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すべての接触する人間に好意を抱かせる、天才看護婦、姫草ユリ子。ところが彼女は、病的な虚言癖を持っていた。ウソにウソを重ねてウソ地獄へと堕ちていく様を描いた「何でも無い」、夫に殺されるかもしれないと思いながらも愛してしまう、女車掌、友成トミ子の六つの手紙から成る「殺人リレー」、火星の女と呼ばれた女新聞記者の復讐劇「火星の女」の三つの書簡体小説から成る表題作『少女地獄』ほか、「童貞」「けむりを吐かぬ煙突」「女坑主」を収めた短編集。
夢野久作の怪奇・妖麗・夢幻の世界を思う存分味わえる。夢野久作の世界観に触れるなら、まずはこの一冊をおすすめしたい!
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やはり表題作が一番ではないかな。
「何んでも無い」が特に少女地獄なのではないか、少女性が色濃かった。
ユリ子の虚構の無間地獄はやっぱり甘美なものだなと思うのでわたしも巻き込まれてみたい。
「殺人リレー」はあれだけの分量で魔性の男っていうのか、それを描いてるのが吃驚。
書簡体だからこそ引き込まれる感覚っていうのですか、新鮮でした。
「火星の女」はリズミカルで素晴らしい、ぐっと読ませてくれますね。
でもとても悲しい、真っ直ぐな狂気っていうか。
残りの短編も三つとも素敵だったよ。
魔性の女ですとか男ですとかが、目眩がしそうに描かれているの。
あとね、カタカナ遣いがとっても独特の空気を生んでいるように思いました。
お気に入りです。
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あの子の様に嘘に塗れて生きてみたいと思った。
あの子の様に嘘に塗れて生きてみようと思った。
夢野久作が書く女の子は何故皆美しいのだらう。
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『なんでもない』の姫草百合子は理想の美少女像です。
嘘で塗り固められた彼女はラストでどうなったのでしょうか。
他短編も面白いし素敵です。
特に『童貞』が気に入ってます。読後にあんな虚無感に襲われたのは初めてだった。
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彼女を生かしたのは空想です。彼女を殺したのも空想です。ただそれだけです。(少女地獄)
「にんげんの音楽は皆似せものであった。……自分の音楽も似せものであった。……自分は要するに無用の存在であった。……自分は死んでも本当の音楽はこうして永遠日常に繰り返されて行くのだ。……ありがたいありがたい……なつかしいなつかしい……嬉しい……楽しい……」(童貞)
(表題/童貞/けむりを吐かぬ煙突/女坑主)
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文体が読みにくいため敬遠していたけれど、
一度読み始めたらおもしろいのなんの。
ひとつの嘘を隠すためまた別の嘘をつき、
そしてその嘘を隠すためまた別の嘘をつき…と
嘘を重ねて自分の虚栄の妄想世界に生きる
美少女・姫草ユリ子の話は怖いけれど哀れ。
しかし嘘っていうのは頭がよくないと
すぐに破綻してしまう。
相手に矛盾を感じ取られないよう、
きちんと自分のついた嘘を
細かいところまで覚えていないといけないから。
おばかさんには出来ない芸なのだわね。
あと個人的には、この本の中では
「殺人リレー」という短編が好み。
若い女子の思い込みによる突っ走りと
すぐに気が変わるようなところが
書簡形式でシュールに綴られていておもしろい。
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幻想と怪奇の中間地点。あらゆる思想の源流。
大作『ドグラマグラ』はちょっと長いから、短編で入手もしやすい本作からがベターかもね。
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夢野久作短編集。
『少女地獄』『童貞』『けむりを吐かぬ煙突』『女坑主』
の四編を収録。
『ドグラ・マグラ』と違って短編なので
こちらの方が読みやすいし、
内容も分かり易いと思います。
でもこちらの短編集の方が
怖いモノを感じました・・・
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姫草ユリ子という女の話。
19歳の清楚可憐な彼女は看護婦として臼杵医師の下で働いていた。
だが彼女が虚言癖のある少女だと白鷹医師という人物と出会うことで知ってしまう。
短編集なので他にも話が載ってましたが、「少女地獄」というタイトルの中で3つくらい話があってややこしかったです汗
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「少女性」という名の悪魔(デーモン)は、女たちに付きまとった挙句に、彼女らを死の淵へと追い落としていく。
