終結を迎えてもなお、読者の内にいつまでも色あせず在り続けるのだ。
妖星は決して滅びない。
紙の本
戦後の物語文化が産んだ、貴重な成果
2002/06/16 12:57
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投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なにしろ、おれが活字の物語を楽しむようになったガキの時分からお世話になっている作家だ。しかし、このシリーズは未完であることもあり、今まで未読であった。そして、完本と題されて文庫化されたものを一気に読んで、「今まで読んでいなくて良かった」という感想を得た。
氏の作品はほとんど目を通しているのである。分析せよといったらいくらでもできる。が、それより単純に玩味することをおれは選んだ。ひとつの物語として、とても魅力的なのである。美味しいのである。
大正時代の大衆小説の流れを汲む、優れた伝奇物であった。
登場人物それぞれの運命、周到に張り巡らされた伏線、東洋的な用語で語られるSF的な思想、最後にみえてくる壮大なビジョン……。
贔屓の引き倒しといわばいえ、どれをとっても文句なし。戦後の日本がうんだ、物語文化の立派な成果。
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