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主人公に過去の自分を投影しようとしても全然自分の方が脆弱だと思い知らされる。
「自分に会いたいと思う人などこの世にいないだろうと思いながら生きてきたし、今もそうだ」て思っていてもこんな明確に自分を見つめられない。
なんでもない描写が、伝わりすぎて一緒に傷つきながら読んだ感じ。でもタイトルの意味がわかるラストにみんな救われる
ポトスライムの舟よりこっちのほうが面白かった。
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津村さんの本、なんだかんだで結構読んでるのですが、インパクトの大きさではこれが一番だったかも。
メッセージもすごくはっきりしてる。
就職も内定した大学4回生女子、自称「不良在庫」の冴えない日常。舞台は京都。
工場でアルバイトしたり、友達と飲みに行ったり、小さなトラブルに巻き込まれたり。
だらだらとした日常の描き方の臨場感はさすが津村さん。
なんでこうリアルに読ませるかなあ。小道具がうまいのかなあ。
で、読んでるうちにだんだん主人公や周りの人々の抱えるものが浮き上がってきて、最後のほうは胸に迫るものがありました。
当たり前の正義感とか、他者の痛みへの共感とか。
そういうのをしっかり自分の中に持っている主人公がカッコよくて、さらにそれをこれみよがしに振りかざさないところが潔くてとても好きだ。
理不尽なことはあらゆるところに転がってる、でもそれに負けちゃあ負けなんだよ、って自分に言い聞かせながら生きる姿勢。
いいタイトルだ。
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正直、タイトルに惹かれて購入。でも中身もよかった。
最初はくさくさした勘違い女子のモラトリアムの話が延々続くのかと思ったら、途中から全く違う印象を持って読んでいたことに気がついた。
柴崎友香読んでたと思ったら後半別人みたいな…わかりにくいか…
ホリガイの小学生の頃の話を聞いたイノギさんが言ったひとこと。「そこにおれんかったことが、悔しいわ」
これがすべてな気がする。
ここに出てくるような凄惨なものではなくても、誰でもいつか力という理不尽な壁にぶつかるときがくる、女は特に。
そういう時の悔しさというか哀しさが思い起こされた。
日常に隠れて暴力の影は周囲にあふれているかもしれない、帯の文句そのままだけど、そう思った。
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大学4年生、公務員試験に通り、卒業も決まったホリガイの生きる日々を綴る。
ホリガイの物語だけど、様々な生き方をし、過去をかかえた大学生が出てくるので群像劇的な側面もある。
ストーリーは語りにくい話。
何か大きなハプニングが起こるわけでもなく、ホリガイが出会う人々との交流の中で悩んだり諦めたり開き直ったりする姿を追う。
ちくま文庫は文字詰まってる感が強いという印象があるものの、
240ページ程度と薄いのに恐ろしく読むのに時間がかかった。
一文が長く、段落が大きい。
ぱらぱらめくっても文字文字文字。
ラノベの5倍くらいの濃度。
つぶやきのようなものがつらつらと続くから斜め読みはしにくい、したらわからなくなる。
ただ読んでいて、これが津村さんの書きたかった物語なんだということはひしひしと伝わった。
熱量は多いけれど、それについていけるか、しっくりくるかどうかは読み手しだい。
個人的には少々強すぎるパワーがしんどかった。
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言葉にしがたい読後感。自分の経験にほど近い大学の日常を描いているようで、暴力の闇が突然出てきたりで戸惑った。
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飽きさせない文章だと思った。
皆、それぞれに過去がある。
楽しい想いで、辛い過去、悲しい記憶…
しかし、ただ見ているだけでは分からない。
「それ」を知るには何かきっかけ、タイミング、縁、気の迷い…
どれかが必要で、それは自分ではどうにもできない。
偶然は必然なのだろうか?