姫草ユリ子 二十五歳
友成(ともなり)トミ子 十九歳
甘川歌枝 十九歳
『少女地獄』という作品には三篇のエピソードが含まれており、各篇の主人公が彼女らである。姫草ユリ子(本名:堀ユミ子)は「何んでも無い」という篇で、病的なまでの虚言癖を発揮し、勤める臼杵病院内外で多くのトラブルを振りまいていく。一つの嘘を成立させる為に、もう一つ別の嘘をつき、という風に、ユリ子から発せられる虚言は増殖する…。そして膨れ上がった嘘が自身の力で取りつくろえなくなり、とうとう破綻を迎えた時、彼女は姫草ユリ子という名の持つ「可憐な乙女のイメージ」を守り抜く為に自死を選ぶ…。
友成トミ子は昭和初年の働く女性であり、ミナト・バスに勤める女車掌である。その友成トミ子が、同じく女車掌を夢見る山下智恵子という女性に手紙を書くスタイルで語られるのが、二番目のエピソード「殺人リレー」である。友成トミ子は、浜松勉強バスから流れてきた二枚目のバス運転士・新高竜夫に、ある疑いの目を向けていた。新高竜夫は勤務するバス会社を転々としながら、何人もの女車掌を誘惑しては内縁関係になり、その女性に飽きると事故を装って殺害するという、怖ろしい噂を立てられる人物であったのだ。そのことをトミ子に忠告してきた松浦ミネ子もまた、新高との交際の末、事故死してしまった。友成トミ子は新高の尻尾をつかもうとするが、彼女も新高に求婚され、夫婦生活が始まってしまう。彼女は自分が新高に殺されるか、それとも新高に真相を突きつけ、松浦ツヤ子の仇をとるか、二つに一つというスリルに魅了され始める…。そして………。
最後のエピソード「火星の女」は、作中で新聞記事に見られるセンセーショナルな見出しが躍り、県立高等女学校の物置で女性の黒焦死体が発見されたことから始まっている。この黒焦死体は一体誰なのかという疑問が深まる中で、県立高女の森栖(もりす)校長が突如発狂し、ベテラン教師・虎間トラ子が縊死(いし)するという事件までが起こり、一連の出来事は迷宮入りの様相を見せる。しかし、タイトルともなった「火星の女」と呼ばれる県立高女卒業生・甘川歌枝の遺した書簡によって、ミス黒焦の正体、県立高女で行われていた不正、天主教における篤信家にして人望篤き教育家であったはずの森栖校長の裏の顔などが明るみに出る…。これは、火星の女と綽名される所以(ゆえん)でもある醜貌と純真な正義感とを併せ持った甘川歌枝の、一世一代の、命を賭した告発文である。
読んでいてまず考えたのが、「少女」とは何歳から何歳くらいまでを指すのだろうかということであった。十九歳というのは果たして少女と言えるのであろうか、と。私がイメージする少女は十二、三歳からせいぜい十六、七歳くらいまでである。十八歳以上となると、これはもう「大人の女性入門者」というか、少女という言葉では収まりきらないような感じがする。勿論これには、十八歳で大学へ進学したり、就職したり、親元を離れる人たちが急増するというような、十八歳という年齢��関する現代的イメージがあって、私がそれに支配されていることも否めないのだが。
しかし、この『少女地獄』に登場する女性たちは、姫草ユリ子のように「満十九歳二ヶ月になりますの」と自称しながら実は二十五歳であったり、本当に十九歳で、仮に十九歳という年齢が少女の範疇に入るとしても、友成トミ子のように男性を知り、夫婦生活を送っていたり、甘川歌枝のように貞操を奪われていたりと、とても少女とは言いがたい側面を持っているのである。そもそも少女地獄とは、年若き少女が陥る地獄なのか、どうか…。
それで、冒頭に書いた「少女性」という名の悪魔(デーモン)について言及してみたくなったのである。
この「少女性」とは、必ずしも年齢的にも少女と呼ぶに申し分のない若い女性を意味するのではない。「少女性」それ自体は、どんな階層・年齢層の女性にも潜んでいる可能性がある。ひょっとすると、男性の中にも時としてこの「少女性」は沈み込んでいることがあるかもしれない。
そして、この「少女性」が悪魔(デーモン)として害を及ぼすのは、少女がいつしか年齢的な少女の時代を過ぎ越し、女の時代にさしかかりながら、それでもなお、深窓の令嬢の如き甘美な夢を見、純粋無垢な乙女であり続けることに価値を置き、そこからもがいても足掻いても逃れ得なくなっている時なのだ。その己の「少女としての理想」と「女としての現実」が大きく乖離(かいり)する時、彼女らが持つ「少女性」は悪魔となって、宿主である彼女らをじわじわと侵蝕しだす。果ては、彼女らを生の場には置いておきはしない。「少女としての理想」へと一気に突き進む為に、美化された死へと彼女らを誘(いざな)う。
姫草ユリ子は、裕福な家庭と教養に恵まれ、医師からも患者からも信頼を得ている有能な看護婦(本文ママ)であり、医学部教授とは懇意であるというような完璧な少女を虚言でもって演じつつ、その嘘が暴かれると間もなく死んでいった。
友成トミ子は、サディストの新高竜夫を懲らしめたいという仇討ちにも似た悲壮な覚悟を持っていながら、次第に新高に惹かれ、新高を破滅させてやりたいような、自分が何もかも放棄したいような心理の中で死んでいった。