どこかで何かが作用し、
不確かなものばかりが日常に散漫している。
すべてをコントロールすることはできない。
皆、それぞれ人生があり、単純に見えてそうでないことばかりだ。
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津村さんのデビュー作。大学卒業間近のホリガイさんのぐだぐだした日常。
『ポトスライムの舟』に一緒に入っていた短編でけっこう重いものがあって、その話のことを思い出した。この小説、もとは「マンイーター」という題名だったらしい… その題名もすごいけど。
津村さんの小説の人は体温が低いとでもいうのか、世の中のいろんな事象をあまり感慨もなく素通りするような人が出てくる(と勝手に思っている)のだけど、これまたそうで、淡々と暴力的な事柄が語られるところなど、なかなかぞっとするような出来だった。強烈。しかし作中に出てくる「人をあなどる/あなどられる」という言葉にどこかユーモアが見られるのも津村さん。
巻末にインタビューが載っていて、津村さんいいなあと思う。
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ああ、この感じ好きだな。
と思った。
仄暗く続く日常の中にもユーモアがあって半径何百メートルな物語だけど小説で読むと何かが押されてる感覚になる。
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就職も決まり、残りの大学生活をだらだらと送る主人公の何気ない日常を描いているようで、その実、ときおり影を落とすやりきれない現実に対する、そんなものに負けるな、というメッセージを一貫して伝えています。
津村さんの作品は、淡々とした語り口の中に、瑞々しさとか、清々しさ、しなやかさが感じられて好きなのです。
2013.01.04
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ホリガイのだらしない日常に付き合ってるうちに油断していたが、終盤に一気に引き込まれた。
今年一番の作品(まだ一月中旬だが…)
日曜日の最終便で赴任地に単身で向かう機内で読んだこともあり、人との繋がりというものについて考えさせられた。
最後の一行にものすごく救われた。
津村記久子さんの作品をもっと読んでみようと思う。
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他者と比較した自分の孤独さとか寂しさは、あまり上手く理解しない、したくないのが本当だったりするものであるが、そんな意識しづらいものに向き合う主人公の曖昧さが、とても真実味を帯びていて、且つはぐらかしながらも飄々としており、脱力エンターテイメントの様相と申しましょうか、素晴らしく面白かった。
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なんの話か全然わかんないし主人公ぶっとんでるしで読み進めてったら全然予想してない方に話が進んでった。最後も別に嫌いじゃないけど中盤までくらいのが面白い。
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ヒットヒット大ヒット!
この人いいね。
ぽかっと時間があくと、なんとなく人生について考えたくなる。
暴力と、死と。生きていくことの足元からはそれら非日常が姿をのぞかせる。
ホリガイさんは日常と非日常のあいだにたつ使者。
強い決意とか大層な夢とかそんなものはないけれど、彼女は自分の意思に従って生きていくんだ。
緩やかで、波乱万丈。
久々に、この作家好きって思ったよ。カソウスキ、ポトスライムもよかったから。
2013/07/30読了。
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芥川賞受賞作品『ポストライムの舟』を読んでから、作者:津村記久子さんの作品を読み始めている。本書は、津村さんのデビュー作にして、太宰治賞を受賞した作品。元々のタイトルは「マンイーター」。単行本化により、本タイトルに改題したらしい。
主人公は、他の作品の主人公より若く大学4年生の高身長の女子学生。この頃から、すでに独特な津村ワールド、読者を知らず知らずのうちに惹きつける文体であったことを認識した。大学4年生の日常が綴られながらも、重いテーマに触れられている。
巻末には、付録「芥川賞を受賞して」として津村さんのインタビューも掲載されている。
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諦めるしかないモテ格差。
語り手のホリガイは女子力ほとんどゼロの女童貞で、自分に会いたいと思う人はこの世にいないと思っています。
自虐的なユーモアと繊細な人物描写に溢れる語り口が楽しくて魅力的。女の嫌などろどろとした部分を感じさせません。
誰かに必要とされるには誰かを必要だと思わなくてはという当たり前のことが心に沁みました。