甘川歌枝は、醜い容貌の為に女学校でも家庭でも疎外されていたが、少女らしい正義感と行動力を持ち、学校長や教師らの裏面の顔を暴いた後に、疎まれ汚された自分の身を浄化するかのごとく、死んでいった。
どの女の死も、咲き乱れた薔薇の香りに噎(む)せ返るような死だ。美しい香りに噎せながら薔薇の園をゆたゆたと彷徨し、気が付けば次第次第に棘(とげ)で傷ついていく。その傷ですら、薔薇によるものならば麗しい。幾条にもわたる躰の傷が死の香りまで醸し始めても、「少女性」という名の悪魔(デーモン)に魅入られた女には、最早、死こそが「少女としての理想」の完成であり、救済なのだ。きっと彼女らは、絵師・高畠華宵(たかばたけかしょう)描くところの華宵美人のように、ポゥッと潤んだ眸(ひとみ)、上ずった視線、上気した頬で死んでいったことだろう。
『少女地獄』とは、うら若き少女が経験する地獄なのではない。いつまでも乙女チックであり続けなければ生きていけな��った女達が最終的に堕ちる地獄の物語に他ならない。
君よ、いつまでも清らかな花の顔(かんばせ)であれ。
吾(われ)は汚れ、見事に老いさらばえていこう。
平成二十二年六月三日 読了(角川文庫版)
※収録作品『少女地獄』『童貞』『けむり を吐かぬ煙突』『女抗主』自体は再々読了
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最初に踏み込んだ夢野作品。
これは夢野入門に良い短編集だと思います。
一人称で進んでいく物語は、悲痛な叫び、迫る恐怖がリアルに、目の前に鼓膜に脳裏に五感に訴えてくるんです。
異端、の名に相応しいかと。
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怖い。本当に怖い。
でも決して嫌じゃないのがこの小説のすごいところ。
何気に、夢野久作の作品で一番好きです。
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『何んでも無い』『殺人リレー』『火星の女』から成る表題作の「少女地獄」、ほか「童貞」「けむりを吐かぬ煙突」「女坑主」の3篇を収録。
表題作「少女地獄」は、猥褻なものではありません!笑
いずれも、純真で、一途な少女たちの哀しくも愛らしい姿を描いたものです。
私は特に『火星の女』が好きです。
これまで、夢野久作の作品で、美しくない少女が主人公となるものはあまり無かったような・・・。
『何んでも無い』に登場するユリ子みたいな虚言癖の人、たまにいますね。
なぜそんなに嘘を吐く必要があるのだろう?という疑問が、ちょっと解ったような気がしました。
「少女地獄」はもちろん良かったんですが、私は同時収録の「童貞」が気になりました。他の方のレビューを読んでみても、あまりこの作品について触れているものが無かったのですが・・・。
これを読んで、安部公房の「飢えた皮膚」(短編集「水中都市・デンドロカカリヤ」に収録)を思い出しました。
結末は全然違うんですけどね。寧ろ真逆。雰囲気が似てました。
最後のシーン、私なりに解釈しました。生きているのも死んでいるのも紙一重ですね。
「けむりを吐かぬ煙突」は「人間腸詰」系の作品です。
結構好き。
夢野久作の世界、奥深し。
次は犬神博士を読みます。
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思ってたのとちょっと違う。。。
ひとつづつもっと長いお話にしたらいいのに。
火星さんのはあんまり。
お耽美な感じは好き。
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『少女地獄』
「少女地獄」
臼杵医師の元に看護婦としてやってきた姫草ユリ子と名乗る女性。彼女の実家から送られる贈りもの。臼杵医師の先輩である白鷹秀麿医師に紹介すると言うがなかなか合わせてはくれない。彼女のつく嘘に気付き始める臼杵医師。姫草ユリ子が死んだという知らせと彼女の手紙を持ってきた溝呂木医師。
「殺人リレー」
バスガイドになりたいという山下智恵子に送られた友成トミ子からの手紙。バスガイドたちを次々に毒がにかける運転手・新高達夫に関する警告の手紙。
「火星の女」
県立の女子高で発見された黒焦の遺体。新聞によりミス黒焦と名付けられた遺体。謹慎を申しつけられた校長・森栖の失踪。大阪で火星の女を探す森栖。同じ女子高で発見された女性教師・虎間トラ子の遺体と書記である川島の遺体。殿宮アイ子という生徒の持ってきた手紙。火星の女の告白。森栖校長らの犯罪。
『童貞』
死の目前に謎の女から乳母車を受け取った男。夫であるバトラを殺害したとして追われる瑠璃子の告白。
『煙を吐かぬ煙突』
夫の死後屋敷を改装し煙突を建てた南堂未亡人。煙を吐かない煙突に疑惑を持った男の調査。元家政婦からの証言。消えた元家政婦。行方不明になる南堂未亡人の愛人たちの謎。
『女鉱主』
エチオピア戦争に乗じて一旗揚げようとする男たちの依頼で自分の炭鉱で使用しているダイナマイトを提供しようと話す女鉱主。虚無主義者たちの計画。
2010年1月5日読了